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量子コンピュータの秘めた可能性と実用化のメリット

従来のコンピュータとは一線を画す性能を持つと言われている量子コンピュータ。その処理速度は一般的なコンピュータと比べて一億倍にものぼると言わていますが、量子コンピュータはどのような技術を使って生み出されたのでしょうか。

また、量子コンピュータはまだまだ実用化・一般への普及までは時間がかかるとされていますが、その理由や実用化に向けて必要な技術は何なのか、日本の出番は無いのかなど、まだ一般的に普及していないため、量子コンピュータについて気になることは沢山あります。
今回はそんな疑問の答えを簡単にまとめつつ、量子コンピュータの可能性と日本との関わりについてご紹介します。

目次

量子力学を応用した量子コンピュータ

量子コンピュータはミクロ単位の学問である、量子力学の考え方を応用して発明されたコンピュータです。物質の最小単位である量子の世界で計算を行うことで、私たちの生活するマクロな世界では非現実的な処理を可能にしており、次世代のコンピュータとして注目が集まっています。

量子コンピュータの出現

量子コンピュータの始まりは1980年代にまで遡り、以来世界中の研究者によって少しづつ実用化に向けて発展してきました。しかしながら研究が始まって40年近く経とうとしている現在でも実験段階の域を抜けておらず、ここ最近になってようやく実用モデルのプロトタイプが出回り始めているというのが現状です。

革命的な計算方法で従来のコンピュータを圧倒

同じ計算機であるとはいえ、量子コンピュータが従来のコンピュータ(古典コンピュータ)と比べて凄まじい処理速度の差が生まれる理由は、量子コンピュータの計算方法にあります。

例えば一通りだけ正解のある4桁の二進数を求めるという問題を考えてみましょう。二進数は0と1だけで表される数ですが、普段私たちが使っているコンピュータの場合、この解を求める際には総当たり形式で0000~1111までを一つずつ試しては正解に近づいていきます。

一方量子コンピュータの場合、一度の計算で0000~1111までの数字を全て導くことができてしまいます。それはあまりの速さで一度の計算で求められているということではなく、量子コンピュータにとっては0が1であり、1は0であるため、文字どおり一回の処理で正解を含めた全ての4桁の数を算出してしまうのです。

上で述べた私たちの世界では非現実的な処理とはこのことで、まさに量子の世界でのみ可能な計算方法なのです。そしてこの性質上、計算が複雑になればなるほどその計算スピードは加速していくのも量子コンピュータの恐ろしくも頼もしい特徴です。

ただこの計算方法で問題なのは、量子コンピュータによって導かれた答えからいかにして正しい解を拾い上げるかという点です。確かに解を出す速度は従来のコンピュータに比べると抜群の速さを誇るのですが、そこから正しい解を見つけ出すためにはまた別の処理を行う必要があります。

現在、量子コンピュータに携わる研究者の多くは、まさにこの処理、アルゴリズムを見つけ出す点に注力していると言えます。
既存のアルゴリズムの中で実用的なものはまだまだ数が少なく、より効率の良い処理方法を見つけなければならないのが現状なのです。

量子コンピュータの実用化に向けて

古典コンピュータとは比べられないほどの処理速度を持つ量子コンピュータは、実用化が実現すれば様々な分野での活躍が期待できます。

量子コンピュータ×人工知能=人智を超える?

人工知能の発展にはこれ以上ない貢献をしてくれると期待されるのも量子コンピュータです。人間は無意識のうちに、脳で膨大な処理を行なっていると言われますが、量子コンピュータによる演算を行う人工知能が現れた際には、それこそ人智を超える存在となるAIが誕生するかもしれません。量子コンピュータの実用化なしにAIの発展は無いとまで言われています。

関連記事:シンギュラリティとは?AIと人間の共存を考える

量子コンピュータが医療の世界で期待されること

膨大な計算量をこなせる能力は医療の世界でも活躍します。例えば新薬の開発の際に、科学者は有効であると思われる化学物質の組み合わせを発見しなければいけないのですが、そのパターンはとても人間や古典コンピュータが一朝一夕でまかなえる数ではありません。

がんの治療薬でさえ、そのパターンは1000兆のおよそ1000万倍もの通りがあると言われているのですが、この開発にも量子コンピュータを使えば驚くほどの時間短縮につながるでしょう。

新薬の開発スピードは格段に上昇し、多くの命を救うことにもつながるはずです。HIVや末期ガン、ALSのような難病であっても、量子コンピュータが実用化されれば特効薬が生まれるのもそう遠くはないはずです。

ビッグデータ解析に真価を発揮する?

また現代はIoTの時代ですから、モノのインターネットを介して集められたビッグデータの解析にも大きく貢献することでしょう。
複合的なデータの組み合わせや、需要予測、未来予測といった分野で力を発揮するのではないでしょうか。

このように、量子コンピュータは古典コンピュータとは違い、研究機関や大手企業での活用が主となり、日常生活を支える汎用ツールではなさそうです。例に挙げたような膨大な計算を得意とするため、普通に暮らしていてそのすごさや恩恵に対する実感は湧きにくいかもしれません。
しかし量子コンピュータによってもたらされたデータや解析結果は、間違いなく私たちのライフスタイルをより健康に、そしてスマートなものに進化させていくことでしょう。

量子コンピュータの実用化に向けた課題

まさに夢のような可能性を秘めている量子コンピュータですが、実用化までにはまだいくつかの課題を残しています。

一つは先ほども述べたように、正しい解を見つけ出すためのアルゴリズムを発見しなければいけない点です。研究者は日夜このアルゴリズムの発見に向けて研究を重ねており、AIが未熟なうちはまだまだ人が自力で見つけ出す必要があります。

もう一つ重要なのは、量子コンピュータの使い勝手の向上です。量子コンピュータは確かに優れた性能をもつ計算機ですが、その使い勝手の悪さ、もとい計算の複雑さは、一般的なコンピュータのそれよりもはるかに難易度の高いものになっています。

技術の発展にはそれに比例して携わる人間の数を増やしていく必要もあるのですが、あまりに手が付けられない難しさのままでは、開発に時間がかかり過ぎてしまいます。そこで大事なのが、量子コンピュータに携わる第一人者たちが、一人でも多くの人に量子コンピュータに触れてもらえるよう、技術をオープンにするための工夫や開発に力を入れる必要があるのです。

少し前にIBMが量子コンピュータをオンラインで使えるサービスを公開していましたが、こういった取り組みからも現場における人口増加の重要性を伺うことができます。

参考:https://wired.jp/2016/05/09/ibm-letting-anyone-play-quantum-computer/

量子コンピュータが日本の産業にもたらす影響

コンピュータと聞くとついつい海外での話と考えてしまいがちですが、実は日本もコンピュータ技術に関しては世界でもトップレベルの研究成果を挙げています。

案外無視できない日本のコンピュータ技術

例えば先日、東京大学の研究グループでは実用化に欠かせない現象であると言われる「量子テレポーテーション」の技術開発に成功しました。
世界初の実用モデルとされる量子コンピュータもカナダのベンチャー企業によって販売されましたが、その販売されたモデルの理論の提唱者もまた日本人だったのです。

参考:http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/200/260401.html
   http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/215171/091400001/

量子コンピュータの実用化に必要なのは研究費

重要な成果を出しておきながら、日本が今ひとつ大きな結果に繋げられていないのは、その研究予算の低さが足を引っ張っているとも言われています。欧米ではすでに数千億円ものお金が量子コンピュータ研究に投資されているのにもかかわらず、日本の研究グループはその数字に一桁二桁劣ってしまっています。

参考:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/17/062900267/062900002/
基礎研究とは別に、実用化にも多額の資金が必要です。ようやく量子コンピュータの実用化にあと一歩と迫っている今だからこそ、より多くのお金を研究グループは必要としているのです。
日本の技術者が未来へ向けてしっかりと研究を続けられるような基盤づくりが求められます。

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