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人工知能(AI)搭載型「買い物かご」に代表される、オンライン・セールスと自動学習機能の関係 ~「今こそAIを活用して他社に差を付けろ」を合言葉に~

Eコマースというのは各要因が非常に複雑に絡み合っているものです。出始めのころはカタログをオンラインに掲載する程度でしたが、現在では本当に様々なことが出来るようになっているのです。振り返ってみると、Eコマース対応型検索エンジンはデータベースを基に作り出して、「買い物かご」機能を取り付けておしまい、という感じでした。またGoogle検索用に静的コンテンツを作り、リンクをクリックするとすぐに動的コンテンツに移動という流れで、それまで主流だった紙のカタログ同様に「マニュアル・キュレーション(手動式情報収集)」が基本スタイルとなっていました。


(引用元:ecommerce / melenita2012
そのようなシステムも、検索分野の発達に伴った学習機能やクラウド機能の活用によって、今ではすっかり変化しています。ここではそれを踏まえた上で、ウェブサイト関連のデータ分析を手掛けるBloomReachのCEO,ラージ・デ・ダッタ氏の見解を基にテクノロジーがどのような形でEコマースサイトの発達に影響を及ぼしているか見ていきましょう。

BloomReachは5年前に設立されたばかりの新しい会社で、Eコマースサイトをアルゴリズム的角度から効率化を図るためのツールの開発を専門に取り扱っています。これは消費者個人別に対応することが出来、デ・ダッタ氏は「Personalised Discovery Platform(個別発見プラットフォーム)」と呼んでいます。BloomReachは元Googleの情報科学専門家を含む研究チームとのプロジェクトを通して、消費者はどのような要素に惹かれてサイトを訪れるのか、またどのようにして探している対象を見つけるのかといったところの理解を目指しましたが、その際に浮き彫りとなった問題点は、結局のところ効果的なマーケティングには関連性の高いコンテンツが必要不可欠であるという、古くから指摘されていたポイントでした。
この結果、BloomReachの最初のアプリである、広告などを含まない「オーガニック検索」を通してサイトに訪問者を誘導するツールが開発されました。このツールはコンピュータが自然に学習しサイト上での誘導を行うシステムを使用した「Web関連性」エンジンと呼ばれ、測定収集されたユーザーデータを用いて消費者の需要を理解するために活用されます。

ここでのデータはそれ自体では個別データとは言えず、むしろ全ユーザーが対象となった高レベルの集合体データとなります。例えば「青色のシート」に興味を示したユーザーはおそらくある特定の「アロマキャンドル」にも興味があるだろうという予測をはじき出す、業界大手Amazonではお馴染みのアプローチです。もし実際にはその商品に関心がなく購入に結び付かなかった場合は、コンピュータがそれを学習して次回以降のおススメに反映されるという仕組みです。その結果、ユーザーは最適化されたうえで実行されたウェブサイトページを実際に利用できることになります。

おそらく皆さんもBloomReachのソフトウェアは知らずのうちにすでに利用したことがあるのではないかと思います。というのも、すでにアメリカやヨーロッパでは大手小売業者が、最大の競合相手である「何でも屋Amazon」に対抗すべくこのシステムを取り入れているのです。実際に「Web関連性」エンジンが個別に対応した「パーソナル」なサービスを提供していますが、これも行きすぎない程度に絶妙のバランスを保つよう工夫されています。具体的にはBingやGoogleといった検索エンジン同様に、ユーザーが今興味を持ちそうなアイテムを表示するという具合です。

このようなサービスを構築するにはインフラの整備が欠かせません。BloomReachのシステムを取ってみても何百テラバイトという膨大な情報量が管理され、数百万単位のウェブページを分析してリスト化しているのです。現在、自動学習機能システムは1億5千万分のウェブページ上における10億件のユーザー利用事例を対象とし、毎日5テラバイトものデータを処理しています。それらの情報の一部はJavaScriptによるトラッキングピクセルを通して得られていますが、大半はサイトログなどの情報ソースとともにEコマースシステム自体から来ていることになります。そしてこれら全てのデータが統合処理されています。

(引用元:Data Center / BobMical
ちなみにBloomReachは多くのソースからデータを収集することが可能ですが、プライバシー確保のために計算・データ処理・自動学習インフラといったところをサービングインフラストラクチャとは別にした上でユーザーデータを厳重に管理しています。

その結果、ユーザーの利用状況や新しいコンテンツを通して学習をしつつ、クラウドから莫大な数のウェブページを処理することのできるマイクロサービス・モデルを構築することが実現しているのです。デ・ダッタ氏が指摘するところによると、検索システムというのは新しい情報が入ってこなければ次第に機能が低下してしまうため、機能性向上のためには入力される情報量は多ければ多いほど良いということになります。


実際にユーザーがBloomReachの手掛けたサイトを訪れると、リアルタイムアプリケーションプログラムインタフェース(API)システムコールが使用され、ブラウザを通して検出されたオブジェクトがリアルタイムで転送されますが、ユーザー自身は通常のサイトコンテンツとの違いにはまず気づきません。現在このサービスは「ランディングページ」、「サイトでの検索結果とおススメ商品」、また「プロモーションなどを含むEコマースサイトの精選データ」といった、Eコマースサイトにおける3つの分野に対応しています。

また、「Compass」と名付けられた最新のサービスでは、サイト管理者が十分なデータを基に意思決定が行えるようにサポートが可能です。例えば仮説を立てて実行するときには、Compassを使う事で適切なコンテンツを構築することが出来、A/Bテスト実施や被験者反応の統計分析、システム全体におけるユーザーとの比較なども可能となってきます。つまり、サイト内の実際のユーザー全体以上に大規模な検査用グループを用いて各種テストが行えるという事になるのです。
基本的には手元にあるデータをどれほど理解できているかがカギとなるわけですが、この点においてもBloomReachが提供するサービスなどを通すと行動傾向に関連したデータが豊富に取得することが出来ます。その上で、そのようなデータに対してどのようなアクションを起こせばユーザーの消費傾向などが明確になるのかを割り出すことが重要となってくるのです。

この様なツールは商品掲載に関連する各事項の関係性を明らかにするほか、ユーザーがどういったデバイスを使用しているのか、またはどのようなショップを訪問しているのか、ひいては購入を前提としているのかただ閲覧しているだけなのかといった点についての理解を深めるのに役立ちます。デ・ダッタ氏の言葉を借りれば、これはより質の高いサービスを求める消費者とブランド知名度を上げたいマーケティング担当者の間に存在してきた「目指すところのズレ」を取り除くということに効果を発揮しているのです。

例えば、Googleなどは高性能検索ツールの採用により消費者の望むサービスを提供することを実現していると同氏は指摘します。こうしてそれまでの「上から目線」のアプローチから、その場の状況に対応し、形にとらわれず、なおかつシステムを自動学習させていくスタイルへと変化し、その結果ウェブサイトはデータを駆使しながら「関連性」を高めていく必要が出てきているのです。

自動学習機能サービスをこの様な形で他社が提供するというのは、大変意味のある事だと言えます。というのも、一連の自動学習機能の開発プロセスの中でこのシステムを最大限活用するには、膨大な量のデータの収集と計算作業の必要性が分かっており、このようなクラウド情報収集サービスは小売業者が作り出すのは大変難しく、そもそも現実的ではありません。

Eコマース企業というのは、基本的に商品販売や配送管理、さらに複雑化する一方の国際的供給チェーンの現状把握などにフォーカスすることを優先すべきで、BloomReachの提供するようなサービスを利用することができるとすれば、データ関連事業部門やサービス専用大規模インフラの構築に関する費用を大きく節約することが可能になるのです。

この記事はArtificial intelligence in your shopping basket: Machine learning for online retailersを海外小売最前線が日本向けに編集したものです。