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リモートワーク「だからこそ」売れるモノとは?2020年春の消費動向から読み解く


新型コロナウイルスが、人間のあらゆる生活行動に変化をもたらしていることに異論を挟む人はいないでしょう。



中でも、ビジネスパーソンにとって影響が大きかったのが、望むと望まざるとに拘らず、多くの人が半ば強制的に「リモートワーク」という働き方を実践することになった、という部分です。



リモートワークは、単に働き方そのもののみの変化に止まらず、それに付随して、それぞれの生活パターンや購買行動にまで大きな影響を与えています。



本稿では、「仮にリモートワークがこのまま広く普及することになったら」、という前提に立ち、新型コロナウイルス災禍における消費行動に基づいて、その状況下において「売れるモノ」とは何か、ということについて掘り下げていきます。






日本でリモートワークは定着するのか?



米国では、FacebookやGoogle社が、今回の新型コロナウイルス災禍を受けて、本年いっぱいリモートワークを許可する旨を発表していますが、果たして日本でリモートワークは定着するのでしょうか?



BIGLOBEが先日公表した調査によると、日本における消費者の意識として、約8割が在宅勤務が「定着する(あるいは一部で定着する)」と感じているようです。







これは、多くの人にとって、「通勤」というビフォーコロナにおける文化が不要だったと感じられていることの現れであると言えます。



そして、多くの社会人にとって、一日の大半を家の外で過ごす要因となっていた行動がなくなる(あるいは極端に少なくなる)世界では、それに伴って消費行動にも大きな変化が現れます。いわゆる「巣ごもり消費」です。



「巣ごもり消費」の実態4つのポイント



現在、多くの決済企業やデータ分析サービス企業が、巣ごもり消費に関するレポートを公表しています。それらの数字を俯瞰すると、以下のような傾向が見て取れます。



生活必需品だけでないフェーズへ



新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、様々な社会活動の自粛ムードが高まりつつあった3月前半に関して言えば、ほとんどの企業が業績を落としている中で、生活必需品を扱うスーパーやホームセンターの業績は上がっていました。まだ勝手がわからない自宅待機を目の前にして、食料品などのストックに走る消費者の姿が浮かび上がってきます。



一時期のトイレットペーパー不足騒動など、まだ記憶に新しいところでしょう。それが、4月に入ると自粛期間の長期化に伴って、玩具や娯楽用品、ゲーム関連など、購買対象が生活必需品以外にも広がりつつあります。



出典:三井住友カード株式会社
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000032321.html




アパレルECが好調



「巣ごもり消費」の購買行動としては当然ECサイトが中心になってくるのですが、中でもアパレル系のECはその中心です。アパレル大手のユナイテッドアローズを例に取ると、今年3月におけるECでの売上高は、前年比123%と、絶好調とも言える数字になっています。この傾向は、多くのアパレル企業で同様であり、今後も継続するものと思われます。ただし留意しなければならないのは、各企業とも、実店舗での販売は大幅に減少しているという点です。これが何を意味するかと言えば、オンラインチャネルの整備ができている、いない(オンラインチャネルでより良い購買体験を提供できているかどうか、と言い換えてもいいでしょう)で、業績に明暗がくっきりと分かれる、ということです。



高齢者のEC利用率増加



新型コロナウイルスは、高齢者の重症化リスクが高いとされています。そのような状況下において、これまで実店舗のみしか利用してこなかったであろう60代70代のEC利用率が大きく増加している傾向が見られます。以下の図では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各年代で「ECモール・通販」の利用シェア率の増加が確認できますが、中でも60代70代(特に男性)の増加幅は大きく、スーパーの利用率増加を上回っています。



出典:三井住友カード株式会社
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000032321.html




これは、もちろん自粛要請に多くの高齢者が応じ、仕方なくECを利用し始めたという側面、そして、感染リスクを取り除くために自ら積極的に行動を変えた、という側面の両方が考えられます。そして、いずれの場合も、ECの利便性に気づいた一定の層は、収束後もそのままECを利用し続けることになるでしょう。



EC利用時間の前倒し



オンライン試着プラットフォームを提供している株式会社Virtusizeの調査によると、新型コロナウイルス感染が拡大する以前は、ECサイトの購買数が増加し始めるのは21時ごろからとなっていたのに対し、巣ごもり消費が顕在化した現在では、購買数増加が始まるのは19時ごろに前倒しになっています。



出典:株式会社Virtusize
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000023882.html




これまでであれば、業務終了後、帰宅してからECサイトを利用していたのに対し、現在ではリモートワークでの業務終了後、速やかにECサイトを利用し始める消費者が増えたことが伺えます。



巣ごもり消費者7タイプ



このような全体としての傾向に対し、それぞれの消費者が実際にどのような購買行動を起こすかについては、個人の思考や嗜好によるところがあるのは言うまでもありませんが、広告会社のNKBは、それらを以下の7つのタイプにカテゴライズしています。



消費者タイプ解説
おうち時間充実型自宅での時間を豊かで充実したものにしたいというニーズ
エクササイズでストレス発散型運動不足・ストレス発散のため、体を動かしたいというニーズ
趣味に没頭エンジョイ型インドア系の趣味・コンテンツを楽しむ意識
趣味&実益を兼ねた手作り型時間・手間をかけた実益を兼ねた趣味に興じている
自己投資・スキルアップ型余暇時間に自己研鑽に励んでいる
自分見つめ直し型断捨離など自分の生活の見直し・整理している
癒し・リラックス型不穏な日々の中で、癒し・リラックスへの希求
出典:株式会社NKB
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000023882.html




こちらも参考にしながら自社の商品や顧客に照らし合わせると、消費者の需要をイメージしやすくなるかもしれません。



リモートワーク普及後も需要が見込まれる商品カテゴリー



ここまでの状況を踏まえて、仮にリモートワークが定着した場合、継続的に需要が見込まれる商品カテゴリーについて、独自に考察してみました。



アパレル



スーツやジャケットなどを着用する必要はないものの、オンラインミーティングなど、上半身を中心に人に見られる環境はあります。したがって、「伸縮性があり、肌触りがいい」など、機能面がこれまで以上に重視されつつ、デザイン的にも満足がいく、もっと言うと、それを着ることが自己表現に繋がるようなD2Cブランドが手がける部屋着などの需要が増えるでしょう。



PC周辺機器



リモートワークの実践にあたり、実は自宅での環境が整備されていない、という消費者はまだ相当数存在するものと思われます。業務で使用しているPCが会社支給で未だにオフィス外への持ち出しが禁止されている場合、PCを購入する必要がありますし、オンラインミーティング環境をより快適にするために、インカムマイクやポータブルスピーカーなどを揃えたいと考える消費者もいるかもしれません。



あるいは、これまで寝るためだけに帰っていた自宅にはPCを操作するためのデスクが必要だったり、長時間座っても負担が少ない椅子を買いたいと考える人もいるでしょう。



インテリア



自宅で過ごす時間が増えれば、より快適に過ごせる空間にしたいと考える人は多いでしょう。普段インテリアに無頓着な人にとっても、オンラインミーティングで自宅が映る可能性がある場合(かつ、ツールの背景合成は使いたくない場合)、自宅を「外向き」にする必要性に思い至る場合もあります。



エクササイズ用品



バランスボールやストレッチポールなど、自宅で運動不足を解消するためのエクササイズ用品は、これまで以上に需要が増えるでしょう。また、オンラインで受講できるヨガやピラティスなど身体を動かすレッスンの受講需要も大きく高まるはずです。その際に重要なのは、これまでリアルな場でこそ保てていた「お金を出して参加する価値」をどのように出していけるかでしょう。



自炊用品



在宅勤務が終了した後、引き続き自宅にこもる場合、食事はウーバーイーツなどでデリバリーを頼む人もいるかもしれませんが、毎日のことになるので、コスパを考えるとどうしても自炊が必要になってきます。これまで外食が中心だった若年層も含めて、これを機に自炊用品を揃えようと言う消費者は一定数存在するでしょう。また、上記項目でいう「趣味&実益を兼ねた実益型」の巣ごもり消費者となった場合は、やがて道具に対するこだわりも生まれ、継続的に道具をアップデートしていく可能性もあると言えます。



オンライン書籍



自粛期間中、SNSでは「#ブックカバーチャレンジ」というリレー投稿がトレンドになっています。この事象が示す通り、自宅で静かに過ごすまとまった時間が増えるため、Netflixなどの動画だけでなく、読書への需要も高まっていると考えられます。



衛生用品



今回の新型コロナウイルス災禍の中で、多くの消費者が、「人はどのようにウイルスに感染するのか」、「正しい手洗い方法」など、感染リスクを低減させるリテラシーを身につけました。その意識は収束後も保ち続けられ、自宅で使用するアルコール消毒剤、マスク等の衛生用品の需要は、継続的に高水準を保ち続けるでしょう。







「ニューノーマル」を新たなビジネスチャンスと捉える



この記事を執筆中の5月13日現在、まだ緊急事態宣言は解除されておらず、今後、人類が新型コロナウイルスとどのように付き合っていくのか、まだはっきりとした答えは誰も出せていません。加えて、仮に今回の新型コロナウイルス自体は収束を迎えるかもしれませんが、地球上にウイルスがある限り、またいつ別のものが発生するか分からず、そのことが、人々の生活に不可逆的な変化を起こす、つまり、今の状態が非常時だけのものではなく、平常時の生活そのものになる可能性もあります(=ニューノーマル、新常態)。



本稿でメインに取り上げたリモートワークはそのほんの一部分です。リモートワークの実現には企業ごとに様々なハードルが存在するものですし、実際に普及するかどうかは、各企業の経営判断によるところが多いでしょう。



しかしながら、新型コロナウイルス収束後、何が不可逆な変化で、何が元の姿に戻っていくのか、そしてその中で、消費者の需要はどう変化するのか。それらを迅速に見極め行動に移すことが求められています。



ポジティブに考えれば、今回の災禍は、社会における様々な課題をあぶりだした(ハンコ文化、リモートワークを含め、インフラの未整備、物流のリソース問題、etc)とも言えますので、それら国民共通の“ペインポイント”と自社の事業をうまく結びつけることが、新しいビジネスを生むキッカケにもなり得るのではないでしょうか。