なぜアメリカ人はECを敬遠するのか。現地で利用してみてわかった米国の最新EC事情
日本ではすっかり定着したECサイトですが、その定着スピードの速さゆえに流通業界からは悲鳴が上がるほどの規模にまで達しており、ECそのものの拡充にとどまらず、業界をあげての流通サービスの改革を迫られるほどの影響力を見せています。
そんな次世代の商取引を支えるECですが、IT分野、EC分野では常に一歩先、二歩先を歩んできたアメリカでは、どのような流通サービスがなされているのかやはり気になるところ。
今回は実際に筆者がアメリカ滞在中に経験したECサイトでの注文から到着に至るまでの体験談と、そこからわかるアメリカのEC分野が抱える最大の課題について分かったことをご紹介します。
筆者は以前(2016年頃)、ニューヨークに一年ほど滞在したことがあります。その際に音響機器のミキサーを購入する機会があり、現地の電気店をいくつか尋ねても見つからず、やむなくアメリカのamazonを使うことになりました。
日本であれば音響機器のような型番の決まっている商品や重量のある電子機器を購入する場合、迷わずamazonやその他大手のECサイトを利用するのですが、アメリカで実店舗購入にこだわったのは、やはり運送業者への不信感からでした。
これらが主な理由として、アメリカ人は実店舗での直接購入を好む、ひいてはECサイトの利用頻度の低さに繋がると言えるでしょう。
一つ目や二つ目はギリギリ日本でもたまに起こるかもしれませんが、三つ目の玄関に放置や四つ目の盗難などは日本ではそう起こるものではありません。
しかしアメリカの物流事情においては、少なくともBtoCにおいては結構な日常茶飯事レベルでこういったトラブルは起こっており、時として訴訟問題にまで発展するほどです。
筆者がミキサーのamazonでの購入を渋ったのもこういった理由からで、特に音響機器のような高額な商品は盗難にあいやすく、到着まで落ち着かない心持ちでした。
私の場合、結果的には無事に配送してもらえたのですが、私の部屋に直接ということではなく、私のアパートの大家さんに荷物が渡されていたため、少しヒヤッとさせられてしまうこともありました。
ニューヨークのようなアパートが連なり、建物の老朽化が進んでいる都市の場合では部屋番号が書いていなかったり、ポストがついていないことも多く、届け先が不明であったり不在の場合は大家に一律で預けられたり、アパートの玄関に置いていくのが日常的な配達風景です。
インフラや運送会社のサービスの質が高い日本ではあまりありがたみがわからないかもしれませんが、これまで質の低い運送サービスに悩まされてきたアメリカ人にとって、まさに革命的とも言えるサービスであることは間違い無く、アメリカのEC伸び率はドローン配送によって、これまでにない伸びを見せることになるでしょう。
一方の日本ではどうでしょうか。確かにドローンでの配達システムは人件費を始めとする経費削減には繋がるかもしれませんが、それ以上にドローンの運用側が危惧するのは、ドローンを使用することによるリスクです。
また、ドローンの民間での運用は日本において法的にも厳しいものがあり、欧米に比べて運用が遅れることは間違い無いでしょう。
むしろ日本では一般的な流通システムが整っているため、例えば配送拠点の拡充や、配達員の拡充といった、これまでのルートを需要に合わせて拡張していくという方向で、ECの伸び率に対処していくという方法があります。
現にヤマト運輸などではそういった対策が練られていることが、賃上げの動きから見ることができます。
例えば今回のように「運送」というキーワードに絞ったとき、日本の優れた運送サービスを想像してしまうと、アメリカにおける運送サービスのずさんさや、ドローン配送の革新性やアメリカ人の期待度というものは見えてこなかったのではないでしょうか。
日本にとっての当たり前が、必ずしもアメリカにとっての当たり前とは限りません。アメリカ人にとってのECにおける関心ごととは、まさに信頼の置ける物流サービスの登場に他ならなかったのです。
というのもやはり物流インフラが整備されているのが何よりのポイントです。アメリカでは一週間かかる距離でも、日本では1〜2日で届くことも珍しくなく、もはや利便性に関しては実店舗がECを上回ることはないでしょう。
加えて日本は通信回線の高い安定性や、スマホの普及率も相まって、いつでもどこでもインターネットに接続し、ショッピングを楽しむことができます。
ここまでの利便性は、意外にもアメリカでは確保されていません。市場規模は確かにアメリカの方が大きいのですが、個人レベルでのネットショッピングの快適さは、はるかに日本の方が上と言えるでしょう。
フリマアプリのようなCtoCのサービスが日本において発達しているのも、信頼できる物流サービスがあってこそです。
アメリカのECにおける最大の弱点は、通信環境や流通など、基本的なインフラが大都市以外では(時として大都市においても)整備されていない点にあります。
そして均質化され、安定した市場が整っているからこそ、他者との差別化がものをいうでしょう。商品の価格やクオリティ、オリジナリティなど、自分が売りにしたい部分を十二分に発揮できる環境が、日本のEC市場では整えられています。
どういったマーケティングが必要かは時と場合によりますのでここでは割愛させていただきますが、私が言いたいのは日本のECマーケットはまだまだ伸びしろに満ちており、創意工夫次第では大きく売り上げを伸ばすきっかけにもなるということです。
世界規模でEC市場を見たとき、その規模は日本の20倍とも言われますが、必ずしも日本レベルの物流基盤を備えているとは限りません。
ECをこれから始める場合、まずはマーケットを国外、あるいは国内に絞るだけでも、やらなければならないことが違うのは、各国の物流事情を眺めれば明らかであると言えるでしょう。
そんな次世代の商取引を支えるECですが、IT分野、EC分野では常に一歩先、二歩先を歩んできたアメリカでは、どのような流通サービスがなされているのかやはり気になるところ。
今回は実際に筆者がアメリカ滞在中に経験したECサイトでの注文から到着に至るまでの体験談と、そこからわかるアメリカのEC分野が抱える最大の課題について分かったことをご紹介します。
アメリカ人がECを利用したがらない最大の理由
アメリカ人のほとんどはECを利用したことはあるが、それほど頻度は高くなく、未だに実店舗に親近感を抱いているという調査結果があります。参考:http://www.pewinternet.org/2016/12/19/online-shopping-and-e-commerce/
実は実店舗への親しみではなく・・・
これには筆者自身も思い当たる節があり、これは別にアメリカ人が実店舗の温かみに飢えているわけでは決してなく、単純に物流サービスのレベルが極めて低く、アメリカ人が配送業者を信用していないことが理由にあります。筆者は以前(2016年頃)、ニューヨークに一年ほど滞在したことがあります。その際に音響機器のミキサーを購入する機会があり、現地の電気店をいくつか尋ねても見つからず、やむなくアメリカのamazonを使うことになりました。
日本であれば音響機器のような型番の決まっている商品や重量のある電子機器を購入する場合、迷わずamazonやその他大手のECサイトを利用するのですが、アメリカで実店舗購入にこだわったのは、やはり運送業者への不信感からでした。
アメリカの物流サービスは何が問題なのか?
アメリカ人が運送業者を信用しない理由にはいくつかあります。- 一つは時間通りに荷物が来ないこと。
- 二つ目に荷物が破損した状態で届けられること
- 三つ目に配達した商品を玄関の前に放置していってしまうこと。
- 四つ目には商品が配送中に盗難にあってしまう可能性があること。
これらが主な理由として、アメリカ人は実店舗での直接購入を好む、ひいてはECサイトの利用頻度の低さに繋がると言えるでしょう。
一つ目や二つ目はギリギリ日本でもたまに起こるかもしれませんが、三つ目の玄関に放置や四つ目の盗難などは日本ではそう起こるものではありません。
しかしアメリカの物流事情においては、少なくともBtoCにおいては結構な日常茶飯事レベルでこういったトラブルは起こっており、時として訴訟問題にまで発展するほどです。
筆者がミキサーのamazonでの購入を渋ったのもこういった理由からで、特に音響機器のような高額な商品は盗難にあいやすく、到着まで落ち着かない心持ちでした。
私の場合、結果的には無事に配送してもらえたのですが、私の部屋に直接ということではなく、私のアパートの大家さんに荷物が渡されていたため、少しヒヤッとさせられてしまうこともありました。
ニューヨークのようなアパートが連なり、建物の老朽化が進んでいる都市の場合では部屋番号が書いていなかったり、ポストがついていないことも多く、届け先が不明であったり不在の場合は大家に一律で預けられたり、アパートの玄関に置いていくのが日常的な配達風景です。
amazonのドローン配達で変わる、アメリカのEC事情
そんな残念なアメリカの現在の運送状況の中で発表されたのが、amazonを始めとする大手小売店でのドローンを用いた配送システムです。インフラや運送会社のサービスの質が高い日本ではあまりありがたみがわからないかもしれませんが、これまで質の低い運送サービスに悩まされてきたアメリカ人にとって、まさに革命的とも言えるサービスであることは間違い無く、アメリカのEC伸び率はドローン配送によって、これまでにない伸びを見せることになるでしょう。
一方の日本ではどうでしょうか。確かにドローンでの配達システムは人件費を始めとする経費削減には繋がるかもしれませんが、それ以上にドローンの運用側が危惧するのは、ドローンを使用することによるリスクです。
ドローン配達を必要としない日本の運送事情
もしドローンが荷物をなくしたら、もしドローンが人身事故を起こしたら、もしドローンが盗難にあってしまったらなど、これまでにないトラブルに対応する手間が増えてしまうため、アメリカ並みのスピードでドローン配送システムを導入するとは思えません。また、ドローンの民間での運用は日本において法的にも厳しいものがあり、欧米に比べて運用が遅れることは間違い無いでしょう。
むしろ日本では一般的な流通システムが整っているため、例えば配送拠点の拡充や、配達員の拡充といった、これまでのルートを需要に合わせて拡張していくという方向で、ECの伸び率に対処していくという方法があります。
現にヤマト運輸などではそういった対策が練られていることが、賃上げの動きから見ることができます。
アメリカと日本のEC事情を比較する際のポイント
アメリカと日本のECを比較するときには、単純に利用者数や伸び率といった数字だけを見るのでは無く、その伸び率の裏側にある理由を見ることが大切です。例えば今回のように「運送」というキーワードに絞ったとき、日本の優れた運送サービスを想像してしまうと、アメリカにおける運送サービスのずさんさや、ドローン配送の革新性やアメリカ人の期待度というものは見えてこなかったのではないでしょうか。
日本にとっての当たり前が、必ずしもアメリカにとっての当たり前とは限りません。アメリカ人にとってのECにおける関心ごととは、まさに信頼の置ける物流サービスの登場に他ならなかったのです。
ECに恵まれた国、日本
一方で日本におけるECの関心ごととはなんでしょうか。実はこれに関してはアメリカよりも先に進んでいると私は考えていて、マーケティングや商品の差別化など、実店舗並みに磨きをかけられる部分は多いのではないかと思います。というのもやはり物流インフラが整備されているのが何よりのポイントです。アメリカでは一週間かかる距離でも、日本では1〜2日で届くことも珍しくなく、もはや利便性に関しては実店舗がECを上回ることはないでしょう。
加えて日本は通信回線の高い安定性や、スマホの普及率も相まって、いつでもどこでもインターネットに接続し、ショッピングを楽しむことができます。
ここまでの利便性は、意外にもアメリカでは確保されていません。市場規模は確かにアメリカの方が大きいのですが、個人レベルでのネットショッピングの快適さは、はるかに日本の方が上と言えるでしょう。
フリマアプリのようなCtoCのサービスが日本において発達しているのも、信頼できる物流サービスがあってこそです。
アメリカのECにおける最大の弱点は、通信環境や流通など、基本的なインフラが大都市以外では(時として大都市においても)整備されていない点にあります。
日本ではマーケティングが重要
一方で日本においては基本的なインフラやサービスは全て整っていますから、きちんとしたプロダクトを用意し、マーケティングを行っていけば、お客さんはやってきてくれるはずです。そして均質化され、安定した市場が整っているからこそ、他者との差別化がものをいうでしょう。商品の価格やクオリティ、オリジナリティなど、自分が売りにしたい部分を十二分に発揮できる環境が、日本のEC市場では整えられています。
どういったマーケティングが必要かは時と場合によりますのでここでは割愛させていただきますが、私が言いたいのは日本のECマーケットはまだまだ伸びしろに満ちており、創意工夫次第では大きく売り上げを伸ばすきっかけにもなるということです。
世界規模でEC市場を見たとき、その規模は日本の20倍とも言われますが、必ずしも日本レベルの物流基盤を備えているとは限りません。
ECをこれから始める場合、まずはマーケットを国外、あるいは国内に絞るだけでも、やらなければならないことが違うのは、各国の物流事情を眺めれば明らかであると言えるでしょう。