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オムニチャネルの先駆者に学ぶ!米国百貨店メイシーズの戦略

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「オムニチャネル」という言葉を小売業界で耳にすることが増えています。
すっかり定着した感もありますが、「オムチャネル」を米国の小売企業で最初に宣言したのが大手百貨店のメイシーズです。

「オムニチャネル・リテイラーを目指して、顧客とのつながりを深め、顧客がいつでも、どのようなやり方でもメイシーズにアクセスできるようにする」

という理念の元、様々なオムニチャネル戦略を構築してきました。

今回はメイシーズのオムニチャネル戦略に焦点を当て、これまでの取り組みやその効果をご紹介したいと思います。
そしてさらに、今一度オムニチャネルとは何か、どうあるべきかを考えていきたいと思います。

メイシーズがオムニチャネル化に至った背景

1970年代にはすでに、米国でも百貨店はその伝統的業態が時代遅れになっていることが指摘されていました。長らく続いた経営不振からの脱却を図るべく、2007年頃から徐々に経営改革に取り組み始め、店舗の統廃合や、「My Macy’s」と呼ばれる顧客の囲い込み策、「Magic」という従業員の接客力向上策などを実施してきましたが、中でも目覚しい成果をあげたのが「オムニチャンネル」という戦略でした。

オムニチャネルとは

オムニチャネルは、顧客体験の上での販売チャネルによる区別をなくすことを意味しています。
例えば、ECサイトで顧客のオーダーを受けた場合、在庫は実店舗の在庫とまったく同じものを参照して、ECサイトの在庫ではなく、グループ全体としての在庫が1つ減るようなイメージです。

顧客にとっては、利用する販売チャネルによる制限や不利益がなくなるメリットがあります。

※2 出典:野村総合研究所

オムニチャネル化するための組織作り

統一的な戦略を実行するための組織体制を構築

メイシーズは膨大なシステム投資によって、店舗と自社ECサイトの区別をなくし、在庫や顧客情報を一元化させ、顧客ニーズの取りこぼしをなくすことに注力しました。

すべてのチャネルはマーケティング部門の傘下に置かれ、マーケティング部が全体最適を考えた上で、キャンペーンやプロモーションのすべてを取り仕切ります。従来のような店舗間や、ECサイト、カタログ間での社内優劣は意味をなさなくなり、それに合わせて従業員の評価体系も刷新しました。

つまり部門間の縄張り意識に縛られず、会社として統一的な戦略を実行できる組織の構築が不可欠であるということです。

メイシーズのオムニチャネル戦略の導入例

店員にモバイル機器を配布

顧客のために商品の詳細やレビューを調べたり、ライバル店の価格と比較できると同時に、在庫情報とリンクしているので、顧客のそばを離れることなく在庫の有無をチェックしたり、取り寄せの注文ができます

RFID(Radio Frequency Identification:無線ICタグ)の採用

在庫の無駄を減らすと同時にリアルとネットの在庫の一元管理を可能にしました。

店舗に無い商品はネット在庫あるいは他店舗在庫から‘顧客に直配’

商品が欠品していても、ネット在庫にあればその場で自宅に配送します。ここで店員がモバイル機器を備えていることが活きてきます。(2011年には、そのように直配された商品が700万点以上に上ったとのこと)

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オムニチャネルのロジスティクス的側面

顧客は注文が正確で迅速でありさえすれば、商品の出所は問いません。
そのため、メイシーズは商品が自店舗になければ他店舗やオンラインの在庫からも用意できるようにしました。

2012年にはオンライン注文品を店舗在庫から発送できるようにしています。当時は対応可能店舗が23店舗でしたが、2013年には292店舗になり、秋までには500店舗からの発送が可能になる予定です。

メイシーズの商品調達オペレーション

店舗にオンライン注文品の発送機能を持たせるにあたり、メイシーズは商品発送の準備をするバックヤードを拡大しました。
その際、商品の調達や発送専用の人員を新たに雇うより、既存の店員の手を借りる方が速いことに気づきました。商品を並べる人はピッキングも速いという理屈です。

それでもピッキングは容易な作業ではありません。ファッションアイテムの場合、商品のサイズ、色、デザインのバリエーションが豊富にあるからです。
そこで商品調達を簡易化するRFIDタグへの投資を強化しています。2013年の秋までにはRFIDタグの占める割合は半分を超えると見込んでおり、納入業者にもRFIDを着けた商品の供給を求める考えです

改善、進化を続けるメイシーズ

メイシーズはどこの在庫から商品を供給するかを決定するアルゴリズムを構築し、将来的にこれがより迅速な配送、さらには当日配送を可能にするカギになるとしています。

また、オンラインで買った商品を店舗で受け取ることや、オンラインで販売しつつ、オンライン倉庫に在庫は置かず、店舗にしか在庫を持たないケースも実験しています。
この実験は、巨大な倉庫でのオペレーションはコスト的に割に合わない、商品数の少ないアイテムで利用するための試みです。
つまり、製品の仕入れ原価や数量によって販売チャネルや在庫場所を最適化していこうとしています。

※4 メイシーズのEコマースサイト

メイシーズのオムニチャネル化の成果

オムニチャネル化により、ブランドに対するロイヤルカスタマーが増加しただけでなく、グループ全体の劇的な在庫圧縮と売場の効率化が進み、会社の業績は見違えるように改善しています。

メイシーズは「顧客セントリック」な、“顧客が主体的に” 店舗・モバイル・ネット・店舗キヨスクなど、あらゆるチャネルでシームレスに買い物ができる体制を作り上げています。
オンラインの売上金額が 2010年から2011年で 40%増、2012年12月で 51.7%増、2012年累計で 40.4%増となっていることから、取り組みの成果は着実に出ていることが伺えます。

オムニチャネル化に大切な三つのこと

メイシーズはオムニチャネル化にあたり最新のテクノロジーを駆使した機器の導入やデータベースの構築を実施しました。また、ハード面だけでなく、上述したように全社的に取り組むための組織体制も行いました。

さらにオムニチャネル化をしていく上で様々な施策を同時並行で行うため、店舗スタッフの教育が大切だと考え、店員にオムニチャネルを念頭に置いた接客をするように働きかけています。(オムニチャネルを実現するということは、これまでの接客とは違った接客が必要になることを意味しています。)

オムニチャネルの先駆者であるメイシーズから、ハード面、組織面、人材面の3つの分野での変革が成功のカギであると読み取ることができます。
これからオムニチャネル化を進める企業にとって、メイシーズの成功体験から学びとれるところは数多くあるのではないでしょうか。


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