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GAFAをとらえるデジタル税:日本はどう動くべきか

デジタル税は、知的財産および、電子書籍やネットで配信される動画・音楽データなどに代表される無形資産から生まれる利益に対して検討されている新しい税制です。 2019年から本格的な導入に向けた動きが各国でみられました。そのほぼすべてが、GAFAと称される世界的な巨大IT企業を対象に整備されています。
GAFAは既存の税制の抜け穴をつくかたちで課税を逃れているという指摘が長らくあり、その額は24兆円にも達していると目されています。
この記事では、デジタル税という概念が登場した背景とそのメリット、デジタル課税を取り巻く各国の状況について解説します。

目次:

デジタル税はGAFAに課税するための制度

GAFAは、「Google、Apple、Facebook、Amazon」という世界的な巨大IT企業の総称です。これらの企業はタックスヘイブン(租税回避地)に利益を留保し、莫大な売上とは切り離せないはずの税負担を避けています。
OECD(経済協力開発機構)は、GAFAは1,000億~2,400億ドル(10兆~24兆円)相当の税負担を回避しているという計算を発表しています。この数字は、世界の法人税収4〜10%に相当するため、OECDやEUはこの税を徴収するために「デジタル税」整備に動いたのです。

なぜGAFAは税回避が可能なのか

納税は義務であり、通常は売上に対してしかるべき税を納めない企業は処罰の対象になります。では、一体なぜGAFAのような企業は大規模な税回避をしながらも罰せられないのでしょうか?
これには2つの理由があります。

無形資産の増加
無形資産は、電子書籍やネットで配信される動画・音楽データなどインターネットを介してダウンロード、ストリーミングなどで消費できるデータをさします。
こうしたデータは、一度システムを整えれば、世界中の人がネットを通じて消費者になることができます。CDやDVDといった「現物」を購入しなくても音楽や動画を楽しめるこうしたサービスは、国境を超えて提供可能なため、物流に留意する必要がありません。契約1つで、子会社やタックスヘイブンへの移転が可能になるのです。 こうなると、消費国は法人税を課す根拠を失うこととなり、GAFAのような企業は税回避が容易となります。

恒久的施設の消滅
デジタル経済発達によって、恒久施設(PE)の必要がなくなったこともGAFAのような税回避を容易にしています。
PEは、大規模ビジネスを展開する時に消費国に設置する必要がある物理的な施設一般のことです。工場や支店の設置がそれにあたります。 例えば、日本で大規模なビジネスを展開する場合は、企業の拠点がEU内にあったとしても、円滑に業務を展開するためには日本に支店やサポートセンターなどを設置する必要があるでしょう。

従来は、この支店や工場が法人税を課税する時の根拠となっていました。
しかしデジタルコンテンツをはじめとする無形資産を提供する場合は、このようなPEが事実上必要ないケースがほとんどです。
PEの不在は法人税課税の根拠の消失でもあり、ほとんどの国でGAFAのような大企業は税回避が可能になっています。
デジタル税導入においては、このPEの定義を再解釈したり概念の拡大を実施する案も出されています。

経済のデジタル化:G20がリーダーとなりデジタル税整備の動きが

こうした多国籍IT企業の税回避は、ビジネス競争にも関係しています。
つまり、GAFAのように税負担を減らしている企業は消費先の自国企業よりも優位な条件で競合していることになるため、対等な競争条件を保つことができなくなっているということです。

実際に、自国でビジネスを展開する企業が23.2%の税負担を担っているのに対して、デジタルビジネス企業は9.5%の負担しか担っていないと欧州委員会は報告しています。巨大な世界的企業を相手に不利な条件で競合していれば、そのうち世界の自国企業(主にBtoC)はすべて敗北してしまうかもしれません。
それを防ぎ、GAFAをはじめとする大企業に各国の自国企業が押しつぶされないためには、デジタル税のような新たな税制度を定める必要がありました。
そのため、G20(20カ国地域首脳会議)が先頭をきる形で、デジタル税の制度づくりが進められてきたのです。
国際的な租税回避に対する具体案はOECD(経済協力開発機構)に委ねられました。

二重課税や赤字課税を避けるためにはG20のリードが必要

OECD(経済協力開発機構)は、フランスやイギリスが制度施行の前に独自のデジタル税を課すことに懸念を示しています。
それは、各国がバラバラに課税制度を作ることで二重課税や赤字課税といった事態が起こりやすくなるため。多国籍企業に対しては各国が足並みをそろえて対応に当たるべきだというのが、G20およびOECDの考え方です。 しかし、米国がデジタル税に強い反発を示すなど制度づくりは難航しており、2020年中に予定どおり最終報告書がまとめられるかどうかは未知数といえます。

OECDの考えるデジタル法人課税とは

OECDが2019年1月に発表したデジタル法人課税の考え方は、「デジタル・プラットフォーマーのサービスが利用された国の売上高について課税される」というものです。
これは一見合理的にみえますが、インターネットにおける広告収入の大きさを考慮すると、万全とはいいがたい側面があります。

Googleは、無料の検索システムを全世界に提供していますが、ユーザーの検索履歴や閲覧履歴をターゲティング広告に利用しています。そのため、提供しているサービスよりもむしろ広告収入の方がはるかに多額になります。Googleだけでなく、デジタルのビジネスモデルにおいてはサービスそのものを無料・安価で提供し、得たデータを活用して広告収入を得るものが多くありますが、OECDが発表した考え方ではこうした広告収入に対しては課税をすることができません。

ゆえに、この考え方だけでは世界各国が望むような適正な課税はおこなわれないことになり、もう一歩踏み込んだ議論が必要になります。

企業の税過少申告をどのように把握すべきかも課題

国際社会がGAFAをはじめとする巨大IT企業の税について問題視するのは、この節税が意図的であるからです。
世界的なIT企業は、その多くがタックスヘイブンを利用して節税し、意図的に納税を回避していると考えられており、巨大企業だけが莫大な利益を取得し続ける状況が続いています。つまりこのような多国籍企業には、その利益に相当する納税をおこなうつもりはないため、何らかの国際ルールを締結しなければ状況を是正することはできません。
そのためルールづくりとともに、どのように企業の過少申告を把握し管理していくかというシステム整備も課題として挙げられています。

各国のデジタル税をめぐる状況は

G20、OECD(経済協力開発機構)によるプロジェクトはBEPS(税源侵食・利益移転)プロジェクトと命名され、129カ国の国と地域が2020年の最終報告書作成に向けて動いています。
一方で、この最終報告書や国際ルールの決定を待たずに、独自のデジタル税を導入している国もあります。

フランスのデジタル税事情

フランスでは「デジタル・サービスへの課税創設」法案が可決され、2019年1月からEUに先んじてデジタル税を単独導入するかたちになりました。
課税対象は世界売上が7億5,000万ユーロ以上でなおかつフランス国内の年間売上が2,500万ユーロ以上の企業です。デジタル税施行後は、GAFAのような世界的なIT大手企業のネット広告および個人情報の売買に対して、フランス国内の年間売上の3%が課税されます。

もっとも、フランスはOECDで何らかの税制度がまとまれば、自国独自のデジタル税を即時廃止し、払いすぎた分は差額を徴収した企業に返金することを約束しています。

イギリスのデジタル税事情

イギリスは2020年4月からデジタル税を導入する予定です。
課税対象は、租税条約を結んでいない地域や国、つまりタックスヘイブンと呼ばれる租税回避地に拠点を置く企業です。
イギリス国内の売上に関連づけられる無形資産の利用対価として、2%を課税するとしています。なお、無形資産には音楽や動画といったデータだけでなく、アルゴリズムも含まれます。
ただし、デジタル税に関連する事項で何らかの国際合意に至った際は適用せず、OECDの決定や方針に沿う旨を公表しています。

イタリアのデジタル税事情

イタリアは2020年1月から巨大IT企業を対象にデジタル税を導入しています。
対象となるのは、総収益7億5千万ユーロ以上、イタリア国内での収益550万ユーロ以上をあげている企業で、デジタル収益の3%を課税します。
これにより、イタリアは7億ユーロ(日本円換算約850億円)もの増収が見込まれると発表しています。
なお、これはフランスに追随する措置で、フランスに反発している米国からは追加関税などを報復として課される可能性も懸念されています。

インドのデジタル税事情

インドは、BEPS(税源侵食・利益移転)において、途上国でも執行できる簡素な方式による利益配分が必要と主張しています。
また、ネット企業への課税を強化する姿勢をみせており、2020年4月からイギリスと同様にデジタル税を導入するとしています。

米国は各国のデジタル課税を非難

デジタル税の制度整備や導入に消極的な姿勢をみせているのが、米国と中国です。 米国は、多くの国がデジタル税のターゲットと目しているGAFAやUber、Airbnbが拠点としている国であり、デジタル税が「米国を狙い撃ちするもの」と非難しています。トランプ大統領はTwitter上で、米国のテクノロジー企業に課税できるのは企業のホームカントリーである米国であるべきとするコメントを投稿しました。また、フランスのワインやチーズ、ハンドバッグといった商品に最大100%の関税をかける方針を検討していることもあかしています。

日本のデジタル税事情と影響

日本には、GAFAのようなデジタルコンテンツを扱う世界的企業はまだないといってよく、デジタル税の制度が施行されれば「消費国」として税収はプラスになると考えられています。
その一方で、まだデジタル税の対象基準や素案が明確でないことから、日本企業の一部が徴収対象となることも懸念する声が出ています。 2019年10月にG20が提案した枠組み案では、「売上高に占める営業利益立10%」以下を通常利益、それ以上を超過利益として、超過利益の一部を企業の「ブランド」という無形資産から発生したとして消費国へ配分するという方法が提示されました。枠組み案では、この方法の対象となる企業や規模が明確に示されていないため、日本の製薬企業も徴収を受ける可能性があるとされています。

なお日本は2019年のG20で初の議長国を務めましたが、デジタル税については「国民的議論として公開の場で検討を始める必要がある」と述べるにとどまっています。
また、デジタル税を課税する際には一定割合を地方へ配分する仕組みを導入すべきという声もありますが、フランスやイギリスのようにその考えに基づいて具体的な独自課税を施行するまでには至っていません。
OECD(経済協力開発機構)はデジタル税の課税案を2020年末までに最終合意することを目標にしていますが、日本がどのような方針を発信するのかは、今後の発表を待ちたいところです。

さいごに

インターネットが発達し、世界中のものがクリック一つで手に入るようになったり、世界中で自由にデジタルコンテンツを楽しめたりする状況は、無形資産が莫大な利益を生み出しているひとつの証左といってよいでしょう。
世界が協調して何らかの制度を作らなければ、自国の企業が軒並み衰退してしまうと危機感を覚える国も少なくありません。
世界が分断され、独立国家的な政策をとる国が多くなってはいますが、デジタル税に関しては各国が足並みをそろえて協調的な行動をとることが求められるでしょう。

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