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ロイヤリティ・プログラムからファンクラブへのパラダイムシフト

従来のロイヤリティ・プログラムはコストがかかり、規模も大きくなって破綻を迎えようとしています。ソーシャルメディアは既存のロイヤリティ・プログラムを、シンプルで安価な「ファンクラブ」へと変換しようとしています。
ロイヤリティ・プログラムは初めて航空会社がロイヤリティ・カードを導入した30年前から大きく変化していません。もちろんこれまで数々の特徴が加えられてきたのは確かです。Visa、MasterCard、American Expressといったカードと小売りや航空会社が提携したカードが発案されてきました。CRMが洗練されてきた結果、月次計算書は詳細にわたり、ダイレクトマーケティングが重視されてきています。POSに登場したリアルタイムのポイントとマイレージの還元は10年前にスタートし、今や業界の標準となっています。
筆者はこれらのイノベーションを自ら設立したベンチャー企業を通じて見てきました。そのベンチャーは世界30カ国の銀行を顧客とする、クレジットカードのロイヤリティ・ソリューションを提供する企業です。
筆者はこれらのシステムが鈍重で複雑で、高コストなことに疑問を抱いてきました。業界全体がそもそものロイヤリティの目的を見失い、プロセスがどんどん肥大化してきました。
ロイヤリティをテーマとする会議では「ロイヤリティ」という言葉の持つ意味を議論することが多々あります。言葉の持つ感情的な意味合いにとらわれてしまうのです。こうしたことは他の業界ではあまり見られないことです。

ロイヤリティの専門家は自分の能力をミステリアスで価値のあるものと思わせるかのように、複雑なコンセプトや業界用語を多用します。調査に調査を重ね、その結果たいてい結論はロイヤリティ・プログラムのROI(投資収益率)は正確に計算することはできないというものです。ロイヤリティの専門家はこれを真実でないと主張し、ROIを実証する複雑なモデルを披露するでしょう。筆者の会社は2004年のBanker magazine で年間ROI大賞を受賞しました。数年後、複雑なROI計算に精通しているのはただロイヤリティ・プログラムが「なくても問題ない」カテゴリーに属しているからだということに気づきました。Apple製品を持っている人にはこの意味がよくわかると思われます。
CRMやロイヤリティの専門家にとってソーシャルメディアは大きな意味を持ちます。CRMとソーシャルメディアの相性は抜群であると思われます。2011年のIBMの調査「ソーシャルメディアからソーシャルCRMへ」によると、企業が思う顧客の求めるものと、企業とのソーシャルメディアのやりとりで顧客がいう求めるものとの間には大きなギャップがあると判明しました。Facebookで顧客が挙げる一番の理由はディスカウントでしたが、一方で企業側はそれを最下位とランク付けしていました。この認識のギャップはすぐさま修正され、企業側はFacebookのファンに新たな手法で還元することに意識が向かうようになりました。

「ロイヤリティの未来はソーシャル」これは記事の見出しによく用いられる言葉です。Cranfield大学が飛行機をよく利用する200人を対象した調査によると、72%が航空会社のソーシャル・ロイヤリティ・プログラムに参加すると答えました。ソーシャルCRMやソーシャル・ロイヤリティと検索すれば多くの企業がロイヤリティ・プログラムをFacebookやTwitterとリンクさせていることがわかります。典型的な例はシェアしてくれた人にボーナスポイントを付与するものです。ソーシャルメディアは既存のCRMやロイヤリティ管理のプラットホームに上乗せするものとして位置づけられています。そのため元々の複雑さは残ったままです。

■馬のない馬車症候群
既存のロイヤリティやCRMにソーシャルメディアを上乗せするアイデアは「馬のない馬車症候群」を思わせます。自動車は当初、馬車をモチーフに製造されました。馬がいないのにも関わらずです。技術者は当初新たなパラダイムの可能性を理解していなかったのです。しばらくした後、人々は自動車の可能性を理解し、大量生産に即した設計と製造を導入しました。今はちょうどこのような時期にさしかかっています。19世紀の技術者が既存の馬車にエンジンを積み込んだのと同じように、ロイヤリティの専門家は既存のプログラムにソーシャルメディアを加えているのです。つまりは自分たちのソリューションを見直す姿勢が欠けているのです。

当然ながら既存のロイヤリティ専門家が現行のソリューションの必要性を一掃する新しいコンセプトを導入することは期待できません。このような反対派により自分の会社ででさえ新たなソリューションを見つけ出すことができませんでした。今ある儲けを失ったり全てを失いかねないリスクを冒すことはできなかったのです。

会社を去ってからは思う存分にロイヤリティ・プログラムを大幅に簡素化する方法について考えることができるようになりました。

そしてFacebookのファンページが新世代のロイヤリティ・プログラムの核となるであろうことに気づきました。多くの企業がファンページさえあればウェブサイトも必要なく、いいね!をクリックをすることがメーリングリストのフォーマット記入の代わりになることに気づき始めています。
ウェブサイトの中にはFacebookでログインできるものやemailアドレスでアカウントを作成できるものも既にあります。しかしここで言いたいのはそれらの選択肢を排し、単純にいいね!をクリックすることでメンバーシップ登録ができるということです。こうしたシステムによりロイヤリティ・ソリューションを提供する企業は業務の大部分を失いかねません。このFacebookのいいね!はロイヤリティ・プログラムの大幅な簡素化に非常に有用なのです。

まだ足りていない部分は実際に販売する時点で顧客がファンかどうかを簡単に把握する方法です。顧客がファンかどうか簡単に証明できなければいいね!クリックは無意味です。カードや携帯電話をかざす方法も試しましたが、小売りの意向で結局電話番号に落ち着きました。メンバーシップ登録フォーマットに打ち込んだりカードを持ち歩く必要はなく、いいね!をクリックして支払いの時に電話番号を打ち込むだけでいいのです。基本的なCRMや分析を組み込めば小売りはロイヤリティ・プログラムで得られるものの90パーセントを低コストで手に入れることができます。コストを抑えるためカード会社のスポンサーシップを組み込み、口コミを期待して投資を行います。投資にはディスカウントやその他何でもつけたい特典をつければよいのです。

■新たなパラダイム

どの小売りであってもコマーシャルと同じような独自のロイヤリティ・プログラムをコストをかけずに持つことが可能です。ただファンページを持てばいいのです。

さっそく興味深い成果が上がっています。シンガポールの地元企業はリピーターが5倍、ファン獲得率が7倍、口コミ広告が10倍に増えたと報告しています。
「ファンクラブを開始する前はいいね!を200得るのに半年かかり、1000に到達するには数年かかると予想していた」と地元レストランのRock and Ashは答えています。「ファンクラブを開始すると半年以内に1000を超え、一年で2000に到達した。今は3000に近づき、その内の八割はファンクラブのメンバーに登録している」

多くの顧客がファンとなることで、レストランのFacebookでのファンページ更新情報は多数の人に伝わります。これにより顧客にセールの情報などを提供しやすくなります。毎日の更新を心がければ顧客はリピーターとなってくれるはずです。

「Facebookのファンページはニュースレターにステロイドを加えたようなものだ」とレストランオーナーは語ります。「更新情報ではファンがいいね!を押したりシェアをしたりできる。操作も簡単でスマホから簡単に写真を投稿したりもできる。ランチタイムやティータイムのタイミングを狙って投稿し、メニューの写真を載せることで顧客を呼び込もうとしている。」

少しでもリピーターが増加すれば利益に大きな影響が出ます。当初は売上の5パーセントと見込まれていたリピーター客の割合は今や30パーセントに上りました。

「ファンクラブがなければ別のマーケティング方法に投資するしかなかっただろうが、それはより高コストでリピーター客も望めなかっただろう。ファンクラブがなければ売上はもっと低いものだったと思われる。」

これこそまさにロイヤリティ・プログラムに求められる利益創出です。今やコストや経費をかけずともROIの創出は容易でわかりやすいものとなっており、複雑なスプレッドシートは必要ありません。

200人の顧客を対象にした調査によると、86パーセントの顧客がファンクラブによってリピーターになり得ると答えています。 57パーセントは予想よりも多く支払うとし、平均して一回の飲食につき10ドル増加しています。67パーセントはファンクラブがないと利用する回数は減ると答えています。機能的な面で言うと、96パーセントはファンクラブへの加入は簡単またはとても簡単と答えており、92パーセントは支払プロセスが早いまたはとても早いと答えています。

■インフレーションが次なるビッグチャンス?

筆者が設立した会社の成功はソフトウェアのクオリティやリーダーシップ、特許などによるものと考えていました。これは間違ってはいませんが他にも要因があったのです。

200年にトルコのAkbankという銀行に向けたロイヤリティ・プログラムを開発したことがあります。初めての大きなプロジェクトのひとつであり、販売時点でリアルタイムのキャッシュバックを行うというものでした。他国の銀行はこれを見て筆者の会社のソフトウェアを使用して似たようなプログラムを導入しました。30か国の銀行と契約を交わし、30人だった社員は130人となりました。

しかし後々になってトルコの銀行ほどの良い結果が他の銀行には伴っていないことが判明してきました。この違いはなんでしょうか?

■インフレによるトルコリラの暴落
導入したのは顧客がクレジットカードで買い物をし、キャッシュバックをすぐに受けられる仕組みです。これにより顧客は通貨の価値がさらに下がる前に価値を固定するため、保管が可能な食料品や日用品を買い込みました。

これは10年前の話ですが今はどうでしょうか?トルコのインフレが筆者の企業を成長させたように、思いがけない要因がこれからの企業に影響を及ぼすことは十分考えられます。世界的にインフレが発生する中でどのようなビジネスが恩恵を受けるでしょうか。10年前にはスマホはまだ存在せず、ソーシャルメディアもまだまだ成長していませんでした。これからはどのようなソリューションが繁栄を極めるのでしょうか?

■携帯電話で買いだめがより便利でお得になる
小売りのプリペイドカードはお金をあらかじめ払っておき、後でコーヒーやサンドイッチを購入したりするのに使います。これにより顧客はディスカウントを得て小売りはキャッシュフローを得ることができます。ほとんどのPOSシステムはこれに対応しており、小売りは簡単に導入することができます。

例えばこのプリペイドカードにお金でなく、商品をチャージすることをイメージしてください。
10杯分のコーヒーを買うためあらかじめ50ドルをチャージします。しかし次の月には10杯のコーヒーが55ドルになっているかもしれません。そうなれば今チャージしておく方がお得になります。

スマホがあればこれらのいくつものアカウントを管理しやすくなります。商品を買いだめする必要もなく、またソーシャルメディアがあれば現物の受け渡しなしで商品を友人にあげたりすることもできます。

支払業者はこうした仕組みが安全な環境で実施されるかどうかの重要な役割を担います。企業が撤退した場合でも保証を用意することなどが求められます。

■これまでとは違った物々交換のカタチ
「馬のない馬車症候群」を乗り越えた先にはソーシャルメディアのファンクラブと支払、ロイヤリティ、携帯電話、そしてCRMを結びつけた全く新しいアプリケーションが登場すると予想されます。

この記事はFrom Loyalty Programs To Fan Clubs, A Paradigm ShiftをOrange Blogが日本向けに編集したものです。