独身の日セールで4兆円超え!売上記録更新で中国新EC法の懸念を払拭!
中国の11月11日「独身の日」は、日本でもその過熱ぶりが話題にのぼるようになって久しいため、ご存知の方も多いかもしれません。
今年の独身の日セールも昨年を上回る流通額を記録し、大盛況のうちに幕を閉じました。日本も、越境EC売上ランキングで1位を獲得するなど好調です。
莫大な利益を上げる独身の日セールのような大規模ECセールは、日本でも根づくのでしょうか?
この記事では、2019年独身の日の売上や傾向を紹介するとともに、日本国内で実施される類似フェアやセールの取り組みについてもトピックをあげています。
目次:
- 独身の日とは
- 数字で見る2019年の独身の日セール
- 2019年は高級志向にシフト?
- 中国新EC法も独身の日を抑制せず
- 新EC法でさらに加速?日本の越境ECは昨年に続き好調
- 中国に続け!日本の「独身の日」
独身の日とは
独身の日、11月11日は中国で「光棍節」といわれます。英語ではダブル・イレブンともいい、1が並んでいることから独身の人のイメージが作り上げられ、この日は独身者が集まってパーティやギフト交換をおこなうといわれています。
中国は、2017年頃から過去最大の独身ブームが到来し、若者世代の未婚率が急激に上昇しました。その数は2億人以上とも。独身の日の大々的なセールは、そうした若者を主なターゲットとした商戦です。
数字で見る2019年の独身の日セール
中国の最大手ECであるアリババは、2019年独身の日の流通総額について、2,684億元(約4兆260億円)と公表しました。昨年(約3億2,025万円)よりも26%増で、記録を更新しています。
ちなみに、楽天の2018年国内流通額は年間3.4兆円です。つまり独身の日はその一日だけで、楽天の一年を1兆円近く超える流通額を叩き出したということになります。
独身の日セールが開始した最初の68秒ですでに70億元(約1,050億円)に達し、1時間後には840億元(約1兆2,600億円)に達するという破竹の勢いです。
アリババが独身の日セールを実施するのは今年で11回めですが、今年は共同創業者兼会長を務めていたジャック・マーが退任して初のセールということから、特に注目が集まっていました。
アリババの今年のセールの特徴は、ライブストリーミングを多用したことです。セール開始後10時間の時点では、半数のブランドがライブストリーミングを活用しており、商品を試す様子のほか、生産工程の公開などを積極的にPRした企業もあったようです。
AR(拡張現実)で化粧品を試したり、音声による注文を受け付けるなど、新しいテクノロジーの活用も目立ちました。
発注の総オーダー数は昨年より約24%増の12.92億件でした。ヤマト運輸が2018年度に取り扱った宅急便の件数が約12億個とのことなので、どれだけの商品が11月11日に注文され、配達されたかを考えるとすさまじいものがあります。
独身の日公式サイトでは、売上高がリアルタイムで表示されるようになっていました。
2019年は高級志向にシフト?
2019年の独身の日向け商品は、前年にはない特徴がみられました。
高額商品が人気
高級な嗜好品や高品質の農産物、伝統品の直送販売など、高額な商品が次々に売れていったことです。
今年初の商品として売り出された11軒の特価マンションには、47人が競売に名乗りをあげました。自動車は1秒に55台という驚異の売上をあげています。
販売の実況中継が行われた
そして興味深いのは、これらの販売が実況中継されたこと。マンションの競売にいたっては、1万人の見物客が落札される様子を見ていました。
独身の日セールで買い物をするのは、20歳代の若者と60歳以上の高齢者が多く、農村の若者は特に積極的に独身の日セールに参加しているといわれています。
中国新EC法も独身の日を抑制せず
中国政府は、2019年1月1日に「電子商務法」という法律を施行しました。インターネットビジネスを適正化するために定められた法律で、通称を電商法といいます。
独身の日セール開催前には、この新しい法律が購買を萎縮させるのではないかという懸念がありました。しかし蓋を開けてみればそのようなことはなく、例年を上回る売上を記録しています。
電商法は、海外の商品を自分が持ち帰ったりEMSで送ったりして中国国内で販売するソーシャルバイヤーを規制するために整備されたのではないかという意見が有力です。そのため、独身の日セールは新法の影響をあまり受けなかったのではないかと考えられます。
独身の日セールをおこなっているECサイトは複数ありますが、そのシェアは次の2つのサイトに二分されています。
天猫「Tmall」
天猫(ティエンマオ)は、アリババグループが運営する大手ECサイトで、中国EC市場の半分のシェアを獲得しているといわれています。独身の日セールを定着させたサイトです。
京東「JD.com」
京東(ジンドン)は、中国EC市場の約3割のシェアを獲得しているサイトです。中国企業の巨人と称される騰訊(テンセント)と協業体制をとり、同社の運営するメッセンジャーアプリ「We Chat」を活用したサイト構築を特徴としています。
もとは家電の専門サイトであったことから、現在でも家電品の取り扱いが豊富です。
新EC法でさらに加速?日本の越境ECは昨年に続き好調
独身の日は中国国内の店舗のみだけでなく、越境ECの流通も活発になります。
越境ECの国別ランキングは、
1位:日本 2位:アメリカ 3位:韓国
となりました。日本ブランドの売上は昨年もTOPで、日本製品やブランドに対する信頼がうかがえます。特に認知度が高いのは資生堂、花王、MTGなどの化粧品やおむつなどベビー用品を扱うブランドです。
資生堂は2017年の独身の日セールから、ボディケア用品、ヘアケア用品の2部門で2位にランクインするなど認知率の高さは群を抜いています。
2014年頃から、訪日中国人が花王の紙おむつ「メリーズ」を爆買いする様子が度々報道されていましたが、洗剤やメイク用品などの売上も好調。2018年は、日本企業の中でトップの売上高を誇りました。
MTGは美顔器の「ReFa(リファ)」が代表的な人気商品です。小型で高額という特性から、日本を訪れたソーシャルバイヤーたちがこぞって購入し、中国国内で販売していたことも。独身の日セールでも人気ぶりはもはや不動のものになっています。
2019年1月に施行された電商法により、爆買いの一翼を担ったソーシャルバイヤーたちは、法人化したり日本と中国が共同開発したアプリを通じて商品を仕入れたりする必要性に迫られています。
そのため、電商法は越境ECにとってひとつの商機になるのではないかとみられています。個々に活動していた彼らの動向がある程度体系化されれば、日本の越境ECもより効率的に在庫の供給をしたり協力体制を構築したりできるでしょう。
独身の日の盛況ぶりと、日本の越境ECがそこでTOPの座を守ったことは、今後のEC施策に大きな弾みをつけることになりそうです。
昨年度の独身の日セールに関する記事は「独身の日(W11)が世界的なネットセールとなる日も近い!?2018年の売上はなんと3.5兆円!!」をご覧ください。
中国に続け!日本の「独身の日」
こうした中国の熱狂ぶりをみて、日本でも独身の日にあやかったセールが実施されました。
楽天とイオンが実施した独身の日にちなむキャンペーンは、どちらも11月11日の一日だけでなく前後数日間に渡って開催されているのが特徴です。
楽天「おひとりさま」関連キャンペーン
楽天では、セールイベント「おひとりさま DAY」を開催し、楽天市場内に特設ページを設けました。
このキャンペーンは、今年で2回めの開催となり、特設サイトでは一人をエンジョイする「ソロ充」を応援する商品やポイントバックキャンペーンが実施されました。日本国内でも未婚率が高まり、結婚願望の希薄化なども度々ニュースで取り上げられています。独身であることを揶揄するような風潮が薄れているのも、こうしたセール実施の原因の一つといえるかもしれません。
「おひとりさま」向けの該当商品は、11月10日~11月13日まで「楽天スーパーDEAL」で紹介され最大で30%のポイントバックが受けられる仕様でした。
また、併せて11月11日~12日まで「超ポイントバック祭」が実施されています。
ほかにも、11月11日限定イベントとしてアンケートの多数派に投票したユーザーがポイントを山分けできるキャンペーンや、Twitterでのハッシュタグを使った大喜利キャンペーン、タレントや芸人が登場する特設ページ内LIVE番組のオンエアなどが実施されました。
中国の独身の日セールは、世界各国から歌手やセレブリティが招待される華やかな一大イベントで、今年は米国の人気歌手テイラー・スウィフトが登場したことも代々的に報じられました。
日本でも、ECだけでなくサイト内の特番やSNSキャンペーンが数多く展開されるような盛り上がりを見せる日がやってくるのかもしれません。
イオンはブラックフライデーを意識したネットセールを展開
イオンリテールでは、独身の日や米国のブラックフライデーを意識した「サイバーeセール」を実施しました。
ブラックフライデーは、11月の第4木曜日の翌日の金曜日をさします。米国では感謝祭の翌日のため慣例として休暇になることが多く、大規模な安売りセールが開催されます。ちなみに米国では、感謝祭の次の月曜日もホリデーシーズンの買い物時期とされ、サイバーマンデーと称した安売りがおこなわれます。つまり、11月後半から12月はじめにかけては大々的なセールが続くということで、これにあやかってかイオンの「サイバーeセール」実施期間も、11月5日〜11月11日までと、楽天市場のキャンペーンよりも長めの設定となっています。
「サイバーeセール」では、本体価格を1のゾロ目に設定したり、割引率を11%に設定したりした商品が約8万点準備されました。
セール期間が長いからといって独身の日にスポットライトが当たっていないというわけではなく、11月11日に購入するとポイントが11倍で付与されるなど、独身の日限定の特典も用意されていました。
イオンのセールの特徴は、イオンの店頭でネット注文の商品を受け取る「店舗受け取りサービス」を利用することで配送料が無料になり、その後の買い物で使えるクーポンが受け取れることです。
小売の物流問題は、注文した商品を消費者の手元まで届けるそのラストワンマイルの利便性を高めることが重要になります。当然、店舗受け取りを活用してもらった方が事業者にとってメリットがあるので、イオンのような取り組みは積極的に実施していきたいところでしょう。
2019年Amazonブラックフライデーが日本で初開催
2019年はAmazon.co.jpにおいてブラックフライデーが初開催されます。
日程は2019年11月22日(金)9:00~11月24日(日)23:59の間で、商品の色が「黒」かったり、名前に「黒」が含まれたりする商品がセール品としてラインナップされています。(例:ブラックフォーマル、液晶テレビ、黒毛和牛など)
映画レンタルやKindle本の価格を「黒(96)」円に設定するなど、様々な企画があるようです。
日本にも大規模ECセールは根づくのか
モール型ECは、実店舗と違って大々的なセールを実施しづらく、消費者の購買意欲を劇的に高める施策を講じることが難しい側面があります。
しかし、海外では独身の日やサイバーマンデー、ブラックフライデーなどがEC業界に定着し、大きな利益をあげています。
日本ではまだそれほど浸透していないこうしたセールですが、10月に実施された増税により買い控えや購買意欲の低下が懸念されます。
事業者としては年末年始に向けて積極的な購買をうながせる11月時期のセールは貴重であり、日本国内でも認知度が高まってほしいところといえます。
まとめ
今年で11年めを迎えた中国独身の日セール。すっかり定着してしまったことで飽きられたり、1月から施行された電商法の影響がみられたりするのではないかと予想されましたが、昨年以上の売上を記録しました。
日本からの越境ECも昨年に引き続き、海外商品の売上TOPを獲得するなど好成績をおさめています。
2019年は、購入商品の内容が高級志向になったこと、ライブ配信やARといった最新テクノロジーによる新しい買い物のかたちを消費者が楽しむ様子がみられたことが特徴といえるでしょう。