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だからそのECサイトリプレースは失敗する。システム導入を成功させる「ベンダー選定」のポイントとは

DXコンサルタント 清水秀大です。
私たちがよくご相談をいただく案件の一つに、ECサイトのリプレースがあります。

現行サイトの保守期間が切れるタイミングに合わせて機能をアップデートしたい、データベースを統合したいなど、リプレースを行う理由は各社様々です。中には、「今のサイトだと使いづらい」「売上が上がらない」といった理由を挙げるお客様もいます。

しかし、会社から「ECサイトのリプレース」というミッションを与えられた時に、安易にリプレース案件のRFPを作成して複数のベンダーに声をかける前に、少し立ち止まって考えてもらいたいのです。
果たして、本当にECサイトをリプレースする必要があるのか?
間違いなくリプレースをする必要がある場合、何を基準にベンダー選定を行おうとしているのか?
コンペにする場合、そのRFPで本当に大丈夫か?

ここに挙げたのはポイントのほんの一部ですが、これらについてあまり考えられていない状態でご相談をいただく場合も決して少なくありません。私の経験上、そういったリプレース案件をそのまま進めてしまった場合、数年後に「失敗だった…」と結論づけられてしまうケースもあり得るのです。

以下で各ポイントを詳しく説明します。

目次:

ECサイトのリプレースは「ECの企画」そのもの

リプレースを考える時(に限らず、EC事業を新規で立ち上げる時も同様ですが)、外注先としては、まずECベンダーに目が行くと思います。

しかし、ECサイトの構築はECベンダーの守備範囲内の要素だけでできるものではありません。そのECサイトに効果的なウェブデザインはどうあるべきか、「ささげ」と呼ばれる部分をどうするか、ECサイト上の価格は誰が決めるのか、ECサイト上のセールやキャンペーンはどのように意思決定していくのかなど、構築後の運営まで考えると実に様々な要素があります。

さらには、様々な部署とも協力・連携する必要があります。例えば、ECサイトの集客は誰をターゲットにどの部署がどうやって進めていくのか。また、店舗との差別化はどう考えるのか、そもそも企業としてのECサイトのポジションをどう位置付けるべきなのかといった大きな視点、つまりECの企画全体そのものがあって、初めてECサイトが成り立つわけです。

そしてそれは、企画意図に沿ったECサイトを目指すための一つ一つの機能がどうあるべきか、機能自体の取捨選択といった、システム開発におけるディテールにも直結する話なのです。

それに、冒頭にも申し上げましたが、ECサイトをリプレースする理由は企業によって様々です。売上の向上が目的の場合もあれば、運用をしやすくすることが目的になる場合もあります。当然、目的が変わればそれに適したサイトの作りも変わってきます。

RFPは「本来の目的」まで掘り下げて作成する

もう一点、現状のECサイトのパフォーマンスが最大限発揮できるような運用に取り組めているかを今一度整理し直すことも重要です。もしそこが中途半端になっていると、本質的なボトルネックや課題感が見つからないままリプレースに着手することにもなりかねません。

極端なことを言えば、現状のECサイトの売上が年間10億円だったとしても、運用を改善すれば15億円まで伸ばすのに十分な機能とポテンシャルを持っている、ということもあります。その場合、リプレースの必要はないという判断になれば、そのコストを運用改善や集客への投資にまわすことだってできます。

いずれにしても、ECサイトリプレースに着手する場合、安易にRFPを作成するのではなく、なぜそのリプレースが必要なのかをあらゆる角度から見つめ、本来的な目的や、そのECサイトに背負わせる使命などを炙り出す必要があるのではないでしょうか。

この初動の方向付けを誤ると、ベンダーがシステム開発に着手する時点で、すでに噛み合わないプロジェクトになってしまう危険性があるのです。

RFPに「センター返し」の提案は危険

しかし、多くのプロジェクトが立ち上がる際に配布されるRFPでは、上記で述べたような「俯瞰した視点で書かれているべきものやのECサイトが背負っている使命などが示されず、単に搭載したいECサイトの機能要件だけが記載されている」というものも決して少なくはありません。

そしてコンペに参加するベンダー側は、RFPに明記されていない限り、自社の開発領域を踏み越えた提案をするところはほとんどありません。したがって、本質的なリプレースの目的や背景に目を向けることもないのです。

本来ならECサイトのパフォーマンスを最大限に発揮するために考慮すべきポイントは、業種業界ごとの商慣習に基づく機能性から、企業がターゲットとするペルソナに刺さるウェブデザインまで様々ですし、開発に際しては、それらとの相関関係を踏まえて着手するのが理想的です。

しかし、ベンダー側は担当領域(得意領域と言い換えてもいいですが)に閉じた話しかしないため、ある意味RFPを綺麗に打ち返す提案に止まり、それに対して事業者側が料金交渉を持ちかける、という図式が、「ベンダー選定」という場では成立してしまっています。

ECサイトリプレースというプロジェクトの始まりが、このような形で成立していること自体が、失敗=満足いかない効果に陥るの最大の要因である、とも言えます。

仮に、ECサイトを「減価償却するモノ」と割り切って捉えている、と自信を持って断言できる場合は、それでも構わないと思います。しかし多くの場合、そのリプレースは事業や会社を成長させるプロジェクトの1パートを担っているはずです。全ての小売業にとって、OMOが前提となる時代への過渡期となる今であれば尚更です。

だとするならば、プロジェクトの立ち上がりから、意識を変えて臨む必要があります。

■関連記事:全体験を購買チャンスに変えるために必要なこと~「OMO」を正しく理解する基礎知識

成果物だけで「ベンダー選定」をしない

そこでお伝えしたいのは、「ベンダーを決定する」と言うからには、その選考基準や視点を変えていく必要がある、ということです。

リプレースというプロジェクトは、どうしてもECパッケージなどの「成果物を買う」という意識になりがちです。しかし実際は、システム導入のワンショットでプロジェクトが終了するわけではありません。

RFPに記載されている要件を満たすことは、もちろん最低限の条件でしょう。しかし、その点と金額ありきでベンダーを選び、システムの拡張や連携が上手くいかず事業成長のボトルネックとなってしまった場合、そのリプレースは失敗だったと言わざるを得ません。

したがって、その後の事業成長に伴って必要となる機能追加や拡張まで含めて、その企業がプロジェクトに寄り添い、適切なアドバイスとプロフェッショナルなソリューションを提供してくれるパートナーとなり得るか、という視点がとても重要になってくるのです。

実益をもたらすのは「言うことを聞くベンダー」ではない

ではパートナーとなり得るベンダーとは、どのような企業でしょうか。一言で言えば「コンサルティング視点のあるベンダー」です。

RFP上でリプレースの本質的な目的を明らかにしておくことが大前提ではありますが、それに対して、時には自社の領域を踏み越えて、ある意味、小うるさいことを進言するベンダーの話は、一度聞いてみる価値があるかもしれません。

もちろん、RFPの要件通りのものをリーズナブルな価格で提案してくれるベンダー、言うなれば「言うことを聞くベンダー」は貴重ですし、それはクライアント企業に対して本気で親身になった結果提示したものかもしれません。しかし、長い目で見た時に、どちらのタイプのベンダーが企業としての実益をもたらしてくれるかと言えば、それは確実に経営(=目指すべき目的)と運用(=運営リソース・オペレーション)とシステム(=拡張性と可溶性)を繋ぐ視点を持ったベンダーではないかと私は考えています。

ECサイトのリプレースを「テレビの買い替え」に例えると

イメージしやすいように、少し例え話をします。

家を引っ越すついでにリビング全体をどう作り込むべきか、というのが全社的な視点だとすると、その中でテレビを買い換えるという行為が、ECサイトのリプレース的なポジションと言えるでしょう。

リビングでどういった過ごし方をするかというテーマが経営課題、ソファやダイニングテーブルの配置や導線などが運営課題、テレビの購入要求は1システムの機能課題というように例えることができます。

テレビの要求だけだと「画面が◯インチ以上、画質8k、音質がよければなおよし」みたいなことになるのですが、それを受けた「テレビベンダー」的には、自社の100インチ有機ELテレビをいくらにします、という提案になります。

しかし、よくよく聞くと、大画面で画質を良くしたいのは、リビングに映画があるライフスタイルを実現したいから(しかもテレビ番組はほぼ見ない)、というのが本質的な目的だったとしたら、コンサル的な視点があるベンダーであれば、「それならスクリーンと単焦点プロジェクターでホームシアターシステムを構築した方が価格を抑えてより良い音質を追求できます。さらにソファにもこだわれます」という提案をしてくれると思います。
そして、そういう提案をしてくれる方が安心・信頼できるのではないでしょうか。

ECサイトのリプレースというプロジェクトにおいても、ざっくりとこんなイメージを持って、本来の目的を明らかにすることと、コンサル視点が持てるベンダーを選ぶ、ということを大事にしていただけるといいと思います。

キックオフミーティングの重要性

リプレースの目的もしっかり押さえつつ、良いベンダーも見つかった、という場合でも、必ずやった方がいいことがあります。それは、プロジェクトが始まる時のキックオフミーティングです。

オムニチャネル志向がスタンダードになっている今、ECサイトのリプレースがECサイトだけで完結しないことがほとんどです。基幹システムを担当するベンダー、POSシステムを担当するベンダーなど、まず最初に一堂に会して共通の目的への解像度を上げておくことで、後々の進行がスムーズになるはずです。
ちなみに、エスキュービズムは、このような場面(複数社が一つのプロジェクトに関わる)においてはディレクションも行なっています。システム構築という場面では、それをお客様に代わってプロジェクトを推進していくことが求められるからです。

理想的なベンダーが兼ね備えている能力のまとめ

個人的には、一担当者で大規模なリプレース案件をハンドリングするのが難しい場合にはコンサルティング会社を入れる方が望ましいと考えています。

ただ、システムの開発から導入後まで継続的にコンサルティング会社に関わってもらうのは、コストが大きく膨らみますし、コンサルティング会社自体はシステムという成果物に対しての責任を100%負うわけではありません。

したがって、ここまでの話をまとめると、理想的なベンダーとは、経営課題からシステム機能まで落とし込めるコンサルティング的な視点を持ち、プロジェクトのディレクションが可能で、システムのデリバリーにまで責任を負えるベンダー、ということになります。

そのような視点でベンダー選定を行うことで、本質的に効果的なECサイトのリプレースを行うことができると思います。

さいごに

ECサイトのリプレースに限らず、それ相応の金額を投じて行うシステム導入ですから、導入後の「なにか違う」を極力少なくし、システムとかけるコストのパフォーマンスを最大限に発揮させるために、少しでも本稿が参考になれば幸いです。

ちなみに、弊社エスキュービズムは、EC-ORANGEというパッケージ製品を持ちつつ、これらの条件を満たすことができる数少ないベンダーであると自負しておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

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この記事を書いた人
清水秀大 株式会社エスキュービズム DXコンサルティング部 シニアコンサルタント
銀行・証券・保険を中心としたのシステム営業を10年勤めた後、満を辞して小売業界へ。年間200社以上の企業と商談を重ねるITコンサルのエキスパート。セールスという立場でありながら、クライアントから要件定義へのアサインをリクエストされることもしばしば。趣味はゴルフと長距離ドライブ(沖縄以外の46都道府県を走破)。
■DXコンサルタント 清水秀大 の執筆記事