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浸透するキャッシュレス決済 ECでの利用にも変化


2020年は、新型コロナウイルスの影響も手伝って、さまざまな形のキャッシュレス決済普及が加速した年となりました。



以前から浸透していたクレジットカードに加え、交通系電子マネー、そしてQRコード決済。対面決済は言うに及ばず、ECでの決済や、異なるサービス間でのポイントの互換性など、その利用可能範囲は広がり続けています。



本稿では、2021年1月時点におけるキャッシュレス決済の現在地を見ていきます。



【目次】





キャッシュレス決済浸透はECの決済事情にも影響



これまでECサイトにおける決済手段としては、純粋にプラットフォーム上で決済を完結させることができるクレジットカード、宅配業者が商品と引き換えに集金する代金引換、商品に請求書が同梱されており、それを任意のコンビニエンスストアで決済するコンビニ決済などが主流でした。



ECサイトシステム構築を手がける株式会社エルテックスが行った2020年の調査によれば、EC決済方法で今後使いたいものとして、依然としてクレジットカード決済やコンビニ決済の人気が高いものの、次いで新勢力となる「PayPayオンライン」や「R Pay(楽天Pay)」、さらには「Amazonペイ」や「Yahooウォレット」などの名前が挙がっており、近年では新しい決済手段が台頭してきていると言えるでしょう。



特にPayPayオンライン、RPay(楽天Pay)に関しては、ポイントが貯まるなどの特典があることが、消費者にとっての魅力として映っているほか、簡単に使えそうというイメージが、新勢力台頭の原動力になっているようです。



この、EC決済におけるマインドの変化の土台になっているのは、もちろん実店舗での対面決済におけるキャッシュレス決済浸透、とりわけQRコード決済の市場拡大が大きい要因となっています。



矢野経済研究所の調査によれば、国内のQRコード決済市場は引き続き拡大を続け、2024年度には10兆290億円という規模になると予測されています。



PayPayをはじめとするQRコード決済サービス事業者は、比較的規模の小さい個人店なども含めて、加盟店に対する手数料無料化と、ユーザーに対するポイント還元やクーポン配布といった施策で市場を広げていますが、さらには、小売店以外での利用や、それに付随するサービス(例えば飲食店の事前オーダーやタクシーの配車など)を同一プラットフォーム内で完結できる「スーパーアプリ化」を実現することでさらに利便性を高めようという動きも見られており、それが今後のQRコード決済普及を後押しする可能性は高いでしょう。



新勢力キャッシュレス決済の現在地



ここからは、今、国内のキャッシュレス決済市場を牽引している新勢力の現在地を具体的に見ていきたいと思います。



PayPay



上述した通り、PayPayはQRコード決済サービスの最大手として類稀な営業力を活かし、これまでクレジットカード決済手段すら導入してこなかった規模の小さな個人店も含めて加盟店を一気に拡大しました。さらにコロナ禍という、キャッシュレス決済がより注目される要因も相まって成長を加速させており、2021年1月4日時点で、アカウント登録数は3,500万件を突破した模様です。



加えて、利用可能範囲をソフトバンク、ワンモバイルなどのモバイルキャリア、ジャパネット銀行mOne Tap BUYなどの金融、タクシー配車のDiDiなどにまで広げており、それらのサービスをミニアプリとして展開していることも、今後大きな強みとなっていくでしょう。



楽天Pay



かねてより、楽天は「楽天市場」を中心とするグループ全体の巨大経済圏を築くことで事業を拡大してきましたが、それはキャッシュレス決済事業においても同様です。加えて、クレジットカードや銀行、証券、保険など金融業も絡めて着々とその経済圏を広げています。



さらに特筆すべきなのは、交通系ICカードであるSuicaとの連携を実現したことです。特に、楽天ポイントを利用してSuicaチャージを可能にしたことは、楽天経済圏にいるユーザーを囲い込む強力な要因となるでしょう。



LINE Pay



コミュニケーションツールとして月間アクティブユーザーが8,600万人という、他社とは全く異なる強みを礎とするLINE Payは、最大3%というポイント還元率の高さや、公共料金の支払いにポイントを充当できる利便性なども相まって、一部のLINEユーザーからは絶大な指示を受けています。



また、2020年にはZホールディングスとの経営統合という大きなトピックがありました。この統合によってLINE Payのサービスにどのような変化が現れるかは現状不明ですが、Zホールディングス傘下には同じくキャッシュレス決済サービスの最大手PayPayがいるため、どのように二つのサービスが共存していくのかには注目したいところです。



LINE Payは、QR決済サービス提供者が加盟店に発行するQRコードの共通化を行うMoPA(Mobile Payment Alliance)に加盟していますし、LINE PayとPayPay両者の登録者数を合わせると、5,700万人超という規模になるため、いずれサービス自体の統合という話もあり得るかもしれません。



d払い



ユーザー数が3,000万人に迫っているd払いは、利用可能箇所も全国で266万箇所と勢力を広げています。dポイント加盟店も2020年9月末時点で80,000店舗を超え、dポイントクラブ会員基盤も7,800万人と大きな規模となっていますが、d払いによってdポイントが貯まり、それを月々のスマートフォン使用料に充当できるため、はじめやすさも相まって、基本的にはドコモユーザーにとって使いやすい決済サービスとなっています。



しかしながら、2020年にはメルカリおよびメルペイとの業務提携も発表されました。特に若年層に強い顧客基盤を手に入れたことや、メルペイとdポイントのコード連携で利用可能範囲がさらに広がったことで今後のサービス拡充に期待が持てます。







結局、ユーザーが「払いやすい」決済方法が主流に?



ここまで、キャッシュレス決済サービス、とりわけQRコード決済の市場が着実に広がってきている、という状況を見てきました。



しかし一方で、とても興味深いデータもあります。



楽天インサイトが行った「キャッシュレスに関する調査」によると、オンラインショッピングを除いた、日常の買い物や飲食などで消費者が最も利用する決済手段はクレジットカードが41.8%でトップ、という結果が出ています。そして、ここには、QRコード決済やカード型電子マネーという決済手段とは30ポイント前後の圧倒的な差があるのです。



同調査は複数回答可能だったため、単に利用することがある決済手段、としてみると、まだまだ現金がトップに来ることも特徴として挙げられます。



このように、現金、あるいは従来より浸透していたクレジットカードが利用したい決済手段のトップに来る理由としては、やはり「使い慣れている」「管理がしやすい」という側面が浮かび上がってきます。



キャッシュレス決済を利用する理由に着目すると、「ポイントが貯まる、つかる」「スムーズに支払える」というお得感、利便性という部分が見えてきます。



それらを総合して考えると、クレジットカードはその双方のバランスが最も取れている、消費者に判断されていると捉えられます。



上記の視点を踏まえると、今後、非接触によるタッチ決済に対応したクレジットカードが普及する可能性が非常に高いと考えられます。これは、コロナ禍における感染拡大防止の観点からも有効な手段であることも要因として大きいでしょう。



したがって、加盟店にとっての手数料という課題はあるものの、QRコード決済のみならず、タッチ決済への対応も、今後の小売店には必須で求められる時代と言えるのではないでしょうか。