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米国百貨店の雄 Macy’sのマーケティング戦略を分析

本Blogでは、米国百貨店Macy’sの研究をしたいと思います。J.C. PennyやKolh’sなど、多くの大型百貨店がひしめくデパート激戦区のアメリカで、売上を伸ばし続けているMacy’sの強さはどこにあるのでしょうか。Macy’sのマーケティング戦略を分析すると共に、Macy’sの様々な取り組みをご紹介していきたいと思います。

まずは、Macy’sの成り立ちをご紹介したいと思います。Macy’sは、1958年に米国マサチューセッツ州でローランド・ハッシー・メイシー氏によって呉服屋としてスタートしました。そして、150年の歴史の中で、総合百貨店への変貌を遂げ、現在では米国内に850以上の店舗をかまえています。ニューヨーク支店は世界でも有数の敷地面積を誇り、自由の女神やエンパイア・ステート・ビルディングなどと並び、ニューヨークの観光名所の一つとなっています。

Macy’s New York
では、町の小さな呉服屋が米国百貨店の雄と呼ばれる百貨店まで成長した秘訣はどこにあるのでしょうか?その秘密は、①地域の中流階級層をターゲットとした、地域密着型の百貨店であり続けると同時に、②新しいテクノロジーを積極的に取り組み、味方につけるマーケティング戦略にあります。では、以下、上記の2つの戦略方法を詳しく見てみる事にします。

まずは、①を詳しく見ていきます。Macy’sの商品のコンセプトは、「安くて高品質である事」です。その事からもわかるように、Macy’sのターゲット層は、地域の中間層となっています。オンラインショッピングの売上が好調な現在でも、Macy’sはその理念を曲げず、実際に足を運んでもらうため・各地域によって異なるニーズを把握するため、様々な取組をしています。以下、代表的な試みを2つ紹介したいと思います。

1: My Macy’s: My Macy’sとは、地域ごとに事なる需要をリサーチ・把握し、ブラント,サイズ,生地や色などを売り分ける戦略の事です。リサーチ方法は、地域によって差があるようですが、一例として、69都市のMacy’sでは、マーチャンダイジングの専門家を雇い、彼らが毎日店舗やライバル店を訪れ、店舗を訪れる人々や店員とコミュニケーションをとり、直接情報を得ているとの事です。

これにより、無駄なコストを削減し、地元の人の声を店舗に反映する事ができるとの事。My Macy’sを打ち出した2009年、Macy’sの売上は飛躍的に伸び、株価は5倍以上へと成長しました。

▲Macy’s過去5年の株価の変動

(引用元:The New York Times『Macy’s Price chart』

2:エンターテイメントで客足を伸ばす:Macy’sはお客さんに直接店舗に来てもらうため、様々な試みを行っています。例えば2012年6月、Macy’sは全米の女子中高生から絶大な支持を得ているJustin Bieberとタイアップし、Macy’sの店頭でJustin Bieberが発売した香水を買うと、先着500人にミニシアターでのコンサートのチケットがプレゼントされるというイベントを行いました。その結果、開店前には200人以上のファンが並び、開店1時間以内に300枚以上のチケットが売れるという反響ぶりだったそうです。また、今年のクリスマスは、キャンペーンの一環として、ブロードウェーでミュージカルの公演を行い、その台本を無料で国内の学校向けに配信する事で、自社のエンターテイメント性の高さをアピールしています。

“Bieber Fever”(Biber熱) at Macy’s
次に、②を詳しく見ていく事にしましょう。Macy’sの売上におけるオンラインセールズの割合は、年々上昇しています。下の図を見るとわかる通り、2009年には全売上の19.6%しかしめていなかったオンライン上の売上が、2011年には39.6%にまで成長しています。

その背後には、Facebookやtwitterなどのソーシャルメディアを積極的に取り入れる姿勢があります。2011年には、facebook上のファンが80万人に増え、SNS全体180万人に上ると言われています。Macy’sが実際に行っている試みとしては、facebook上などでスタイリッシュな広告を載せる事はもちろんの事、facebook上で「イイネ!」の数が多かったデザインを実際に発売する事により、顧客自らが商品開発に携わったという感覚を持たせ、企業をより身近に感じてもらうなどのキャンペーンなどがあります。

また、クラウドを基盤とする分析ツールを使い、Macy’sのオンラインストアであるメイシーズ・ドット・コムでも、実際の店舗同様、顧客個々人のニーズに答えるべく、顧客の購入履歴の分析を行い、利用者ごとにホームページのコンテンツを変える試みなどが行われています。

また、最近では、上記の2つのマーケティング戦略を融合させた、クリスマス用のスマートフォンアプリ”Believe-o-Magic”を開発しました。Believe-o-Magicとは、AR(Augmented Reality=拡張現実・強化現実)を使ったアプリで、アプリを起動させた状態でMacy’s各店舗内に設置されているAR用のマークにかざすと、実際には見えないキャラクターと写真が撮れるという物です。これは、店舗に人を呼び込む話題性と、情報をすぐに拡散させる事ができるスマートフォンの特性を生かした、マーケティング戦略と言えます。
Believe-o-Magic
Macy’sの成長の秘訣は、従来の持ち味を大切にしながらも、常に新しい事に挑戦するという姿勢にあると言えるでしょう。