ECインフラはオンプレミス、クラウド、どちらを選ぶべきか
インフラ環境はサイトを安定的に運営するためのベースになります。インフラ環境が脅かされるとサイトの価値は半減し、ユーザーはサイトに満足してくれません。それは一般サイトでもECサイトでも同じことです。
今回はECサイトにフォーカスしてインフラ環境を考えてみたいと思います。
例えば、商品のページを見たいのにページがなかなか開かなかったり、画像のズームもなかなかできなかったりします。
商品ページの閲覧で余分な時間が発生してしまうとユーザーは買物に満足できなくなるので、サイト離脱の可能性を高めてしまいます。
ユーザーは他のECサイトに移ってしまうかもしれませんが、ユーザーに直接的損害や苦情が発生しうる状況は与えていません。
しかし、もし決済の最中にセッション情報が切れてしまうとどうでしょうか。ユーザーが購入する商品を決めて、決済に移ります。クレジットカード情報を入力していざ決済を確定しようとした際にEC側の影響で決済が上手くいかずにセッションが切れてしまったら問題です。
ユーザーからすれば、その決済が成立したのか、しなかったのかが判断できません。これはトラブルのもとになってしまいます。 ECサイトはホームページや簡易的なウェブサービスと異なり、在庫情報や価格の取得、決済システムとの連携などそもそもサーバ負荷がかかりやすい状況にあります。特にお金を扱う決済の部分が不安定ですと、トラブルのもとになるため環境構築は万全を期す必要があります。
すべてをオリジナルで構築するので、インフラエンジニアは必ず必要になります。そして自社ECサイトの規模がどれぐらいになる予定かを推測しながら環境を構築する必要があります。
容量が不足したら後から追加できますが、言葉で言うほど容量追加は簡単ではありません。新規作成時にある程度予測に沿った環境作りをする必要があります。
オンプレミスのリスクはハードウェアの老朽化です。ハードウェアは10年持てば良いとIT業界では考えられているため、10年ほどで大規模なハードウェアのリプレース(代替)をする必要が出てきます。その時にはかなり大掛かりになるでしょう。
AWSなどクラウドサービスを提供している企業と契約を結び、使った分だけ費用を支払う仕組みがクラウドになります。クラウドはサーバの負荷が上がれば自動でその分の容量が割り当てられるため、使っている方はサーバ稼働の心配をする必要がありません。
インフラ環境を気にしなくてよいため、完全にEC事業に集中することができます。
しかし、クラウドのマイナス点としてはインターネットを介するサービスなので、どうしてもセキュリティがオンプレミスよりもハイリスクになります。さらにECシステム以外の自社システムとの連携などが自由にカスタマイズできないことも気になる点です。
またECサイトはクレジット情報などの金融情報を扱うためセキュリティに敏感になりますが、セキュリティ面で考えてもオンプレミスの方が安心です。
そのようなことも考慮に入れ、まずはクラウドで様子を見るのが賢明な方法です。もし、大規模サイトといえるほど成長し、クラウドで補えなくなったら、その時にオンプレミスに変更しても遅くはありません。
そしてECインフラ構築で何よりも大事なことは、ECサイトがダウンしないことです。これはECに限らないことですが、サーバの返答が遅かろうとも、セッションが切れてもシステムが落ちなければまずは良しです。
絶対避けるべきはインフラ環境がトラフィックの負荷に耐えられず、システムがダウンしてしまうことです。システムがダウンしてしまうレベルまでインフラ環境が弱っていると、復旧に時間がかかります。まずは原因調査をして、対策を打ってなどを考えるとある程度の時間がかかります。
その間、ユーザーはECサイトを利用できないので当然サイトの売上は発生しません。システムがダウンするのだけは避けるべきです。
ECサイト運営企業であっても経理や営業、勤怠管理など自社の業務システムがあるはずです。これら業務システムとECサイトが上手く連携できるようなインフラ環境であれば、システムが統合できるし、業務の効率化の点でメリットがあります。
必須ではありませんが、業務システム連携ができればより良いシステムになるでしょう。
しかし、状況によってクラウドからオンプレミスに変更する場合や、オンプレミスからクラウドに変更する場合には、どのタイミングでその判断をするかが難しいです。
インフラ環境変更はつまりECサイトのベースを変更することなので、ECサイトが動作しなくなる可能性もあります。そのようなリスクを考えると担当者はシステム転換を躊躇しがちになりますが、いずれどこかで決断をしなければそのシステムは使い物にならなくなります。
転換時期の判断は難しいですが、臭い物にフタをするような対応だけは避けるべきで、活発な議論を交わしてどこかで思い切って決断をせねばなりません。
ECインフラは転換時期の判断が一番難しいといえます。
今回はECサイトにフォーカスしてインフラ環境を考えてみたいと思います。
- インフラ環境の不安定さはEC事業にとっては致命的
- オンプレミスは大規模ECサイト、クラウドは中小規模ECサイトが1つの基準
- システムがダウンしないことが最も重要な点である
- 業務システムと連携できればなお良しである
- インフラ環境は転換する場合の決断がとても難しい
インフラ環境の不安定さは致命的
ECサイトへのアクセス増加は売り上げ増をもたらしますが、アクセス増加は良いことばかりではありません。今までは発生してこなかった問題が起きるリスクがあります。それがインフラ環境への影響です。アクセス増加によってサーバ負荷が増えると様々な問題が発生します。アクセス増加によってインフラ環境が不安定になるとユーザーの購買体験は満たされないものになってしまう可能性があります。サイト表示が遅いとユーザーはストレス
インフラ環境が不安定になると、ユーザーのアクションに対してサーバ側の返答が遅くなります。例えば、商品のページを見たいのにページがなかなか開かなかったり、画像のズームもなかなかできなかったりします。
商品ページの閲覧で余分な時間が発生してしまうとユーザーは買物に満足できなくなるので、サイト離脱の可能性を高めてしまいます。
セッションが切れる
サーバ側の返答が遅かったとしても、返答があればユーザーとの間でトラブルにはならないでしょう。ユーザーは他のECサイトに移ってしまうかもしれませんが、ユーザーに直接的損害や苦情が発生しうる状況は与えていません。
しかし、もし決済の最中にセッション情報が切れてしまうとどうでしょうか。ユーザーが購入する商品を決めて、決済に移ります。クレジットカード情報を入力していざ決済を確定しようとした際にEC側の影響で決済が上手くいかずにセッションが切れてしまったら問題です。
ユーザーからすれば、その決済が成立したのか、しなかったのかが判断できません。これはトラブルのもとになってしまいます。 ECサイトはホームページや簡易的なウェブサービスと異なり、在庫情報や価格の取得、決済システムとの連携などそもそもサーバ負荷がかかりやすい状況にあります。特にお金を扱う決済の部分が不安定ですと、トラブルのもとになるため環境構築は万全を期す必要があります。
オンプレミスか、クラウドか
ECサイトがインフラ環境を構築する上で意識すべきはインフラ環境をオンプレミスで構築するか、クラウドサービスを利用するかです。こちらに関してはECサイトの規模により変わるためそれぞれの特徴を理解した上での判断が重要です。オンプレミスの特徴
オンプレミスは自社内に自前でインフラ環境を構築する形態です。すべてをオリジナルで構築するので、インフラエンジニアは必ず必要になります。そして自社ECサイトの規模がどれぐらいになる予定かを推測しながら環境を構築する必要があります。
容量が不足したら後から追加できますが、言葉で言うほど容量追加は簡単ではありません。新規作成時にある程度予測に沿った環境作りをする必要があります。
オンプレミスのリスクはハードウェアの老朽化です。ハードウェアは10年持てば良いとIT業界では考えられているため、10年ほどで大規模なハードウェアのリプレース(代替)をする必要が出てきます。その時にはかなり大掛かりになるでしょう。
クラウドの特徴
クラウドは必要なインフラ環境を必要な分だけ利用する仕組みです。AWSなどクラウドサービスを提供している企業と契約を結び、使った分だけ費用を支払う仕組みがクラウドになります。クラウドはサーバの負荷が上がれば自動でその分の容量が割り当てられるため、使っている方はサーバ稼働の心配をする必要がありません。
インフラ環境を気にしなくてよいため、完全にEC事業に集中することができます。
しかし、クラウドのマイナス点としてはインターネットを介するサービスなので、どうしてもセキュリティがオンプレミスよりもハイリスクになります。さらにECシステム以外の自社システムとの連携などが自由にカスタマイズできないことも気になる点です。
オンプレミスとクラウド、どちらを選択すべき?
オンプレミスとクラウドどちらを選択すべきか迷った時のポイントとして大規模サイトはオンプレミス、中小規模サイトはクラウドと考えると良いでしょう。大規模サイトはオンプレミス
まず大規模サイトがオンプレミスを選択すべき理由は、トラフィック量が圧倒的に大きいので、クラウド利用だとコストがかかりすぎてしまうからです。 大規模なサイトだとクラウドでは高コストとなるため、オンプレミスの方が効率的です。さらに規模が大きいとさまざまなシステムと連携しているため、カスタマイズのしやすさという意味でもオンプレミスが良いでしょう。またECサイトはクレジット情報などの金融情報を扱うためセキュリティに敏感になりますが、セキュリティ面で考えてもオンプレミスの方が安心です。
中小規模サイトはクラウド
中小規模サイトはクラウドが良いでしょう。オンプレミスで構築してしまうと、費用対効果が悪すぎます。 中小規模サイトの場合、1年先、5年先のサイト価値は不透明です。大規模サイトになっているかもしれませんし、もしかしたら消滅しているかもしれません。そのようなことも考慮に入れ、まずはクラウドで様子を見るのが賢明な方法です。もし、大規模サイトといえるほど成長し、クラウドで補えなくなったら、その時にオンプレミスに変更しても遅くはありません。
まずはシステムが落ちないこと
このようにサイト規模によってオンプレミスか、クラウドかは基準になりますが、あくまで1つの基準であり、他の要素も考慮する必要があるかもしれません。そしてECインフラ構築で何よりも大事なことは、ECサイトがダウンしないことです。これはECに限らないことですが、サーバの返答が遅かろうとも、セッションが切れてもシステムが落ちなければまずは良しです。
絶対避けるべきはインフラ環境がトラフィックの負荷に耐えられず、システムがダウンしてしまうことです。システムがダウンしてしまうレベルまでインフラ環境が弱っていると、復旧に時間がかかります。まずは原因調査をして、対策を打ってなどを考えるとある程度の時間がかかります。
その間、ユーザーはECサイトを利用できないので当然サイトの売上は発生しません。システムがダウンするのだけは避けるべきです。
将来的に業務システム連携ができるインフラ環境であること
欲を言えば、先々のことを考えて業務システムと連携できるインフラ環境だとシステム全体のカスタマイズが容易です。ECサイト運営企業であっても経理や営業、勤怠管理など自社の業務システムがあるはずです。これら業務システムとECサイトが上手く連携できるようなインフラ環境であれば、システムが統合できるし、業務の効率化の点でメリットがあります。
必須ではありませんが、業務システム連携ができればより良いシステムになるでしょう。
転換時期の判断が難しい
ECサイトのインフラ環境についてまとめてきましたが、インフラ環境を構築する上で難しいのが転換時期の判断です。誰しも既存のインフラ環境で安定的に稼働させることを望みます。しかし、状況によってクラウドからオンプレミスに変更する場合や、オンプレミスからクラウドに変更する場合には、どのタイミングでその判断をするかが難しいです。
インフラ環境変更はつまりECサイトのベースを変更することなので、ECサイトが動作しなくなる可能性もあります。そのようなリスクを考えると担当者はシステム転換を躊躇しがちになりますが、いずれどこかで決断をしなければそのシステムは使い物にならなくなります。
転換時期の判断は難しいですが、臭い物にフタをするような対応だけは避けるべきで、活発な議論を交わしてどこかで思い切って決断をせねばなりません。
ECインフラは転換時期の判断が一番難しいといえます。