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仮想とリアルの融合するWeb 4.0 デジタル広告は加速度的進化を遂げる


デジタル広告を次の段階へとアップデートさせる「Web 4.0」は、欧米ですでに活躍している技術です。



日本でも生成AIや3DCGといった新しい技術を広告に活用する動きが見られていますが、10月からステマ規制が施行される等、デジタル広告の信頼と安全を担保するルールも重要視されるようになってきました。



EUではすでに「Web 4.0」におけるデータ流通のルール作りについて骨子がまとまっていています。



国内においても、インターネット技術のめざましい進歩に合わせて、その加速度的な進化に対応した課題解決の施策や整備づくりもより一層求められていくでしょう。



本稿では日本のデジタル広告が抱える課題と、求められる姿勢や規制のあり方についてまとめています。



2022年、2023年の広告費の種別割合やZ世代とTVの関わりを見ながら、デジタルマーケティングと生成画像におけるAI活用の最前線、広告の未来を見ていきましょう。


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デジタル広告の規制と課題



欧米のデジタル広告界隈では、仮想とリアルを融合させた「Web 4.0」という技術が活躍し始めています。



Web 4.0はインターネットシステムの一つで、メタバースやAIを統合させた次世代のテクノロジーです。



こうした新しい技術の台頭を受けて、欧州委員会は7月、「Web
4.0と仮想世界をリードするEU戦略」を発表しました。Web 4.0が大々的に活用される前に、プライバシー保護をはじめとしたデータ流通ルールを整備する必要性が高まったためです。



EUでは数年前からすでに議論がスタートしており、近く、2023年に向けた具体的な制度設計が発表される見通しになっています。



Web 4.0には、従来のブロックチェーン、そしてメタバースやAI、IoTすべてが統合されていきます。Web
4.0に到達すると、今以上にVRやARの導入が活発化して、仮想空間と現実空間はより高度なレベルと融合すると考えられています。



デジタル広告は、インターネット技術の進化に合わせて様々に変化していきました。インターネットの発達によってターゲティング技術も進化して、検索ワードに対応した広告を出せるようになったり、SNSの発達によってインフルエンサーによる広告が支持を集めたりと、様々に進化を遂げています。



一方で、行き過ぎたターゲティングやステルスマーケティングも問題になっています。



デジタル広告がインターネット技術の進化によって無法地帯とならないよう、日本国内でも今以上にしっかりとした規制づくりが必要になってくるかもしれません。



ステマ規制はデジタル広告の適正化に繋がるか



今年10月から、PRである事を分かりにくくした広告(ステルスマーケティング=ステマ)を規制する法律「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(指定告示)」が施行されます。



施行前に投稿した広告であっても、閲覧可能なステマ広告は規制の対象となるケースがあるため、理論上は10月以降、インターネットからステマ広告は排除される事となります。



インフルエンサーは企業から商品やサービスの提供を受けて投稿を行う場合、必ず「PR」や「プロモーション」である事を明示しなければなりません。



ステマ規制を受けて、社内インフルエンサーの登用や、企業SNSの社内運用を展開する企業も増えています。



また、20代のインフルエンサーではなく、より幅広い世代に受け入れられるシニアインフルエンサーを起用したり、AIによるコンテンツ投稿を行ったりと、新しい広告スタイルにチャレンジする企業も多くなってきました。



法律と悪質な行為は、どの分野においてもいたちごっこではあります。



しかし、法整備をきっかけに、デジタル広告の新たな可能性やスタイルを模索する動きが起こったのは事実であり、ゆえにデジタル広告の適正化も、法整備である程度は進むと予測されます。



日本の広告市場が抱える課題



EUは、Web 4.0が本格的に普及する前に、しっかりとした規制を設ける必要があると考えています。



これは日本も例外ではありません。



デジタル広告が抱える課題には、「信頼性の低さ」、「詐欺的行為の横行」、「質の担保されていない広告取引」という3つがあるとされています。



デジタル広告は、広告審査が自動化されているケースが多く、信頼性の高くない広告や、質の保たれない広告も横行しています。



審査が厳格でない媒体では、「クリック数さえ稼げればどんな広告・手段でも良い」と考える業者が、ボット等によってインプレッションやクリック数を水増しするアドフラウドという詐欺行為をはたらく事もあります。



インターネットは進化するにつれて、消費者の生活により深く入り込んでいきました。新聞や雑誌等の紙媒体やラジオ、TVの広告よりも圧倒的に多くの人の目にふれるようになっています。情報収集のメイン手段として、デジタル広告を見ている人も多いでしょう。



一方で、広告主や広告会社といったインターネットメディアの業界に関わる側は、デジタル広告を販促メディアの一つとしてしか捉えられていない傾向にあります。



こうした溝も、それ自体が一つの課題とみなす事ができるかもしれません。







デジタル広告の今後は



ひと昔前まで、「若者のTV離れ」というワードが盛んに聞かれていました。



そのため、デジタル広告は若者に訴求する唯一無二の手段であると見る風潮もありました。



しかし、近年はその傾向が変化しています。



10代〜20代前半のいわゆるZ世代の間に、「TV番組を見逃して後悔した経験がある」と考える層が増えているというアンケート結果があります。



ネットが発達し、SNSでいくらでも娯楽や情報が得られるようになったため、帰宅するとまずTVをつける、見たい番組がなくても何となく電源をONにしているというような「ながら視聴」こそ少なくなったものの、「見たい番組のために時間をやりくりする」、「家族や知人とTVの番組について話す」という若者は増えています。



SNS等で番組の存在を知って視聴したくなる、あるいは自分好みの番組が放映された事をネット情報から知り後悔する、という経験を多くの若者がしている事から、現代のZ世代のTV視聴は「ながら視聴」ではなく、見たい番組を見る「目的視聴」であるという傾向が見えてきます。



YouTubeやSNSといったインターネット経由で番組の情報を知り、そこから番組に時間を合わせて視聴するというZ世代の特性をふまえる事で、デジタル広告に新たな切り口が見つかるかもしれません。



デジタル広告は、物価高の影響もあって大きな伸長は今のところ見られませんが、生成AIや3DCGを活用した新たな広告の形が出てくる等、進化のスピードは加速の一途を辿っています。



デジタル広告市場の状況



2022年の国内における総広告費は、7兆1,021億円で、前年比104.4%でした。



インターネット広告費は、総広告費の約40%にあたる3兆912億円で、前年比114.3%と伸びを見せています。



インターネット広告の中で特に伸びていたのは「検索連動型広告」と、ビデオ(動画)広告です。



検索連動型は前年比122.2%の9,766億円で、ビデオ広告は前年比115.4%の5,920億円でした。



ビデオ広告の中では、特にインストリームと呼ばれる動画の一部が再生される広告の伸びが著しく高く、3,456億円、すなわちビデオ広告費全体の6割弱にあたるシェアを誇っています。



こうした傾向は2023年も続くと見られていましたが、9月現在でインターネット広告費は伸び悩んでいる様子が見受けられます。



とはいえ、伸び悩みの影響は物価高による買い控えも影響しているため、一概には停滞と言い切れない面もあります。



事実、ディスプレイ型広告、ソーシャル広告、動画広告は上向きあるいはほぼ横ばいの状況で下半期にかけての伸びを期待する声も聞かれています。



デジタルマーケティングにAIを活用



デジタルマーケティングにおいては、広告出稿の際のセグメント予測、予算配分、入札戦略といった分野でAIが活用されています。



具体的には、AIでLTV(顧客生涯価値)の高いユーザーを見つけて、広告効果が高いとされるそれらのユーザーに向けて広告を配信したり、人力では見つけきれない広告関連キーワードを自動生成したり、といった事は、多くの企業ですでに実施されています。



デジタルマーケティングにおいて、AIは、人が分析するには膨大過ぎるデータを短時間で横断的に分析する、人力では時間がかかり過ぎる施策やプロセスを自動化する、といったシーンで活用されてきました。



しかし現在は、コンテンツそのものをAIによって自動生成するという、よりクリエイティブな活用がなされています。



生成AIと3DCG技術の活用と影響



生成AIや3DCG技術で、写真のようにリアルな画像を作る技術は、広告にも大きな影響を及ぼしています。



まるで実在しているかのような架空の人物を、好きな背景に好きなポーズで配置できる生成AI技術は、会員制サービス等の顧客登録を促進する広告に活用されやすい技術です。



AIによる画像生成はあまりに手軽なため、モデルやフォトグラファーの仕事を奪うのではないかという懸念も広がっています。



一方で、撮影や描画についてのスキルがなくてもクリエイティブな活動ができるようになるため、新たなアイデアやクリエイターの形が生まれる可能性も示唆されています。



こうした技術革新の波に乗る形で、サイバーエージェントはAIや3DCGを活用した広告をワンストップで提供する新会社を設立、最新の技術による広告制作に意欲的な姿勢を見せました。



3DCG(3次元CG)は、コンピューターの演算によって仮想的な3次元空間を構築して、それを平面(2次元)に変換する技術、画像の作成手法です。



平面に奥行きが生まれる事で、イラストと実写の中間のような新しい表現が可能になっています。



こうした新技術は、広告全体から見ると活用のパーセンテージはまだ低く、黎明期と呼んでも差し支えない状況です。



しかし、今後もしも「実写と生成AIの見分けがつかず、消費者に不利益が生じる」となれば、ステマ規制のように何らかの法が施行されるかもしれません。



EUではすでに、「Web 4.0と仮想世界をリードするEU戦略」として具体的なルールづくりを行なっていますが、日本もこれに続き議論が交わされる可能性は大いにあると言えるでしょう。



広告による不利益は避けられるのか



消費者が広告によって不利益を被る事は、デジタル広告全体の信頼性を損なう事につながります。



特に、インプレッションやクリック数を不正に水増しするアドフラウドは、国内で年間約1,300億円もの経済的損失を招いていると推測されています。



海外の企業ではアドフラウド対策を強化する動きが見られるようになりましたが、日本企業は対策を十分に行なっているとは言えない状況です。



アドフラウドのような不正行為は、消費者の信頼を損なうだけでなく、広告効果の正確な分析が行えなくなるという懸念もあり、デジタル広告の進化にとっても望ましくない存在です。



これを懸念してか、国内でもアドフラウドを検知するシステムやサービスが提供され始めており、今後は書く企業が対策に乗り出す事が期待されます。



健全な市場づくりのために



デジタル広告は、AIの進化に伴って加速度的に進化しています。



EUでは、デジタル広告周りの法整備及び戦略について長らく議論が交わされてきましたが、日本でも10月からステマ規制が施行される等、健全な市場づくりが徐々に始まっています。



紙媒体やTVと比較すると広告審査が甘いとみなされてきたデジタル広告業界ですが、今後は様々な変化とルールづくりが行われていく可能性があります。時代の流れに対応できるよう、しっかりと注視していきましょう。