【2022年版】国内EC市場は今後伸びる?新興市場も調査しました
国内ECの市場規模は年々伸びています。主要国の中でもEC化率は低く“伸びしろ”が大きい日本。コロナ禍による自粛が明けて特需は落ち着きましたが、今後も成長し続けるビジネスです。
この記事では国内EC市場の伸び率やEC化率、そして越境ECやリユース、メタバースの市場までをご紹介いたします。ぜひ今後の成長戦略にお役立てください。
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国内EC市場のこれから
国内EC市場はコロナ禍における自粛期間が大きく影響し、令和に入って急速に成長しました。緊急事態宣言や自粛要請が落ち着き市場の成長スピードや緩やかになったものの、ECが衰退すると見る動きはありません。
伸び率は今後も拡大
まずは国内EC市場の伸び率について、令和元年と令和3年での成長を見てみましょう。
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B to B |
B to C |
令和元年 |
350.0兆円 |
19.4兆円 |
令和3年 |
372.7兆円 |
20.7兆 |
伸び率(前年比) |
11.3%↑ |
7.35%↑ |
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html
上記の表のとおり、BtoB、BtoCの両方において国内EC市場は成長しています。BtoBでは10%を超える伸び率を見せており、急成長といっても過言ではありません。
EC市場が大きく拡大した背景には、やはり2019年から始まったコロナショックがあります。外出自粛要請により消費者の生活スタイルは大きく変わり、図らずもEC市場を拡大する結果となりました。
2022年に入ると実店舗へ戻る消費者も増え、EC市場は特需状態ではなくなりました。令和3年以降は特需ほどの伸び率は期待できませんが、EC市場の拡大を阻むことにはならないという意見が多数です。
その背景として、日本のEC化率の低さが挙げられます。主要国の中でも日本のEC化率は最下位であり、まだまだ伸びしろが大きい状態です。
2020年時点の市場規模でみると、日本は1,413億USドルに対して、中国が22,970憶ドル、アメリカが7,945憶ドルとその差は歴然です。依然としてECに注力する企業も多く、企業単位でコロナ特需が落ち着いても、EC市場は成長し続けるでしょう。
少しずつEC化率が進み、2023年には日本もついにEC化率が10%を突破するという意見もあり成長が期待できます。
参照:日本ネット経済新聞 【データに見る「ECの地殻変動」】<第1回>2023年のEC化率10%突破に現実味
https://netkeizai.com/articles/detail/5975/2/1/1
EC化も拡大していく
すべての商取引に対して、EC市場における取引の割合を示すEC化率。経済産業省の電子商取引調査によると、国内EC化率は以下の通りです。
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2019年 |
2020年 |
2021年 |
物販系 |
6.76% |
8.08% |
8.78% |
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html
物販系・サービス系・デジタル系の分野のうち、EC化率が調査されたのは上記の物販系のみでした。
2021年時点のEC化率は8.78%で2020年と比較するとわずかに伸長しています。2019年から2020年にかけて大幅にEC化率が伸びていますが、これはコロナ特需が大きな影響と考えられます。
世界全体のEC化率は2021年時点で19.6%で、世界的にみると日本のEC化率はまだまだ低く、今後の成長が期待されます。
大手サイトと中小サイトの戦略の違い
前述の通り、コロナ特需が終わっても国内EC市場は伸びていくという予想が大半です。
大手サイト事業者も中小サイト事業者にも、EC市場で成長するチャンスがあります。しかし、大手・中小はそれぞれに見合った、自社が生き残る成長戦略を立てなければなりません。
まず体力がある大手事業者は、独立したEC事業部を設立するなど大掛かりに準備をしています。しかし大手は目標とすべき収益が大きく、平たく言えば“万人受け”するような大きな市場を狙わなければなりません。
一方で体力に不安がある中小企業は、大手のように大きな市場を狙っても成功する確率は低いでしょう。大手の真似をしたところで喰われてしまい、成功には至りません。
中小サイト事業者がEC戦略で押さえるべきポイントは、以下の3つです。
- 大手が狙わない“小さな客層”を狙う
- 尖った戦略を立てる
- 注文~物流までフルフィルメントな対応を考える
中小企業は大手のように万人受けを狙わず、“小さな客層”としてニッチな層を狙うことがおすすめです。稟議が通りにくい大手と違い、尖った戦略を立てることで新しい層を掴む確率が上がります。
ECでは実店舗と同等のオペレーションが求められ、人材やコストが必要です。中小であっても、注文受付から決済、在庫管理や物流の手配までを一貫したフルフィルメントなサービスを調達しなければなりません。
ノウハウやマンパワーが足りなければ、思い切って一連のプロセスをアウトソースする方法も有効です。ECを支援する企業も増えており、中小企業の負担を軽くしてくれます。
越境EC、リユース、メタバースなど新興市場の動向は
国内EC市場の次は、越境EC、リユース、メタバースという3つの新興市場の動向を見ていきましょう。
円安傾向やコロナ禍による影響
急激な円安は、国内消費に悪影響を及ぼしています。値上げラッシュで消費者の財布のひもは堅くなり、食品メーカーを中心に苦戦している状況です。
一方で越境ECの拡大には円安がプラスに働いています。円安を追い風に流通総額が20%以上上がった事例もあり、越境ECは上り調子といえるでしょう。
越境ECも将来的に拡大が見込まれており、2026年には4兆8200億USドル、19年の7800億USドルの6倍と飛躍的な成長が見込まれています。
日本の越境EC利用頻度の調査について円安後に調査を行ったところ、「円安前よりも金額・頻度ともに増えたと」いう回答が増えていました。日本の越境ECで特に人気なのは、「おもちゃ・ゲーム・アニメグッズ」がすべての国や地域でトップ。アメリカ55%、イギリス49%、台湾39%、マレーシア35%とアメリカは半数を超えています。
※参照:財経新聞 円安で越境ECが急増 2026年には5兆ドル市場に
https://www.zaikei.co.jp/article/20220912/689066.html
また訪日時のショッピングでもECを利用したいと回答した人は全体の56%もいて、越境ビジネスに明るい可能性を感じさせる結果が出ています。
~越境ECを利用する海外のお客様1,900名にアンケート~ 6割以上が「円安後に越境ECの利用が増えた」
https://beenos.com/news-center/detail/20220826_bcr_pr/
リユース市場はCtoCでさらに拡大
リサイクル通信の調査によると、2020年におけるリユース市場規模は前年比2.5%増の2.4兆円でした。2009年以降11年連続で拡大しており、コロナ禍による影響で多少成長率が減速したものの、すでに2兆円を超える市場規模になっています。
CtoCではフリマアプリなどのネット販売の拡大が大きく、2020年には前年比14.7%の1兆583億円でした。外出自粛やテレワークによるおうち時間の増加に伴い、家の片づけや不用品整理による出品が増えたと推測されます。
人気の商材はトレカを含む「おもちゃや模型」で前年比23.7%増、家具や家電が前年比9.5%増となっています。下降傾向だったパソコンもテレワーク需要による追い風が吹き、12.2%増と回復を見せました。
リユース市場もコロナ禍の影響で停滞感がありますが、市場の拡大トレンドであることに変わりはありません。SDGsの追い風もあり、2022年には3兆規模となる見通しです。
リサイクル通信 リユース業界の市場規模推計2021(2020年版)
https://www.recycle-tsushin.com/news/detail_6396.php
メタバース市場がEC市場に占める割合
コンピューター内に構築された仮想空間で社会生活が送れる「メタバース」。旧Facebook社は社名を「メタ」に変更するなど、世界中で注目が高まる技術の1つです。
メタバース単体の国内市場規模は2021年時点では744億円で、2026年には1兆を超える見通しが立っています。(※)
矢野経済研究所:メタバースの国内市場動向調査を実施(2022年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3068
BtoBでは、バーチャル展示会やオンラインセミナーといったサービスが先行して普及が進と見られています。その後CtoC向けの市場へ浸透していき、世の中に広がっていくという予想が有力です。
宇宙を意味する「ユニバース」と超越した、を意味する「メタ」の合成語であるメタバース。ユーザー同士が自分のアバターを操作して交流したり労働で賃金を得たり、さらに消費行動まで行える大変新しい技術です。
メタバースはデジタルに抵抗がない若年層を取り込みやすく、マーケティング次第で大きな成長が期待できるでしょう。
デジタル資産の所有元を明確にするNFT技術の普及など、技術面でも着々と整備が進んでおり、コロナ禍で生まれた新しいビジネスチャンスの1つです。
アパレルはもちろん観光産業など、あらゆる業界がメタバースに注目しています。たとえば2021年12月には、大丸松坂屋百貨店が「バーチャル大丸・松坂屋」として仮想空間に百貨店をオープンしました。
有名店のハンバーグやカニ鍋、プリンといった豪華料理が並び、来店客の分身となるアバターは、3D表示される食品を手に取ってみることができます。さらに、商品を気に入ればそのままECサイトに移行して購入も可能です。
メタバース空間は店舗や外商、ECに続く「第3の商空間」と位置付ける見方もあり、こちらも大きな市場の拡大が期待されています。
2023年以降の国内EC市場の展望
今回ご紹介したように、国内EC市場は2023年以降も成長するという見方が有力です。コロナ禍による特需が落ち着き成長率は鈍化していますが、だからといって市場が縮小することはないでしょう。
国内EC市場の成長自体は喜ばしいことですが、サイト事業者には以下の課題が予測されます。
- 競争の激化
- リスティング広告の単価上昇
- 大手企業の参入によるパワーゲームの加速
国内EC市場の成長に伴い、ネットショップは急増しています。つまり競争の激化は避けられず、中堅や小規模のネットショップには大きな影響が出てくるでしょう。
大手企業がリスティング広告やSEOに予算を割くほど、それらの単価は上昇します。TVCMより手が出やすいWeb広告でしたが、今後はSNSや新興市場のメタバースなど、広告以外の売り方を考える必要があります。
今後も拡大を続ける国内EC市場は、大きなビジネスチャンスが期待できる一方で、フルフィルメントなサービスの構築やプロモーション方法など課題も多数です。内製化またはアウトソーシングの検討など、自社に見合った体制を整えていきましょう。