リピート顧客の育成、コツはタッチポイントにあり
もっとECの利益を上げたいが新規顧客の獲得にコストがかかり、利益が上がらないとお悩みの担当者の方も多いと思います。売上を伸ばすためには新規顧客の獲得も必要ですが、「リピート顧客」を育成すれば、バランスよく高い成果が期待できます。
一度自社商品やサービスを利用したことがある顧客にリピート購買をしてもらい定期的に購入してもらえるようにファン化ができれば、新規顧客向けのキャンペーンや広告だけに多大なコストをかける必要もありません。
この記事ではリピート顧客の定義や重要性、育成のポイントとなる「タッチポイント」についてご紹介します。
リピート顧客育成のポイント
ECの成果を高めるためには、新規顧客の獲得だけではなく、リピート顧客の育成がポイントとなります。まずはリピート顧客育成の重要性と、リピート顧客の育成で抑えておくべき指標を解説します。
リピート顧客の育成が重要な理由
マーケティングでは「1:5の法則」があります。この対比はコストを表しており、新規のお客様を獲得するには既存のお客様の5倍のマーケティングコストがかかるのです。
新規顧客獲得のためには、キャンペーンや広告といったマーケティング費用が必要となります。新規顧客の獲得に大きくコストを振ってしまうと、売上が上がったとしても利益が大きく取れません。
つまりより効率的に利益を高めるためには、新規顧客だけではなく、既存の「リピート顧客」を増やすことも重要となります。小売店は、この新規顧客とリピート顧客育成のバランスを意識しなければなりません。
リピート顧客とは継続顧客ともいわれ、自社商品やサービスをリピートして利用してくれる顧客のことで「リピーター」と同義です。このリピート顧客の存在は、ECや自社ブランドの成長に欠かせません。
LTV>CPAのバランスが重要
小売店が事業を継続するためには、リピート顧客を育て、LTV(顧客生涯価値)がCPA(顧客獲得単価)より大きい状態を維持することがポイントです。
顧客獲得単価の略であるCPAは、新規の顧客を獲得するまでにまでにどれくらい費用が掛かったかの数値であり、低いほどマーケティングがうまく行っていると判断できます。
LTVとは顧客生涯価値であり、その顧客と自社が取引を開始・終了するまでに得られる利益で、高いほど良い成果が出ている状況です。
例えば広告やキャンペーンを打ちCPAが10,000円かかったとします。新たな顧客を獲得しても、年間購入額が10.000円程度とCPAと同等であれば、コストをかけた分しか売上が得られません。
顧客の分母を拡大するためにも、新規顧客の獲得は必要です。しかし「もっと顧客を増やさなければ」と新規向けの広告やキャンペーンにばかりCPAとしてコストをかけ続けても、LTVが低ければ大きな利益アップは期待できないでしょう。
そこで重要になるのがリピート顧客です。既存顧客がリピートしてくれれば「LTV>CPA」となり、さらなる事業の成長が期待できるのです。
少子高齢化社会ではCRMも変化する
リピート顧客を重視すべき理由の1つに、少子高齢化が挙げられます。日本では少子高齢化が年々進んでおり、消費者像も大きく変化しています。
少子高齢化社会になれば、消費人口が減少します。その結果ECや小売店は顧客の取り合いとなり、競争の激化は防げません。高齢になると所得の低下も影響するので、支出額は50代前半をピークに減少傾向となります。
マーケティングの1つとして、顧客との関係を整理する「CRM」という定義があります。Customer Relationship
Managementの略で、日本語では「顧客関係管理」です。
CRMでは自社サービスを利用してくれた顧客との関係を良好に保ち、リピート顧客を育成する目的があります。CRMでは情報を一元化して、そのユーザーの購入履歴や接触履歴をまとめ、顧客との関係を維持したり高めたりするのです。
あらゆるタッチポイントが顧客育成になる
消費行動のオンライン化が進んだことで、小売業やECと消費者とのタッチポイントが急増しています。このタッチポイントを上手く活用することで、多くの企業がリピート顧客の育成に成功しているのです。
タッチポイントでリピート顧客を育成するためには、オンラインとオフライン、両方を融合させたOMO施策が必要です。ここではOMOの魅力やリピート顧客の育成に効果的な手法、事例をご紹介します。
「OMO」でオンラインとオフライン双方向の施策を行う
Online Merges with Offlineの略であるOMOは、オフラインとオンラインを融合している点が特徴です。
OMOとよく似た言葉で「O2O」があり、これはOnline to Offlineの略です。顧客をオンラインからオフラインで誘導するためのもので、例えばリアル店舗で使えるオンラインクーポンの配信が挙げられます。
OMOはO2Oのようにオフラインへ誘導するだけではありません。オンラインとオフラインの垣根をなくし、双方向に行き来する点が大きな特徴です。
OMOなら、例えばリアル店舗で購入後した後にアプリのプッシュ通知でお礼のメッセージやリピーター向けクーポンを配信する、ECで商品を取り置き、顧客がリアル店舗に受取に行く……といった戦略ができます。
欲しい商品を検索で効率よく探せるオンライン、商品を試着したり触ったりできるオフラインのそれぞれの“良いとこどり”を実現することで、顧客はより良い購買体験ができ、自社のリピート顧客になってくれるのです。
タッチポイントを設計する時も、オフラインとオンラインを融合させることがポイントとなります。
アプリやクーポンはリピーター育成に効果的
定番のマーケティング手法であるクーポンは、初来店のきっかけに効果的です。aupayの調査によると、消費者の63%が「クーポンをきっかけに新店舗に訪問した経験がある」と回答しています。※
クーポンが初来店のきっかけに!63%が経験あり、顧客獲得に有効なクーポン利用動向調査
https://media.aupay.wallet.auone.jp/articles/950
そしてクーポンをきっかけに来店した消費者のうち、81%が「クーポンがきっかけで、お店、サービスを再度利用した経験がある」と回答しているのです。クーポンが初来店のきっかけになっているだけでなく、リピート顧客の育成にも貢献していることがわかります。
同調査では、クーポンは男性より女性の方が重視しているという結果も出ています。種類としては割引クーポンが圧倒的に人気ですが、「ポイント還元型」のクーポンは長期的なリピートを促す効果があることもわかりました。
一定のポイントを貯めて特典を得る施策は、顧客のロイヤリティを高めることでリピート購入を促すようです。
また多くの小売店が開発している「店舗アプリ」も効果的なタッチポイントです。
ショップカードやリピート促進効果に効果的な店舗アプリは、DXの面でも人気があります。最近はクーポンの配信や商品紹介だけでなく、現場のリアルな声を活かすことで業務効率につなげる取り組みも始まっています。
詳しくは、現場の声を反映した店舗アプリを活用して顧客体験を向上させる でご紹介しておりますのでぜひご参照ください。
体験を付加価値にすることで独自性を高める
某大手スポーツメーカーでは、店舗アプリによって顧客体験価値を高めリピート顧客の獲得に成功しています。
上記メーカーはBtoCメーカーとして直営店や卸業者を介して販売していたものの、EC化によってD2Cに成功しました。EC化と同時に始めたのが、店舗アプリを通じた顧客関係の構築です。
アプリでは商品購入だけでなく、運動能力のレベル測定や自分に合ったトレーニングメニューの検索ができます。さらに特定の行動を達成することでトロフィーを獲得できる機能などを充実させ、購入自体を楽しい体験にすることでリピート顧客の獲得に成功しています。
TVを見ないユーザーへのアプローチを考える
TVで商品紹介・販売を行うTVショッピングでは、TV離れが進む消費者へのアプローチを工夫しています。
某大手TVショッピングブランドでは、インフルエンサーを活用したライブコマースや、スマホで視聴できるテレビアプリの配信といったアプローチで、TVを見ない人とのタッチポイント作りを積極的に行っています。
ライブコマースは売上前年比で数百%アップするなど成果も順調で、今後の成長が十分期待できる状況です。またお客様の意見や質問に回答する非販売の番組を放送するなど、リピート顧客の育成にも余念がありません。
越境ECはインバウンド需要のリピート顧客に効果大
調査によると、「越境ECをインバウンド顧客のリピート施策として活用したいですか?」という質問に、「したい」が47.9%、「ややしたい」が20.8%と、約7割の企業が越境ECの利用を考えていることが分かりました。
~越境EC導入企業に聞いた、活用と課題の実態調査~インバウンド復活により、リピート施策として越境ECの利用意向は7割
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000601.000035599.html
訪日外国人観光客が日本での旅行を楽しみ、自国に帰宅してからのいわゆる“旅アト消費”に対応すべく、越境ECサイトに問い合わせる企業が増えているようです。
入国規制も緩和され、国内にも訪日外国人観光客が戻り始めています。免税や言語、配送サポートがしっかりしている越境ECを味方につければ、海外のリピート顧客育成も可能です。
オンラインとオフライン双方向で顧客育成を
リピート顧客について、その重要性や指標となるもの、育成方法をご紹介しました。獲得コストや少子高齢化などを考えると、新規だけでなく、既存顧客へのアプローチも考えなければなりません。
獲得コストの低いリピート顧客を上手く育成できれば、今よりもっと良い成果が出るのではないでしょうか。
EC化や消費行動のオンライン化が進む昨今では、オンライン・オフラインの両方を活用したOMOを意識した施策が必要です。多様化する消費行動に効率的にアプローチできれば、リピート顧客もどんどん増えていくでしょう。