SNSでモノを売る時代、鍵となるのは「UGC」
アーンドメディアに特化したデジタルマーケティング支援企業、ホットリンクの執行役員CMO・飯髙悠太氏による書籍、「僕らはSNSでものを買う」が話題です。
スマートフォンの普及に伴い、多くの人にとってSNSは単に時間を潰すだけのサービスではなく、購買の意思を左右する重要なプラットフォームになったと言えるでしょう。
Instagramに実装された「ShopNow」といった機能の登場で、その意味合いはますます強まっています。
そして、あらゆる企業がSNSと向き合う時に鍵となるのが、「UGC」への理解です。それは、場合によっては商品の売上やブランドロイヤルティを大きく向上させることにも直結するのです。
本稿では、UGCの概要から、実際にUGCを活用したマーケティング事例まで幅広くお伝えしていきます。
目次:
一口にUGCと言ってもコンテンツのタイプは幅広く、SNSに投稿される画像や映像、テキストコンテンツはもちろん、AmazonなどECサイトや、口コミサイトに投稿される商品・サービスのレビューもUGCの一種になります。
UGCが生成される場所は、ざっくりと以下のような場所です。
かつて、マーケティングコミュニケーションのフレームワークと言えば「マーケティング・ファネル」が一般的な考え方でした。これは、消費者の購買行動を、だんだん狭くなる漏斗の形に当てはめるもので、最も間口が広い認知獲得はテレビCMなどのマス広告が担い、最も購買に近い漏斗の先端での刈り取りにはインターネット広告、というような具合に施策をプランニングしていたものです。
ULSSASの頭文字が表す消費者の行動は以下の通りです。
消費者がSNS上で特定のコンテンツを検索する際に用いられるのが「#(ハッシュタグ)」であり、もし企業がマーケティングコミュニケーションにUGCをうまく活用したいのであれば、このハッシュタグの設計はSEO対策と同じぐらい重要なポイントになります。
特にInstagramなどにはハッシュタグ(+キーワード)そのものをフォローする機能が搭載されているため、例えばブランド公式アカウントの投稿をアップする際に、商品に関連性の高いハッシュタグを効果的に挿入することで、リーチを格段に上げることができるはずです。
そして、そのUGCがまた違う消費者の目に触れることで、ULSSASの車輪は永久的に回っていくのです。
もちろん、全ての消費者の購買行動がこのモデルのように推移するわけではありません。しかし、これらSNS時代特有の心理や購買行動のポイントを押さえておくことで、UGCを上手に自社のマーケティングコミュニケーションに活かすことができるようになるでしょう。
以下では、そのような事例をかいつまんで見ていきたいと思います。
同様のパターンとして、コンバースのスニーカーの真っ白なキャンバス地に手描きで模様を描いた写真がUGCとしてアップされ、それに倣って次々と「腕自慢」の消費者が自分オリジナルの模様を描き込んだスニーカーをアップする、という現象が起きたことなど、似たような事例には枚挙にいとまがありません。
株式会社アールシーコアが展開する「BESS」というログハウスブランドには、アウトドア好きな層を中心に、熱狂的なファンオーナーがたくさん存在します。彼らは、誰から頼まれなくとも、DIYインテリアなど細部にまでこだわった「BESSでの暮らし」を日々Instagramなどに発信しています。そのポストを見て「いい」と感じる消費者は、かなりの確率でBESSの展示場を訪れ、そして、めでたく成約しBESSの家を建てたユーザーは必ずと言っていいほどInstagramに自宅の写真をアップする、というループが出来上がっているのです。
さらには、BESSの家を検討している消費者の多くは、自分が建てたいと考えている同タイプのモデルをハッシュタグで検索し、インテリアなどの参考にする、という行動も顕著に現れています。
当然、これら能動的に生み出されたUGCは、それぞれの消費者に許可を取って企業の公式アカウントにリポストする、といった活用の仕方も考えられます。UGCのクオリティが高ければ、ゼロイチでコンテンツを制作するのと比べて、かなりコストを抑えることも可能になります。
しかし、広告が嫌われがちなのは今も昔も変わりなく、そのような企業の呼びかけに消費者を乗せるには魅力的なインセンティブが必要だったり、また、かつては今ほど手軽にUGCをアップロードできるプラットフォームが整っていなかったため、企業の狙いほどにはそのコミュニケーションを盛り上げることができなかったプロモーションがたくさんありました。
しかし、今は多くのプラットフォームで簡単に綺麗な写真や動画をアップロードができるようになり、企業が呼びかけて消費者を上手くその気にさせるハードルはかなり低くなっていると言えるでしょう。
中でも、TikTokは特筆すべきものがあると思います。TikTokはもともとダンスの振り付けなど、いわゆる「バズった」フォーマットをみんなでマネをする、という独特の文化が根付いています。したがって、その元ネタの発信源が企業のプロモーションであっても、消費者は気にせず乗っかる傾向があるのです(もちろん、企業から消費者に振る元ネタ自体が「面白い、やってみたい」と思われなければ話になりませんが)。
そして、このTikTok特有のプロモーションフォーマットの一つが「ハッシュタグチャレンジ」です。
「#と思いきやダンス」(ワイモバイル)や「#ポッキー何本分体操」(江崎グリコ)、「#あなたとほほティー」(キリン)など多くのプロモーションにおいて、多くの視聴者はそれを企業の広告活動と知った上でUGCを量産し、上手くハマったものでは動画の総視聴回数が約1億回に上ったり、エンゲージメント数が80万以上獲得する事例も出ているのです。
例えばスマホのスペックがさらに高まり、5Gが実用化されることで、プロ顔負けの動画UGCが当たり前になったり、スマートスピーカー がもっと普及することで、音声をベースにしたUGCなんかも登場するかも知れません。
いずれにしても、本当に影響力のあるマーケティングコミュニケーションを生み出すために、企業サイドの人間は、一消費者として常に様々なプラットフォームに親しみながら、移ろいやすいSNS上のトレンドや文脈を把握しておくことが必要なのではないでしょうか。
スマートフォンの普及に伴い、多くの人にとってSNSは単に時間を潰すだけのサービスではなく、購買の意思を左右する重要なプラットフォームになったと言えるでしょう。
Instagramに実装された「ShopNow」といった機能の登場で、その意味合いはますます強まっています。
そして、あらゆる企業がSNSと向き合う時に鍵となるのが、「UGC」への理解です。それは、場合によっては商品の売上やブランドロイヤルティを大きく向上させることにも直結するのです。
本稿では、UGCの概要から、実際にUGCを活用したマーケティング事例まで幅広くお伝えしていきます。
目次:
- 「UGC」は消費者自らが生成するコンテンツの総称
- SNS時代の購買行動フレームワーク「ULSSAS」モデル
- 商品やパッケージそのものの存在がUGCを能動的に生み出す
- 高額商品でもUGCの効果がテキメンな事例「BESS」
- 企業の呼びかけに消費者が自ら乗っかるプラットフォーム「TikTok」
- さいごに
「UGC」は消費者自らが生成するコンテンツの総称
UGCとは「User Generated Contents」の略であり、要は消費者自らが生成するコンテンツのことを指します。一口にUGCと言ってもコンテンツのタイプは幅広く、SNSに投稿される画像や映像、テキストコンテンツはもちろん、AmazonなどECサイトや、口コミサイトに投稿される商品・サービスのレビューもUGCの一種になります。
UGCが生成される場所は、ざっくりと以下のような場所です。
SNS
Twitter、 Facebook、InstagramなどのSNSは、多くのユーザーが気軽にUGCを生成するプラットフォームです。SNSごとに得意とするコンテンツのタイプが異なります。スマートフォンのスペックが向上し、誰でも簡単に動画編集ができるアプリが多数存在する今では、YouTubeやTikTokなどの動画共有プラットフォームも重要な存在です。ナレッジコミュニティ
「cookpad」や「Quora」など、ユーザーの知りたいことに対し、ユーザーの投稿したコンテンツが役に立つプラットフォームです。知識共有コミュニティとも呼ばれます。口コミサイト
「食べログ」や「価格コム」「@cosme」など、ユーザーによるたくさんのレポートを通じて、商品やサービスを比較検討できることに特化したプラットフォームです。Amazonなどショッピングサイトの「レビュー」も、購買の意思を決定づけるUGCが多数生まれる重要な場です。ブログサービス
「アメーバブログ」や「note」など、ユーザー個人がブログを自由に投稿できる機能を充実させたブログサービスも、多くのUGCが生まれるプラットフォームです。ブログのテーマや内容は書き手次そこにできあがるコミュニティの形は多様なものになります。SNS時代の購買行動フレームワーク「ULSSAS」モデル
冒頭で言及した「僕らはSNSでモノを買う」の中では、SNS時代には、UGCを軸にしたフレームワーク、「ULSSAS(ウルサス)」が重要であると述べられています。かつて、マーケティングコミュニケーションのフレームワークと言えば「マーケティング・ファネル」が一般的な考え方でした。これは、消費者の購買行動を、だんだん狭くなる漏斗の形に当てはめるもので、最も間口が広い認知獲得はテレビCMなどのマス広告が担い、最も購買に近い漏斗の先端での刈り取りにはインターネット広告、というような具合に施策をプランニングしていたものです。
ULSSASの頭文字が表す消費者の行動は以下の通りです。
- U(UGC)
- L(Like:つまり「いいね」)
- S(Search①:SNS上での検索)
- S(Search②:Google等検索エンジンでの検索)
- A(Action:購買)
- S(Spread:拡散)
U(UGC)
一方「ULSSAS」とはSNS時代の購買行動をフレームワーク化したもので、その起点がUGCとなっています。なぜなら、今の時代は、多くの消費者が、いわゆるスキマ時間のほとんどをSNS上で過ごしているため、認知獲得や興味喚起にSNSは外せないからです。L(Like:つまり「いいね」)
UGCを起点にしつつ、興味深いのはその後のアクションです。気になるUGCには「いいね」をする、というのはまさにSNSに特化した行動です。かつてのマーケティングファネルで言えば「興味関心」が高まった瞬間にも似た心の動きとも言え、本当に「いいね」をしたかどうかは、1人の消費者の行動を考える場合にはさほど問題ではありません(ただし、エンゲージメントの高いUGC、いわゆる「バズったコンテンツ」は多くの消費者にリーチする力を持っているため、そういう意味では重要なポイントではあるのですが)。S(Search①:SNS上での検索)
その後の行動にも今時の消費者の特徴が現れています。まず、気になったUGCに基づき、SNS上で商品やサービスを検索するのです。なぜなら、SNS上で検索して画面に現れるのはほとんどが再びUGCであり、その商品やサービスに対するリアルな評価を見ることができると考えられているからです。消費者がSNS上で特定のコンテンツを検索する際に用いられるのが「#(ハッシュタグ)」であり、もし企業がマーケティングコミュニケーションにUGCをうまく活用したいのであれば、このハッシュタグの設計はSEO対策と同じぐらい重要なポイントになります。
特にInstagramなどにはハッシュタグ(+キーワード)そのものをフォローする機能が搭載されているため、例えばブランド公式アカウントの投稿をアップする際に、商品に関連性の高いハッシュタグを効果的に挿入することで、リーチを格段に上げることができるはずです。
S(Search②:Google等検索エンジンでの検索)
もう一つの検索は、購買意欲がかなり高まった状態で、商品やサービスをより深掘りするために、能動的に検索エンジンを活用することを表しています。このような状況ではECサイト上のレビューなどに加え、認知がない状態ではあまり見向きもされないであろう、オウンドメディアおよび公式サイトのコンテンツも購買の意思を左右する重要な要素となってきます。A(Action:購買)からのS(Spread:拡散)
購買後のフェーズもまた、SNS時代ならではの行動と言えます。今時の消費者は、満を辞して購買した商品の写真を撮って、UGCとしてSNSにアップロードするものです。特に、「その商品を選択した自分」の存在を、価値観が近しいコミュニティにアピールしたい場合などは顕著にその傾向が現れます。そして、そのUGCがまた違う消費者の目に触れることで、ULSSASの車輪は永久的に回っていくのです。
もちろん、全ての消費者の購買行動がこのモデルのように推移するわけではありません。しかし、これらSNS時代特有の心理や購買行動のポイントを押さえておくことで、UGCを上手に自社のマーケティングコミュニケーションに活かすことができるようになるでしょう。
以下では、そのような事例をかいつまんで見ていきたいと思います。
商品やパッケージそのものの存在がUGCを能動的に生み出す
明治の「ザ・チョコレート」は、チョコレートのクオリティそのものではなく、デザイン性に優れたパッケージの存在が、(それを意図していたかどうかに関わらず)多くのUGCを生み出しました。この商品はカートン素材がそのまま活かされたようなパッケージ(そして中心にカカオをあしらったカラフルな模様がレイアウトしてある)を採用していたのですが、絵心のある消費者が、ロゴの周りにペンで好きな漫画やアニメのキャラクターを描いてSNSにアップしたところ、それを真似する消費者が続々と登場し、結果的に「ザ・チョコレート」の存在は多くの人の目に留まることになりました。同様のパターンとして、コンバースのスニーカーの真っ白なキャンバス地に手描きで模様を描いた写真がUGCとしてアップされ、それに倣って次々と「腕自慢」の消費者が自分オリジナルの模様を描き込んだスニーカーをアップする、という現象が起きたことなど、似たような事例には枚挙にいとまがありません。
高額商品でもUGCの効果がテキメンな事例「BESS」
UGCは、食品やアパレルだけでなく、上手くハマれば「家」のような高額商品においても効果がテキメンであることを示す事例があります。株式会社アールシーコアが展開する「BESS」というログハウスブランドには、アウトドア好きな層を中心に、熱狂的なファンオーナーがたくさん存在します。彼らは、誰から頼まれなくとも、DIYインテリアなど細部にまでこだわった「BESSでの暮らし」を日々Instagramなどに発信しています。そのポストを見て「いい」と感じる消費者は、かなりの確率でBESSの展示場を訪れ、そして、めでたく成約しBESSの家を建てたユーザーは必ずと言っていいほどInstagramに自宅の写真をアップする、というループが出来上がっているのです。
さらには、BESSの家を検討している消費者の多くは、自分が建てたいと考えている同タイプのモデルをハッシュタグで検索し、インテリアなどの参考にする、という行動も顕著に現れています。
当然、これら能動的に生み出されたUGCは、それぞれの消費者に許可を取って企業の公式アカウントにリポストする、といった活用の仕方も考えられます。UGCのクオリティが高ければ、ゼロイチでコンテンツを制作するのと比べて、かなりコストを抑えることも可能になります。
企業の呼びかけに消費者が自ら乗っかるプラットフォーム「TikTok」
UGCをマーケティングコミュニケーションに活かすために、企業がプロモーションとしてUGCの生成を呼びかけるという方法は以前から行われていました。しかし、広告が嫌われがちなのは今も昔も変わりなく、そのような企業の呼びかけに消費者を乗せるには魅力的なインセンティブが必要だったり、また、かつては今ほど手軽にUGCをアップロードできるプラットフォームが整っていなかったため、企業の狙いほどにはそのコミュニケーションを盛り上げることができなかったプロモーションがたくさんありました。
しかし、今は多くのプラットフォームで簡単に綺麗な写真や動画をアップロードができるようになり、企業が呼びかけて消費者を上手くその気にさせるハードルはかなり低くなっていると言えるでしょう。
中でも、TikTokは特筆すべきものがあると思います。TikTokはもともとダンスの振り付けなど、いわゆる「バズった」フォーマットをみんなでマネをする、という独特の文化が根付いています。したがって、その元ネタの発信源が企業のプロモーションであっても、消費者は気にせず乗っかる傾向があるのです(もちろん、企業から消費者に振る元ネタ自体が「面白い、やってみたい」と思われなければ話になりませんが)。
そして、このTikTok特有のプロモーションフォーマットの一つが「ハッシュタグチャレンジ」です。
「#と思いきやダンス」(ワイモバイル)や「#ポッキー何本分体操」(江崎グリコ)、「#あなたとほほティー」(キリン)など多くのプロモーションにおいて、多くの視聴者はそれを企業の広告活動と知った上でUGCを量産し、上手くハマったものでは動画の総視聴回数が約1億回に上ったり、エンゲージメント数が80万以上獲得する事例も出ているのです。
さいごに
今後も、UGCは企業のマーケティング活動の中で大きな意味合いを持ち続けるはずです。なぜなら、テクノロジーの進化とともに、アマチュアでも手軽に制作できるコンテンツの幅がさらに広がっていくからです。例えばスマホのスペックがさらに高まり、5Gが実用化されることで、プロ顔負けの動画UGCが当たり前になったり、スマートスピーカー がもっと普及することで、音声をベースにしたUGCなんかも登場するかも知れません。
いずれにしても、本当に影響力のあるマーケティングコミュニケーションを生み出すために、企業サイドの人間は、一消費者として常に様々なプラットフォームに親しみながら、移ろいやすいSNS上のトレンドや文脈を把握しておくことが必要なのではないでしょうか。