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ECのリプレースには「運営」と「運用」の視点が不可欠です

シニアコンサルタントの清水です。

前回書いたECサイトリプレースについての記事に反響がありました。こちらは、「ベンダー選定のポイント」という観点から、陥りがちな典型的な失敗例をいくつか挙げた記事だったのですが、もう少し詳しく知りたい、という声をいくつかいただいたのです。

もはやオムニチャネル実現に向けたデジタル化の検討は当たり前となっており、さらにはオムニチャネルに留まらずOMOの実現を目指すべきと言う風潮の中にあって、ECサイトのリプレースが、皆さまにとって重要な課題であるということを改めて感じています。

そこで今回は、ベンダー選定よりさらに遡って、ECサイトのリプレースというプロジェクトを立ち上げる際に、何について考慮し、どのように推進していくべきかという観点から、さらに突っ込んだお話をしてみたいと思います。
前回の話と重複する点も多々ありますが、それは特に重要な部分であると捉えていただけると幸いです。

【目次】

その「不満」はどこから来るのか?

私たちは事業者様から「現状のECに不満があるから」ということでECリプレースのご依頼をいただくことが大変多くあります。

ありがたいことではありますが、商談を進めていく中で最も大きな問題は、この「不満」が漠然とし過ぎているということなのです。

私たちはシステムベンダーという立場でお話を聞くので、現状の不満がどこにあるのかを問うても、基本的にはシステムの機能面に関するお答えしかいただけないこともしばしばです。

しかし、ECというものは、システムを構築しさえすれば勝手に動いて自動的にお金を稼いでくれるような単純な代物ではありません。どのような運営視点を持ち、どのような体制で運用するかということがしっかりと設計された上で、それに基づいたシステムを構築することで初めてパフォーマンスが発揮されるものです。

したがって、現状のECに対する不満も、その根元は運営部分にあるのか、運用部分から来るものなのか、システムの機能性そのものにあるのか、ということを紐解いて突き止める必要があります。

プロジェクトのスタート時点でこれができていないと、リプレースの要件が的外れになる危険性がありますし、見当違いな要件のままリプレースを推し進めた場合、莫大なコストをかけたのに期待した効果が得られないという最悪な事態を招く可能性もあります。

リプレースを行う場合は、何よりもまず、現状のECを「運営」「運用」「システム」に分解し、解決したい課題がどこにあるのか、出来るだけ具体的に把握することを意識して頂くことをお勧めします。

ECの「運営」「運用」「システム」は三位一体

システム的な課題はともかく、リプレースの際に「運営」と「運用」にまで考えを及ばせるという意識がなかったという方のために、この2点について書き記しておきます。

ECの運営=設計図

「運営」とは、EC全体を取り巻く設計図とも言える部分です。どのようなターゲット層にどんな商品をどれぐらいの価格で販売するのか、というEC企画の根本的な要素もあれば、どの部署がどのようにそれを管理していくのかという組織の話もあります。ECをローンチした後、どのように集客施策を打っていくのかというデジタルマーケティング的な視点も必要です。

ECの運用=システム・サービスの利用

「運用」とは、実際にECを動かすにあたり必要なシステムやサービスを利用することです。例えば在庫や配送に関する倉庫設備やサービス、決済手段、etc——。運用については、社内の連携するシステムや、外部の協力会社との調整など、担当部署だけで完結しないことが多いためリプレース時にボトルネックになりやすい箇所が多い傾向にあると言えます。

システムの機能的な課題は運用方法に連動している

システムの機能的な課題は、運営方針と、そこからブレイクダウンされた運用方法に連動している場合がほとんどです。したがって、ECのリプレースは必ず「運営」「運用」「システム」の三位一体で考えなければいけません。

極端なことを言えば、「運用」部分で不具合があるとECを回すことはできませんが、仮に「運営」部分がおろそかになっていたとしても、販売行為としては一応成立してしまいます。ただ、運営がきっちり設計されていない限り、ポテンシャルを最大限に発揮することはできないのです。特に、事業的な変革を求められて行うリプレースであれば(今時はほとんどのケースがそうだと思いますが)、当然「運営」から全てを見直す必要がある訳です。

「なんとなく」でも運営できてしまうという落とし穴

ここからは、私が様々な事業主様のお話を伺う中で遭遇する典型的な問題を、「運営」と「運用」それぞれで見ていきたいと思います。

最もよくあるのが、明らかに適切なターゲット選定ができていなかったり、競合企業との差別化の方向性が出せていない、ECが背負う明確なテーマやコンセプトが皆無というパターンです。これはつまり、「そもそもECの基本設計ができていない」ということに他なりません。
しかし、先ほど申し上げた通り、運営部分がおろそかになっていたとしても、ECとして一応成立はしています。なんとなく運営できているものの、そのようなECでは今ひとつ思うようなパフォーマンスが出なかったりもする訳です。

このような状態でリプレースを検討する場合、その目的自体が曖昧で、ベンダー選定の決め手は「価格の安さ」や「機能の充実度」となるケースも非常に多いです。

課題を突き詰めて考える

運営部分まで遡って課題を見直さず、目先の価格の安さだけでシステムを入れ替えてしまうと、すぐにまたパフォーマンスが出ないことへの不満が募り、結局はコストが高くつくことにもなりかねません。

この傾向は、参入企業が多くレッドオーシャンとなっている市場のECで特に強いと言えます。例えばアパレル事業者で言えば、経営戦略として「脱ZOZO」を打ち出しているか否かは自社ECの運営方針を決定づける大きな要因ですし、そこからブレイクダウンされる運用の仕方やシステムの機能を決める際にも、明確な意思決定を下すことができます。

しかし、ターゲットを20代~30代の女性と設定してはいるものの、そのペルソナが見えず、際立ったブランディングが実施できていない、商品自体の差別化も見えづらい、ZOZOにもとりあえず出店している、というような状態で自社ECサイトを「なんとなく」運営しているような状態だと、システムの機能に対して明確な取捨選択を行うことができず、競合企業と似たような、しかも集客も伸びないECにしかなりません。

このように、「突き詰めていくと課題はマーケティングにあって、ECをリプレースする必要性はなかった」ということは、実は非常によくあります

実は一番難易度が高い、運用部分の社内調整

運用部分でよく遭遇する問題は、社内で関連部署間の取りまとめができていない、コンセンサスが取れていないままプロジェクトをスタートさせて後ほど揉める、というパターンです。

特に運用部分には関係者が多岐に渡ります。運営側からの視点だけでは思いも寄らないボトルネックが至る所に存在するため、運営方針がしっかりと設計されていたとしても、その運用についてディテールまで落とし込んで考え抜かれていないと、簡単につまづいてしまうのです。

運営の方針決定:決済手段の例

ユーザー視点に立ってECの利便性を上げるために、決済手段に「後払い」を追加することを決めたとします。これは「運営」部分の方針決定ですね。しかし、それを実行するには経理部の全面的な協力を得る必要があります。月末、ただでさえ忙しい経理としては、そのサービスを成立させるための莫大な業務量を新たに請け負わなくてはなりません。サービスとして必要なことは理解できても心情的には直ちに受け入れ難いでしょう。それを成立させるオペレーションを実際に作るのは誰なのか?という問題もあります。

運用を決める:オムニチャネルシステム構築の例

この課題が最も色濃く出るのが、オムニチャネルシステムの構築でしょう。ECで販売する商品の在庫は店舗から引き当てることに「EC側」が決めたとしても、それが本当に実現可能かどうかは「店舗側」の見解を求めないとわかりません。店舗側の負担が増えることは目に見えているので、そこの折り合いもつけなければいけません。オペレーション的には、「店舗在庫が残3になった時点でECでの販売はストップする」というような非常に細かい部分まで決め込まないと、システムの機能に落とし込むことができません。

この、部署を跨いだ「決めの問題」というのが非常に厄介で、私ども外部のベンダーが全社的な納得を得ながらプロジェクトを推し進めていくのは至難の業です。実はオムニチャネル化で一番難しいのは、システムの構築ではなく、この部分だったりするのです。
ECのリプレースにおいても、現状のものから何かしらアップデートする部分があるなら、この問題は必ず付きまといます。

上手くいくリプレースには必ずプロジェクトチームがある

例えプロジェクトの進行窓口は情シスの担当者だったとしても、たった一人でハレーションを起こさないよう各所の調整を進めることはほぼ不可能と考えていいでしょう。

リプレースが順調に行く(プロジェクトの進行がスムーズで、なおかつ運用開始後にトラブルなく、パフォーマンスも出せる)ケースでは、大抵の場合、関係各所からメンバーを出したプロジェクトチームが結成されています。そこでの決定事項がオフィシャルなものになるプロジェクトチームは、社内のコンセンサスを得るのに非常に有効です。

メンバーにとってはミーティングなどのプロジェクトチームのための時間を捻出することが負担にはなりますが、そこは経営側から号令をかけて、そのリプレースが会社にとっていかに重要であるかを周知し、メンバーの「本業」をサポートできる体制を作れると理想的だと思います。

進行役を外部のコンサルに任せるのも一つの方法

もう一つの方法として考えられるのは、業務ノウハウが豊富なコンサルティングにプロジェクトの進行自体を一任することです。

社内メンバーだけで進めた場合、運営部分までは決められたとしても、それに基づいた運用部分で考慮すべきポイントを棚卸しすると、その項目数を目の当たりにした時、担当者はおそらく逃げ出したくなるのではないかと思います。

仮に、棚卸しした項目を地道に一つずつ調整し、クリアしていくとなると、それだけで平気で半年、1年という時間を要するはずです。

ノウハウを持ったコンサルティングにそこを任せれば、圧倒的に時間を短縮できるだけでなく、社内的な感情や利害を排除し、経営判断に則った俯瞰した視点で号令をかけられるという利点もあります。

さいごに

エスキュービズムは、コンサルティングからシステムデリバリーまでを請け負うことが可能です。つまり、「運営」「運用」「システム」すべてのレイヤーにおいて、最適な提案と実現可否判断ができるのです。

「そもそもどのレイヤーに課題が眠っているのかわからない」という状態でも、棚卸しからお手伝いさせていただきますので、あまり悩まず、お気軽に私どもにお声がけいただければと思います。

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この記事を書いた人
清水秀大 株式会社エスキュービズム DXコンサルティング部 シニアコンサルタント
銀行・証券・保険を中心としたのシステム営業を10年勤めた後、満を辞して小売業界へ。年間200社以上の企業と商談を重ねるITコンサルのエキスパート。セールスという立場でありながら、クライアントから要件定義へのアサインをリクエストされることもしばしば。趣味はゴルフと長距離ドライブ(沖縄以外の46都道府県を走破)。
■DXコンサルタント 清水秀大 の執筆記事