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世界で関税ルールの見直し続々。越境EC最前線


越境ECはコロナ禍で注目を浴びて以降、参入への意欲は高いまま推移しています。日本ブランド製品は海外からの需要も強く、円安傾向の継続も追い風となっています。



しかしながら、越境ECには関税対策という大きな壁があります。本記事では、EUのルール厳格化や、アメリカのデミニミスルール改正、イギリスのTPP加入など、越境ECを取り巻く関税関連の最前線を紹介するとともに、日本国内の動向についてもまとめています。
また、越境ECを始めるにあたり「壁」となるもの、そして留意すべきことやシステム導入がいかにスムーズな物流を実現するかについてまとめました。


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越境ECの壁の一つ「関税」最新情報



越境ECが一般化したことにより、全世界的に関税の過少申告やなりすましによる輸入小包の受け取りといった悪質な関税逃れも増加、各国は関税ルールの厳格化を検討しています。
越境ECを成功させるには、国内ECにはないコスト「関税」について最新の情報を把握することが重要です。



欧州ではルールの厳格化へ



EU圏では、150ユーロ(約2.4万円)以下の商品は関税がかからないというルールがあります。
しかし、同一商品を大量に購入すると関税がかかるため、それを逃れるための意図的な分割が問題視されています。
意図的な分割とは、製品を分割した状態でパーツ一つを150ユーロ以下の商品と偽って欧州へ送り、現地で組み立てて関税を回避し販売する方法です。



EU委員会は2023年に流通した輸入小包の実に20億個が過少申告ではないかとみており、2028年までに150ユーロ以下の非関税ルールを撤廃するよう、検討を進めています。



とはいえ、膨大な量の輸入小包が日常的に行き交う現代において、そのすべてをチェックすることは困難です。ルールを撤廃しても書類ベースで課税額を決定する限り、過少申告をゼロにすることは事実上不可能と言って良いかもしれません。
欧州に限らず、全世界的に税関の課税処理能力を上回る量の輸入小包が行き交っています。
ECサイトに特化したEUルールや国際ルールが検討される日も、そう遠くないのかもしれません。



イギリスがTPP加入、コスタリカも加入手続きへ



2024年12月15日、イギリスがCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)に加入しました。
前身であるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は2015年に大筋合意に至りましたが、2017年にアメリカが離脱宣言をしたことにより、協定の早期発効に向けた検討が行われ、CPTPPが形成された経緯があります。
11月にはコスタリカの加入手続きも開始しており、越境ECも2025年以降新たな局面を迎えるかもしれません。



内閣官房「TPP等政府対策本部」

https://www.cas.go.jp/jp/tpp/index.html


アメリカはデミニミスの見直しへ



アメリカには、800ドル(約12万円)以下の小口貨物には関税を課さないという制度「デミニミスルール(De minimis)」があります。



デミニミスルールを利用した輸入は、過去10年間で年間約1億4,000万件〜10億件とも言われており、その大半が中国ECを通じて行われていました。アメリカ国内では、関税回避のために激安商品を扱うECアプリの運営企業が制度を濫用しているという声が上がっており、見直しを余儀なくされています。
見直し後にデミニミスルールを利用する場合は、10桁の関税分類番号や申請者の情報が必須になるとされています。そのため、アメリカを対象に小口貨物をメインとした越境ECを展開する際は、見直し後のルール遵守を徹底する必要があります。



なお、Amazonは対抗策として激安ECモール「Amazon Haul(ホール)」を開設しましたが、そこに並ぶ商品のほとんどは中国から安く仕入れたアイテムです。
デミニミスルールが見直されれば、こちらのモールも改革を余儀なくされるかもしれません。



日本も輸入適正化のため制度見直し



日本も諸外国と同様に、輸入の小口貨物が急増しています。
2021年の時点で航空貨物の輸入許可件数は2019年比2倍、コロナ禍の航空機減便で一部は海上輸送へシフトして、海上貨物の件数も大幅に増大しました。
それに伴い、不当に低い価格で輸入申告をしたり、輸入実績のある居住者の名義を勝手に使用するなりすましが行われたり、不正の件数も増えています。



これを受けて、2023年の関税改正には「通販貨物に該当するか否か」と「国内配送先」を記載することが盛り込まれました。この改正により、以前は「様式」に記載する決まりだった「輸入者の氏名・住所」も「政令上の輸入申告項目」として記載することが義務付けられ、なりすましは虚偽申告輸入罪の対象となります。



以上のように、関税や輸入を取り巻く環境は刻々と変化し続けています。
コロナ禍で個人輸入や越境ECの利用が普及したのは、事業者にとって大きなビジネスチャンスですが、税関や物流が扱う許容量を超えているのは全世界的な事実でもあり、今後も各国の状況を逐一チェックしておく必要があるでしょう。



使用した画像はShutterstock.comの許可を得ています




自社ECを越境ECへ…壁を乗り越えるには



自社のECを越境ECへと変える時、乗り越えなくてはならない壁は、関税以外にもあります。まずは大前提として、商習慣や消費行動の違いを把握する必要があります。
購買体験や文化習慣は各国によって異なるため、それぞれの国にマッチする形で柔軟な対応を求められることもあるでしょう。
ここでは、言語、関税、物流、返品システムという4つの壁を乗り越えるソリューションの一例をご紹介します。



言語



言語の壁は、自動翻訳やAI翻訳の普及と精度向上により、以前とくらべて低くなってきたといえるでしょう。
世界最大のコマースプラットフォームは、2022年時点ですでに150カ国以上の言語に自動翻訳可能なアプリを提供しています。
このアプリは機械翻訳と人力翻訳を組み合わせているのが特徴で、商品説明だけでなく「よくある質問」や問い合わせ対応にも使用できるのが便利な点です。
ちなみに、同プラットフォームによると、言語のローカライズを実施することによりオンラインストアの売上は13%程度増加するとのことです。



従来、英語とフランス語という2つの言語を公用語とするカナダや、フランス語、オランダ語、ドイツ語の3つを公用語とするベルギーなどと比べると、日本は言語の壁を感じやすいとされてきました。しかし、AIやアプリの導入によってその壁は確実に乗り越えられるものとなっています。

国内のプラットフォームにも、日本語と英語の2サイトを運営可能なサービスが登場しています。

ターゲットとなる国の言語に合わせて、最適な多言語化を目指していくと良いでしょう。



関税



関税は配達を受け取る時に消費者が支払う形式が一般的です。しかし、越境ECに慣れていない消費者にとっては馴染みがないため「思っていた価格よりも高い」、「関税が別にかかることを知らなかった」というクレームにつながる恐れもあります。
越境EC専用のシステムを構築すれば、関税や税金込みの価格で事前決済を行えるため、こうした行き違いを未然に防ぐことができます。
Shopifyなどの大手サービスには、初めから関税込みの価格を自動表示できる機能があり、国内ECと同じような感覚で売買が可能です。



関税はどの国も法律や条約に基づいて定められていますが、状況に応じて変化することも多く、対象国ごとに都度確認が必要です。取引する国によって適用税率が違ったり、自国の特定産業を守るために特別な税が課せられたり、商品によって税率が細かく定められていたりと、関税は複雑なものです。


さらに、もし関税の計算漏れやミスがあった場合、罰金やクレーム対応によって予想外のコストがかかる可能性もあります。


自動表示機能など便利な機能を使って、スムーズな取引を心がけるべきでしょう。



物流



最もスムーズに越境ECの物流を確立する方法は、越境ECに特化したサービスやシステムを導入することです。
専用のシステムなら、現地の通貨ごとの商品金額、配送料、関税、税金の表示が可能で、現地の商習慣に合わせた決済システムの利用も可能です。



越境ECには、クレジットカードやデビットカード、PayPalなどの第三者支払いサービスを介しての支払い、対応カードをスマホに登録しておくコンタクトレス決済といった決済方法が使われますが、国によって主流になっている手段は異なります。
決済方法が不安だから商品を買うのを控えるという事態にならないように、多様な決済手段を備えておくことは重要ですが、自社システムのみで完結させようとするとなかなか思い通りにいかないのも事実です。



反面、越境EC専用の包括的な物流システムを導入すれば、決済から出庫指示、梱包、海外発送までを一括して管理できます。越境ECをよく利用する国はアメリカ、メキシコ、カナダ、英国、UAEで、当然のことながらこれらの国は通貨も関税も商習慣もそれぞれ大きく異なります。
越境ECのマーケットが巨大になればなる分、商機は増えますが、対応すべきこともまた膨大になります。
国に合わせた対応は、越境ECに特化したシステムに任せるのが得策と言えるでしょう。



返品システム



日本では、よほどの理由がないと返品をしないという消費者が大半ではないでしょうか。
「気に入らなかった」など自己都合での返品は認められない場合も多く、なかなか返品がしにくいサイトも多いようです。



しかし、アメリカでは返品は当たり前の行動で、商品に欠陥が何もない場合も無料で返品対応に応じるのが当たり前という風潮があります。
また、中国でも受け取りから7日以内であればいかなる理由であっても商品の交換・払い戻しができるという「新消費保護法」が2014年から施行されており、販売事業者は自己都合であっても返品に応じる必要があります。
ドイツにも同様のシステムがあり、特に理由がなくても商品到着から原則14日間は、特段の理由がなくても返品に応じる必要があります。



このように各国によって異なる返品処理も、フルフィルメントのワンストップサービスを利用することでスムーズな対応が可能になるかもしれません。
返品対応を含めた国ごとに違いのある商習慣に振り回されることなく、商品の在庫、出荷を包括的に管理できるシステムを導入すれば、日本との違いに悩む必要は少なくなるでしょう。



自社ECで海外市場へ



世界的に、越境ECの利用者はモール型ECではなく、ブランドECや自社ECから直接買い物をしたいと考えています。
国の関税局も、国際的な競争力を高めることも目的として保税制度の規制柔軟化、不正な取引を撲滅するための関税改正など、世界基準に足並みを揃える準備を始めています。
日本は海外からのニーズが高いにも関わらず、そのニーズに充分応えられるまで越境ECが成長していないと考える専門家も多く、2023年、2024年に引き続き、2025年も越境ECは引き続き「今が始め時」と言えるでしょう。