Eビジネスを推進するORANGEシリーズ

EC-ORANGE
お役立ち資料ダウンロード ニュースレター登録

NFTがECにもたらす商品への付加価値と販売の可能性


NFTは、複製が容易と思われてきたデジタル資産に唯一無二という特性を与えられるテクノロジーとして注目を集めています。



NFTは仮想通貨のように、これまでに「存在しなかった新しい技術、アイテム」です。一過性のブームとしていつの間にか忘れ去られるのか、スマホのように当たり前のように生活に組み込まれていくのか、議論は続いていますが、 NFTに対する期待は膨らむ一方です。世界における時価総額は上がり続け、市場価値は今後も上昇していくと予想されています。



ECにおいては、NFTを活用することで商品の証明書をデジタル化する、特典をオンライン化する、複数のブランド間で自由にデジタルなコラボレーションを展開するといった可能性が見出されています。
すでに、Shopify、LINE、eBay、楽天などはNFT機能を搭載してサービスを展開し始めました。



本稿ではNFTの仕組みやアイテムの一例について触れてから、ECにおける運用の可能性について紹介しています。



また、今後NFTを含む暗号資産や、ブロックチェーン技術を用いたアイテムが普及していくのかについても、デジタルネイティブの動向を見ながら考えていきます。





NFTがもたらす価値とECとの関係性



非代替性トークン(non-fungible token:NFT)は、2018年から2020年にかけてその時価総額を約10倍にしました。



NFTは名称の通り、代替できず、複製も不可能なトークンとされています。



従来複製が不可能なアイテムといえば、有名な作家の原画や直筆原稿、著名人のサインといった手に取れるアイテムが一般的でした。デジタルコンテンツは複製が容易であり、唯一性という特徴からはかけ離れた場所に位置すると認識していた方も少なくないのではないでしょうか。



ブロックチェーン技術が生み出すデジタル資産



しかし今、ブロックチェーン技術によって誕生したNFTによってデジタル資産という新たな市場が成長しています。 2年で時価総額が10倍という強い力を秘めている市場として、ECの分野からも注目が集まっています。



ほとんどのNFTは、イーサリアムというブロックチェーン上に存在しています。 イーサリアムは暗号通貨の一種ですが、通貨とは異なる動作をさせることでNFTとして機能させることができます。



ブロックチェーン技術によって、NFTはそれぞれが個別情報とメタデータを備え、複製が存在しない「唯一無二のオリジナル」と証明されます。



■プレスリリース:「EC-ORANGE」がNFTパッケージ「stoNeFree」と連携 未来のコマース体験を提供するために ストーンシステムとのパートナーシップを強化



NFTの活用事例:何が買えるのか



いくら希少価値があったとしても複製できるものや量産できるものは、これまで資産とみなされませんでした。NFTの登場は、複製可能なデジタルコンテンツに新しい市場をもたらしたのです。



では、実際にはどのようなデジタルコンテンツが取引されているのでしょうか。いくつかの事例を見ていきましょう。



■オリジナルダンスの振付データ


振付動画や振付を元にした3DデータをNFT化、ゲーム会社やコレクターに対してオンライン上で販売。ゲームなどのキャラクターがNFTダンスモーションを使って表現する。



■作曲家が自作自演した曲の録音データ


一曲を、フレーズや和音ごとに細分化しNFT化、オンラインで販売。コレクタブルアイテムとして注目されることが多い。



■スポーツの動画コンテンツ


試合中に選手が活躍した瞬間(動画)に対してNFTを付与し、デジタルの世界で販売。



■ロットナンバー入りのデジタルトレーディングカード(デジタルトレカ)


サインやシリアルナンバーが入ったトレーディングカード(再生ボタンを押すと動きがつくカードも)に対してNFTを付与し、デジタルデータとして販売。



■メタバース等仮想空間のデジタルアートワーク/デジタルアイテム


仮想空間にアーティストが描いた3Dアートワークに対してNFTを付与、仮想空間内で販売。一つとして同じデザインのないアバターや、オリジナルデザインのデジタルアイテムが入手できる。



■ 興行チケットの販売


電子チケットをNFTで発行し、限定販売。 最高価格の入札者に対しチケットが発行される。



このように様々なアイデアが生まれ、取引が行われていますが、今後「デジタル資産を保有する」という新しい概念をどのようにEC市場へ持ち込むか、それが焦点となります。



NFTがEC領域で担うもの



では具体的に、NFTはEC市場でどのような役割を果たし得るのでしょうか?



現在、ECの領域で実施されているのは、NFTを所有している人だけが可能な体験や特典の提供、ブランド品のギャランティカード、骨董品の鑑定書等をNFTで発行して偽造を防止する、といったことです。



NFTの特徴、「複製不可能なデータを作れる」、「固有の価値を証明できる」という二点は、商品に付加価値をつける際やブランドイメージを確立したい時に重要なファクターとなる可能性を秘めています。



今はまだEC市場でもクリエイター間でも、実験的な取り組みが行われている最中ですが、その進化はスピーディです。まだ売上データや市場規模も正確な数字を把握しきれていないとされるNFT市場において、今後はますますデータ観測が追いつかないほどの急成長を遂げていくかもしれません。



なお、ShopifyやLINE、eBayはすでにNFT機能を搭載した市場やパッケージの提供を始めています。



マーケットプレイスやECパッケージが搭載するNFT機能



マーケットプレイスやECパッケージとしてのNFT機能は、主に、商品の付加価値となるようなデジタルコンテンツの流通を可能にする技術や、エンターテインメントの新しい形を提示できるシステムが搭載されています。NFTはこれまでになかった新しいサービスや価値の具現化について可能性を秘めているため、どんどん新しい機能が登場するかもしれません。



ECでNFTを活用するなら、単なる付加価値の提供に留まらずこれまでになかった新しい体験価値、ECならではの購買体験に結びつくようなものが望まれます。



Shopify



Shopifyは、「Editions Summer 2022」の一環としてNFT機能を搭載したトークンゲートコマースを発表しました。この機能には、NFTを保有している消費者にのみ特定の商品や体験を提供する仕組みがあります。



なお、このNFT機能は複数の事業者間でコラボすることも可能になっています。ブランド同士が連携することで、顧客が互いのブランドにアクセスしながら様々な商品の購入、体験ができるようになっています。



LINE



2022年4月から、LINEのブロックチェーン関連事業等を展開するLVCが「LINE NFT」を開始しました。利用はLINEのアカウントがあれば誰でも可能で、エンタメ、ゲーム、キャラクター、イベントといった7ジャンルのNFT販売が展開されています。



なお、LINE NFTでは、NFTの購入だけでなく二次流通、いわゆるユーザー間取引も可能です。



eBay



eBayは、すでにNFTのマーケットプレイスを買収しています。2021年5月にはeBayのプラットフォームでNFTを取り扱うと発表、管理と転売についても同フォーム内で完結するシステムになっています。







ECのNFT機能でデジタル資産は身近になるのか



NFTが注目されているのは、NFTが新しい収益をもたらすと期待されているからです。



NFTがECで活用されることによって、企業やブランドのコミュニティだけでなく、コレクター、新しい技術や話題を体験したいと思う人々に対しても訴求できる可能性が広がります。



ピークアウトするか、定番化するか



米国では、NFTは現在 ハイプ・サイクル における2番目の段階「過度な期待のピーク期」にあるとされています。このピーク期とは、成功する計画もあれば、失敗する計画もあり、まだ実際の行動を起こす企業は多くないという状況を指しています。



ちなみに、ハイプ・サイクルに当てはめると、この後、一時的に社会の興味関心が薄れる「幻滅期」があります。ハイプ・サイクル の理論上は、この幻滅期を経て、テクノロジーのメリットが広く知れ渡る「啓発期」、そのテクノロジーが当たり前のものとなる「生産性の安定期」へと移行していきます。



つまりNFTは、一過性のブームとなって下火となるか、当たり前のものとして定番化するかの分岐点にあると言えるかもしれません。



なお、NFTにおいては希少価値が高まる程に顧客の関心を高めるという特性があります。そのため、供給が少なくなればなる程その価値は高まり、需要が上回ってくることが予想できます。



参照:ハイプ・サイクル

https://www.gartner.co.jp/ja/research/methodologies/gartner-hype-cycle


世界の企業もNFTについて模索している



人々がECのNFTをどのように捉えるか、企業はその感触を知ろうとしています。



海外のある企業は、NFTをユーザー間で売買できるような、二次的な流通(中古)のマーケットを整備しました。
また、無料でNFTを配布して、ユーザーの温度を知ろうとする企業もあります。



NFTは、スニーカーやバッグといった現物の商品に対して付加価値をつけることもできますが、例えばブランドの10周年を記念して祝った瞬間といった形のないものも商品化することができます。



NFTの活用によって、ECは物やサービスを販売する以外の収益を獲得することができるかもしれません。今までにないバーチャル上の売上を得ることができるNFTは、発想次第でその用途を大きく広げることができると言えるでしょう。



デジタルネイティブとNFT



これまで、デジタル商品といえばいくらでも瞬時にコピー(複製)できるものという認識が一般的でした。そのため、多くの人にとって「複製不可能な唯一無二のデジタルデータ」と言ってもなかなか想像しにくいのが現状かもしれません。



しかし、デジタルネイティブにとっては実際に手に取ることができないデータ(ゲーム内のアバター衣装やストリーミングサービスで視聴する音楽・動画等)にお金を支払うことは、普通のことになっています。そのため、デジタル資産や暗号通貨も、こうしたデジタルネイティブ世代を中心に定番化する可能性が十分にあると考えられます。



例えば、ひと昔前には、レンタルビデオ店で映画を借りることは当たり前のことでしたが、現在では、店舗に出向いてビデオやDVDメディアそのものを借りて視聴行動をするユーザーは少なく、デジタルコンテンツをオンラインでレンタル・購入しています。



また、「観たい作品を観る」という価値観だけでなく、サブスクリプション型で見放題のストリーミングサービスの料金内で視聴可能なコンテンツのみを楽しむ、という「今見られる作品を楽しむ」というスタイルも主流になっています。



NFTは、新しいライフスタイル、新しい価値観と共に今後、進化していくのかもしれません。そしてその進化は、ECの可能性をも広げていくはずです。



■特集ページ:EC-ORANGEレポート「NFT」