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ソーシャルコマースが持つポテンシャルを日本市場で活かすには


スマートフォンが普及し、消費者の商習慣はさらに進化しています。 スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末で商取引を行う「モバイルコマース」の中には、SNSの発達による「ソーシャルコマース」という概念も生まれました。



この記事では今後のECマーケティングを強化したい方に向けて、ソーシャルコマースの魅力やモバイルコマースとの違い、今後の可能性について解説します。



SNS時代の新たな商習慣であるソーシャルコマース。SNSが普及して多くの若者が利用している今、新たなマーケティング手法として注目が高まっています。





ソーシャルコマースとモバイルコマースはどう違うのか



まずはソーシャルコマースとモバイルコマースの違いについて解説します。



ソーシャルコマースとは



ソーシャルコマースとは、ソーシャルメディアとECを組み合わせたマーケティング手法のことです。



SNSプラットフォームで自社のアカウントを開設することはもちろん、SNS上で話題のインフルエンサーにPRを依頼するマーケティングもソーシャルコマースの1つとなります。



“SNSを使ったマーケティング”というと、InstagramやFacebookといったSNSプラットフォームをイメージしがちですが、それだけではありません。ソーシャルコマースは、主に以下のような種類に大別されます。



■SNS・ソーシャルメディア型


InstagramやFacebookといった、SNSプラットフォーム上で商品を売買する形態。ECサイトを経由する必要がなく、SNS上で興味を持った商品をそのまま購入できる。



■ C to C型


“Consumer to Consumer”の略で、消費者同士で取引を行う形態。「メルカリ」などのフリマアプリに代表されるタイプで、サービスを提供する企業はプラットフォームのみを用意する点が特徴。



■ レコメンド型


ECサイトなどWeb上にある商品レビューや口コミといった評価を参考に、商品の購入をユーザーに決めてもらう形態。またAmazonのレコメンド機能のように、関連した商品をおすすめする形態もレコメンド型に分類される。



■ ユーザー参加型


クラウドファンディングに代表されるような、ユーザーがビジネスに参加する形態。消費者は商品企画や資金調達段階から参加して、ユーザーの寄付が目標金額に到達すれば商品化される。



■ 共同購入型


あらかじめ購入できる人数が指定されており、その人数に到達すればクーポンなどで割引が適用される消費形態。日本ではサービス廃止になった事例も多いが、中国やアメリカでは依然として人気がある。



モバイルコマースとは



ECマーケティングとしては、ソーシャルコマースよりも「モバイルコマース」や「Mコマース」という言葉の方がなじみ深いかもしれません。



モバイルコマース(Mコマース)とは“モバイル”という名の通り、携帯やスマートフォンといった移動端末を使った電子商取引全体を指す言葉です。1999年のNTTドコモが提供を開始した「iモードサービス」から、モバイルコマースが生まれたといわれています。



モバイルコマース誕生当初は、「着メロ」や「待ち受け画像」などの課金型のサービスがメインでしたが、利便性の高さなどからその後急成長していきました。



モバイルコマース誕生後、2001年には電子消費者契約法の施行、2007年にはiPhoneの販売が開始と環境がどんどん整い、今ではスマートフォンで買い物をする・支払いをするという商習慣が根付いているのです。



モバイルコマースには、オンラインショッピングを主とした「モバイルショッピング」、チャットボットやメッセージ機能を備えた「モバイルバンキング」、支払いを行う「モバイルペイメント」といった種類があります。



SNSの利用目的が異なる



ソーシャルコマースは、モバイルコマースというマーケティング手法の1つとなります。2つの最大の違いは、「SNSの活用目的」です。



モバイルコマースの場合、SNSの活用目的はブランディングや情報発信、PRのみの場となります。自社SNSプラットフォームやInstagramといったSNSは認知や興味・関心を獲得目的としてのみ活用し、「購入」は目的としていません。



一方でソーシャルコマースは、SNSで「購入」という目的まで担っています。大手SNSではショップ機能が追加されるなど進化しており、SNSを認知や興味・関心から購入までを一貫して行えるようになったのです。



またソーシャルコマースでは、SNSをPRなど一方向ではなく、交流として双方向のコミュニケーションの場としても活用されています。情報発信や集客だけでなく、ニーズの調査やアフターサポートといった交流も可能です。



上記のように、ソーシャルコマースとモバイルコマースでは「SNSが担う役割」が大きな違いとなります。



ソーシャルコマース、モバイルコマースの伸びしろは大きい



次に、海外と日本での利用状況を見ていきましょう。



海外での利用状況



ソーシャルコマースの先進国といえば、ECと同じく中国とアメリカです。特に中国は全体的に市場が大きいこともあり、ソーシャルコマースでも他国とけた違いの市場規模を持っています。



まず2020年における中国のEC市場は1兆9,894億ドル、アメリカは6,006億ドルでした。(※)中国のEC市場では1兆9,894億ドルのうち、11.6%はソーシャルコマースが占めているとも見られています。



参照:SNS × ECで広がるソーシャルコマースとは

https://www.icr.co.jp/newsletter/wtr384-20210415-eshimizu.html


中国では主婦や学生、法人企業までもが“ソーシャルバイヤー”として海外商品の転売を行っており、EC市場に影響を与えているという意見もあります。



日本での利用状況



日本におけるB to Cの市場規模は、物販・サービス・デジタルを合わせて2019年時点で19兆3,609億円です。2018年が17兆9,845億円であり、伸び率は7.65%となっています。(※)



※参照:令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業 P.30

https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf


中国、アメリカと比較すると市場は小さいですが、ソーシャルコマースの伸びしろは大きく、十分将来性が期待できます。



総務省のデータによると、何らかのSNSを利用している人は2012年が41.4%であったのに対し、2016年には71.2%となっていました。20代でSNSを利用している人口は2016年時点で97.7%と、かなり高い割合を占めていることも分かっています。(※)



※ 総務省 第1節 スマートフォン社会の到来

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111130.html


若い世代をターゲットとするなら、スマートフォンやSNSを活用しない手はありません。







ソーシャルコマースで次世代ECを強化



デジタル慣れしているミレニアル世代が消費行動の中心となり、いよいよ社会を支える側になっています。



EC業者は、ITや最新技術を使いこなし、さらに新しい価値観を持つ次世代をターゲットとして戦略を強化していかなければいけません。



そこで有力な手法の1つとなるのが、ソーシャルコマースです。SNSのメイン世代である彼らにリーチするためにも、ソーシャルコマースの活用がポイントとなります。



代表的なソーシャルコマースの媒体



ソーシャルコマースで活用できる代表的なSNS媒体といえば、以下が挙げられます。



  • Instagram
  • twitter
  • Facebook
  • TikTok


“インスタ映え”というワードが流行したように、ビジュアル重視のInstagramは多くの若者が利用しています。最近では商品タグやショップ機能などソーシャルコマースを意識した機能が増えており、インスタライブなどライブコマース機能も人気です。



TwitterやFacebookにショップ機能はありませんが、根強い人気を誇っています。アメリカ版Twitterではアプリか商品を直接購入できる「Shop Module」の試験運用が開始しており、日本での導入も期待されます。



ソーシャルコマースでは自社SNSプラットフォームを構築する企業も少なくありません。しかしアクティブユーザーが多い上記SNS媒体も高い効果が期待できるため、多くの企業が公式アカウントの運用を始めています。



企業におけるソーシャルコマースのメリット



ソーシャルコマースでは、以下のようなメリットが期待できます。



  • 離脱率が下がる
  • SNS世代を狙ったマーケティングができる
  • 構築や運営の手間が少ない


ソーシャルコマースではSNSで購入ができるため、導線がスムーズになります。ECサイトで課題となる“カゴ落ち”対策となり、離脱率の緩和に効果的です。



さらにSNSは10代~20代といった次世代がメインで利用しているため、若い世代へのアプローチに有効です。さらに既存のSNSならすぐに運用を開始でき、自社サイトより運営の手間がかかりません。



またソーシャルコマースは広告に頼らないマーケティングができるため、広告費削減にも効果的です。そろそろWeb広告に限界を感じてる企業にこそ、ソーシャルコマースの運用がおすすめです。



ライブコマースは見ながらすぐ買える「即時性」が魅力



Instagramの「インスタライブ」機能のように、ソーシャルコマースではライブコマースも行えます。ライブコマースといえばリアルタイムで商品を紹介でき、テレビ通販の若年層向けともいえる存在です。



ライブコマースはSNSでそのまま購入できるため、テレビ通販のように電話をかけたり、電話が込み合ってつながらなかったり……というリスクもありません。より熱量が高い状態で購入でき、カゴ落ちしにくい点が大きな魅力です。



日本におけるライブコマースの可能性



日本では2017年が「ライブコマース元年」とも呼ばれ、メルカリをはじめ多くの企業がライブコマースサービスをスタートしました。中国で電光石火の勢いで伸びていたこともあり期待値が高かったのですが、国内では結果として多くのサービスが廃止に至っています。



しかし2019年以降新型コロナウイルス感染拡大により、日本の消費者も生活様式が大きく変わりました。さらに2021年頃から次世代通信サービス「5G」がはじまり、より高品質な動画配信が可能です。これらの背景から、またライブコマースの期待が高まっています。



百貨店業界では三越伊勢丹、アパレルではSHIPS、コスメでは資生堂など大手企業でもライブコマースを行っており、ソーシャルコマースに有効とされる手法の1つです。



仮想ショッピング



新しい後払い決済方式「BNPL」(Buy Now Pay Later)サービスを提供する欧州最大のフィンテック企業「Klarna」(クラーナ)は、ソーシャルコマースとして仮想ショッピングサービスをスタートさせました。



顧客は、ライブチャットやビデオ通話を通して販売員から接客やアドバイスを受けられます。また小売業者がでは商品の写真や動画の共有やでもライブが可能であり、双方にメリットがあります。



Klarnaは「単なる決済会社とは見られたくない」とこのライブコマースサービスをスタートしており、いつか日本にも上陸するかもしれません。



ソーシャルコマースの可能性



ソーシャルコマースについて、モバイルコマースとの違いや利用状況、メリットをご紹介しました。この記事をまとめます。



  • ソーシャルコマースは、SNSで認知から購入までを行う新しいマーケティング
  • ソーシャルコマースは中国、アメリカでの市場が特に大きい
  • SNSを使う若い世代をターゲットとするなら、ソーシャルコマースが有効である


1人1台のスマートフォンが当たり前となり、それに伴いSNSも大きく発達してきました。コロナショックによる生活様式の変化や5Gの登場など、ソーシャルコマースという手法に追い風が吹いています。



「若い世代を囲い込みたい」「もっと伸びるマーケティング手法を探している」という企業は、ぜひソーシャルコマースを試してみてください。