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医薬品分野のEC市場が伸長。ニーズに合わせた顧客体験の提供を模索


医薬品は、ドラッグストアや薬局で購入するというイメージが一般的ですが、2021年8月1日に施行された「改正薬機法」によってオンラインで購入することができるようになりました。



スマホなどから薬剤師によるオンライン服薬指導を受けることで、消費者は処方箋の必要な医薬品をオンライン購入することができます。



ネットで注文しドラッグストアやコンビニで受け取る実証実験も、各所で行われています。



実際、医薬品分野のEC市場は成長を見せていて、今後はアパレルや日用品のように、医薬品もオンラインで購入することが定着していく可能性もあります。



本記事では、現在のEC市場における医薬品カテゴリーの動向と、オンライン購入に対する取り組みの紹介、さらに海外の傾向にふれつつ改正薬機法とともにどのような顧客体験を提供していくべきなのかについて解説しています。



医薬品分野でもEC市場が成長



これまで、一般用医薬品(第1類、第2類、第3類医薬品)以外の医療用医薬品はオンラインで提供することができませんでした。これらは「要指導医薬品」と呼ばれ、購入時は文書で情報提供をする、薬剤師が対面指導をするといったことが義務づけられています。



そのためにネット販売をすることができませんでしたが、2020年9月よりオンライン服薬指導が解禁され、ECでも医薬品を販売できるようになりました。



オンライン服薬指導が解禁になった薬機法「改正医薬品医療機器等法」については、次の項目で詳しく解説していますので、後ほど参考にしてください。



しかし薬機法の改正だけでは、医薬品のEC市場の増加傾向が顕著にみられることはなかったかもしれません。医薬品のEC市場が拡大したのには、コロナウイルス感染症の大流行とインバウンド消費の減少という2つの理由があります。



コロナ禍での変化



コロナ禍で生活様式が大きく変化したこと、アルコール消毒用品の需要が増加したこと、これが医薬品分野のEC市場規模を拡大させた理由の1つめです。



多くの人が感染対策に取り組んだことで風邪などの罹患率は低下し、2020年の医薬品市場規模は前年比8.5%減の6,145億円でした。



しかし、ステイホームが定着し幅広い層がECを利用するようになった2021年は、前年比2.4%増の6,292億円となりました。手洗いや消毒など感染症予防が風邪などの罹患率を下げているのは2020年と同様ですが、その分日用品と併せた購入が目立っています。



通販チャネルは、メーカー自社通販、卸通販、ドラッグストア通販の3つで、ドラッグストア通販では店舗受け取りなども併せて利用が広がっています。



インバウンド需要減少のリカバリー



2020年までは国内市場全体においてオリンピック関連のインバウンド需要が見込まれていましたが、世界的な感染症流行に伴い、現在は外国人観光客の消費活動は消失状態が続いています。医薬品販売のカテゴリー別に見た時、特に減少の影響を受けているのは生活習慣病関連の薬や感冒関連用品、アレルギー関連の薬です。



ですが、これらの需要減少を補って、傷を消毒する殺菌塗布剤やうがい薬などの含嗽剤(がんそうざい)などの売上が伸びており、通販チャネルの市場比率においても医薬品が7.7%を占める勢いです。これは、前年比0.3ポイント増で2020年〜2021年にかけて大きく伸びを見せたといえるでしょう。



薬機法の改正によって変化した医薬品販売



ECで医薬品の販売が可能になったのは、2019年12月4日に改正医薬品医療機器等法いわゆる「改正薬機法」が公布されたためです。



そのなかには、テレビ電話などで薬剤師が服薬指導を行うことを許可する「オンライン服薬指導解禁」も盛り込まれており、これによってECで医薬品を販売、購入できるようになりました。



「改正薬機法」が施行されたのは2021年8月1日ですが、それ以前にも数多くの実証実験が行われ、コロナ禍の需要によって利用も広がってきました。



オンライン服薬指導



オンライン服薬指導は、今まで対面でしか行えなかった薬剤師による薬の説明をスマホやタブレットを使用したTV電話で行うものです。



保険証やお薬手帳といった情報は事前登録する必要がありますが、一旦登録すればあとはスムーズにオンラインで服薬指導を受け、自宅やコンビニ、宅配ロッカーなどで医薬品を受け取ることができます。



これによって利便性がもっとも高まるのは、薬局や薬剤師の少ない地方在住者や、薬剤師の在籍している時間や曜日に処方箋を提出する時間のない社会人などでしょう。オンラインで服薬指導を受ければ、いつでもどこでも好きな場所、時間に医薬品を受け取ることができることを便利と感じる消費者は多いはずです。



また、感染対策の一環としても非対面で、そして自宅にいながらにして受けられるオンライン服薬指導は効果的で、感染が拡大した際も安心して薬を受け取り続けることができます。



なお、服薬指導は医療機関からの処方箋が必要な薬を販売するために義務づけられているもので、処方箋が不要な医療用医薬品について行う必要はありません。



処方箋医薬品の当日配達



まだ一部地域限定ではありますが、ネットで注文した医薬品を最短3時間というスピードで当日配達するサービスが始まっています。



このサービスを利用したい時、消費者はアプリを使って商品を注文します。アプリにはドラッグストアをはじめとしたパートナー企業の商品が並び、注文された商品情報は各店舗や倉庫と連携され、各所で商品はピックアップされ、配送されます。注文情報と配送業者の情報、商品のバーコード読み取り、配送ラベル発行といった商品配達に必要な一連の情報を1つのオペレーションにすることで、短時間でのスムーズな配達が可能になっています。



店舗やコンビニでの受け取り



一般的なEC市場で行われている店舗受け取り、コンビニ受け取りを医薬品でも活用する動きもあります。



認証機能つきの受け取りBOXや、宅配便ロッカーを利用して、安心安全かつスムーズに医薬品が受け取れるシステムは、薬局の営業時間内に購入できない消費者層に求められているものでしょう。非対面で医薬品を受け取ることで、感染対策効果も期待されます。



日本郵便のECサイトで医薬品取り扱い



日本郵便では、「郵便局のネットショップ」上に第2類、第3類医薬品、指定医薬部外品、一般医療機器などを扱うドラッグストア専用ページを開設しました。ここでは、健康食品や化粧品、日用品などと併せて約7,000アイテムが販売されており、クレジットカード、キャッシュレス決済、コンビニ前払い、ゆうちょの振替サービスなど決済手段も多様です。



また、「ゆうパック」などを利用した医療用医薬品宅配の実証実験も行われており、スムーズに消費者の手元に商品を届ける仕組みづくりはこれからも進化を遂げていきそうな気配をみせています。







顧客のニーズや社会の変化に適応



コロナウイルスによって社会が一変し、それが深層的なニーズの掘り起こしや新たな価値観を生み出すことにつながっています。



改正薬機法ははからずも、こうしたニーズの変化に対応したかたちとなりました。海外でもオンライン販売は普及しており、今後は国内でも越境ECの可能性が広がっています。



アメリカでもオンライン販売が普及



米国でも大手ドラッグストアがECの当日配送サービスを始めて、利用が広がっています。



コロナウイルスの急速な流行によってECのニーズを拡大したかたちで、もっとも流行の拡大がみられた2020年11月には処方箋が必要な薬を含めた一般医薬品、食品、日用品のすべてをネット注文から最短30分で受け取れるサービスを提供していました。これは店頭、駐車場やドライブスルーでネット注文品を受け取るシステムでしたが、現在実施されているのは、約24,000アイテム(処方箋が必要な医薬品を除く)以上の商品をネット注文してから採点2時間以内に届けるというサービスです。



また、別の大手ECサイトでは、2020年11月より処方箋の必要な医薬品をオンラインで購入するサービスがスタートしています。ここでは24時間いつでもオンラインで薬剤師に相談できる、処方箋の入手を代行してもらう、というサービスも受けることができます。



なお、事前に健康保険や服薬歴、アレルギーの有無などを登録する必要があるのは、日本で行われているオンラインのサービスと同様です。



越境ECでの事業展開



改正薬機法により、医薬品のEC販売が拡大すると越境ECの展開もみえてきます。国内の化粧品や医薬品は、品質が高く安全性が保証されているとしてアジアを中心とした海外の消費者から人気を集めています。ですが、海外で日本の医薬品を購入すると高額になってしまうため、今までは海外から訪れる観光客のお土産品として需要がありました。日本国内で購入して自国に持ち帰った方が、安価に手に入るからです。



この傾向を受けて、ドラッグストアなどの出店者に代わって海外発送を行う海外向け購入代行サービスが医薬品ECでも注目されています。こうした海外越境ECサイトを経由することで国内取引と同様の感覚で国際的に商品販売が可能になり、渡航禁止によるインバウンド消費の減少を解消する可能性を秘めています。



アジアの中でも特に注目すべきはやはり中国市場で、世界最大のEC市場といわれています。中国では、独身の日(11月11日)などに大きなイベントを開催することもあり、日本の大手化粧品メーカーが中国ECで取り扱いをスタートさせるなど、医薬品の越境ECは少しずつ広がっています。



法律の制約の中で顧客体験を追求する



医療用医薬品の中には、誤った服用によるリスクが高いものや販売されてまだそれほど時間が経っておらず取り扱いに注意すべきものなどがあります。



そのため、改正薬機法が施行されてもまだ制約があるのは事実であり、オンライン服薬指導も「当たり前」にはなっておらず途上の段階といえます。



しかしながら、コロナ禍によって「非対面」、「自由度の高い購買体験」といったニーズは高まり、社会変容によってEC市場を取り巻く状況は変わりました。多くの実証実験が行われ、消費者がスムーズかつ安全に医薬品を購入できる舞台を整える必要性は高まっています。短時間に正確な配送を実現するためには、円滑に動作するオペレーションと、シームレスな情報連携が不可欠です。



今後も、法律に沿ったかたちで最大限の顧客体験を提供する道を模索する、医薬品EC市場の動きに注目していきたいと思います。