パーソナライズされたOMOの購買体験:コネクテッドコマース
オンラインとオフラインを融合させる「OMO」に伴う小売のあり方、コネクテッドコマース。消費者に、オン/オフどちらからも同じようにスムーズな購買体験を提供することを意味します。
この記事では、コネクテッドコマースとその背景にあるOMOについてその概要を解説し、米国の企業に関する具体的な取り組み事例を紹介しています。
米国で展開されるスターバックスやAmazonの実証実験および取り組みをみながら、国内におけるコネクテッドコマースの可能性について探ってみましょう。
コネクテッドコマースに不可欠なデジタル技術や、マイクロソフトの開発するソリューションについても事例の後に紹介しています。
目次:
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オンライン/オフラインという場所を問わず、またPCかスマートフォンかというデバイスも選ばず、いずれの場合も同じような購買体験ができるというシステムづくりは、欧米で取り組みが進められています。
こうした概念やあり方を理解するためには、OMOという概念をまずベースとする必要があります。
OMO(Online Merges with Offline)は、日本語にすれば「オンとオフの融合」というニュアンスになります。元Google中国のトップである李開復(リ カイフ)によって提唱されました。オフラインを基盤として戦略を展開するのではなく、オンラインに軸足を置いて融合的なリテールのアイデアを展開していくことが時代に求められています。
OMOやオンラインで常時つながり続けるアフターデジタルの概念については、「OMOとは:O2Oとの違いとアフターデジタルのマーケティング」で紹介しています。
Amazonやスターバックス、HP(ヒューレットパッカード)が米国で展開している実際の取り組みをチェックしてみましょう。
実店舗がAmazon Payを採用する利点は、新規顧客の獲得、不正取引の防止対策、コンバージョンレートの改善などでしょう。
実際に、2015年12月〜2016年12月に実施した調査では、Amazon Payを導入した店舗は56%の顧客増加が確認されています。また、コンバージョンレート(サイトの商品をカートに入れた状態から、実際の購入に至る確率)も9割台と高いパーセンテージが調査結果として出されました。
米国では、Amazonのもつ技術を利用した次のような提携事例があります。
Moda Operandiアプリの利用者が店舗を訪れるとビーコンが顧客を検知し、従業員はオン/オフでの購入商品履歴をチェックすることができます。これによって、スタッフは履歴に応じておすすめする商品を選んだり、オンラインのカートに入っている商品の試着を促したりすることが可能になります。 顧客はAmazon Payを使えば現金やカードを出すことなく、アプリのみで支払いを完結させることができます。その上、Amazonに登録した住所に商品配送を指定することもできます。
こうしたシステムやアプリをいちから構築するのはかなりのコストがかかりますが、Amazonと提携すればAmazonの提供する機能で上記すべてのフローを完結させることができます。つまり、Amazonの提供するアプリ機能を使うことにより、低コスト、低リスクでコネクテッドコマースを実現できるというわけです。
・Moda Operandi
・TGI Fridays
機器の稼働データを蓄積することによって、故障する前の適切なタイミングでメンテナンスを実施できるようになり、よりスムーズにマシンを使えることが期待されています。機器を不具合なく使い続けられるようになれば、従業員は接客に充分な時間をかけられるようになり、顧客満足度が上がるとしています。
とはいえ、マシンの稼働状況を管理するという現時点のソリューションだけではユーザーは利便性を実感しにくいかもしれません。
しかし、これらのデータは、今後POSデータや会員情報とコネクトされて、それぞれの顧客に最適なレコメンドが実施できるようになるそうです。また、地域や時間帯に合わせたマーケティング展開にも利用される予定です。その段階に至れば、スターバックスのユーザーもコネクテッドコマースの利便性を感じられるようになるでしょう。
HPが導入しているチャットボットはマイクロソフトのAI機能である「Microsoft Azure Cognitive Service」の音声認識と文字認識を学習させて精度を向上させたものです。
・HP
Natuzziはこの実証実験で、商品の実物大ホログラムを3D映像で表示できるマイクロソフトのヘッドマウントディスプレイ「Microsoft HoloLens」を使って、家具を自宅の室内に置いた様子をホログラム化できるようにしました。 ホロレンズを使えば、家具を自宅に置いた時にどのようなサイズ感になるのかを確かめるだけでなく、家具のカラーを変えてインテリアとの調和を見ることもできます。
店舗で見ている家具が自宅に置いた時にどう見えるか、事前に計測したサイズが本当に合っているかという懸念は、家具を購入する人なら誰でも抱くものでしょう。しかしホロレンズを使えば、実際に家具を置いた状態を可視化できるため、購入前にかなり具体的なイメージが可能になります。購入比率をアップさせ、購入決定までにかかる時間を短縮できたのも納得の結果ではないでしょうか。
米国の世界的なリサーチ企業ガートナーの発表によると、2020年は100万人もの人がAR(拡張現実)を使って買い物をする時代になるそうです。 ARとVR(仮想現実)を組み合わせた進化版のテクノロジーをMR(Mixed Reality:複合現実)といい、マイクロソフトは小売り向けのソリューションを提供し始めています。
一方でVRはVirtual Realityの略であり、現実とは別に仮想空間を構築するものをさします。
イタリアの家具メーカーNatuzziのように、自宅(現実世界)にオブジェクトの映像を配置する、ポケモンGOのように現実世界にキャラクターが一緒に映りまるでそこに存在しているかのように見える、これがARです。
現実には存在しないゲームやSFの世界を楽しむ、宇宙や高山など気軽に訪れることができない場所に行ったかのような体験ができるのがVRです。
これらに対して、MRは、カメラなどを通して現実世界の情報を仮想世界に反映させることをさします。
デジタル空間を主体としており、現実世界の情報を反映させることで複合的なシチュエーションを作り出します。MRの利点は現実世界の情報を固定できることで、これにより複数の人間が同じMRを見たり、体験したりすることができるようになっています。
これは、主に家具、家電や大型設備機器向けの使用が想定されており、これらの製品のカタログを3D化することで、現場に実物大製品を重ね合わせることができるようになります。 また、これと組み合わせて小売業の課題を解決可能な「Dynamics 365 Retail/Commerce」も用意されています。これはPOSやEC、店舗オペレーション、財務、人事などを包括したクラウドソリューションで、各顧客接点で分断されがちなデータを有機的につなぐことができるツールとして有用です。
マイクロソフトは、「インテリジェントな小売業の実現」として、
これらの要件を達成するためには、まずデータの集約と総合的な管理が必要となるため、今後の小売業においてはデジタル技術の活用とそれによって得られたデータの適切な運用システムの構築が必須となるでしょう。
その時になって後手に回らないためには、今からオン/オフを問わずに購買体験を提供できるよう、戦略を展開していく必要があるのではないでしょうか。
米国で展開されるスターバックスやAmazonの実証実験および取り組みをみながら、国内におけるコネクテッドコマースの可能性について探ってみましょう。
コネクテッドコマースに不可欠なデジタル技術や、マイクロソフトの開発するソリューションについても事例の後に紹介しています。
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OMOとコネクテッドコマース
コネクテッドコマースは、オンライン/オフラインの両方でパーソナライズされた購買体験を提供する小売のあり方のことです。オンライン/オフラインという場所を問わず、またPCかスマートフォンかというデバイスも選ばず、いずれの場合も同じような購買体験ができるというシステムづくりは、欧米で取り組みが進められています。
こうした概念やあり方を理解するためには、OMOという概念をまずベースとする必要があります。
OMO(Online Merges with Offline)は、日本語にすれば「オンとオフの融合」というニュアンスになります。元Google中国のトップである李開復(リ カイフ)によって提唱されました。オフラインを基盤として戦略を展開するのではなく、オンラインに軸足を置いて融合的なリテールのアイデアを展開していくことが時代に求められています。
OMOやオンラインで常時つながり続けるアフターデジタルの概念については、「OMOとは:O2Oとの違いとアフターデジタルのマーケティング」で紹介しています。
コネクテッドコマースの海外事例
オン/オフで変わらぬ購買体験は、実際にその例を見てみないとイメージがわきにくいかもしれません。Amazonやスターバックス、HP(ヒューレットパッカード)が米国で展開している実際の取り組みをチェックしてみましょう。
Amazonの取り組み
Amazonのコネクテッドコマースは、Amazon PayとAlexa、Amazonアプリなどを活用することで、オンラインと実店舗を連携しています。Amazon Payは、Amazon以外のECサイトや提携している実店舗で決済に使用できるソリューション。日本では2015年から利用できるようになっています。実店舗がAmazon Payを採用する利点は、新規顧客の獲得、不正取引の防止対策、コンバージョンレートの改善などでしょう。
実際に、2015年12月〜2016年12月に実施した調査では、Amazon Payを導入した店舗は56%の顧客増加が確認されています。また、コンバージョンレート(サイトの商品をカートに入れた状態から、実際の購入に至る確率)も9割台と高いパーセンテージが調査結果として出されました。
米国では、Amazonのもつ技術を利用した次のような提携事例があります。
AmazonとModa Operandi
高級ファッション店舗「Moda Operandi」は、オンラインストアだけでなく実店舗でもAmazon Payとアプリを活用するコネクテッドコマースの実証実験をおこないました。Moda Operandiアプリの利用者が店舗を訪れるとビーコンが顧客を検知し、従業員はオン/オフでの購入商品履歴をチェックすることができます。これによって、スタッフは履歴に応じておすすめする商品を選んだり、オンラインのカートに入っている商品の試着を促したりすることが可能になります。 顧客はAmazon Payを使えば現金やカードを出すことなく、アプリのみで支払いを完結させることができます。その上、Amazonに登録した住所に商品配送を指定することもできます。
こうしたシステムやアプリをいちから構築するのはかなりのコストがかかりますが、Amazonと提携すればAmazonの提供する機能で上記すべてのフローを完結させることができます。つまり、Amazonの提供するアプリ機能を使うことにより、低コスト、低リスクでコネクテッドコマースを実現できるというわけです。
・Moda Operandi
AmazonとTGI Fridays
古き良きアメリカをコンセプトとしたカジュアルレストランのTGI Fridaysは、Amazonアプリを利用することで事前注文&決済ができるシステムを構築しています。 事前に注文しておけば、顧客はレストランに行ってからわざわざレジに並ぶ必要がありません。前回注文した時と同じ注文を希望する時は、「リオーダー」というボタンを使ってよりスムーズに注文を済ませることもできます。・TGI Fridays
スターバックスの取り組み
米国のスターバックスでは、現在エスプレッソマシンをはじめとする機器の稼働状況をIoTによって逐一チェックできるようにしています。機器の稼働データを蓄積することによって、故障する前の適切なタイミングでメンテナンスを実施できるようになり、よりスムーズにマシンを使えることが期待されています。機器を不具合なく使い続けられるようになれば、従業員は接客に充分な時間をかけられるようになり、顧客満足度が上がるとしています。
とはいえ、マシンの稼働状況を管理するという現時点のソリューションだけではユーザーは利便性を実感しにくいかもしれません。
しかし、これらのデータは、今後POSデータや会員情報とコネクトされて、それぞれの顧客に最適なレコメンドが実施できるようになるそうです。また、地域や時間帯に合わせたマーケティング展開にも利用される予定です。その段階に至れば、スターバックスのユーザーもコネクテッドコマースの利便性を感じられるようになるでしょう。
HP(ヒューレットパッカード)の取り組み
プリンターやPCを販売しているHP(ヒューレットパッカード)は、年間600万件と公表されている膨大なコールセンターへの問い合わせに対応するため、チャットボットを導入しています。精度の高いチャットボットを実装する前は、5万ページの取扱説明書をオペレーターが人力で検索し、問い合わせ内容に回答していましたが、現在では600万件のうちの70〜80%をチャットボットが受け持ち、回答を返しています。 また、オペレーターの研修にもチャットボットを導入し、トレーニングコストを削減する効果も併せて紹介されています。HPが導入しているチャットボットはマイクロソフトのAI機能である「Microsoft Azure Cognitive Service」の音声認識と文字認識を学習させて精度を向上させたものです。
・HP
イタリアNatuzzi(ナツッジ)
イタリアの大手家具メーカーNatuzzi(ナツッジ)はホログラムを活用した実証実験で、オン/オフ融合による購入比率の上昇、決定時間までの短縮化を発表しました。Natuzziはこの実証実験で、商品の実物大ホログラムを3D映像で表示できるマイクロソフトのヘッドマウントディスプレイ「Microsoft HoloLens」を使って、家具を自宅の室内に置いた様子をホログラム化できるようにしました。 ホロレンズを使えば、家具を自宅に置いた時にどのようなサイズ感になるのかを確かめるだけでなく、家具のカラーを変えてインテリアとの調和を見ることもできます。
店舗で見ている家具が自宅に置いた時にどう見えるか、事前に計測したサイズが本当に合っているかという懸念は、家具を購入する人なら誰でも抱くものでしょう。しかしホロレンズを使えば、実際に家具を置いた状態を可視化できるため、購入前にかなり具体的なイメージが可能になります。購入比率をアップさせ、購入決定までにかかる時間を短縮できたのも納得の結果ではないでしょうか。
MRがコネクテッドコマースに貢献する未来
コネクテッドコマースを実現するためには、デジタル技術の複合的な活用が不可欠です。先に挙げた事例でも、AIやIoT、ホログラムといったテクノロジーが採用されて大きな成果を挙げていました。米国の世界的なリサーチ企業ガートナーの発表によると、2020年は100万人もの人がAR(拡張現実)を使って買い物をする時代になるそうです。 ARとVR(仮想現実)を組み合わせた進化版のテクノロジーをMR(Mixed Reality:複合現実)といい、マイクロソフトは小売り向けのソリューションを提供し始めています。
ARとVRとMRの違い
ARはAugmented Realityの略で、現実世界を拡張するものをさします。一方でVRはVirtual Realityの略であり、現実とは別に仮想空間を構築するものをさします。
イタリアの家具メーカーNatuzziのように、自宅(現実世界)にオブジェクトの映像を配置する、ポケモンGOのように現実世界にキャラクターが一緒に映りまるでそこに存在しているかのように見える、これがARです。
現実には存在しないゲームやSFの世界を楽しむ、宇宙や高山など気軽に訪れることができない場所に行ったかのような体験ができるのがVRです。
これらに対して、MRは、カメラなどを通して現実世界の情報を仮想世界に反映させることをさします。
デジタル空間を主体としており、現実世界の情報を反映させることで複合的なシチュエーションを作り出します。MRの利点は現実世界の情報を固定できることで、これにより複数の人間が同じMRを見たり、体験したりすることができるようになっています。
マイクロソフトの小売り向けソリューション
マイクロソフトは3Dモデルを使って商品説明が可能なタブレット・スマホ向けソリューション「Microsoft Dynamics 365 Product Visualize」を開発しています。これは、主に家具、家電や大型設備機器向けの使用が想定されており、これらの製品のカタログを3D化することで、現場に実物大製品を重ね合わせることができるようになります。 また、これと組み合わせて小売業の課題を解決可能な「Dynamics 365 Retail/Commerce」も用意されています。これはPOSやEC、店舗オペレーション、財務、人事などを包括したクラウドソリューションで、各顧客接点で分断されがちなデータを有機的につなぐことができるツールとして有用です。
マイクロソフトは、「インテリジェントな小売業の実現」として、
- サイトや店舗、コールセンターなどあらゆる顧客接点で発生するデータの総合管理
- それによって実現されるパーソナライズされた接客とレコメンド
- ロジティクスやオペレーションに対する全顧客接点データのシームレスな活用
- それらのデータを分析することで実現するプロモーションの最適化
これらの要件を達成するためには、まずデータの集約と総合的な管理が必要となるため、今後の小売業においてはデジタル技術の活用とそれによって得られたデータの適切な運用システムの構築が必須となるでしょう。
まとめ
コネクテッドコマースはその思考自体がさほど日本には浸透していないため、実例として挙がってくるのはそのほとんどが海外のものです。しかし、常にオンラインに接続しているアフターデジタル(オフラインのなくなる社会)はすでに、現実のものとなりつつあります。その時になって後手に回らないためには、今からオン/オフを問わずに購買体験を提供できるよう、戦略を展開していく必要があるのではないでしょうか。