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アフターデジタル時代の「ブランドロイヤルティ」はどう作る?

アフターデジタルと呼ばれるこれからの時代、あらゆる流通小売業にとって、新規顧客を獲得することの難易度が高まっていると言えます。

なぜなら商品やサービスは機能性による差別化が難しいだけでなく、溢れかえる情報の海の中で、消費者はスマートフォンを駆使して本当に欲しい情報だけを取捨選択するのが当たり前になっているからです。

そのような状況の中で、幸運にも「購買」という接点を持てた顧客のリピート率をいかにして高めるかは、全ての企業にとって重要な課題です。

この課題と向き合う時、特に意識しておきたいのが「ブランドロイヤルティ」です。

目次:

品質に対する満足を超えて生まれる「愛着心」

ブランドロイヤルティ(Brand Loyalty)とは、あるブランドに対する顧客の「愛着心」「忠誠心」のことを表します。

忠誠心とまで言うと少々大げさですが、ブランドロイヤルティが高い状態とは、支払った金額に対する商品やサービスの品質への満足を超えて、顧客がそのブランドに感情移入している状態であると捉えることができます。

ブランドロイヤルティは、ブランドが持つ様々な無形資産(ブランドエクイティなどと呼ばれます)の中でも、最も重要な要素であると言われています。

ちなみに、Loyaltyとよく似た言葉にRoyaltyがありますが、これは権利使用料のことを指すものなので混同しないよう注意しましょう。

ブランドロイヤルティは収益に直結する

ブランドロイヤルティが重視されるのにはいくつかの理由がありますが、端的に言えば、企業の収益に直結するからです。

例えば、ロイヤルティが高い顧客は、ほぼ間違いなくリピート購入(あるいは、アップセルやクロスセル)が見込めるため、ロイヤルティの低い顧客と比べてLTV(顧客生涯価値)が圧倒的に高まります。よく、パレートの法則を持ち出して「2割の優良顧客が売上全体の8割を担う」と言われますが、これもブランドロイヤルティの重要性を説いた“例え”として見ることができるでしょう。

ロイヤルティが高い顧客がもたらすのは、直接的な収益だけではありません。そこまでブランドに惚れ込んだ熱狂的なファンは、伝道師として周囲の人間に対してそのブランドを熱心に薦めてくれる可能性が高まります。

しかも、現在は誰もがSNSなどを通じて全世界の人々に向けて情報を発信できる時代です。熱心なブランドのファンが潜在的な新規顧客に対して自主的に広告活動をしてくれれば、新規顧客獲得のためのコストが抑えられるかもしれません。それこそ、複数のマイクロインフルエンサーを熱狂的なファンに変えることができれば、その影響力はかなり大きくなるはずです。

リピート率=ブランドロイヤルティと考えるのは危険

気をつけなければいけないのは、ブランドロイヤルティの向上はリピート率の向上を生み出しますが、その逆、リピート率が向上することは、必ずしもブランドロイヤルティの向上とイコールにはならない、ということです。

顧客がリピートするのには、様々な理由があります。例えば日用品などの消費財であれば、会社帰りに立ち寄りやすい店舗でたまたま売っているブランドだから、という理由でしかないかもしれません。

あるいは、定期便で購入している商品に、そこまで満足はしていない(むしろ不満だ)けれども、今更他のブランドに乗り換えるスイッチング・コストを負いたくないために、惰性で続けているだけ(場合によっては解約するというアクションすら面倒なだけ)という可能性もあるでしょう。

自社のブランドロイヤルティを測る指標として、リピート率は相応しくないのです。

ブランドロイヤルティを測る指標、「NPS」

ブランドロイヤルティの指標として世界的にメジャーなのが、「NPS(Net Promoter Score)」です。

NPSはアメリカのグローバルコンサルティングファーム「Bain & Company」が2003年に提唱した指標であり、今では米国の売上トップ500社の35%が採用していると言われています。

コンセプトとしては、「他人にどのぐらいそのブランドを薦めたいか?」をスコアリングするというもので、「どのぐらい」の部分を0~11段階に区切って、顧客自身に採点してもらいます。トップ2段階(9,10)を選んだ顧客の割合から、批判的な顧客(0~6)を選んだ顧客の割合を引いたスコアが高ければ高いほど、その企業はブランドロイヤルティが高いということになります。

「人に積極的に薦めたい」という感情は、対価を払った商品やサービスの品質に対する個人的な満足を超えたところにしか生まれないため、NPSは実施方法がシンプルでありながら、ブランドロイヤルティを測るのにふさわしい指標となっていると言えます。

アフターデジタル時代にブランドロイヤルティを高めるには

ブランドロイヤルティ自体は以前から存在している概念であり、これまでもブランドロイヤルティを高める様々な手法が提唱されています。

例えば、わかりやすいところで言えばポイントプログラムだったり、商品やキャンペーンのシリーズ化、会員限定イベント、etc——しかし、アフターデジタルと呼ばれる時代に差し掛かっている今、顧客がブランド体験に求める期待値は、かつてと比べてかなり高くなっていると言えます。

それはつまり、ブランドロイヤルティを引き上げるハードルも高まっており、今まで提唱されてきた手法を今まで通りに実施しただけでは効果が薄いことを意味しています。

例えば、ポイントプログラムを導入していたとしても、ポイントが販売チャネルごとに分断されていては今時の顧客はロイヤルティを高めるどころか、不満を抱えてしまうでしょう。この現象は何も特別な施策に限ったことではありません。

クリック&コレクトに対応していない、ECサイトから店舗在庫を確認できない、など、将来的には考えているけれど現状まだ整備できていないオムニチャネルサービスがあるとしましょう。仮に他の企業がそれをすでにサービスとして提供しており、顧客がそれを体験していたら(それが例え競合ではなく異業種でも)、顧客にとってはその利便性がすでに当たり前のものとして刷り込まれているために、同等のサービスを提供できないことが、企業の事情などお構い無しに、ロイヤルティ低下に直結するリスクさえあるのです。

それでは、これからの時代において、ブランドロイヤルティを引き上げるために企業が取り組むべきことは何でしょうか?以下に、いくつかのキーワードを提示します。

ブランド体験のパーソナライゼーション

これこそが、かつては実現できなかった、アフターデジタル的ブランドロイヤルティ向上施策の一つと言えます。

アリババの創業者ジャック・マーが、これからの時代は同じ商品を大量に作ることより、たくさんの違う種類の商品を大量に生み出すことの方が大事になると語っているように、パーソナライズされた体験は、顧客を熱狂させる要素となり得るでしょう。

ここには、商品やサービスそのものだけでなく、顧客の趣味嗜好を把握した上で、各チャネルにおける対応をパーソナライズすることも含まれます。IoTやAIをフル活用し、顧客とのあらゆる接点から集めたデータに基づいて、顧客一人一人のインサイトに直接訴えかけるブランド体験をチャネルごとに用意できれば、ロイヤルティは飛躍的に引き上がるはずです。

最近、百貨店各社が体験をパーソナライズするコンシェルジュサービスに力を入れ始めて成功しているのも、この流れを象徴していると言えます。

実店舗だけでなく、表示させるコンテンツをパーソナライズしたり、顧客ごとに宅配方法と時間を自動的に最適化するというような世界観を構築できると、ECサイトにおいてもブランドロイヤルティを引き上げることができるでしょう。

世界観/ストーリー

ブランドが持つ世界観やストーリーは、昔から普遍的にブランドロイヤルティを高めるための重要な要素です。しかし、商品やサービスの品質で差別化することが難しくなった現在では、その重要度はさらに増しています。

品質が担保されていることは大前提として、現代の顧客が欲しているのは、そのブランドと関わることで「自己表現」ができることです。品質やスペックが同じならば、それを使っている自分がよりクールだと感じられる、社会に貢献できていると思える、それを使っていることによって周囲から「なりたい自分」として見てもらえる——そのような「自己表現」が成立すると顧客に感じてもらえる状態は、最もロイヤルティが高い状態と言えるでしょう。

だからこそ、ブランドには世界観やストーリーが必要であり、あらゆるチャネルと手法を駆使して、それをターゲットとする顧客に浴びせ続ける必要があるのです。

ブランドロイヤルティの本質

ブランドロイヤルティの高め方に王道というものはありません。そもそも、小手先の手法でなんとかしようと考えるのは間違いです。

店舗の作り、店舗スタッフの接客、ECサイトのデザイン、カスタマーサポートの対応、広告やSNSで発信するあらゆるコンテンツ——顧客を取り囲む全ての接点がブランドロイヤルティに直結しています。

上辺のデザインや世界観だけが良くても、購買体験が悪ければロイヤルティは上がりませんし、購買体験が素晴らしくても、そもそも世界観が顧客にとって魅力的でなければ、熱狂的なファンにはなり得ません。

企業は、それら全てに目配せをして顧客の期待値を越え続ける努力が必要なのです。

さいごに

ちなみに、どんな施策を用意するにせよ、ブランドロイヤルティを引き上げるにあたり、大前提として「あらゆるチャネルの顧客情報を1DBで一元管理できる状態が構築されている」必要があります。

そういう意味で、アフターデジタル時代のブランドロイヤルティ向上のための施策を実行するには、相応のイニシャルコストがかかることは念頭に置いておくべきでしょう。

そして土台の構築には時間もかかります。コストを気にして後回しにすると、どんどん置いて行かれます。上でも述べたように、これはもはや競合他社だけを気にすればいいものではありません。業界のスタンダードが変わる波に乗っていなければ、手遅れになってしまいます。優先度を高めて今、取り組むべきことなのです。

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