Eビジネスを推進するORANGEシリーズ

EC-ORANGE
お役立ち資料ダウンロード ニュースレター登録

サードパーティcookie廃止に向けて 位置情報で次世代マーケティングを展開する


広告やECサイトのログイン機能に役立っているサードパーティcookieですが、いよいよGoogle Chromeでも2024年後半に廃止される事が決定しました。



代替技術としてGoogleはプライバシーサンドボックスを提唱、ネット関連企業は共通IDや文脈マッチングといった技術を提案していますが、サードパーティcookieとまったく同じような効果が期待できるかどうかは未知数と言えます。



そこで、位置情報とそれを活用した次世代のマーケティングがじわじわと注目を集め始めました。



位置情報はGPS、Wi-Fi、Bluetooth(ビーコン)といったツールで収集します。



ツールによって収集範囲や特性が異なるため、求めるマーケティングに合わせて設置ツールを選ぶ事が重要になります。



本稿では、プライバシーサンドボックスをはじめとするサードパーティcookieの代替技術について解説すると共に、多様な可能性を持つ位置情報マーケティングについて詳しく紹介しています。


無料メルマガ登録はこちら:デジタル化のヒントが満載のメルマガをお届け


2024年以降のマーケティングデータはどう取得するか



来年以降にマーケティングデータをどのように取得するかは、全世界の企業が頭を悩ませている問題です。データ取得という分野が大きく転換するであろう2024年後半に向けて、世界は代替技術の模索に追われています。



データ取得という分野が大きく転換するであろう2024年後半に向けて、世界は代替技術の模索に追われています。



サードパーティーCookie全廃時期が近づく



追跡型広告(ターゲティング)で使われているサードパーティcookieは、2024年後半に原則として使用できなくなります。



Googleがサードパーティcookieを廃止すると発表したのは、2019年です。



当初は2022年までに全廃というスケジュールでしたが、Google Chromeは現在でも60%以上のシェアを持つブラウザのため、影響範囲の大きさを考慮し2024年後半まで延長となっていました。



80%以上の企業がサードパーティcookieに強く依存しているとされているインドやオーストラリアのような国もあり、廃止に伴う混乱は全世界的なものが予想されています。



日本では、戦略をクッキーレスに転換するようなリソースが確保できていないと考える企業も半数以上にのぼり、方向転換したくても思うように行動できないジレンマを抱えているケースも多い様子が透けて見えます。



一方で、2019年当時から、欧米や中国をはじめとした各国では、インターネット上のプライバシー保護意識が高まり続けてきました。



マーケティングの基本である迅速で的確な効果計測には、サードパーティcookieが強い力を発揮していましたが、それは過去のものとなります。次なる施策のためには代替データを探さなければなりません。



代替データで次世代マーケティング



繰り返しになりますが、2024年後半には、 サードパーティcookieを用いた行動ターゲティング広告の配信はほぼ不可能になります。



代替策として上がっているのは、プライバシーサンドボックス、共通ID、文脈マッチング、擬人化(ペルソナ)、データクリーンルームといったものです。



プライバシーサンドボックスは、Googleがサードパーティcookieに代わる仕組みとして導入すると公表しているシステムです。



これは、ユーザーの閲覧履歴等から分かる興味関心の分野やデータを数千ものトピックで分類し、3週間保存するものです。広告会社は保存されたトピック5つのうち、3つを共有する事が可能になります。



共通IDや文脈マッチングは、主にネット広告の仲介・分析を行う企業が提唱しようとしている代替案です。



共通IDはユーザーの同意を得た上で、メールアドレス等の必要な情報を暗号化して、共通ID(識別子)として運用する手法です。



文脈マッチングは、オウンドメディア等の媒体のコンテンツとマッチするような広告を出稿する技術です。



擬人化(ペルソナ)はアンケートと取る等して媒体に合わせた広告を配信する仕組みで、データクリーンルームは、媒体やモールといったプラットフォームを運営する企業と広告主が相互的にデータを利用して統計分析を行い、適した広告を配信できるようにするシステムです。



とはいえ、これらの代替策はサードパーティcookieにすぐさまとって代われるような優れたシステムではなく、適した広告を配信するには今ひとつ精度に欠けるというのが現状です。



ちなみに、Googleは2019年の調査において、サードパーティcookieを使用しない広告は、用いた広告と比較すると効果が半減すると発表していました。



こうした結果を踏まえると、個人データを分析・活用してきたウェブマーケティングは、ここへきて大きな転換点を迎えていると言わざるを得ません。



一方で、SNSや自社サイト上で利用者の行動履歴を収集する検索サービスは、サードパーティcookieの影響を受けません。



ゆえにこれらのサービスが寡占状態になると懸念する見方もありますが、サードパーティcookie廃止前にマーケティングの方向転換をはかるなら、SNSのさらなる活用も視野に入れておきたいところです。



使用した画像はShutterstock.comの許可を得ています




位置情報を活用したマーケティング



サードパーティcookieの廃止に伴って、位置情報を利用したマーケティングが注目を集め始めています。



位置情報とは、スマホやカーナビでデータの送受信を行った時に得られるユーザーの現在地情報です。



技術自体は以前から利用されていましたが、位置把握の精度が向上したためマーケティングに活用できる可能性がさらに広がりました。



位置情報を活用すると、地域特性に合わせた施策が講じられる、ユーザーにとって最適なタイミングで情報発信ができるといったメリットがあります。



位置情報を取得するために使われるのは、通信基地局、GPS、Wi-Fi、ビーコン等です。



通信基地局は、通信の各キャリアが設置した設備で、通信のために定期送信している所在情報を使って位置情報を特定します。



GPSが苦手とする地下や建物内の位置情報把握も得意ですが、詳細な位置特定は不得意とされています。



特に人工衛星から計測するGPSの精度は高く、地域だけでなく、「A地区のXビル別館」のように建物の指定も細かくできるのが特徴です。



カーナビ、スマホ、タブレット、スマートウォッチ、デジカメといったアイテムに搭載されています。



精度は高いですが、地下や建物内の階数特定は難しいという弱点もあります。



Wi-Fiはカバーできる範囲が狭い、ユーザーがWi-Fi機能をオフにしていると位置情報を取得できないという難点はあるものの、GPSの電波が届きにくい建物内や地下でも利用できるというメリットがあります。



ビーコンはBluetooth機能を利用した位置情報システムで、Wi-Fiと同様にカバー範囲は広くありませんが、限定的な範囲のユーザーへポイントを絞って情報を発信できる、発信機器の設置が簡便という利点があります。



これらの位置情報技術は、強みと弱みを併せ持っているため、マーケティングとして用いるには、まずどのようなシーンでユーザーの位置情報を把握すべきかを検討するのが重要です。



デリバリービジネス



デリバリービジネスは、位置情報データの活用によって大きく変化したと言えます。



出前は江戸時代から存在したとされる古いサービスですが、位置情報を活用する事でDX化が大きく進み「フードデリバリーサービス」に進化しました。



誰もがスマホやカーナビを使えるようになり、位置情報が社会実装された事で、出前の利便性や可能性は大きく拡大したのです。



キャッシュレス決済



大手キャッシュレス決済サービスでは、12月6日からアプリ上で位置情報(住所)から特典を実施している店舗情報を検索できるようになっています。



これは、クーポンやスタンプカード、チラシ掲載を行なっている店舗や、独自のキャンペーンを実施している店舗をユーザーが検索できるシステムで、デジタル発信している集客施策をリアル店舗への送客につなげられるという意味で、顧客エンゲージメントを高める効果が期待されています。



なお、この技術は2023年12月時点で特許出願中となっています。



セグメントマーケティング



今年の1〜3月に、大手通信会社とJR東日本は、約30万人が利用する2つの駅でセグメントマーケティングの実証実験を行いました。



この実験には、通信基地局とWi-Fiを使った位置情報が使われています。



「該当店舗の周辺を通る利用客に来店促進のメッセージを送る」、「イベント会場に集まっている利用者に直接メッセージを届ける」といった顧客属性に合わせたメッセージをリアルタイムで送る事ができるのが、セグメントマーケティングの優れている点です。



また、ユーザーの居住地や年代といった属性と位置情報を組み合わせる事により、さらに個別化されたメッセージを配信する事もできます。



電車内広告・屋外広告の効果測定も可能に



位置情報は、電車内広告や屋外広告の設置効果を可視化する上でも役立つと考えられています。



こうした広告は、「次のような広告を見た事がありますか?」といった記憶に頼るアンケートでしか効果の計測ができないとされてきました。



しかし、位置情報を活用すれば、消費者の移動を測定できるため、効果の可視化が可能になります。



さらに、TVCMの接触ログを連携させれば、広告が消費者の行動にどのような影響を与えているかを見える化する事も可能です。



すでにある企業では実証実験が行われていて、TVCMと電車広告、WEBの3つに接触した場合の方がそうでない場合と比較して来店率が最も高い事が分かっています。



また、TVCMのみに接触しただけの消費者の来店率は非常に低く、TVCM+電車広告、電車広告+WEBのように、複数の広告や媒体に接触している方が来店率が高いという結果も公表されています。



最適なマーケティング施策を実施するために



位置情報は、特定の個人を識別できる場合「個人情報」に該当します。



特定の個人を識別するまでには至らない位置情報は「個人関連情報」と言いますが、どちらの場合も事業者が位置情報を利用するにはユーザー(利用者)の同意が必要となります。



これらは、2022年4月の個人情報保護法改正によって定義づけられました。



この法により、個人情報をマーケティングに活用する場合は、その個人情報(個人関連情報)をどこで取得したのか、どのように保管して、どのように活用するのかを明確にしておく必要があります。



位置情報はマーケティング施策において多くの可能性を秘めた情報ですが、その分、取り扱いにも留意が必要だという事をふまえておく必要があるかもしれません。



位置情報を元にして得られる情報には、移動経路、通行量、エリア来訪頻度、滞在時間、リアルタイムの混雑度と人口密度の予測等があります。



この中から自社のマーケティング施策に必要な情報を見極め、取得するのに適切な方法(Wi-Fi、GPS、ビーコン等)を設定していきましょう。



現代は、情報が絶え間なく入ってくる情報過多の時代です。 どんなに消費者にとって有益な情報でも、タイミングを見誤ると不要な情報と判断され、他の多くの情報と共に流されていってしまいます。



必要な時、必要な場所で消費者にふさわしい情報を届けるため、位置情報を使いこなしていきましょう。