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プロトタイピングで始める開発改革:PoCや生成AI活用でアジャイル以上に速く、顧客ニーズに応える

プロトタイピングは、仮説と検証をスピード感をもって繰り返すことで、ニーズとのズレやリスクを早期に発見し、高精度なシステム・サービス開発を実現する手法です。

スピーディな開発が可能なアジャイル法よりも、迅速に開発が進められる可能性があり、サービスやビジネスの思考を深めるためにプロトタイピングが用いられることも増えてきました。

プロトタイプのメリットはいくつもありますが、リスクやニーズとのミスマッチを事前に知ることができるのが最大の利点になります。

本記事では、従来手法との違い、PoCとの関係、生成AIツールの活用まで含めて、最新のプロトタイピング活用術をご紹介します。

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サービス開発におけるプロトタイピングの重要性

プロトタイプ(試作モデル)を基に、少しずつ修正を重ねてより良いものを作り出す「プロトタイピング」は、とりわけサービス開発、システム開発の分野で重要視されています。

ワード自体は、ソフトウェア開発のほか、実際に物品を形作る製造業でも使われている言葉ですが、近年は、ビジネスの課題を解決する手法を決定づけるために用いられることもあります。

通常、顧客満足度を追求しようとすると、修正や改変を繰り返して開発期間が長引きやすくなります。

一方で、プロトタイピングでは、効率よく修正を行うことで期間の短縮と高い顧客満足度の双方を達成しやすくなります。

様々な開発手法のうちの一つ

プロトタイピングは、数ある開発手法のうちの一つです。

システム開発の分野では、要件定義、基本設計、詳細設計といった工程を一つずつ完了させて次へ進む「ウォーターフォール開発」、これらの工程を機能ごとに繰り返しながら進める「素早い」という意味を持つ「アジャイル開発」などが、これまでの一般的な手法でした。

アジャイル開発に似ている手法に「スパイラル開発」という手法もあります。これは、設計・実装・テストを繰り返しながら完成度を上げていく手法です。

この他にも、システムを、モデル(Model)とビュー(View)、コントローラー(Controller)という3つの要素に分けて別々に開発していく「MVCモデル」や、開発と運用の担当部門が連携して開発を進めていく「DevOps(デブオプス)」という手法もあります。これは、開発(Development)と運用(Operations)の頭文字をとって作られた言葉です。

こうした開発手法は、システム要件によって最適なものがそれぞれ異なります。

プロトタイピングのメリットを知ることで、他の開発手法の利点も可視化され、それぞれに最適な手法が見えるようになるはずです。

プロトタイピングによるメリット

プロトタイピングのメリットは、試作を作ることによってイメージした通りのシステムを作りやすくなることです。

また、プロトタイピングは柔軟性の高い手法のため、「使用イメージが明確でない」段階からでも開発を始めやすいという利点があります。

さらに、途中で方針が変更された場合でも転換が比較的容易で、時間と金銭のコストを浪費せずに進められるのもメリットと言えるでしょう。

大規模なシステム改修を行う場合、あるいは今までになかったシステムを導入する場合などに、プロトタイピングは特に有用な開発手法となります。

実際にプロトタイプを動かすことで、発生しうるリスクなどネガティブな要素を事前に把握することができるからです。

サービス開発にも有効な手段

プロトタイピングは、物品やシステムではなく、ビジネスにおける「思考プロセス」の一つとして活用もできます。

市場ニーズにマッチするアイデアやコンセプトを、プロトタイピングで検証することで、スピーディにサービスやビジネスモデルを生み出せるようになります。

例えば、アプリゲームはコンテンツや新機能を次々と追加する必要があります。

しかし、ユーザーの満足度を保つためには、1つのコンテンツや機能を作り上げるために何度もフィードバックを重ねていかなければなりません。

その点、プロトタイピングはフィードバックを反映し、またフィードバックを行うサイクルを迅速に回すことができます。

使用した画像はShutterstock.comの許可を得ています

試作(プロトタイプ)やPoC(検証)は必須か

PoC(Proof of Concept)は、「概念実証」と訳します。

ビジネスにおいては、実証実験という意味で使われることもあります。

PoCは、プロトタイプよりも、簡易的なデモンストレーションや実験を意味するワードで、サービスの概念やシステムの実現可能性をまず検証するために用いられます。

新規のアイデアを形にする時、はじめから大規模にスタートすることはあまりありません。小規模な実証実験を繰り返して、その成立を目指していくのが一般的です。

PoCによって、低コストで実現可能性を見極めることで、スピード感をもってアイデアを形にしやすくなります。

実証実験によって、ニーズがあまりない、もしくは開発期間が長期間に及ぶことが判明した場合、ニーズを高めたり実現可能性を高めたりするために、アイデアの練り直しをすることもあるでしょう。

プロトタイプとPoCは、「すぐに作れて大まかな検証で結果を得られるもの」と、「すぐに作れるが検証に相応の時間がかかるもの」、「構築に時間がかかるが、大まかな検証で結果を得られるもの」、「作るのにも検証にも時間がかかるもの」のように、多様なレベルで実行することができます。

自社のシステムやサービスの規模、ローンチ希望のタイミングによって、これらのレベルから最適なものを設定し、実行に移していく必要があります。

【参考】PoCとプロトタイピングの違い

項目PoC(Proof of Concept)プロトタイピング
目的実現可能性の検証試作での検証・体験
実装レベル最小限の実装でOK実際の動くモデル用意も可能
対象フェーズアイデア段階開発フェーズ初期〜中期
主な成果コンセプトの妥当性UIやUXの仕様確認

「作る」ことより「効果測定」を重視

プロトタイピングは、そのシステムやサービスの「効果測定」を重視している開発手法です。

いかにスピーディに効果を把握して、ブラッシュアップするかという点にフォーカスされています。

プロトタイピングのメリットとして、「事前にリスクを把握しやすい」という事柄を挙げましたが、これは試作で検証を進めることにより、早い段階で問題点をキャッチできるからです。進めていて問題が生じた時は、一つ前の試作に戻って修正することで、手戻りを最小限にとどめられます。

例として、UIデザイン、サービス運用、ニーズの把握という3つのトピックにおけるプロトタイピングについてまとめてみました。

UIデザイン

プロトタイプがあると、UIデザインを実際に動かすことができるため、完成後の「想定と違う」というギャップを埋めやすくなります。

紙に書いたデザイン、図などは、もっとも簡易的なプロトタイプと言えるでしょう。

サービス運用

新規サービスのプロトタイプを作る場合、サービスのモデルを手作業で再現するのが比較的容易です。

また、精緻な検証を行いたい場合は、既存システムを活用してプロトタイプを構築したり、検証に必要な部分のみを実際に作ることもあります。

ニーズの把握

プロトタイピングを実行する時、事前にニーズの把握をしておくことは重要です。

特に新規サービスの場合、「顧客の課題を導入によって解決できるか」を確かめておく必要があります。ニーズのない不要な機能や仕様をカットしていくのも、プロトタイプの検証のおける重要なプロセスです。

アイデアを形にして「確かめる」のが目的

机上の空論、百聞は一見にしかずという言葉の通り、考えているアイデアは形にしてみると思わぬ問題が見つかることもあります。

「変更する」を前提としたプロトタイプを作ることで、柔軟に変更を加えやすくなり、フィードバックを繰り返してよりよいものを作ることができます。

AIを活用したプロトタイピングツールも増加中

AIを活用したプロトタイピングツールは、従来よりもさらに効率化が期待できます。

プロトタイピングツールとは、AIで各プロセスを高速化・高解像化するもので、専門分野の人材と組み合わせてプロジェクトを進めると効果を発揮します。

生成AIは、まったく新しいアイデアを生み出すなどクリエイティブな作業を不得意としますが、大量のデータを検証したり、条件に基づいてプロトタイプを作ったりすることが得意です。

プロトタイピングツールは、AIのこの特長を最大限活かしたものが多く、プログラミング言語を用いずに、手書きの図を含めた画像、あるいは自然言語(人が日常的に使用している言葉)のみで使えるツールも登場しています。

AIを使用すると、チャットを使って反復開発を実行できるので、人が実際に改修をしなくても進めることができます。

AIによってスピーディかつ専門的な改善が可能に

これまで、独自性の高いアプリやシステムを開発するためには、IT人材の内製化が欠かせないとされてきました。

内製化が可能であればそれに越したことはありませんが、こうしたAIを用いたツールや必要なリソースの外注を行うことで、より顧客満足度の高いシステムを生み出せる可能性があります。

ビジネスの動きは日々高速化しています。ニーズの移り変わりも早くなっているため、それに伴って開発期間も短縮化が求められていく傾向が今後も続いていくでしょう。

そして、開発の場面では「作る」ことが目的ではなく、「顧客に価値を届け、事業成果を上げる」ことがゴールになります。生成AIや新しいツールの力も借りながら、柔軟かつスピーディな開発体制を築いていきましょう。