社会の変遷にみる、日本の小売とPOSレジシステムの歴史
20世紀、日本の小売の主たる業態は大きな変遷を遂げています。
明治維新後の百貨店が王者だった時代から、インターネットの普及によるネットショップの時代、そして未来のオムニチャネル化まで、小売業の歴史を消費社会の変遷とからめてご紹介します。
また、各時代の小売りを支えたレジスタについても、その進化の過程をまとめました。
当時の百貨店は今でいうテーマパークのような存在で、ただ買い物をする場というだけでなく、近代的な、つまり西洋的な建物や商品を見ること自体を楽しむ場としての機能も有しており、上流階級がこぞって出かけたと言われています。もともとは東京や大阪などの中心都市にのみ存在していましたが、1920年代以降は地方都市にも多くの百貨店が開店、大衆化していきました。
遅れること約20年、1897年に牛島商会がアメリカからレジスタ(posレジシステム)を輸入したのが日本におけるレジの歴史の始まりです。当時のレジは入出金記録をとる金銭管理機能を中心とした事務機でした。ベテラン営業マンの月給が40円前後であった時代に、レジスタ(posレジシステム)1台が月給の5~50倍したといわれています。
1910年頃からは百貨店への導入が進み、加算機能や取引の明細とその合計の表示、レシート発行機能などが追加されていきました。
スーパーの発端は1953年、青果店「紀ノ国屋」によるセルフサービスの導入と言われています。1960年前後には、ダイエー、ヨーカ堂、岡田屋(現在のジャスコ)がチェーン展開し、スーパーは著しい成長を遂げました。チェーン店方式で同じ商品を大量に仕入れて販売するという方式は、テレビ・洗濯機・冷蔵庫が3種の神器として人々が買い求めたように、同じものをほぼすべての日本人が求めるという大量生産大量消費の時代にマッチした経営手法でした。
1960年代後半になると、コンピュータへの入力情報を自動で作成することができるレジが発売。コンピュータといっても当時は紙テープを読み込ませる方式で、レジスタは歯車の位置を電気信号に変えて、そのデータを紙テープ穿孔機に伝えパンチ・テープを作成するというものでした。
コンビニ最大手のセブンイレブンは1974年に1号店がオープンしてからフランチャイズ展開を進め、1983年には2千店舗を突破。コンビニエンスストア全体の店舗数も1985年には3万店に達しました。
コンビニが急成長した理由は主に2つ。まず1974年の「大規模小売店舗法」の施行によって、スーパーマーケットは出店や店舗面積に制限が加えられることになりました。そこで大手スーパー各社は大規模小売店舗法に触れないサイズの小売業の開発に力を入れることになったのです(イトーヨーカ堂系列のセブンイレブン、ダイエー系列のローソン、西友系列のファミリーマートなど)。
次に、消費者ニーズの多様化があげられます。勤務時間・通勤時間の長時間化、女性の社会進出、単身世帯の増加、都市化の進行など、ライフスタイルや環境の変化により「少し高くてもすぐにほしい」「夜遅くまで営業してほしい」「ひとりで食べきれる量のおかずでいい」といった新しいニーズが出てきたのです。
日本でもPOSレジシステムの開発が進み、ペン状リーダーでのスキャニングによる商品タグの自動入力やカラー・バーコード・システムも開発され、従来の手作業による会計業務の大幅な改善に寄与しました。百貨店での導入が急速に拡大したPOSレジシステムですが、1980年代にはコンビニでも普及。部門別ではなく、商品ごとの売れ筋などを把握することが可能となりました。
1980年代後半には、本部と店舗をつなぐオンラインシステムを搭載したPOSレジシステムが登場、チェーンストアは各店舗や商品の特性を把握でき、本部での売上集計や監査が合理化されました。
POSレジシステム普及の要因のひとつに、1978年の共通商品コード(JANコード、バーコード)の制定があります。これにより商品を単品ごとに管理することができるようになりました。POSレジシステムはただの合理的なレジではなく、商品政策、在庫管理、発注管理など、小売業での利益に直結するシステムだと認識されるようになりました。
広くて洗練されたパーク内に複数メーカーの店舗が一堂に会するアウトレットは、旅行よりも手軽なレジャーを味わうことができるという点も小売業態として成功したポイントです。
アパレルなどのメーカーとしても、早い商品サイクルにより余ってしまった在庫を処分することができ、これまで接することのなかった顧客層のファン化が期待できました。
Eコマースが最初に行われたのは、1994年のアメリカと言われています。翌年にはAmazon.comが正式にサービスを開始、2000年には日本版サイトAmazon.co.jpがオープンしました。楽天市場がサイトオープンしたのは1997年、当初の出店店舗はわずか13店舗、初月の流通総額は32万円だったと言われています。それから順調に成長し、2007年の楽天取引高は5000億円を突破。
全体の小売業のEコマース市場も、2011年には4.5兆円と、百貨店の市場規模(6.7兆円)の約7割の水準まで拡大しています。アメリカでは2011年にEコマースの売上高と百貨店の売上高が逆転し、小売業界の構造が変わりつつあります。
また、これまで百貨店など実際に店舗や売り場をもつ小売業態が得意としていた「実際に商品を見て安心して買うことができる」「販売スタッフからアドバイスをもらえる」といったきめ細かい対面販売の優位性を、ネットショップでもカバーすることができるようになってきました。たとえばスタートトゥデイが運営するアパレル通販サイトZOZOTOWNでは、各商品を詳細に採寸しメーカー間の微妙なサイズ差の問題をクリアにしたほか、Amazon系の靴専門サイトでは返品に無料で応じ、試着してからの購入を可能にしています。
オムニチャネルリテイリングとは、リアル店舗、ウェブサイト(Eコマースやコーポレートサイト等)、DM、ソーシャルメディア、スマホ・モバイルなど無数の販売チャネルを通じて顧客と相互交流することを目指す小売戦略のことです。
百貨店やスーパーの時代では、消費者は店に出かけ、商品を直接見て、買うか買わないかを判断していました。多店舗の情報を調べるすべは直接行く以外にないため、基本的にはその店にあるものの中から購入する商品を選ばされていた状態と言えます。
ネットショップの時代には、価格比較サイトやレビューサイトを駆使することで、立地や時間に関係なく購入する店舗を選択することができるようになりました。
しかし、すべての購買行動がネットに移行したわけではなく、「高額商品はやはり直接見て吟味したい」というニーズや「ネットで買って送られるのを待っていられない、すぐにほしい」という声も多く、消費者は得られる情報を駆使して購入する店舗をネット/リアルを問わず決定しています。
FacebookやLINEなどのソーシャルメディアと常につながっているということも消費者行動の変化を起こしました。「日常のシェア」「感動のシェア」が当たり前になることで、商品の購入基準も「SNSのつながりの中でどう評価されるか(いいね!をもらえるか、コメントをもらえるか)」が重要になりつつあり、購買行動に感動体験を求めるようになりました。
そこで、ウェブサイトやSNS、DMなど使い得るすべてのツール(チャネル)を活用して消費者にアプローチし、商品の検討をしてもらい、店舗やネットショップで購入してもらい、その情報をシェアしてもらい、またどこかのチャネルから接触してリピートしてもらう…というのがオムニチャネルリテイリングなのです。
いち早くオムニチャネルリテイリングを実施したアメリカの百貨店メイシーズは営業不振から脱却、ブランドに対するロイヤルカスタマーが増加しただけでなく、グループ全体の劇的な在庫圧縮と売場の効率化が進み、会社の業績は見違えるように改善しています。
(メイシーズの取り組みについてはこちら)
すべてのチャネルを連携し消費者にアプローチするオムニチャネル(※10)
たとえば色違いやサイズ違いなどで店舗に在庫がない場合でも、店頭でネットショップの在庫を検索できればお客様に商品を案内し、その場で決済、商品は自宅に郵送、と売り逃しを防ぐことができるからです。
近年では、ECとリアルのデータ共有ができるだけでなく、小型軽量・省スペースで持ち歩きもできるタブレット型のPOSレジシステムが開発されています。これまでレジカウンターに据え付けだったPOSレジシステムの機能がiPadやWindowタブレットでも扱えるようになったことで、店舗での利用だけでなく、セール会場や店先、訪問販売でも会計と在庫管理、販売管理ができるようになりました。
https://orange-operation.jp/posrejihikaku/pos
リアル店舗、ECサイト、SNSなどのチャネルを素早く統合し、最適な組み合わせができた企業がこれからの小売業をリードするでしょう。
明治維新後の百貨店が王者だった時代から、インターネットの普及によるネットショップの時代、そして未来のオムニチャネル化まで、小売業の歴史を消費社会の変遷とからめてご紹介します。
また、各時代の小売りを支えたレジスタについても、その進化の過程をまとめました。
目次
近代化の波、百貨店の時代(1900~1930年代)
日本における近代的小売業態の歴史は、20世紀初頭の百貨店の登場によって幕をあけました。1904年、三越呉服店(現在の三越伊勢丹)がデパートメントストア宣言を発表。陳列販売の開始や洋式簿記の導入、取扱品目の拡張などの経営革新を次々と行い近代的百貨店の土台を築いたといわれています。三越に続き、高島屋や白木屋(現在の東急百貨店)、阪急百貨店など、呉服商や鉄道会社が次々に百貨店を開設していきました。当時の百貨店は今でいうテーマパークのような存在で、ただ買い物をする場というだけでなく、近代的な、つまり西洋的な建物や商品を見ること自体を楽しむ場としての機能も有しており、上流階級がこぞって出かけたと言われています。もともとは東京や大阪などの中心都市にのみ存在していましたが、1920年代以降は地方都市にも多くの百貨店が開店、大衆化していきました。
1929年の三越呉服店(※1)
日本最初のレジスタ(posレジシステム)
世界で最初のレジスタ(posレジシステム)の誕生は1878年。米国のカフェ経営者によって生まれました。船の機関室のエンジンやボイラーなどの計器がデザインの原型となっているそうです。遅れること約20年、1897年に牛島商会がアメリカからレジスタ(posレジシステム)を輸入したのが日本におけるレジの歴史の始まりです。当時のレジは入出金記録をとる金銭管理機能を中心とした事務機でした。ベテラン営業マンの月給が40円前後であった時代に、レジスタ(posレジシステム)1台が月給の5~50倍したといわれています。
1910年頃からは百貨店への導入が進み、加算機能や取引の明細とその合計の表示、レシート発行機能などが追加されていきました。
店舗の正面に設置されたレジスタ(posレジシステム)当時はかなり高額な商品だった(※2)
終戦後の復興、スーパーの時代(1950~1970年代)
第二次世界大戦後、復興する日本とともに成長したのがスーパーでした。スーパーは日本特有の業態で、アメリカでは別の時代に出現したチェーンストア(チェーン展開)、スーパーマーケット(セルフサービス店)、ディスカウントストア(廉価で広範囲な品揃え)という3業態がほぼ同時期に発生し統合されたものです。スーパーの発端は1953年、青果店「紀ノ国屋」によるセルフサービスの導入と言われています。1960年前後には、ダイエー、ヨーカ堂、岡田屋(現在のジャスコ)がチェーン展開し、スーパーは著しい成長を遂げました。チェーン店方式で同じ商品を大量に仕入れて販売するという方式は、テレビ・洗濯機・冷蔵庫が3種の神器として人々が買い求めたように、同じものをほぼすべての日本人が求めるという大量生産大量消費の時代にマッチした経営手法でした。
客が自ら商品を選びレジ(posレジシステム)で精算するという日本初のセルフサービス・スーパー紀ノ国屋(※3)
コンパクト化、量産化が進むレジ
スーパーの成長にともない、posレジシステムの普及、機能強化も進みました。特にブームとなったのが部門別合計会計機能を搭載したレジスタです。8個の部門を設定することができ、成果、鮮魚、精肉など取扱商品を分類して販売管理を行うことができるようになりました。それまでは店舗全体で売り上げを管理していましたが、部門別管理ができることにより商品ごとの売上や利益を把握しやすくなり、ファクトベースで売り場面積の変更や取扱商品の変更を実施するなど、会計をマーケティングに活用しやすくなりました。1960年代後半になると、コンピュータへの入力情報を自動で作成することができるレジが発売。コンピュータといっても当時は紙テープを読み込ませる方式で、レジスタは歯車の位置を電気信号に変えて、そのデータを紙テープ穿孔機に伝えパンチ・テープを作成するというものでした。
小型化したレジスタ(posレジシステム)(※2)
価格より利便性を重視、コンビニ・専門チェーン店の時代(1970年代後半~1980年代)
1970年代後半に入ると、総合スーパーの成長は鈍化し、「スーパー冬の時代」とまで言われるようになりました。その一方、コンビニエンスストアやショッピングセンター、専門店チェーンなどの新しい小売業態が参入してきます。コンビニ最大手のセブンイレブンは1974年に1号店がオープンしてからフランチャイズ展開を進め、1983年には2千店舗を突破。コンビニエンスストア全体の店舗数も1985年には3万店に達しました。
コンビニが急成長した理由は主に2つ。まず1974年の「大規模小売店舗法」の施行によって、スーパーマーケットは出店や店舗面積に制限が加えられることになりました。そこで大手スーパー各社は大規模小売店舗法に触れないサイズの小売業の開発に力を入れることになったのです(イトーヨーカ堂系列のセブンイレブン、ダイエー系列のローソン、西友系列のファミリーマートなど)。
次に、消費者ニーズの多様化があげられます。勤務時間・通勤時間の長時間化、女性の社会進出、単身世帯の増加、都市化の進行など、ライフスタイルや環境の変化により「少し高くてもすぐにほしい」「夜遅くまで営業してほしい」「ひとりで食べきれる量のおかずでいい」といった新しいニーズが出てきたのです。
セブンイレブン第1号店(※4)
POSシステム(posレジシステム)の登場
アメリカでは1965年頃からPOSレジシステムへの関心が高まり、1970年にはPOSレジシステムの標準機が発表されました。その機種は業界初の双方向インハウス・オンラインを採用しており、レジスタで集めたデータをコンピュータに直接入力することで、全取引明細の検証・記録と、売上げ情報のレポートが可能になりました。日本での反響も大きく大手小売経営者は訪米視察団を派遣し、情報収集にあたるほどだったそうです。日本でもPOSレジシステムの開発が進み、ペン状リーダーでのスキャニングによる商品タグの自動入力やカラー・バーコード・システムも開発され、従来の手作業による会計業務の大幅な改善に寄与しました。百貨店での導入が急速に拡大したPOSレジシステムですが、1980年代にはコンビニでも普及。部門別ではなく、商品ごとの売れ筋などを把握することが可能となりました。
1980年代後半には、本部と店舗をつなぐオンラインシステムを搭載したPOSレジシステムが登場、チェーンストアは各店舗や商品の特性を把握でき、本部での売上集計や監査が合理化されました。
POSレジシステム普及の要因のひとつに、1978年の共通商品コード(JANコード、バーコード)の制定があります。これにより商品を単品ごとに管理することができるようになりました。POSレジシステムはただの合理的なレジではなく、商品政策、在庫管理、発注管理など、小売業での利益に直結するシステムだと認識されるようになりました。
世界初のPOSレジシステム ペン状リーダーが懐かしい(※2)
バブル崩壊&デフレーション、アウトレットモールの時代(1990年代)
1990年、バブルが崩壊します。好景気で目の肥えた人々は商品の品質を重視しますが、財布のひもを緩めることはできません。「良いものを少しでも安く」という消費者心理をうまくついたのがアウトレットモールです。1993年に日本で初めてのアウトレットモールが埼玉県ふじみ野市に開店すると、90年代後半には出店ラッシュを迎えます。広くて洗練されたパーク内に複数メーカーの店舗が一堂に会するアウトレットは、旅行よりも手軽なレジャーを味わうことができるという点も小売業態として成功したポイントです。
アパレルなどのメーカーとしても、早い商品サイクルにより余ってしまった在庫を処分することができ、これまで接することのなかった顧客層のファン化が期待できました。
日本初のアウトレット アウトレットモール・リズム(※5)
独自仕様からの脱却、WindowsOS搭載のPOSシステム
これまでPOSレジシステムはハードウェアもソフトウェアも個々のメーカーにより独自の仕様を採用していましたが、1990年代に入るとWindowsOSを搭載したオープンPOSレジシステムが登場します。パソコンが情報システムの中核機器になり、POSレジシステム開発もWindowsOSを採用した方がコストを抑えられ、周辺機器との互換性が向上するためです。開発環境が整ったことにより、レジスタメーカー以外のシステム屋がPOSレジシステムの開発に参入することができるようになりました。その後、LinuxをベースとするPOSレジシステムも普及することとなります。Windows、LinuxOSの採用で新規参入が相次ぐPOSレジシステム市場(※6)
インターネット&パソコンの普及、ネットショップの時代(2000年代)
2000年代になると、インターネットや家庭用パソコン、モバイルの普及率が著しく上昇し、通信インフラが整備されたことによりEコマース市場が拡大、ネットショップの時代がきます。1997年のインターネット人口普及率が9.2%に対し、2001年には46.3%、2010年には78.2%の人がインターネットに接続できるようになりました。Eコマースが最初に行われたのは、1994年のアメリカと言われています。翌年にはAmazon.comが正式にサービスを開始、2000年には日本版サイトAmazon.co.jpがオープンしました。楽天市場がサイトオープンしたのは1997年、当初の出店店舗はわずか13店舗、初月の流通総額は32万円だったと言われています。それから順調に成長し、2007年の楽天取引高は5000億円を突破。
全体の小売業のEコマース市場も、2011年には4.5兆円と、百貨店の市場規模(6.7兆円)の約7割の水準まで拡大しています。アメリカでは2011年にEコマースの売上高と百貨店の売上高が逆転し、小売業界の構造が変わりつつあります。
国内EC市場規模とEC化率(電子商取引が進んでいる割合)(※7)
インターネットの力により、ほしい商品をより安く売っているサイトを探したり、すでに購入した人のレビューを見ることができたり、店の営業時間や立地に関係なく商品を購入できるという利便性もEコマース市場の成長の一因です。また、これまで百貨店など実際に店舗や売り場をもつ小売業態が得意としていた「実際に商品を見て安心して買うことができる」「販売スタッフからアドバイスをもらえる」といったきめ細かい対面販売の優位性を、ネットショップでもカバーすることができるようになってきました。たとえばスタートトゥデイが運営するアパレル通販サイトZOZOTOWNでは、各商品を詳細に採寸しメーカー間の微妙なサイズ差の問題をクリアにしたほか、Amazon系の靴専門サイトでは返品に無料で応じ、試着してからの購入を可能にしています。
ZOZOTOWNのサイズガイド1商品ごとに独自の採寸をしている(※8)
店舗と本部をブロードバンドでつなぐPOSシステム
ネットショップの発展とともに、クレジットカード決済やWEBのセキュリティ技術も進化しましたが、実は店舗のPOレジSシステムにもインターネットの貢献を受けていました。2000年代にブロードバンドによるインターネット回線が普及すると、店舗のPOSレジシステムと本部のサーバをインターネットで接続することができるようになったのです。これをWebPOSと呼びます。WebPOSはサーバにすべてのマスタやデータを保持し、レジ端末側にはウェブブラウザだけを搭載するという仕様です。ソフトウェア、ハードウェアの開発コストを抑えることとなり、安価なPOSレジシステムが登場することで、小規模なサービス業でもPOSシステムを導入しやすく、ただのレジスタからのリプレイスが促進されました。ブロードバンドで店舗のPOSレジシステムと本部のサーバを接続(※9)
店舗もネットもすべてが対象、オムニチャネルリテイリングの時代(いま~未来)
そしていま、百貨店やネット専業など、特定の業態が小売業をけん引するのではなく、デジタルとリアルの双方をうまく活用した企業が生き残るオムニチャネルリテイリングの時代に突入しました。オムニチャネルリテイリングとは、リアル店舗、ウェブサイト(Eコマースやコーポレートサイト等)、DM、ソーシャルメディア、スマホ・モバイルなど無数の販売チャネルを通じて顧客と相互交流することを目指す小売戦略のことです。
百貨店やスーパーの時代では、消費者は店に出かけ、商品を直接見て、買うか買わないかを判断していました。多店舗の情報を調べるすべは直接行く以外にないため、基本的にはその店にあるものの中から購入する商品を選ばされていた状態と言えます。
ネットショップの時代には、価格比較サイトやレビューサイトを駆使することで、立地や時間に関係なく購入する店舗を選択することができるようになりました。
しかし、すべての購買行動がネットに移行したわけではなく、「高額商品はやはり直接見て吟味したい」というニーズや「ネットで買って送られるのを待っていられない、すぐにほしい」という声も多く、消費者は得られる情報を駆使して購入する店舗をネット/リアルを問わず決定しています。
FacebookやLINEなどのソーシャルメディアと常につながっているということも消費者行動の変化を起こしました。「日常のシェア」「感動のシェア」が当たり前になることで、商品の購入基準も「SNSのつながりの中でどう評価されるか(いいね!をもらえるか、コメントをもらえるか)」が重要になりつつあり、購買行動に感動体験を求めるようになりました。
そこで、ウェブサイトやSNS、DMなど使い得るすべてのツール(チャネル)を活用して消費者にアプローチし、商品の検討をしてもらい、店舗やネットショップで購入してもらい、その情報をシェアしてもらい、またどこかのチャネルから接触してリピートしてもらう…というのがオムニチャネルリテイリングなのです。
いち早くオムニチャネルリテイリングを実施したアメリカの百貨店メイシーズは営業不振から脱却、ブランドに対するロイヤルカスタマーが増加しただけでなく、グループ全体の劇的な在庫圧縮と売場の効率化が進み、会社の業績は見違えるように改善しています。
(メイシーズの取り組みについてはこちら)
すべてのチャネルを連携し消費者にアプローチするオムニチャネル(※10)
ネットショップとデータ共有、タブレットPOSレジシステムの登場
オムニチャネル時代、またはその一端のO2O(ネットと店舗間の相互送客を意図する)時代には、すべての販売チャネルの顧客管理、在庫管理、データ分析を統合して行うことが必要となります。特に、ネットショップとリアル店舗の在庫連動は欠かせません。たとえば色違いやサイズ違いなどで店舗に在庫がない場合でも、店頭でネットショップの在庫を検索できればお客様に商品を案内し、その場で決済、商品は自宅に郵送、と売り逃しを防ぐことができるからです。
近年では、ECとリアルのデータ共有ができるだけでなく、小型軽量・省スペースで持ち歩きもできるタブレット型のPOSレジシステムが開発されています。これまでレジカウンターに据え付けだったPOSレジシステムの機能がiPadやWindowタブレットでも扱えるようになったことで、店舗での利用だけでなく、セール会場や店先、訪問販売でも会計と在庫管理、販売管理ができるようになりました。
省スペースなiPad型POSレジシステム、持ち歩き可能でレジカウンター以外でも決済が可能
弊社のOrange Operationは、会計機能だけでなく、ネットショップとリアル店舗の在庫・顧客情報閲覧、プロモーション機能の他、販売分析、CRMなどの機能も充実したタブレットPOSレジシステムです。これまで手作業だった在庫調整が不要になり、 ECサイトと店舗の相互送客やWEB上の顧客情報、購買履歴を利用した店舗プロモーションなど、多様な売上向上施策が可能になります。https://orange-operation.jp/posrejihikaku/pos
さいごに
ITツールの発展と消費者心理の変化により、小売業はこれまでのやり方を変え買い物の仕組みを再設計する段階に来ています。リアル店舗、ECサイト、SNSなどのチャネルを素早く統合し、最適な組み合わせができた企業がこれからの小売業をリードするでしょう。