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小売業界に忍び寄る変化 ~「卸業者」が姿を消す日~

近頃の小売業界には、「小売業者にとっての販売モデルや収入経路、さらには供給業者の存在といった業界のシステム全体が近い将来大きな変化を遂げる」という暗黙の理解が広まってきています。

この問題の根源は広範囲にわたり成長を続けるオンライン小売業の性質そのものにあります。事実、世界でのEコマース市場は2013年だけで13%の成長を見せており2014年の結果もこの数値と同等もしくはそれ以上になることが予想されています。この勢いのままで行くと2025年までにはオンラインでの販売総額が小売業界全体の30%以上になることも現実味を帯びてきます。

つまり、消費者が従来のように商品購入を実店舗のみで済ませるという時代は終わりつつあり、代わりにデジタル機器を通してオンラインで商品購入をする際にも、実店舗で購入するのと変わらないだけのサービスが小売業者側から提供できるようになってきているのです。

具体的には、購入した商品も自宅まで数日、場合によっては数時間で配送されるほどオンラインショッピングの利便性は高まっています。


卸業者はもう不要?

産業革命以降これまで大きな変化の無かった小売業界における利益収入源などの経済モデルが、小売店舗の根本的な定義や存在意義が変化していく中でどのような影響を受けることになるのかという点に現在注目が集まっています。


消費者側が同じ商品をたくさんの業者から様々な方法で購入できる今の時代において、小売業者としては仕入れ、配送、在庫管理、販売に加え、スタッフ教育、マネジメント、販売促進といった部門においてどのように対応していくのかが問われています。

実店舗メインの小売業者としては、マーケットにおける売上のほとんどがオンライン販売専門業者に流れていく現状をただ指をくわえて見ているという訳にはいかなくなってきているのです。それに加えて、最近では卸業者自体が直接消費者に販売するケースも増えてきているのです。

この様な状態を踏まえると、小売業者としては多様化するマーケットの中にフィットするような新しい事業スタイルを確立させる必要があるというのは疑いの余地がありません。


「広告媒体」としての店舗の役割

「広告媒体」として店舗を捉えるという際に、販売店舗としての機能はもはや必要無くなるという訳ではなく、店舗の持つ性質に新たな一面が加えられると捉えた方が適切でしょう。つまり実際に店舗を訪れることでしか体験できないショップ内の活気や、お店の世界観が与える独特のワクワク感などを上手に活用することで、商品に付加価値を与えながら、実店舗以外の販売チャネルからの商品購入に結び付けるための広告効果を期待するものです。


このように、実店舗には買い物客に「雰囲気を実際に肌で感じさせる」独特の宣伝効果があり、これを効果的に利用することでオンラインには真似のできない形で販売促進を実施することが可能です。


商品だけではなく「サービス」を売る

このような点を踏まえると、近い将来、卸業者と小売業者の関係は現在のような「卸し元・卸し先」といった図式からの変化が予測されます。

「半分アウトレットショップ、半分セールスエージェント」といった新しい性質を持った小売業者は、実店舗においてあらゆる種類の商品を取り扱いながらより優れたカスタマーサービスを実施できるようになるのです。この際に小売業者は「商品のアンバサダー」として、テクノロジーを駆使しながらユニークかつ優れたインパクトの強いサービスを提供することになります。

この「インパクトの強さ」が買い物客の記憶に残ることになり、後日そのイメージを活かして様々なチャネルを通して継続的に商品を販売しようとするのがこれからの小売業者のスタイルになります。

現在小売業者の大半は実店舗での商品販売をメインとしているのに対し、将来的にはこのような店舗は「オムニチャネル販売の中心的存在」として位置することになり、小売業者側としては実店舗の他にも様々なチャネルを通して取扱い商品を販売していくことになるのですが、その際にライバル社の商品ですら取り扱う事も珍しくは無くなるとみられます。

結局のところ、消費者が実際に商品を購入したくなるような高い質のカスタマーサービスを提供することが最も重要となる訳で、何をどのようにして販売するかという点はさほど問題では無くなってくるのです。

そしてこれからの実店舗のレイアウトとしては、従来の棚に商品を無機質に陳列するというようなスタイルではなく、展示の仕方に工夫を凝らしたよりビジュアル重視の傾向に移りつつ、店内メディアで情報などを発信しながら商品との距離が近くなるような形になっていくとみられます。

ソーシャルメディアには商品レビューやレーティング、他の類似商品との比較データなどがアップされ、店舗自体が販売商品を見て触って体感できる「全販売チャネル対応型」の
広告媒体として機能するようになってくるのです。


新しい仕入れ販売のカタチ

これからは小売業者が仕入れ業者に対して「商品を店舗内ディスプレイなどにおいてどれだけ露出度を高めるような工夫をしたうえで販売していくか」に応じて、特別宣伝料を課すことも十分あり得るようになってきます。

確かに「そんなことは実際にはあり得ない」という意見もあるでしょうが、例えばミュージシャンの場合を考えてみると、最近ではCD販売の売上額が極端に少なくなっている一方で、ライブにおける収入は依然としてコンスタントに大きな額が期待できるというのが現実です。そこで小売業界でもこのモデルを取り入れる形で、単に商品を販売する際のマージンに頼るだけでなく店舗における効果的な宣伝を実施することで仕入れ元から宣伝料を徴収することで売り上げに反映させていこうという考えが根底にあるわけです。


「賢い売り方」を考える

ここで忘れてはいけないのは、この新しいモデルを採用する小売業者側にとってはカスタマーサービス、来店者数、そしてセールスへの影響といった要素を目で見ることができる形で管理することが必要だという事です。その際に、顔認識技術、店内行動傾向のビデオ分析、ビーコンテクロノジーなどといった新しい技術を採用することで、全ての販売チャネルにおいてあらゆる角度からこれらの要素を把握し、ウェブサイトでの販売に反映させることができるのです。

こうすることによって、実店舗における買い物客の行動傾向を理解しそれに合わせる形でサービスを展開することが可能になり、ひいてはセールスにも結びついてくるのです。

具体的には、どういったタイプの買い物客が多く訪れるのか、新規客とリピーターの割合はどれくらいなのか、店内のどのセクションに足を運んだのか、そしてなによりどの商品を購入したのかといったデータを把握することになります。


新時代に適応するための変化

小売業の新しい時代はすぐそこまで迫ってきています。ただ単に商品を店舗フロアに山積みにしてそれらが飛ぶように売れていくというのを期待するのは時代遅れですし、実際にそうやって商品が次から次へと売れていくという事もこれからはあり得ません。

従ってこの「デジタル時代」において成功を収める業者というのは、今この時に行動を起こし、古い慣習にとらわれず新しくより効果的なシステムへの変化を積極的に推進する、そういったマインドを持った企業です。

この記事はThe Future of Retail Is The End Of Wholesaleの記事を海外小売最前線が日本向けに編集したものです。