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宅配における返品の課題とは?解決のヒントと事例を解説します


「EC利用者の返品が増えている」
「返品対応をなるべく効率化したい」



といった課題をお持ちのECご担当者の方へ。



商品を直接確認できないECでは、「イメージと違う」といった理由での返品希望が増えています。日本は海外よりも返品条件が厳しく、「返品できないから購入に踏み切れない」と悩む消費者も少なくありません。



購入へのハードルを下げ快適にECを利用してもらうために、企業は返品対応を見直す必要があります。この記事では、返品の課題や国内の事例、返品にかかるコストを下げるポイントを解説します。





「宅配」と「返品」の課題



ECサイトの利用率が上がるにつれ、返品がより重視されるようになりました。日本でも返品の需要は高まっており、返品ポリシーを緩和する小売業が増えています。



返品が当たり前のアメリカの現状



日本とアメリカでは、返品に対するハードルが大きく異なります。日本では初期不良や不備がない場合、一般的に返品ができません。しかし、アメリカでは以下のような理由で気軽に返品できます。



「1週間使ったが自分に合わなかった」

「プレゼントされたけれど、要らないから返品したい」

「ちょっと食べたけれど、口に合わないから返品したい」



アメリカでは売り上げ全体の10%が返品されるというデータもあります。ホリデーシーズンになると、さらに返品率は上がるでしょう。



アメリカでも、返品の場合レシートを要求されるケースがほとんどです。そのため、人にプレゼントを贈る時はあえてレシートを添えることが習慣化しており、「気に入らなかったら返品してね」という文化が根付いています。



アメリカが“返品大国”となった背景



アメリカが返品に寛容な背景には、品質と文化の違いが考えられます。



まずアメリカの場合日本より品質が低い傾向にあり、初期不良が少なくありません。初期不良で返品を受け付けるのは、日本と同じです。



そしてアメリカでは自己主張を重視する文化があり、周りの目を気にせず自分の考えを的確に述べることを良しとします。この考えが根底にあり、返品を主張する人が増えた結果、返品制度が根付いたといわれているのです。



日本では品質を保ち初期不良を防ぐことで顧客の信頼を得る考えですが、アメリカでは無条件の返品保証を設けることで顧客との信頼を築いているのでしょう。



実際にアメリカでは返品を歓迎することで顧客に支持され、売り上げを伸ばした小売店も多いものです。



ただ、アメリカでも度を越えた返品がありコストに悩む企業も少なくありません。一度購入したドレスをパーティーで着用し、そのパーティーが終わったら返品するといった詐欺行為も頻発しています。



アメリカでも返品を受けたら検品や再梱包といったコストがかかる点は日本と同じです。梱包材など資源を多く使うことから、環境問題の側面からも問題視されています。



日本でも返品コストが課題に



日本はアメリカのように気軽に返品する商習慣がなく、「返品=トラブル」という扱いです。そのため返品専用窓口を設ける小売業も少なく、高まる返品需要に対応できていません。



しかし実物を目で確かめられないECサイトの購入では、「イメージと違った」「家で試着したらサイズが合わない」と返品を希望する消費者が増えます。アメリカのように“返品し放題”ではなくても、返品フローを確立しなければいけません。



すでにECサイトの商品を返品したいと考える消費者は多くいます。しかしECの場合、実店舗のようにレシートと商品があれば返品できるわけではありません。ECに返品希望のメールを送り梱包して返送して…と消費者にも大きな返品コストが発生するのです。



調査によると86%の経営者(前年比9%UP)と67%の従業員(前年比18%UP)はEC受注の返品や管理が課題と感じています。(※)しかし、返品専用窓口を設置できていない実店舗は27%あります。



またECの返品処理に自信があると回答して経営陣は90%ですが、従業員は70%でした。経営陣と現場では20%も離れており、返品サービスに対して乖離がある状態となっています。



※参照:ZDNet Japan|小売業者と購買客で満足度に差–ECサイトとの融合進むも実店舗の運営が複雑化

https://japan.zdnet.com/article/35183988/2/


実物を見ずに購入するECサイトでは、返品希望者が増えるのも無理はありません。EC化率を高めより大きな価値観を生み出すためには、消費者と事業者、双方の返品コストを削減する取り組みが必要となります。



物流に「返品」をどう組み込むか



返品が当たり前ではない日本にとって、返品をどう物流に組み込みかは最大の課題です。しかし国内では物流各社や小売店が独自に返品フローを構築しており、自社のヒントになります。



物流各社の新サービス



物流メーカーでは、ヤマト運輸と日本郵政が返品の回収物流の構築を進めています。



ヤマト運輸


2021年8月より、ヤマト運輸ではEC事業者向けの返品サービス「デジタル返品・発送サービス」をスタートしています。このサービスによって、消費者は返送先住所の確認や返送伝票の記入といった手間がかかりません。



第1弾としてギャップジャパンの「Gap」「BananaRepublic」が公式オンラインストアで同サービスを開始しました。



同サービスはDoddle Parcel Servicesが提供する返品システムとヤマト運輸の配送ネットワークを連携して実現しています。



EC事業者が返品受付サイトを構築してサイトURLを消費者に案内すれば、消費者は注文番号や返品理由などを入力し、店舗持ち込みか自宅集荷の2つから発送方法を選択できます。



返品は宅急便センターや宅配ロッカーの「PUDOステーション」、コンビニ(一部)から返送でき、その際の伝票記入は必要ありません。アナログを排除した返品フローで、消費者と事業者双方のコストダウンにつながっています。



Doddle Parcel Services 公式サイト
Doddle Parcel Services 公式サイト
https://www.doddle.com/jp/




日本郵政


2022年1月、日本郵政は「e発送サービス 宛先ご指定便」の提供を発表しました。ECサイト利用者が二次元バーコードで簡単に荷物を発送できるもので、商品の返品や回収物流を支援します。



同サービスは日本郵政がCtoC向けとして提供する「e発送サービス」の仕組みを利用しています。ECサイト利用者は指定Webサイトで必要事項を入力することで、郵便局やコンビニで簡単に送り状の発行が可能です。



すでにZOZOTOWNが同年2月から利用を開始しており、その後も利用範囲の拡大を予定しています。



小売店独自の取り組み



国内の小売店も、独自の返品フローを構築しています。



アシックス


2022年1月、アシックスジャパンは公式ECサイトにて返品サービスを導入しました。ECサイト利用者は、オンラインで必要事項を入力するだけで商品の返品が可能になります。



アシックスの返品サービスはQRコードを使い、全国のファミリーマートや宅配ロッカー、ヤマト運輸から返送手続きが行えます。ローソンを中心に設置される約3000か所のSMARI端末からも操作でき、非接触・非対面の返品が可能です。



返品拠点は約3万か所に及び、消費者はもっとも利便性の高いエリアから返品でき、返品コストの削減に大きく貢献しています。



LOCOND


「自宅で試着、気軽に返品」をキャッチフレーズにしたロコンドは、当初から返品ハードルが他メーカーより低い点が売りです。



土足で歩いていない、直接肌に触れていない状態の試着、受け取り時と同様の状態であるなどいくつかの条件を満たせば、返品は発送から21日間、サイズ交換は発送から14日間以内で対応可能です。



またローソンのサービス「スマリ」によってQRコードを使った返品作業が可能になり、「試着ができるEC」として強みを伸ばしました。



LOCOND公式サイト|サイズ交換・返品
https://www.locondo.jp/shop/contents/return/




越境ECでも返品に対応



越境ECになると、日本より返品に対する躊躇がない消費者が増えます。なおかつ越境になり返品コストが上がるため、より効率的な返品フローが必要です。



世界で220の国や地域で国際物流サービスを行うUPS社は、145以上の国や地域で利用できる国際返品サービス「UPS Returns」を提供しています。



返品に必要なインボイスや商品に添付する返送ラベルもすべてUPS社が手配しており、利用者の利便性向上に寄与しています。このような返品サービスが確立していれば、物流会社を利用する事業者も安心です。



宅配と返品にかかるコストにどう対応すべきか



前述のように国内でも返品フローの構築が進んでいます。EC化に注力する小売店には返品の需要が増えていくでしょう。



そこで小売店は、宅配や返送にかかるリソースやコストにどう対応すべきか、どう抑えるかを考えなくてはいけません。返品コストの削減には、システムの一元管理・ECと店舗の連携がヒントとなります。



店舗スタッフの業務負担の低減に必要なこと



消費者の生活様式の変化に伴い、今後は実店舗に対してEC比率が上がると予想されています。多くの小売店では、店舗規模や人員の削減が行われるでしょう。



店舗スタッフの有閑リソースを使い、ECに関する新規業務を任せている小売店舗も少なくありません。その結果、店舗で利用できるリソースの総量は減っているのにECに関する業務が増え、店舗スタッフの負担が増えていきます。



店舗スタッフの業務負担を減らすためにまず必要なことは、業務システムの一元化です。



決済システムやポイント端末、他店からの在庫取り寄せや発注、在庫検索など店舗業務は多岐にわたりますが、それぞれで別システムを使っているケースも少なくありません。この場合店舗スタッフはそれぞれの端末操作やシステムを覚える必要があり、トレーニングに多くのコストがかかってしまいます。



今までの店舗業務に加え返品対応も別の端末で行うとなれば、さらに教育コストがかかるでしょう。



そこで業務システムの一元化を行うことで、業務フローが簡略化します。その結果従業員も様々な業務を覚えやすくなり、業務負担の軽減に直結するのです。



ECと店舗との連携はコスト削減にもつながる



返品フローを効率化するなら、返品をどこに集約するかがカギとなります。そこでおすすめするのが、ECと実店舗の連携です。



ECサイトで購入した商品を実店舗で返品できるようになれば、顧客は返送先を調べたり伝票を書いたりといった手間が省けます。そして返品が来店理由となり、実店舗へ来る顧客が増えます。



スムーズな返品対応ができれば顧客の満足度も上がり、リピーターの獲得につながるでしょう。



システムの一元化が進んでいれば、返品受付業務もスムーズにできます。対応にかかる時間やコストが削減でき、従業員の負担も大幅に増えることがありません。



オンラインとオフラインを融合させる「OMO」は多くの小売店が取り組んでいます。このOMOに返品も加えることができれば、より消費者はECを利用しやすくなるでしょう。