Eビジネスを推進するORANGEシリーズ

EC-ORANGE
お役立ち資料ダウンロード ニュースレター登録

AIレコメンドの仕組みと事例:年末商戦を後押しするAI

AIによるレコメンドは、ECサイトに掲載されている膨大な商品の中から閲覧者の好みや嗜好と合致するアイテムを、サイト閲覧者に表示してくれる機能です。 その効果は大きく、米国から世界に波及した年末セールのサイバーマンデー、ブラックフライデーでも売上に貢献しています。
この記事では、AIレコメンドが世界のECにおいてどのような効果をあげているかをチェックするとともに、AIレコメンドエンジンの仕組みと国内の事例についてみてみたいと思います。
目次:

AIレコメンドは年末セールの消費を12%押し上げる

米国の顧客関係管理ソリューションを提供する企業、セールスフォースは、2019年のサイバーマンデーにおける世界のEC売上が300億ドル(約3.3兆円)だったことを公表しました。
サイバーマンデーは、米国のサンクスギビングデー(感謝祭)の次の月曜日のこと。サンクスギビングデーとサイバーマンデー、そして感謝祭の次の金曜日であるブラックフライデーは、感謝祭関連のプレゼントやクリスマスギフト商戦として、各社が大々的なセールを実施することで知られています。米国では11月の第4木曜日が感謝祭の祝日となり、ここからホリデーシーズンのセールが開催されていくわけです。
セールスフォースが発表した、米国での各セールのEC売上は、

  • サンクスギビングデー:44億ドル(約4,800億円)
  • ブラックフライデー:72億ドル(約7,800億円)
  • サイバーマンデー:80億ドル(約8,700億円)
となっています。
同社は、この売上のうち最大9%はAIレコメンドによるものだと分析、膨大なデータを活用してサイト閲覧者の好みに合わせた「オススメ商品」の表示が購入を後押ししたと発表しています。
なお、レコメンドにAIを活用したことで、一連のセールにおける消費者の支出額を12%を押し上げたという分析も合わせて公表しています。
一連の年末商戦については、こちらの記事で詳しく解説しています。


レコメンドの仕組みとは

レコメンドは、ECにおける類似商品のオススメシステムのことです。「この商品を購入した人は、こんな商品も買っています」、「この商品を見た人はこんな商品も閲覧しています」、大手ECサイトでは、よくこうした表示を見かけるのではないでしょうか。
こうしたシステムはレコメンドエンジンといい、「協調フィルタリング」というアルゴリズムを用いたもの、商品の情報とユーザーの嗜好を関連づけておこなう「コンテンツベース・フィルタリング」とそれらの手法を組み合わせた「ハイブリット」などがポピュラーなレコメンドの仕組みとして利用されています。

AIレコメンド:協調フィルタリング

協調フィルタリングというアルゴリズムを使うレコメンドは、サイトを閲覧している消費者の閲覧履歴や購入履歴といったデータを使い、閲覧者と似たような行動をしている人との相関分析をおこない商品を表示させる方法です。 商品情報をレコメンドする商品を決定づける判断材料として使うのではなく、閲覧者の履歴や好みを分析することが最大の特徴。サイトへの流入経路やキーワード、評価や口コミといったユーザーのアクションなども活用できるデータとなります。

  • 商品Aを閲覧、購入した人は商品Bも閲覧、購入していることが多い
  • ユーザーaとユーザーbは閲覧履歴や嗜好が同じである
などの分析に基づいて、表示させるレコメンドを決定していきます。
そのため、アルゴリズムを用いる場合には、膨大なデータをどのように組み合わせるかが効果的なレコメンドをする上での鍵になってきます。 「好みに合う商品を提示できる」、「消費者の潜在的なニーズにはたらきかけ、思いがけない商品と出会うチャンスを創出できる」という一方で、消費者の行動がそのままオススメ商品につながるため、新規ユーザーに対しては一定の情報が蓄積されるまで最適なレコメンドができないという課題もあり、これは「コールドスタート」と呼ばれています。

AIレコメンド:コンテンツベース・フィルタリング

コンテンツベース・フィルタリングは、商品の情報とサイト閲覧者の好みを関連づけ、それをベースにレコメンドをおこなう仕組みをいいます。 例えば、ドッグフードの商品ページに対して、犬用のおもちゃや保険商品、洋服などをオススメするといった表示手法になります。閲覧されている商品の基本情報(商品名やジャンル)に基づいてオススメ商品を表示させる計算は、特徴量の抽出といいます。この方法は、ジャンルが増えてくると特徴量の抽出に必要な工数が増えてしまうというデメリットがあります。
また、商品の情報によってレコメンドするため、例えば学習机を購入した消費者に対して延々と学習机をレコメンドしてしまうといった事態が起こる可能性もあります。

AIレコメンド:ハイブリット・レコメンデーション

近年は、オーソドックスな2つの手法の課題克服のため、両者のよい部分を組み合わせるシステムを用いることが一般的になりつつあります。
2つの手法を組み合わせることと、異なるコンテンツ・フィルタリングを組み合わせて使うことを、ハイブリット・レコメンデーション・システムといい、さまざまな技術が確立されるようになってきました。

AIにレコメンドを任せることで得られるメリット

AIにレコメンドを運用させるメリットは、コスト削減と新しい視点の獲得です。 取り扱う商品が多い場合、人力で1つ1つの商品にレコメンドをつけるのは膨大な時間がかかります。また、トレンドに合わせてオススメ商品の組み合わせを変えたい場合も容易には商品変更ができないでしょう。
しかし、AIにレコメンドを任せれば、大量の商品に対してスピーディにレコメンドをつけることができるようになります。また、トレンドに合わせてオススメ商品を変えることも容易です。
なお、人力でレコメンドをおこなうだけでは得られなかった新たな組み合わせやニーズを発見できる可能性も秘めています。

なお、消費者にとっても適切なレコメンド商品を閲覧することで、わざわざ検索しなくても必要な商品を購入できるというメリットがあります。


EC向けAIレコメンドサービス

EC向けには、リアルタイムで閲覧者のニーズを分析可能なサービスや、オールインワン型など、さまざまなタイプがあります。

SENSY Marketing Brain

SENSY株式会社の人工知能SENSYは、顧客の好みをひとりひとり分析し、商品アイテム別に嗜好を「AIスコア」として計算できます。SENSYは、画像解析、自然言語処理のディープラーニングによってサイト利用者の嗜好性を計測、マーケティングや需要予測もおこなえるオールインワン型のAIといえます。

https://sensy.ai/sensy-mb-1



Rtoaster

Rtoasterも、プライベートDMP(自社の情報資産を蓄積するプラットフォーム)とレコメンドエンジン、ユーザー分析を実行できるデータマーケティングに特化したサービスです。
レコメンド機能は、さまざまなアルゴリズムを標準搭載することで、興味関心や購買周期といったデータからレコメンドを実行可能に。自動チューニングやフィルタリングといった機能も備わっています。

https://www.rtoaster.com/functions_services/detail4.html


デクワス.VISION

サイジニア株式会社の「デクワス.VISION」は、閲覧している商品画像と近い商品をオススメする、画像解析型のレコメンドエンジンです。
これは主にアパレルでの導入活用が想定されており、「同じような形でもう少し裾の長いアイテム」、「色違いが柄違いの類似アイテム」を探すユーザーの利便性を高めるレコメンドといえます。
特に、流行の移り変わりが早いファストファッションで効果を発揮するとPRされています。

https://www.deqwas.com/service/vision.html


アイジェント・レコメンダー

シルバーエッグ・テクノロジー株式会社の提供する「アイジェント・レコメンダー」は、複数の機械学習を組み合わせることで、ユーザーの行動をリアルタイムに反映したレコメンドを展開できるという特徴があります。
ECだけでなく実店舗のデジタルアシスタントとしての活用も想定されており、ECと実店舗である程度レコメンドを統一したいという企業に適したサービスといえます。

・アイジェント・レコメンダー

https://www.silveregg.co.jp/service/recommender.html


AIレコメンドエンジンの導入事例

AIレコメンドは、企業によって活用技術や特徴が異なり、アパレルや日用品など取り扱う商品、利用者層によってもふさわしいサービスはそれぞれ変わってきます。
実際にAIによるレコメンドを導入した企業の事例をみながら、自社にもっとも適したレコメンドエンジンについて検討してみましょう。

20ブランドが集うECモール「MIX. Tokyo」

株式会社TSIホールディングスは「NATURAL BEAUTY BASIC」、「JILL STUART」、「HUMAN WOMAN」といった20ブランドが参画するECモール「MIX. Tokyo」の運営にAIレコメンドを導入しています。
レコメンドデータは、TSIグループ全体のラボラトリー機能としてだけでなく、各ブランドごとの売上データや成長度、成果報酬としても機能。各ブランド担当者の理解を得やすいシステム構築で、サイト全体の売上が向上したかたちです。具体的には、1オーダーあたりの平均売上および平均購買商品点数は、導入前年比1.5倍になり、予算の大幅達成を実現したとされています。

MIX. Tokyo



ワインECサイト「エノテカ・オンライン」

エノテカ株式会社は、自社が運営する日本最大規模のワイン通販サイト「エノテカ・オンライン」にレコメンドエンジンを導入しています。
オンラインでもソムリエの接客を実現する、をコンセプトとして、ユーザーに合ったワインの提供を目指しています。
サイトでは、常時2,000本以上のワインを取り扱っており、それら膨大な数のワインは「味わいベースレコメンド」のアルゴリズムを使ってユーザーにオススメされます。また、特集ページ単位でのレコメンドも実施し、メールやLINEを使った情報発信にもレコメンド技術を活用しています。
結果、AIレコメンドを取り入れてから、従来比較1.5倍のCV数が得られたと公表されています。

https://www.enoteca.co.jp/


専門知識活かす接客をイメージ「e☆イヤホン」

株式会社タイムマシンの運営する世界のイヤホン、ヘッドホンのECサイト「e☆イヤホン」は、回遊性を軸としたレコメンドを導入しています。オーディオ機器にこだわりのあるユーザーが気に入った商品に出会うためには、さまざまな商品を自由自在に閲覧できる必要があるという考えに基づき、ユーザーデータとアイテムデータを組み合わせたレコメンドを実施、「同じアイテムを見ているユーザーが見ているほかの商品」、「最近チェックした商品」、「閲覧数ランキング別オススメ商品」など、思いがけない商品との出会いを念頭においてシステム構築がなされています。実店舗では、豊富なオーディオ知識を有する従業員の接客を重視しており、オフライン(実店舗)と同様にオンライン(EC)でも同様の接客を受けているような購買体験を提供するということです。

https://www.e-earphone.jp/


ボディケアを扱う「SABON」

イスラエル発のバス&ボディケアコスメブランド「SABON 」は、ECサイトに香りに基づくAIレコメンドを導入しています。
SABONは、実店舗で香りや使い心地を試すという「体験価値」を重視した接客をモットーとしており、そのためECに参入したのも業界内では遅い方とされています。SABONは「体験価値」をECで再現するために、香りを判断材料の軸としたレコメンドを展開。SABONで取り扱っている6種類の香りを軸とした商品レコメンドによって、商品が探しやすくなったというユーザーの声を獲得しています。
なお購入履歴のあるユーザーには「期間限定商品」を、サイト来訪歴のあるユーザーには「おすすめ商品」、サイトに初めてアクセスしたユーザーには売れている商品をランキング形式でレコメンドするなど、一般的なレコメンドも実施しています。

https://www.sabon.co.jp/



まとめ

AIレコメンドは、ECにとって欠かせない技術になるでしょう。スマホでECの閲覧から購入まで完結させるユーザーが増えてきたことで、ECサイトはストレスのない操作性や直感的な購入体験がますます重要になってきます。AIを活用したレコメンドエンジンは、それを実現するための協力なサポーターになるはずです。

PR:エスキュービズムによるDX推進アプローチ