あなたが持つEコマースのイメージ、本当に正しいですか?
ECの欠点を考えてみる
唐突ですが、Eコマースの欠点と言えば何でしょうか?端的に言うと、インターネットに接続できなければその時点でアウトです。その点、昔ながらの小売販売形式の方が理論的には常に消費者とつながっていることになるのです。
一般的に、我々はEコマースという概念をなぜか一般の小売形態と切り離して考える傾向にありますが、はたしてそれほどの違いがあるのでしょうか?
オムニチャネルの概念は「商品カタログ」から始まった?
例えば1908年に発行された百貨店Sears Roebuckの商品カタログをみると、そこには実は現代の小売業者が参考にすべきシステムが凝縮されているのが分かります。オムニチャネルの概念はカタログの広い分布、積極的な実店舗展開、卸販売、フェアへの出店などにみることができ、製造元へ情報提供や運送管理を行うなど現在のB2C販売のシステムの先駆けとしての事業展開もしていました。
カタログの下部には「このカタログを友達やご近所さんにも見せてあげてください」という説明書きがあるのは現代の「シェア」ボタンの機能そのままですし、配送に関しては洋服から車、家に至るまで、動かせるものなら何でも自宅に配送していたのです。
それでも現在同社が他の小売業者同様に苦戦を強いられているのは、「Eコマース」という響きが持つ独特のイメージに起因しているのかもしれません。
つまりEコマースという言葉が一人歩きしてしまい、本来は持たない性質を人々が期待してしまっていることも十分あり得るのです。例えば将来はEコマースが小売の全てだという見方もありますが、実際のところこれは極論であくまでも小売の形式の一つに過ぎないのだということを理解する必要があります。
また、Eコマースは他の販売チャネルとは切り離して考える傾向もありますが、これも間違いです。以前、Eコマースで全てをまかなおうとするばかり、自社で販売する商品をAmazon経由で仕入れていたことが明るみになり倒産に追い込まれたケースもあります。
1人の消費者がどのチャネルでも買い物ができるように
一方でEコマースという響きに恐れをなして本線の販売チャネルとは切り離して取り扱う企業もあります。その結果多くの可能性を秘めたEコマースを、単に実店舗へ足を運んでもらうためのツールとして利用しておしまいとなってしまうのです。この他には広告では大々的に宣伝しているのに商品在庫が無いというミスもよく起こりますが、この際はオムニチャネルという言葉に気を取られ過ぎて、小売販売の基本である(どのチャネルを通しても)消費者は買い物をするためにやってくるという点を忘れてしまっているのです。
つまり消費者にとってはウェブサイトであろうと実店舗であろうと、結局は買い物をしたいのだというところに立ち返る必要があるのです。最初に触れたように当然ながらEコマースにも欠点はあるわけで、消費者が満足できるような便利なシステムでなければ効果を発揮しないのです。従って、Eコマースのプラットフォーム自体はそれほど特別な力を持っているという訳ではありません。
良いカスタマーサービス体験とは
ここで、実店舗で良いカスタマーサービスを経験した時のことを思い出してみてください。おそらくまず入店と同時にスタッフに笑顔で挨拶されたと思います。また「お探しの商品はありますか」という言葉を掛けられたり、常連であれば特別な対応をされたのではないでしょうか。こちらの探している商品を素早く察知して正しい商品を勧めてきたということもあるでしょう。
では、オンラインでの良いカスタマーサービスとはどのようなものでしょうか。おそらく探していた商品が見つかったり、お買い得価格で提供されていたり、発送が素早く会計もシンプルだというようなことが挙げられると思います。
このように、Eコマースの原点もテクノロジー自体にあるのではなく、顧客サービスの強化を通したセールスアップのためのツールであるということになるのです。
まとめ
オンライン・オフラインの境界線を取り払い、カスタマーサービスの質の向上のために必要なところにテクノロジーを採用し消費者と常につながっているようにすることにこそ、オムニチャネルマーケティングの新しいカタチを見ることができます。Eコマースという言葉に圧倒されている企業は、今こそ視点を変えてあえて「Eコマース」という呼び方そのものを使用せずに、他社に先駆けてより良いカスタマーサービスを展開するにはどのようなシステムを構築していくべきかに重点を置いていくことが求められていると言えるでしょう。
この記事はKilling the e-Monsterの記事を海外小売最前線が日本向けに編集したものです。