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在庫課題の解決を実現する需要予測と管理システムはDXで進化する


大量の在庫は、企業にとって悩みの種です。



特に近年では、SDGsの観点から不良在庫の廃棄は好ましくないという風潮が高まったこともあり、廃棄ではなくリサイクルや寄付といった無駄にしない取り組みを検討するよう、強く求められるようになっています。



しかし、企業戦略として追求すべきところは、在庫の処分方法ではなく、在庫をなるべく発生させないシステムの構築です。在庫をSDGs的に正しい方法で処分するためにはコストがかかりますが、不良在庫が少なければかかる費用を抑えることができるため、キャッシュフローの改善や企業としての成長も見込めるようになるでしょう。



余剰在庫を減らすには、データ分析に基づく需要予測と、製造から輸送までを円滑に管理できる仕組みが必要です。



本稿では、在庫の課題が社会的な問題と見なされている昨今の風潮、そして、国内で余剰在庫が増えている背景について、経産省のデータで解説しています。



さらに、こうした状況をふまえた在庫管理の導入や管理のDX化を、人手不足とレガシーシステムから脱却する鍵にする可能性について紹介しています。



在庫の最適化については、キャッシュフローを細かく見ていくことで、企業成長につなげられる施策を展開できます。現代の市場とそれに見合った経営の方向性を在庫の課題で紐解いていきましょう。


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在庫の課題は企業だけでなく社会的課題



在庫処分は、商品や原材料が無駄になるだけでなく廃棄のために本来は不要なエネルギーやコストが発生するため、SDGsの観点から好ましくないとされています。



余剰在庫の問題はアパレル業界で、特に顕著です。



2022年1月には、フランスで売れ残った衣料品の廃棄を禁止する法律が施行される等、社会の目も厳しくなっています。



世界的なハイブランドにとって、定価のみでしか商品を流通させないことがブランドイメージを保つ一つの手段となっていました。



しかしながら、フランスでは法律によって、こうしたハイブランドに対しても寄付やリサイクルといった方法で在庫過多を解消するよう、義務づけがなされています。



社会的課題となったこの問題は、「そもそもどうして在庫過多の状態に陥るのか」という原点を見つめることで解決の糸口が見えてきます。



不良在庫の廃棄ロス



不良在庫は、薄利多売を追求した企業やブランドに全て責任があると考えがちですが、実はそうとばかりは言い切れないのが現状です。



経済産業省による「繊維産業の構造変化と政策課題について」という公表データでは、1990年の衣料品市場規模は15.3兆円でした。



この規模は、コロナの影響を受けた2020年に8.6兆円まで減少しています。



コロナの影響がないはずの2018年も、衣料品の市場規模は11.0兆円で、1990年と比較するとこの30年で、市場規模は3分の2程度になってしまったことが分かります。



一方で、アパレルの国内供給点数は、1990年の20.0億点から2020年の35.7億点に増加しています。



つまり、国内のアパレル業界は、1990年から現在までの30年間に供給量を大きく増やしているものの市場規模自体は縮小している状態にあります。



この30年間にはバブル景気とその崩壊がありました。



定価で売れることが当たり前で、作れば作るほど売上を伸ばすことができた好景気はすでに過去の時代となっています。



不況、コロナ禍という要因によって、現在のアパレル製品は約半数が定価以下の値引きを余儀なくされている状況にあります。



大量生産しても利益を上げることができず、却って製造コストと廃棄コストが嵩んでしまうというのが、今の市場の姿です。



こうした状況は、時代が変わったにも関わらずバブルの好景気と同様の戦略を貫き続けてしまう企業の体制によるものでもあり、抜本的改革が求められています。



参考:経済産業省「繊維産業の構造変化と政策課題について」

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/textile_industry/pdf/001_06_00.pdf


人材不足とレガシーシステム



利益を追求するために必要なのは、現代に合った製造システムを会得する思考と行動です。



廃棄ロスをなくして、SDGsに沿って尚且つ企業の利益を追求する究極の製造システムとは、在庫0で稼働できるシステムです。



在庫0で稼働できるシステムとはすなわち、消費者の需要を的確に予測して、製造に必要な資材と時間を正確に計算し、最適なタイミングで商品を製造、出荷するという流れを完備した製造体制です。



現在、この理想は、製造業界の慢性化した人手不足とバブル期から続くレガシーシステムによって実現困難となっています。



アパレルの市場規模が縮小したのと同じように、製造業の従事者は約20年の間に157万人減少しました。特に若年層が育たず、人材不足だけでなく人材育成の面で課題を抱えている企業も少なくありません。新しい施策を試したいと検討しても、成し遂げる人的リソースの問題によって方針転換が思うようにできないというジレンマを、業界は抱えています。



さらに、製造業の約40%が在庫管理をExcelか紙で管理している、従事者の経験と勘によって運用されているという事実も、ジレンマの一つです。



Excelや紙ベースでの在庫管理は、時間がかかるだけでなく、後述するサプライチェーンに組み込めないという問題もはらんでいます。



サプライチェーン、物流への影響



不良在庫を限りなく0に近づけるためには、リアルタイムかつ正確な在庫把握が不可欠です。



サプライチェーンつまり、原材料の調達・製造・在庫管理・配送・販売までの一連の流れを一括でいつでも確認できるようにしておき、実際の市場に合わせて稼働していくことが重要です。







在庫管理と需要予測の進化



次世代の在庫管理に関連するキーワードとして注目したいのが、「需要予測」です。



正確な需要予測を実現することで、サプライチェーンの円滑な運用が可能になり、売上の最適化を目指せます。



レガシーシステム下では、需要の予測は経験則や勘によって立てられています。これは社内で広く共有するのが難しかったり、担当者の退職によって技術が失われたりするリスクがあります。



需要予測のできる社員が退職したことでそのノウハウが失われてしまう、一部の従業員のみにしか情報が共有されずに社内が共通の目標を持つことができない、という状態では企業の戦略的成長は難しいと言わざるを得ないでしょう。



また、時代の変化についていけなくなる恐れもあるため、デジタル技術によるデータ活用を駆使した新しい需要予測にシフトしていく必要があるのです。



在庫0の売り切る在庫管理を実現するためには、精度の高い予測を行う必要があります。



適切な製造と配送の実現が、廃棄を減らすことにつながっていきます。



在庫管理分野でDX化が進む



在庫管理をDX化することで、省人化の達成や顧客満足度の向上も期待できます。



在庫管理は、棚卸しや倉庫の管理、店舗在庫とEC在庫の把握等、人手が必要な作業が多くあります。つまり属人化しやすい業務であり、人手不足によって思うようなオペレーションが実行できないというジレンマがありました。



また、人力で行うと、いくら気をつけても入力ミスや確認ミスといったヒューマンエラーを排除しきれず、ダブルチェック、トリプルチェックといった手作業に必要なコストが嵩みがちです。



慢性的な人手不足に悩まされている現場は、作業が煩雑であればあるほど、負担が大きくなることでさらなる離職者が出たり、ミスを誘発したりと、厳しい状況に追い込まれやすくなってしまうでしょう。



DX化は、これを解決して、在庫管理にまつわる経費(人件費、輸送費、在庫の保管費)を適正なボリュームにまで削減できる可能性を持っています。



業界ごとに異なるシステム



例えば、バーコードや二次元コードを在庫に貼り付けて、スキャナーで読み取るだけで在庫の情報を管理できるようにする、RFIDタグで在庫のある場所や製造工程を管理する、AIを導入してサプライチェーン上で得られるあらゆるデータから高精度な売上予測を立てるといったデジタル技術の活用が、DX化の一例です。



日用品を扱うならば、注文から当日出荷を実現するような、リードタイムの短縮が求められます。「今欲しい」という消費者のニーズにピタリと合う仕組みを作ることで、顧客体験価値と満足度を高めることができるからです。



この実現のためには、自社の発送拠点となる倉庫を輸送に有利な場所へ設置して、注文から配送までをシームレスに行える環境を整える必要があります。



また例えば、液状の製品や細かい部品、パーツを多く取り扱う分野では、重量を量るシステムを在庫管理システムに組み込むことで、円滑な在庫管理が可能になるケースもあります。システムを活かすために必要なのは、どういった製品をどのようなサプライチェーンで動かすのか、それを分析して特性を理解することと言えるでしょう。



需要予測の普及の見通し



デジタル技術を活用した需要予測は、IoTを活用した在庫の「見える化」で、導入を求める声は高まり続けています。



ZOZOTOWNや楽天市場、Amazonといった大手モールを利用したBtoBからD2C(Direct
to Consumer)にモデルチェンジするメーカーやブランドが増えるに従って、自社のサプライチェーンを補強する必要性が高まり、小売の抜本的な改革として在庫管理のDX化や需要予測の強化が検討されています。



特に、コロナという誰もが予想しなかった大きな出来事を経た現在、経験則という引き継ぎが難しいレガシーシステムの運用や継承に危機感を抱いている企業は少なくないはずです。



在庫管理システムとそれに伴う新しい需要予測によって、SDGsの理念を体現する企業へとアップデートするタイミングが来ているのではないでしょうか。



企業経営に影響を与える在庫問題



企業経営の視点で在庫を捉えると、在庫の最適化が見えてきます。



営業の視点において、顧客満足度を高めるとは、在庫が潤沢にあり、欠品や配達の遅延なく消費者へ製品を届けられる体制が整っていることで達成されるでしょう。



といって在庫を計画なしに増やすと、倉庫管理の担当者は管理しきれなくなるかもしれません。



商品調達の視点から見れば、ある程度のロットを一気に発注して発注コストを下げ、原価率を上げることが最適化という条件に深く関わってきます。



利益重視の経営判断を進めると、視点の異なる各部署からの反発を招いてしまうリスクも高まります。



これを回避して、会社全体が真の在庫最適化に向かって一つになるためには、キャッシュフローを中心に検討していくことが必要です。企業として全体のキャッシュフローを見ると、利益にとらわれ過ぎることなく、全体的な判断で在庫の最適化をしていくことができます。