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圧倒的な進化か、公平さか。各国の巨大デジタル・プラットフォーム事業者に注がれる法規制の目

公正取引委員会は、12月17日に「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優位的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を公表しました。

国内に限らず、今、市場を席巻する各国の巨大デジタル・プラットフォーム事業者に「法規制の目」が注がれ始めています

目次:

顧客データ取得の仕方によっては独禁法違反の恐れが?

公正取引委員会(以下、公取委)がこの度公表した資料によれば、デジタル・プラットフォーム事業者が消費者にとって不利益な取引を持ちかけた時に、他に選択肢がないなどの理由からサービスを継続利用せざるを得ない場合などを、独占禁止法違反の恐れがあるとしています。

以下に、資料で提示された具体的な事例を引用します。

濫用行為となる行為類型

・利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること。
(想定例)デジタル・プラットフォーマーA社が、個人情報を取得するにあたり、その利用目的を自社のウェブサイト等で知らせることなく、消費者に個人情報を提供させた。

・利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を取得・利用すること。
(想定例)デジタル・プラットフォーマーB社が、サービスを利用する消費者から取得した個人情報を、消費者の同意を得ることなく第三者に提供した。

・個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を取得・利用すること。
(想定例)デジタル・プラットフォーマーC社が、個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、個人情報を提供させた。

・自己の提供するサービスを継続して利用する消費者に対し、消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等とは別に、個人情報等の経済上の利益を提供させること。
(想定例)デジタル・プラットフォーマーD社が、提供するサービスを継続して利用する消費者から対価として取得する個人情報等とは別に、追加的に個人情報を提供させた。

※その他、デジタル・プラットフォーマーによる消費者が提供する個人情報等の取得・利用に関する行為が、正常な商慣習に照らして不当に消費者に不利益を与えることとなる場合。

引用:デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(公正取引委員会)https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2019/dec/191217_dpfgl.html 

「間接的ネットワーク効果」が働く事業者が対象

公取委は今回の“考え方”公表に先立って2019年の8月末に草案を発表し、それに対するIT企業の意見募集を行っていました。この公募に対しては141件の意見が提出され、公取委はそれらに基づいて原案を一部変更した上で、今回の公表に至りました。

公取委によるデジタル・プラットフォーム事業者の定義は「情報通信技術やデータを活用して第三者にオンラインのサービスの『場』を提供し、そこに異なる複数の利用者層が存在する多面市場を形成し、いわゆる間接ネットワーク効果が働くという特徴を有する『デジタル・プラットフォーム』を提供する事業者」となっています。

間接ネットワーク効果とは、潜在顧客にとって、物やサービスの価値が、既存顧客の数に依存する状態のことです。簡単に言えば、より多くの顧客が使っていればいるほど、その価値が高まる物やサービスには間接ネットワーク効果が働いているということになります。

この定義に照らし合わせると、国内では大手ネット通販の「楽天市場」や、今年ZOZOを買収しLINEとの経営統合を果たしたヤフー、アマゾンジャパン合同会社が運営するAmazon.co.jpなどが、国内における代表的なデジタル・プラットフォーム事業者として挙げられるでしょう。

それ以外でも、市場には絶大な影響力を持ちながら海外に本社があるために日本国内の法規制を受けづらいGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)を念頭に置いた新法案整備の動きが加速し始めています。その一環として、自民党の競争政策調査会は今年前半にGAFA各社の幹部を招聘して意見聴取を行っています。この調査を基に、個人情報保護や不公平取引防止のルールを整備していくとされています。

Koshiro K / Shutterstock.com

「楽天」の送料無料施策にイエローカード?

公取委の“考え方”は基本的にデジタル・プラットフォーマーと消費者との関係性において懸念されるケースをまとめたものになっています。しかし、この流れの中で、楽天が2020年の春に導入を予定している「送料無料」施策(※)が、公取委から「独占禁止法違反の恐れあり」と判断されたと言われています。

※これまで楽天の送料は出店者ごとの値段設定に委ねられてたが、税込3980円以上の購入で一律送料を無料にする(沖縄・離島等は税込9800円)という制度を2020年3月中旬に開始すると発表していた。

このケースは、消費者というよりも楽天への出店者が送料の負担を強いられ、不利益を被りかねないというものですが、公取委はこれも独禁法が提示する「優越的地位の濫用」に該当する可能性があると判断したということになります。

楽天として「送料無料」施策を中止する予定はないものの、今回の公取委の判断を受けて、何かしらの変更を加える必要がありそうです。

次期大統領候補が「GAFAの解体」を公約に掲げる米国

海外においても、巨大デジタル・プラットフォーム事業者に対する風当たりが強くなり始めています。

例えば、デジタル・プラットフォーマーの代名詞とも言えるGAFAを生んだ米国では、2020年の米大統領選への出馬を表明している民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、今年の3月、GAFAの“解体”をある種の公約として掲げています。同氏によれば、GAFAは経済的、社会的に民主主義に対して大きな力を持ち過ぎて、個人情報を利益のために利用し、市場を歪め、そのプロセスにおいて中小企業の成長を妨げ、イノベーションを妨害した存在であるとし、年収250億ドル以上のIT企業を「Platform Utilities」と定義し、自分の政権ではそれら「PU」は自社のプラットフォームに参加できないようにする法律を施行すると語っています。

加えて今年の7月、日本の独禁法に該当する反トラスト法違反の疑いがあるとして、米国の司法省が「検索」「ソーシャルメディア」「ネット小売」という3分野に対しての調査を開始したと発表しました。

個人情報の観点から見れば、2018年にEUで制定された「GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)もまた、GAFAによるデータビジネスの独占を牽制するという目的が多分に含まれていると見ることができます。実際、今年1月にはGAFAの一角であるGoogleが、フランスのデータ保護当局CNIL(情報と自由に関する国家委員会)からGDPR違反で5000万ユーロの制裁金支払いを命じられるという判例も出ています。

イノベーションの後押しと法規制の両立を模索する中国

圧倒的なスピードでデータビジネスを加速させている中国の巨大デジタル・プラットフォーマーと言えば、BAT(百度:バイドゥ、阿里巴巴:アリババ、騰訊:テンセント)です。

中国はもともと、GAFAと比較すると国内に閉じられたマーケットを主戦場としてきており、中国政府も国家戦略としてBATの成長を後押ししてきた感があります。しかし、ここへきてやはり潮目が変わりつつあることを感じさせるのは、今年、中国で「電子商取引法」が施行されたことです。

同法では、大規模デジタル・プラットフォーム事業者に対して厳しい義務と責任を課していることが大きな特徴となっています。その中では、やはり「技術的優位性、ユーザー数、業界に対するコントロール能力等の要因によって市場で支配的な地位を得ている場合に、市場支配的地位を濫用する行為や、競争を制限する行為の禁止」や「ユーザーの個人情報を収集し、使用する場合、個人情報保護に関連する法令の規定を遵守する」ことが明示されています。

加えて、中国政府は「プラットフォーム経済の規範的、健全な発展の促進に関する指導意見」も打ち出しており、デジタル・プラットフォーム事業者によるさらなるイノベーションの促進と、法規制による市場の健全化・公平化を両立させようと模索している感が伺えます。

日本政府としてもBATが今後日本国内に及ぼす影響力の大きさを懸念しており、自民党はGAFAに対して行ったのと同様、BATの幹部を招聘しての意見聴取に乗り出すとしています。そういう意味では、まだBATの事業全容を把握できているとは言えず、GAFAやBATなどにも効力がある法規制の整備が完了するのは、まだ先のこととなりそうです。

さいごに

アフターデジタルの時代において、顧客の行動データは、さらなるイノベーションのために欠かせない“天然資源”と言えます。消費者としても、それを基に生活がもっと便利で快適になるのであれば、個人データの提供も前向きに捉えるはずです。

ただし「サービスが健全に運用されている限りは」、という前提は絶対に守られているべきであり、イノベーションの後押しと健全な運用を守る法規制のバランスというのは、全世界的に早急に最適解を見出すべき課題であると言えるのではないでしょうか。

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