カスタマーサポートはEC運用の重要チャネル。ブランドイメージ向上にも寄与
EC運用は今、他社と自社との差別化を図る必要に迫られています。
他社より抜きん出るECサービスを消費者に提供する要のひとつが、カスタマーサポート。消費者が本当に使いやすいECを整備するためには、消費者目線に立ったサポートを充実させることが必須となります。
本稿では、2020年以降ますます広がるデジタル接客を軸に、新時代の顧客接点についてカスタマーサポートについて掘り下げます。
カスタマーサポートは接客チャネルの一つ
消費者の「困った」を解決するカスタマーサポートは、ECの接客における窓口として重要な役目を果たします。ですが、消費者の多くはカスタマーサポートに不満を抱いていることが明らかになりました。ECと直接的な関係はない金融サービスのサポートについてですが、参考までにデータをみてみましょう。
この調査を実施して公開したのは、検索型FAQ「Helpfell(ヘルプフィール)」の開発・提供をおこなうNota株式会社。金融関連サービスのカスタマーサポート利用者110名にインターネットによる実態調査をおこないました。
この調査では、利用者の9割が「サポート時の不安がサービスへの不信感につながる」と回答しています。なお、カスタマーサポートを利用した多くの人が、サポートの方法や繋がり方に不満を感じ、サービス自体の評価も悪化していることがデータから読み取れます。
カスタマーサポートの不満=サービスの不満に直結する
調査のデータでは、約4割の利用者は、カスタマーサポートに「不満」、「ストレス」を感じていること、そして約9割の利用者は、カスタマーサービスに対する不満をサービスそのものへの不信感に繋げていることが分かりました。
不満やストレスの主な原因は、
- 繋がらない
- 応答時間が長い
- 問題解決に至らない
- 複数の窓口をたらい回しにされた
- 担当者が高圧的だった
などです。また、こうしたカスタマーサポートを一度経験してしまうと、サービスそのものへの不信感が強くなり、利用したくない気持ちが芽生えたり、企業に対しての不満が大きくなることも分かっています。
カスタマーサポートは消費者と繋がれる接客チャネルであるはずなのに、この場合は、その接点がネガティブなものになってしまっています。
ECならではの接客はどのようなアプローチをすべきか
しかし、このデータだけでは一概に企業が消費者に寄り添っていないとは言い切れません。ECでは、実店舗と同じような接客接点をもつことが困難です。だからこそ、ECならではの接客はどのようなアプローチをすべきか、「ECならではの接客」、究極は「ECだからこそできる接客」という視点で考えていかなければなりません。
ECの利点は24時間、いつでも消費者が好きな時に買い物をしたりサービスを受けたりできることです。また、全国どこからでも、オンラインで繋がることができるので、顧客獲得に地理的な制約を受けることもありません。
一方で、リアルタイムでタイムラグのない対応、という実店舗では無意識に行われている接客をするのは難しくなります。また、オンライン上で消費者のニーズを把握するのも一筋縄ではいきません。クリック回数やメッセージだけでは消費者の顔色や言葉のニュアンスをとらえることはできず、対面での接客とは異なるアプローチが必要になってきます。
顧客とのタッチポイントはすべてが接客チャネル
こうしたECにおける接客のハンデを乗り越えるためには、顧客とのタッチポイントを接客チャネルであると認識する貪欲な姿勢が不可欠です。
先に挙げた実態調査では、よく利用するカスタマーサービスとして、メール、ヘルプ/FAQ、店舗に赴いての対応という回答がみられました。ですが、それらは消費者にとってストレスや不満の残るサポートであり、より待ち時間が少なく、明確な回答が得られる対応が期待されています。
具体的には、インターネットのFAQを充実させてサポートに繋がらなくてもいわゆる「ググる」ことで解決できる事柄が増えること、そしてチャット機能で迅速に回答が得られるようになることなどがニーズとしてあらわれています。
特に、消費者が自己解決するための情報整備は強く望まれています。調査に回答した約8割の利用者は、「ググる」感覚でキーワード検索をして回答にたどり着けるようなカスタマーサービスがあれば利用したいと回答しました。
誰もがオンラインに繋がる時代、ECを利用するなら困った時の課題解決もスピーディにネット上で、と考えるのは自然な傾向なのかもしれません。
顧客のニーズを発掘するために必要な観点
実態調査では、消費者の多くが非専門的なキーワードで自主的に問題解決ページにたどり着けるような、スピーディかつ簡便なカスタマーサポートを求めていることが見えてきました。
この結果をふまえた上で、自社に合わせた顧客のニーズを発掘していく必要があります。
チャットボットを導入するとECのカスタマーサポートはどう変わるのか、そのポイントを具体的なかたちで検討してみましょう。
FAQの充実、チャットボットで効率化
例えば、カスタマーサポートにAIチャットボットをすると、次のようなことが可能になります。
まず、有人サポートのみでは完璧な体制作りが難しい、24時間のスピーディなサポート体制が整備できます。BtoB、BtoCに関わらず、ECは年々スピーディな問題解決を求められるようになっています。その実現には、時間や場所を問わず、24時間いつ発生するか分からない問い合わせに瞬時に対応するという課題をクリアしなければなりません。
実際に1日数百件の問い合わせが発生するような場合でも、AIでQ&Aデータを管理し、蓄積したデータを使ってシナリオの微調整を繰り返し続ければ、精度の高いチャットボットのサポート体制構築が可能になります。
チャットボット対応のシナリオを分析して、定期的に修正していけば、「ユーザーが求めていているのに企業側のシナリオ想定にない項目」も可視化できます。
「足りない情報」をいかに察知するか
さらに、AIチャットボットを有人チャットと連携することで、チャットボットでは解決できない課題を迅速に有人サポートへ回すといった連携体制も作ることができます。
重要なのは、AIチャットボットを導入しただけで終わることなく、アップデートや他システムとの連携を検討して自社独自のスタイルを構築することです。
カスタマーサポート自体がユーザーに周知されなければ活用されないので、サポート体制を広く知ってもらう工夫もケースによっては必要になります。
チャットボットは導入しただけでは利用者からは見えにくい存在であり、サポート体制自体が、利用者にとっての「足りない情報」になってしまいかねません。真の効率化をはかり、顧客満足度を高めるならば、課題解決手段(この場合はチャットボット)を利用者に周知する工夫も併せて必要になってくるでしょう。
「よくある質問ページ」のファーストビューにカスタマーサポートへの案内をレイアウトする、トップ画面にポップアップを表示するなど、サイトやECに合わせた周知方法も導入と併せて検討すべきです。
そして、カスタマーサポートの効率化の先に見えるのがPDCAの高速化です。
PDCAの高速化
チャットボットが効果的に運用されれば、理論的には有人サポートにかける時間やコストを大幅に削減することができるはずです。
緊急事態宣言のような非常時であっても、また、リモートワークが一般化した社会においても、生産性を高め続けることができるでしょう。
PDCAの高速化は、加速するデジタル時代においてますます重要となっています。
そのためには、チャットボットを導入して終わりではなく、消費者目線に立ちその利便性を追求して修正や追加を実施していくことが必要になってきます。
カスタマーサポートはブランドイメージの向上にも一役買っている
カスタマーサポートは、ECにおいて接客チャネルであり、タッチポイントであると同時にブランドイメージ向上という役を担う存在でもあります。
「商品に不備があったから問い合わせたけれど、丁寧な対応でむしろ商品への信頼が高まった」、「好きなブランドだったのにカスタマーサポートで嫌な思いをしたからもう買いたくない」、誰しも一度は覚えのある感情ではないかと思います。
実際、先に挙げた調査でも、多くの利用者がカスタマーサービスに対する不満と、サービスそのものへの不信感をイコールで結ぶことが分かっています。
それは裏を返せば、カスタマーサービスがブランドのイメージを高め、企業の価値そのものを高める可能性があることの示唆でもあります。
カスタマーサポートで顧客満足度を上げられる
カスタマーサポートは、利用者の質問や苦情を受け止めて解決に繋げる窓口ではなく、顧客満足度を高める一要素であるべきです。
買い手と売り手の顔が互いに見えないECだからこそ、カスタマーサポートはブランドの「顔」になり得る存在であり、ファンを作るための手段にもなります。スピーディに繋がるカスタマーサポートを用意することは、サイトやブランドからの離脱を防ぐことに直結します。
迅速な課題解決という一種の顧客体験が、ECサイトそのものへの信頼や満足度を構築していき、「ここでしか買いたくない」、「ここで買い物をするといい時間の使い方ができる」という利用者のポジティブな思いを積み上げる役目を担うはずです。
24時間誰もが比較的自由に買い物ができる今、ブランドのファンを作ること、そしてそのブランドで過ごす時間を増やす施策を打ち続けることは、売上に直結する要素です。
24時間コミュニケーションが取れるというオンライン最大の強みを活かしたカスタマーサポートが、ECの未来を創り出していくでしょう。