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自社ECのマーケットプレイスが小売のエコシステム化を達成する


これからのEC業界で主流になると期待されているのが、自社ECをマーケットプレイス化する戦略です。
従来のモール型マーケットプレイスと比べた場合の自社運営の強みは、データ収集と顧客分析の向上にあります。さらに、BtoB、BtoCを問わず、カスタマイズやサポートが充実することで、事業者も消費者もメリットを享受できます。



自社ECのマーケットプレイスは、自社と他社が連携して大きなシステムを構築するエコシステム化を目指す手段の一つでもあります。



本稿では、国内外の家具、家電、アパレル、BtoB業界のEC最新動向を踏まえ、自社ECを活用したマーケットプレイスの多様化と進化についてまとめました。


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マーケットプレイスは自社で展開する場所へ



これまでは、ECのマーケットプレイスといえば楽天市場やAmazonマーケットプレイス、Yahoo!ショッピングといった巨大なショッピングモール型のサイトが一般的でした。
しかし、モール型のマーケットプレイスはコスト増となるケースも多く、利用事業者にとって良いことばかりではありませんでした。



モール型マーケットプレイスの最大のデメリットは、データ収集が難しい点です。
ユーザーの購入履歴や、サイトの閲覧に関する行動履歴は、自社の顧客分析に使える貴重なデータですが、モール型を利用していると収集ができないケースがほとんどです。



これを解決するために、昨今では自社でマーケットプレイスを展開する企業が増えています。
自社展開することで、顧客のニーズはより見えやすくなり、データの収集もしやすくなります。
自社に合った手法を検討することによって出品や配送コストの削減が期待できるなど、具体的なメリットがあります。



自社ECをマーケットプレイス化するメリット



自社ECをマーケットプレイス化すると、BtoB、BtoCなど取引の種別によって異なるメリットが得られます。



例えば、BtoBをメインとするマーケットプレイスなら、大口注文や継続的な注文を自社の顧客管理、顧客分析などと組み合わせて包括的に運用できるという利点があります。
注文や契約の流れをシステム化することで、分析に必要なデータを整理しやすくなり、さまざまな形で活用することができます。
また、モール型マーケットプレイスと比べると、企業同士のマッチングがしやすく継続的な取引がしやすいのもメリットと言えます。



BtoCがメインのマーケットプレイスの場合も、この点は同じです。
顧客管理がしやすく、販売データやサイトの閲覧履歴を分析データとして取得・活用しやすくなり、ニーズの把握が容易になります。
さらに、自社商品に合わせたサイトの作り込みや機能の搭載ができるので、ユーザーが商品を見つけやすくなるという点もメリットの一つです。



例えば、アパレル商品であれば、色違いやサイズ違いをチェックしやすくしたり、インテリア用品ならば、同じシリーズの商品やコーディネートしやすい系統ごとにカテゴリを作るなど、扱う商品によって見やすいレイアウトはそれぞれです。



モール型マーケットプレイスは、一度にたくさんの商品を閲覧できて便利ですが、商品によっては使いづらいと感じるユーザーもいるでしょう。ユーザビリティにこだわって作り込めるのが、BtoC向けの自社マーケットプレイスの大きなメリットです。



さらにBtoB、BtoCともに自社で運用しているマーケットプレイスなら、サポート体制を整えやすく、顧客の要望やクレームに即応しやすいのも利点です。



多様化するマーケットプレイス



マーケットプレイス自体の登場は2000年頃ですが、マーケットプレイスが多様化してきたのは、2010年以降です。SNSが急速に普及したことで、さまざまな特徴をもつマーケットプレイスが登場してきました。



世界のオンラインマーケットプレイスの上位企業は、2022年に3兆2,500億ドル(約430兆円)を売り上げましたが、そのうち約80%は、サードパーティーセラーと呼ばれるモール出店者によるものでした。
モール型店舗としても、自社とサードパーティーセラーが販売するハイブリット型マーケットプレイスが急成長しています。



こうした世界的な動向もあり、日本国内では越境ECのマーケットプレイスも注目されています。



越境ECでは、日本ですでに当たり前になっているものや、業界として成熟しきったものでも、他の国では新しいものとして受け入れられる可能性があり、日本とは異なる成長や売上が期待できるケースもあります。



日本国内を対象としたマーケットプレイスでも、特定の地方でしか入手できないものをECで販売するなど、越境ECの手法に近い展開をして成功している例はいくつもあります。
サービスやスキル、投資先、デジタル商材など、形のない商品を扱うマーケットプレイスも国内外で増えてきており、今後のマーケットプレイスもさまざまな進化を遂げて成長していくものと思われます。



使用した画像はShutterstock.comの許可を得ています




認知度の高い小売企業がマーケットプレイス展開



誰もが知っている小売企業も、続々とマーケットプレイスを展開しています。
家具家電、ファッションなど取り扱うアイテムはさまざまですが、いずれも業績は好調です。



家具業界



欧米では、フランスのユニコーン企業(企業価値10億ドル以上の未上場企業のこと)が開発したマーケットプレイス・システムを導入する中小企業が増えていますが、国内にもこの企業を戦略的パートナーとしている企業があります。



このシステムの特徴は、世界の5万社以上の販売業者とともに、自社の商品を組み合わせて掲載できるようになっている点です。



他社の商品が売れたら、他社から直接顧客の元へ届けられ、自社商品が売れたら自社が商品を発送するという仕組みは、大量の在庫を抱えることなく自社サイトの商品数を増やせるため、今欧米を中心に注目されています。



日本の家具取り扱い事業者は、このシステムを活用してホームファニシングの専門店から、暮らしの総合マーケットへのビジネス転換をはかろうとしています。



家電業界



家電業界でも、前述のユニコーン企業のシステムを自社サイトに導入した企業があります。



9月時点では、家具家電や日用品、食品、ペット用品など5万点以上が掲載されていて、すでに会員数は400万人に達しました。
10月下旬からはセラー(販売者)の募集が開始される予定で、セラー企業との共同キャンペーンなどをマーケティング施策として検討しているとのことです。



家具や家電は、利便性が消費者の生活、QOLに直結するカテゴリです。
このシステムが軌道に乗れば普及のスピードははやくなり、一気に日本のマーケットプレイスの新しい主流となるかもしれません。



ファッション業界



社名を変えて、ファッションのトータルプラットフォームへと本格的な進化を遂げると宣言したアパレルメーカー企業も、ECのマーケットプレイス化を進めています。
同社は、自社ECサイトの「オープン化」として、他社ブランドのアパレルやコスメを取り扱い始めました。



なお、同社はポイント還元セールなどのプロモーションも奏功しており、2025年2月期は、会員数が前期末比で100万人以上増、国内EC売上高が前年同期比6.8%増と、躍進しています。



自動車業界(BtoB)



こうしたマーケットプレイスの動きは、BtoB向けにも展開しています。
日本の自動車メーカーの米国販売代理店は、マーケットプレイスの仕組みを強化して、自動車のパーツの交換頻度、購入後の行動などを把握できるようにしました。



これによってディーラーは在庫のパーツを求めている顧客に販売しやすくなり、流通が活性化され、自動車本体の売上高も拡大したとされています。
自社ECはサポート体制を強固なものにできると先に書きましたが、サポートのあり方を追求していくことにより、このような売上の底上げも見込めるでしょう。



商圏の拡大とエコシステム化が狙い?



自社ECのマーケットプレイスは、他社の関連商品を掲載することで商圏を拡大できるのが強みです。



たとえば家具や家電の商品と併せて、家電のお掃除サービスといった関連性の高い商品を掲載することで、自社とセラーが相互的に売上を伸ばすことができます。



これが、モール型と自社ECマーケットプレイスの大きな違いです。運営企業のブランドカラーや顧客層とマッチするセラーを厳選することで、セレクトショップのように目的なテーマを設定し、サイトを運営することができます。



自社ECマーケットプレイスを閲覧する消費者も、自分が求めている商品と、それに関連するものを同じサイト内で購入できる可能性が高まります。このことから、自社ECマーケットプレイスは、運営する企業とセラー、消費者の皆が良い思いをできる三方よしの場所になると期待されています。



異なる業界や製品が連携して大きな商圏やシステムを作ることを「エコシステム」と言いますが、自社ECのマーケットプレイスはまさにECサイトのエコシステム化の完成形の一つとなるはずです。



エコシステムは、もともと生物学の用語で「生態系」という意味です。
デジタル技術の急速な発達によって、オンラインの商圏は24時間、世界へと開いています。
巨大な生態系(エコシステム)の中でどれだけ自由に泳げるか、それは世界の広さと可能性を知ることから始まるのかもしれません。