Eビジネスを推進するORANGEシリーズ

EC-ORANGE
お役立ち資料ダウンロード ニュースレター登録

デジタルデバイス導入の意義:海外小売の取り組み

デジタル化がますます進む今、小売にとっていかにそれを経営に活かすかという戦略が重要になります。いかにして、どのような目的でデバイスを取り入れるかを明確にすることが新たな顧客体験が創出に必要だと言えます。今回はデジタルデバイスを取り入れる企業をご紹介し、その意義について考えてみたいと思います。

専門知識をタブレットで提供

オーストラリアの大手小売のColesは備え付けタブレットを店舗に配置する試みを行っています。このデバイスは店舗の鎮痛剤のコーナーに置かれ、顧客は薬剤の情報を得られると同時に店舗側は顧客の検索データなどを得ることができます。
このタブレットは電子ラベルと顔認証ソフトを内蔵しており、綿密な顧客データの作成が可能になります。開発したメルボルンの「リテール・エボリューション研究所」に出資をするRed Designグループは取材にこう答えています。「情報に飢えた顧客にデジタルデバイスを通じて情報を配信するニーズがColesのような小売にはあった。スーパーで薬を売ろうとしたとき、そこは薬局のような環境ではなく、専門知識を持った店員もいない。そこでデジタルメディアを通じて情報を提供することは意義深いことだ」
店舗が新たな商品を展開したいと思ったとき、その商品知識に習熟したスタッフを同時に揃えることは容易ではありません。その点タブレットを使えば情報をどんどん更新していくことができます。顧客にとっても手にとった商品の詳しい情報を知ることでより充実した買い物経験を得ることができると言えます。

キオスクで健康情報提供と販売促進

SoloHealth stationはヘルスケア情報を入手できるキオスク端末です。全米で約1000台がウォルマートなど大手スーパーやコンビニなどに設置されています。この端末では無料で視力検査や血圧測定、BMI測定や症状の確認などができます。さらにデータベースともリンクしており、症状に適した地域の医療機関を探すことが可能です。
この端末の導入で集客増加を狙えるのはもとより、その顧客の健康状態を考慮し、店舗で販売している健康関連の商品情報を届けることができます。例えば高血圧気味の測定結果が出た顧客には高血圧対策に適した商品を画面に表示するなどして、文字通りオンデマンドな販売促進を行います。

デジタル・ファッション・アドバイザー

イギリス大手小売のTescoは現在三つの店舗で新テクノロジーの試験導入をしています。ひとつはTescoが運営するファッション関連のオンライン販売サイト、F&Fの商品を表示するデジタルサイネージディスプレイです。これにより顧客の関心をオンライン販売にも広げることができます。

もうひとつはセルフサービスのキオスク端末で、これにより顧客はオンライン販売サイトの検索、購入が可能になり、商品バーコードを読み込ませることでその商品の人気や評価、さらに組み合わせにおすすめの商品を知ることができます。

単に商品の情報を提供するだけでなく、その先にあるオシャレにまで行き届いているところにこの試みの可能性を感じます。さらにこの試みにより、顧客は店舗にある商品だけでなく、オンライン上の多数の商品を知り、購入することができます。オンラインと店舗の垣根を無くし、商品の販売機会を最大限にする狙いが伺えます。

デジタルデバイスを導入する企業の試みをご紹介しましたが、これらの試みの意義はどういったものでしょうか?その意義を以下3点にまとめました。

専門知識のアウトソーシング

デジタル社会の発達によって顧客の情報収集能力は以前より格段に増しています。顧客へ商品の情報を提供することは小売側の責務と言えます。しかし日々更新される膨大な商品の知識、情報を把握したスタッフを揃えることは現実的ではありません。

そこに情報端末を導入する意義があります。タブレットに代表されるデジタルデバイスの小型化、高性能化により、顧客の使いやすい形での情報提供が可能になってきているのです。タブレットに関して言えばその爆発的な普及により顧客の操作の習熟度も増し、売り場の情報収集のための端末として受け入れられる土壌はできつつあると言えます。

的を絞った情報提供と宣伝広告

情報を収集する顧客に、よりニーズに即した宣伝広告が可能になります。レコメンド機能といった顧客が求める情報に即した情報提供が可能になり、宣伝広告の精度と効果を高めることが期待できます。またどのような情報が多く求められているかといったデータを集めることができれば、より適切なマーチャンダイジングを実現することができます。

O2O~オンラインからオフライン、オフラインからオンラインへ

オンライン上のユーザーの活動を、オフライン、つまり実店舗への購買活動に結び付けようとする取り組みが重要視されています。同時に店舗側からオンラインに働きかけることも重要になります。店舗にデジタルデバイスを配置することで、O2Oの実現はより具体的になります。Tescoの例のように、スペースの問題上店舗に展開できないバックヤードの商品の販売機会を増やすことなどが可能になります。これはオフラインの顧客をオンラインに誘導する一例と言えます。

近い将来最大の小売形態となると言われているのがオンライン販売です。そうした流れの中で重要視されるO2O、その取り組みとしての店舗のデジタル化が求められていくと思われます。

冒頭の繰り返しになりますが、デジタルデバイスを取り入れることで新たな顧客体験を創出することがこれからの小売には重要になります。店舗とデジタルが融合することで生まれる新たな顧客体験。それはつまり、目覚しく進歩するデジタル技術と共に、顧客体験もまた著しく変化していくということです。その変化に対応し、そして先を行くことが成功への鍵となるのです。

この記事はCRNの記事をOrange Blogが日本向けに編集したものです。