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物流システムから小売を変えていく、新しい動き


コロナ禍でECサイトの利用者が急増した結果、物流コストに悩む企業が増えました。さらに人材不足や業務過多といった課題まで増え、企業は対応を迫られています。



物流業界では、単に物資を運搬する物流から、効率化して物流コストを抑えたり経営課題を解決したりするロジスティクスという仕組みがあります。米国で生まれた技術の1つで、日本では1980年代ごろから普及し始めています。小売業の変革に必要な新しい物流システムの考え方について解説します。



物流課題は経営課題に繋がる



経営課題といえば、経営戦略や商材、接客といった部分に焦点が当てられがちです。しかしコロナ禍でECサイトの利用者が急増した今、物流も大きな経営課題となっています。



「物流」から「ロジスティクス」へ



商材を保管したり輸送したりする物流は、業種に関わらず重要な工程です。しかし物流課題を解決するためには、物資の運搬を単なる物流と捉えるのではなく生産工程も含め「ロジスティクス」として包括的に管理することが必要になってきます。



物流とは、供給する側から需要する側へ移動させる過程の事を指します。これまで物流課題の解決のために考えられていたことといえば、輸送、保管、荷役、包装、流通加工といった主要な物流機能をいかに効率的に行うかがポイントとなっていました。



企業活動の中で「物流」だけを効率化するのではなく、ロジスティクスによって物流の各機能を高度化することで需要と供給の適正化を図り、顧客満足度の向上を目指すものです。ロジスティクスは物流をもっと包括的に捉え、社会的課題に取り組んだり経営上の管理をしたりする上でも重要な仕組みです。



ECサイトの需要が急激に増え、配達コストや人材不足に悩む企業は少なくありません。そんな経営課題を解決する1つの方法として、ロジスティクスがあるのです



ロジスティクスによって物流の効率化を図る



ロジスティクスをうまく機能させるためには、売れている商品を把握すること、在庫をコントロールすること、効率的な物流システムの構築という3つの要素が必要です。顧客のニーズを把握して柔軟に対応することで、生産のムダを省いたり物流にかかるコストを削減したりといった経営課題を実現させます。



もちろん経営課題の1つである社会的責任として、安全管理や廃棄物の削減も実現しなくてはいけません。



今では自社だけではなく複数の関連企業が協力し合って、生産から調達・販売までを担うケースが増えてきました。この他企業で協力し合うことをサプライチェーンマネジメント(SCM)といい、国内でも導入が進んでいます。



売れ筋の把握や在庫コントロール、物流システムの効率化といったロジスティクスは、1つの企業内で物流システムの課題を解決する仕組みの1つです。もちろん単純な物流と比べるとロジスティクスも効率化につながりますが、さらに大きく効率化したり利益を上げたりするためには、自社の改革だけでは足りません。



サプライチェーンマネジメントは、自社だけが最適化して利益を上げるだけではなく、取引先や関連企業の負担も考慮した考え方です。サプライチェーンマネジメントを行うことによって、仕入先や販売先といった関係先全体が効率化されます。



例えばアパレル販売を行うA社が、パーカーのニーズが下がっていることを把握したとしましょう。するとA社はパーカーの縫製を行うB社に対し、パーカーの発注数を大幅に減らします。



その結果、B社には大量のパーカー在庫が残ってしまい、ムダとなってしまうのです。サプライチェーンマネジメントなら、A社に限らずB社もパーカーのニーズが下がっていることを把握できるので、事前に縫製数自体を減らすことができます。その結果ムダがなくなり、本当の意味で適正化されるのです。



つまりサプライチェーンマネジメントは、企業間の意思疎通が重要となります。より連携した動きを実現するためには、統合できるシステムを導入するなど、ITを介したコミュニケーションが不可欠でしょう。







新しい物流アイデアで効率化できるか



物流をもっと効率的にするために、国内外ではITを駆使した様々なアイデアが生み出されています。すでに実証実験に進んでいるものもあり、進化の兆しを見せています。国内外の事例を元に、最新の物流アイデアをご紹介します。



自動配送ロボットの実証実験が始まる



国内でも、自動配送ロボット(AMR)を使った配送システムが生まれています。Yper株式会社は、広島県のアクセラレーションプログラム「D-EGGS PROJECT」において自動配送ロボットを使うプロジェクトを提案し、最終審査により採択されました。同プロジェクトは新事業として「中山間地域での新たなラストワンマイルインフラの構築」を目的としており、2021年9月に実証実験がスタートします。



参考:Yperの自動配送ロボット事業、ひろしまサンドボックス「D-EGGS PROJECT」で採択、実証実験へ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000031698.html



実証実験では、Yper社の自動配送ロボットとシステムをつないで「置き配」も行います。宅配物には生鮮食品も含まれ、中山間地域での自動配送ロボット運用で収益化の構築にも挑戦する見通しです。



Yper社といえば自動配送業に取り組んでおり、2021年5月には置き配にフォーカスしたことでも知られています。例えば置き配バッグとスマートフォンアプリを連動させた「OKIPPA」という物流システムを運用するのも同社です。



住人が不在でも配達を完了できる置き配は、人への受け渡しを必要としない自動配送ロボットと相性がいいでしょう。物流において特に人手不足である中山間地域では、多大な貢献が期待されています。



上記のように、国内のラストワンマイル配送でもロボットの導入が進んでいます。しかしラストワンマイルはまだまだ人手が必要と言われており、国内の物流システムにおける課題の1つです。



ECで配送需要が伸びる中、物流業界では人手不足が深刻化しています。自動配送ロボットのような新しい物流アイデアによって、システムが大きく前進するかもしれません。



物流企業が提案する店舗受け取りシステム



ファッションの小売りとして有名な丸井グループでも、新しい配送システムが生まれています。丸井グループの1社であり物流を手掛けるムービング社は、EC購入商品をマルイ店舗で受け取れる店舗受取システムを構築しました。



旧システムではドライバーと店舗スタッフが別システムを使っていました。しかし新しいシステムを導入したことで双方のシステムを統一。全体が一目で把握できるようになり、最適化と効率化を実現しています。



ECサイト利用者の急増で業務過多や人手不足といった「宅配クライシス」が起きています。ムービング社の構築した店舗受取システムは、宅配クライシスの一助となるでしょう。



参考:株式会社ムービング 様 導入事例:様々なECサイトと連携可能な新規ビジネスを実現する新物流プラットフォームを開発



ロボティクスサービスでDX推進



物流ロボティクスサービス RAAS (Robotics
as a Service)を展開するプラスオートメーション株式会社は、澁澤倉庫株式会社と共同で業務フローを構築して、ソーティングロボット「t-Short」を澁澤倉庫に導入しました。



DXを推進したことにより、アパレル商品の出荷業務以外にも、シーズン入替時の返品等への一時的な大量仕分け作業にも圧倒的な効果を発揮しています。



またプラスオートメーション株式会社のRaaSは、月額定額制のサブスクリプション型という点が大きな特徴です。初期費用0円で導入や維持管理までサービスを提供しており、導入も短時間で終わるので依頼企業の負担があまり大きくありません。



参考: 物流ロボティクスサービス「RaaS」を活用し澁澤倉庫と DX を加速 https://plus-automation.com/doc/20210510PR.pdf



要望があれば一時的にロボット台数やスペースの増減にも対応しており、柔軟性と機動力の高さも魅力です。最新テクノロジーと現場力を融合することで、より柔軟かつ機動的な物流対応を目指しています。



海外でもロジスティクスは進んでいます。中国ECサイト大手のJDドットコム(京東集団)の系列企業であるJDロジスティクスは、2021年5月に上場することを発表しました。



スマート物流システム開発を手掛ける同社は、自動運転技術を活用した配送車両やロボット開発で知られています。上場前にすでに400億ドル(約4兆3,500億円)に到達するだろうと言われており、自動配送ロボット事業の注目の高さが伺えます。



ちなみにJDロジスティクスは、2020年2月に中国武漢にて、自動運転車による医薬品配送を行ってことでも有名です。非接触が求められるコロナ禍において、感染拡大防止の有効策として世界から注目を浴びました。



物流業界でもエコシステムの構築が進む



生態系を意味する「エコシステム」という言葉は、今ではビジネスでも多用されています。一部の地域や空間で生きている動植物同士がお互いに依存して生命を維持する状態が、まさにビジネスで共存共栄する姿と一致するためです。



サプライチェーンマネジメントがあるように、物流業界でもエコシステムの構築が進んでいます。



エコシステム(協業)で人手不足などの課題解消を目指す



物流業界での人手不足は深刻な状態です。そこでエコシステムとして他企業が協業して、課題解決を目指しています。



さまざまな企業がエコシステムを構築していますが、一例としてコカ・コーラ社と日産自動車の協業があります。2008年には、2社がエコシステムによってキャンペーンを開催したことがありました。コカ・コーラのクイズやゲームでポイントを貯め、日産の新型車に応募するというキャンペーンは顧客に受け、70万人参加の大成功キャンペーンとなったのです。



参照:ITにおけるエコシステムとは?成功事例から読み解くこれからの協業スタイル



4PLがもたらす変革の可能性



物流では荷主に物流改革を提案する3PL(third party logistics)があります。そして今では、さらに進化した4PLを行う企業が増えてきました。



4PLとは3PLのノウハウをサービス化して他社プロデュースを行うことで、forth Party Logisticsの略です。ロジスティクス戦略を企画したり、コンサルティングしたりといったソリューションを行います。



4PLは単に物流業務を請け負うことではありません。依頼企業の経営方針に基づいた戦略設計から関わることで、その企業が抱える課題解決に貢献します。



ロジスティクスやサプライチェーンマネジメントでノウハウを身につけた企業は、4PLとして新たなソリューションを提供する事例が増えていくでしょう。まさに共存共栄、エコシステムとして物流が発達していくのです。