PayPal Here ™一択!?JCB対応で楽になる小売店のクレジット導入
2013年11月1日、ペイパルtmがJCBとの提携を発表しました。
2014年3月を目処に、スマートフォン決済ソリューション「PayPal Heretm」でJCBが利用可能となります。(※1)(※2)
「PayPal Here」:https://www.paypal.jp/here/
JCBは、ペイパルのオンライン決済においては既に利用可能でしたが、今回の合意により「PayPal Here」を用いて、対面決済(リアルでの決済)でも利用が可能となります。「JCB対応」って当たり前じゃないの?と思われる方もいると思いますが、これはそれ以上に意味のあることだと感じています。
今回はカード決済を導入する店舗の立場から、その意味について考えてみたいと思います。
クレジットカードの加盟店契約はどこと結ぶ?
まず、クレジットカードの加盟店契約について整理してみます。クレジットカード事業者の中には、3つの立場があります。(※3)(※4)
・ブランド
VISA、Master、JCB、アメックス(American Express)、ダイナースの5つを「5大国際ブランド」と呼びます。【5大国際ブランド】
・イシュア
実際にカードを発行する事業者のことで、カード発行会社とも呼ばれます。【イシュアの例】
・アクワイアラ
加盟店の獲得や管理を行う事業者です。日本では、イシュアとアクワイアラを同じ会社が行っていることが多いそうです。
店舗がクレジットカードを利用したい場合は、アクワイアラと契約を結び加盟店登録を行います。ただし、1つのアクワイアラと契約を結べば、全てのカードブランドが利用できるというわけではありません。
現場の担当者にとって「契約」作業はかなりの負担
5大国際ブランドの内、「JCB」は少し特殊な存在です。それは、JCBがブランド、イシュア、アクワイアラの3つの役割を全て担っているという点です。JCBはカードブランドとして、ルールの策定、イシュアとして自社でのカード発行、アクワイアラとして、加盟店の開拓業務を行っています。その中でも、アクワイアラとしてのJCBは、「シングルアクワイアリング(※5)」といい、加盟店契約を全て自社(JCBグループ)で行っています。カードの利用者にとっては不正利用があった時の手続き等で、非常に安心できるものです。
このシングルアクワイアリングにより、JCBを利用可能にするためには、その他のブランドとは別に契約が必要となっています。すなわち、5大国際ブランドのクレジットカードを全て店舗で利用可能にするためには、JCBともう1つの最低2つのアクワイアラとの契約が必要となります。
オンラインの決済代行会社のように、一社で全て契約が完了すると考えられている方も多いようですが、現時点ではそうはいきません。実際に現場でも「え、また契約が必要なの?」「なんで別契約なの?」という声をよく耳にしますが、そういう事情があるのです。
現場の担当者にとっては、この「契約」の作業に意外と手間がかかります。加盟店登録の際の審査には企業情報等を提出するわけですが、店舗の内装やスタッフの研修等も考えなければならない中で、同様の作業を2回行わなければならないというのは、担当者にとっては悩ましい課題です。大企業の場合は尚更のようです。
JCB対応によりペイパルのメリットがより栄える
今回のJCBとの提携により、ペイパルは国内で利用される主要なブランドに全て対応できることになります。PayPalの最大の売りは、カード会社との個別の契約が不要でスムーズに導入できるところでしょう。アカウントを登録することで、サービスの利用が可能となるというのは、加盟店にとっては、大変嬉しいことです。
これまではJCBカードが使えないということで、導入に踏み切れない店舗もあったかと思いますが、今後この心配は不要です。
ペイパルを導入するだけで、全てのクレジットカードに対応可能となれば、新規に出店する店舗にとって、導入を決定する上で、十分すぎるメリットだと言えます。
まとめ
以上のように、一見当然のように感じるPayPal HereのJCB対応ですが、小売店の決済の環境が整ってきたという意味で、とても意味のあることだと思います。ペイパルだけではありません。PayPal Hereのプレスリリースの約1ヶ月前に、楽天スマートペイもJCBとの提携を発表(※6)し、11月6日から、加盟店の申込受付けを開始(※7)しています。
このように、同様のサービス間でも抜きつ抜かれつの形で、サービスのブラッシュアップが進んでいます。今後、例えば中国人の観光客の利用の多い「銀聯」に対応することもあり得るでしょう。
スマート決済サービスはセキュリティ面等、まだ小売店が導入する際の不安はあるように見受けられますが、利便性という観点からみると、小売店が選択する理由は日々増加しているように感じます。
今後も動向に注目したいところです。
この記事を書いた人
大工 峻平
エスキュービズム・テクノロジー ソリューション事業部開発部にて、タブレットPOSシステム導入を担当。タブレットPOS、Handyシステムの導入営業からはじまり、納品・教育・保守まで幅広い業務領域に携わっています。