企業間取引のキャッシュレス決済推進を。BtoB-ECサイトでデータの一元管理も可能に
キャッシュレス決済は、企業間取引にも徐々に広まっています。
しかし、キャッシュレス決済導入には、ツールやデータの散在に悩まされる現場という課題がつきもので、複数のツールを使い分けることが業務を圧迫することにつながっているケースがあります。
さらに、データが散在することでログ(行動履歴)が追いかけられなくなったり、複数のツールを横断することで情報漏洩のリスクが高くなってしまったりと、キャッシュレスの利便性を充分に享受できないという現場の声も上がっています。
これらの解決と、BtoB(企業間取引)のスムーズなキャッシュレス決済導入には、データを一元管理できるシステムが欠かせません。
即応性のあるアイデアには、一つ、BtoB-ECサイトをハブとして、データを一元管理するという方法があります。
本稿では、企業間取引のDX化による現場の声を紹介しながら、使用するデジタルツールを一本化する重要性、データ一元管理のメリットなどを順に解説しています。
無料メルマガ登録はこちら:デジタル化のヒントが満載のメルマガをお届け
企業間取引でのDX化は進んでいるか
経産省のデータによると、令和4年(2022年)のBtoB-EC(企業間電子商取引)の市場規模は、420.2兆円でした。
これは前年比12.8%増の数字で、順調にその規模を拡大させています。
しかし、こうした数字の一方でキャッシュレスへのスムーズな移行に課題を感じている企業も少なくありません。
企業間取引のキャッシュレス化が進んだのは、インボイス制度の施行や電子帳簿保存法の改定によるところが大きいとされていますが、現場では複数のデジタルツールを使い分けながら見切り発車の状態でキャッシュレス取引を行なっているケースが散見されます。
企業間取引は、自社のみがデジタル対応をしても相手企業の手法に合わせる必要がある場面があり、社内のシステム整備だけでは完結しないのが難しいところです。
時代の潮流はキャッシュレスですが、その流れに合わせて社会全体がある程度足並みを揃えて刷新に向かっていく必要があるのかもしれません。
企業間決済はキャッシュレスへ
現金ではなくコードやカードを利用する決済スタイルは、個人の消費行動としては一般的になりつつあります。ほとんど現金を持ち歩かないという人も増えてきたのではないでしょうか。
ある調査によると、BtoB間の取引においても同様にキャッシュレスでの決済を望む声が高まっています。この調査では、対象企業の約60%以上が「クレジットカード決済で取引をしたい」、あるいは「クレジットカード決済を(相手企業が)取り入れてほしい」と考えていることが明らかになりました。
調査の対象企業は飲食や卸業だけでなく、農業や建築、医療関連事業など多岐に渡っていて、幅広い業界でキャッシュレス決済のニーズが高まっているのが分かります。
ニーズが高まっている背景としては、インボイスの導入や、電子帳簿保存法の改定が理由として挙げられました。
さらに、取引先や競合相手がキャッシュレスシステムを導入したから、という理由も挙がっていて、社会全体の傾向が徐々にキャッシュレス決済に移行していることも見えてきました。
理想の電子化率は80%以上
請求書や契約書を電子化したいというニーズもまた、高まっています。
先ほどと別の調査では、社外取引における理想の電子化は80%以上が望ましいという回答が得られました。このように回答したのは、調査対象となった企業のうちの約60%で、可能であれば社外取引のほぼすべてを電子化したいという意向がここから見えてきます。
しかし、請求書や契約書の完全電子化に成功しているのは7%以下で、理想である80%以上の電子化を達成している企業も、約20%にとどまる結果となっています。
この結果からは、現状の企業間取引は多様な取引方法が混在しており、内心は電子化を望んでいるもののそれを実現できないフェーズにいる企業が多いということが分かります。
企業間取引では多様な取引方法への対応が必要
企業間取引が電子化に統一されると、ペーパーレス推進によるコスト減、統一されたことによる作業負担の軽減、ミスの低減などが期待されています。
言い換えると、現在の多様な取引が混在する状況は、余分な作業負担が多い、ミスを減らすことができない、と考えている従業員が多いとも言えます。
ちなみに、電子化を進めている企業でも、その多くが社外取引に複数のデジタルツールを併用せざるを得ない状況であると言われています。
数字としては、2〜5種類のデジタルツールを使い分けている企業が多く、中には6〜9種類ものデジタルツールを併用しているという企業もあります。
複数のツールを併用することは、マニュアルやシステムが複雑化して業務過多に陥りやすくなる上、データやセキュリティ管理も煩雑になりやすく、働く人の負担が増大していることは必至です。
一般的に、使い分けるツールが多ければ多いほど、現場は「業務効率が悪い」と感じやすい傾向にあり、情報漏洩のリスクを感じる場面も増えてしまいます。
デジタルツールの使い分けをするくらいなら、ずっとアナログ管理のままで良いという声も少なくなく、社員の負担を軽減すべきデジタル化が、却って担当者の負担を増やしてしまうという現実が見えてきます。
企業間取引の電子化を促進するには
企業間取引の電子化を進めるには、ツールやデータを適切に管理できるシステムの構築が不可欠です。
情報が一括管理されることで、業務負担が軽減されるだけでなく、セキュリティのレベルを高めてデータ管理を安全に行えるようになります。スムーズな取引システムを導入することで、他社のモデルケースとなれば、これまでアナログな方法でのみ取引を行なってきた取引先も、キャッシュレス取引の導入を検討するかもしれません。
キャッシュレス決済の利便性や手軽さは、広く知られるようになりました。
しかし、企業間取引での本格導入については、まだ十分に浸透しているとは言えません。
業界や関係する社の中でのファーストペンギン、セカンドペンギンになるつもりで自社に合った取引のシステム構築を検討すると良いでしょう。
課題はツールやデータの散在
複数のツールを使い分けないと決済処理が行えない、そのことでデータが散在してしまい業務過多に陥っている、情報漏洩のリスクを高めている、という状況はキャッシュレスに統一する上で、多くの企業が課題と感じている点です。
前述の調査では、60〜70%の回答者が「自社のツールやデータは散在している」、そして「ツールやデータの散在が業務を圧迫している、業務に不満を感じる原因になっている」と感じていることが明らかになっています。
さらに、この散在によってログ(行動履歴)が追いにくくなることも問題です。
これを解決することが、キャッシュレス決済に統一するための重要な関門と言えるでしょう。
BtoBECサイトをハブにデータを一元化
前述の経産省によるデータでは、2022年の日本のBtoB-ECのEC化率は、37.5%で、前年比1.9ポイント増となっています。
ECサイトといえば、少し以前までBtoC(企業-消費者間)のものというのが一般的な認識でしたが、近年はその利便性に注目が集まっています。
例えば、このBtoB-ECサイトをハブとしてデータを一元化する方法があります。
もともと、ハブ(hub)とは車輪の中心という意味です。
すなわち、BtoB-ECサイトを別々のデータを管理する集線装置として用いるわけです。
この手法ならば、データ管理だけのために新しく大きなシステムを導入する必要はなく、既存のシステムから大々的にシステムを入れ替える必要はありません。
短期的な企業目標に、BtoBのECサイト構築(改修)と、キャッシュレス決済周辺業務の最適化が両方あるのであれば、それらを一挙に解決できる可能性もあります。
BtoBのECサイトが選択肢に入っていない場合にも、国内のEC化率の高まり、そして世界的なEC市場規模の拡大を鑑みれば、このタイミングで企業間ECサイトへ参入しておくのは、決して無駄ではないと考えます。
データの一元化によるメリット
データの一元化は、社内のすべての部門が企業間の取引に関わる全データを正確な形で参照できるのが最大のメリットです。
経理部門や財務部門は税務が可視化され、キャッシュフローの予測も立てやすくなります。
また、子会社や工場ともデータを一元化することで、より円滑なコミュニケーションが取りやすくなり、親会社と子会社の日常的な取引、工場との請求、財務のやり取りもスムーズになります。
別々のデジタルツールで管理しているデータを手作業で紐づけている現場も多いかと思いますが、一元化すると、そのコストや人手は不要になります。これによって、データ管理に関わる人的コストを削減し、限られたリソースを別の場所で活かすことも可能になります。
さらに、データを一元管理することにより、データ分析に注力することも可能です。
キャッシュレス決済に関わる数字が散在していると、取引を正確に行うだけで多くの時間が必要になるため、その数字や履歴を使って分析を行ったり、新たな戦略を立てるということが難しくなりがちです。
一元管理は、即時的な業務を軽減できるだけでなく、さらにその先の最適化にも役立ちます。
企業間取引のDX化は適切なベンダー選定から
本来、企業間取引のキャッシュレス決済は、フローの透明性確保や手続き簡素化のための手段であるべきです。キャッシュレス決済を導入することにより、現場の業務負担が増えてしまうのはDX化の求める姿ではありません。
自社に合ったキャッシュレス決済や周辺データを管理するシステムを構築するには、幅広い業界のシステム連携について知見があり、業界ごとの商習慣に合わせた提案ができるサポーターが必要です。
システムはせっかく導入しても適切な業務フローで運用しなければ、手順が煩雑になりやすく、現場に混乱を招いてしまいます。それを避けるためにも、二人三脚で提案ができるベンダーの存在が不可欠と言えるでしょう。
まだ多くの取引をアナログで行なっている会社も、多数のツールを使い分けて情報の散在に困っている会社も、キャッシュレス決済の真の利便性を得られるようなシステムの導入を検討してはいかがでしょうか。