「ウェブルーミング」と「ショールーミング」に見る消費者行動傾向の変化
消費者の購買傾向は、ここ数年急激に変化してきています。テクロノジーが一般化し、モバイル機器を活用して検索、購入、レビューの投稿などもできるようになり、「便利」で「スピーディ」かつ「個別対応」されたサービスが求められてきているのです。
つまり、テクノロジーのおかげでいつでもどこでも欲しい情報が得られているわけで、最近の傾向としては実店舗とオンラインショップの融合化といった現象が挙げられます。
「ショールーミング」
ショールーミング(Showrooming)とは、実店舗をショールーム代わりに「品物を見て触って確認」し、購入は家に帰ってから安く買えるオンラインショップを通して行うといった行為の事です。
消費者の立場からで考えると、実際の商品を事前に自分の目で見てチェックできるという点で、ショールーミングにおいて実店舗は買い物の流れの一部として重要な役割を果たしています。
「ウェブルーミング」
一方でウェブルーミング(Webrooming)は「ショールーミングとは真逆の行動傾向」と定義されます。
つまり、ショールーミングでは消費者が実店舗を訪れて品物をチェックするだけで購入せずに帰り、時にはライバル会社のサイトを通して後日購入するといった流れになりますが、ウェブルーミングでは商品をオンラインで最初に検索してから実店舗を訪れて商品を最終確認して購入に至る、といった行動傾向になります。
最近の消費者はクリック一つで必要な情報はすぐにインターネット経由で入手することができ、ウェブルーミングは消費者がどのような流れで購入までたどり着くかという要因も自分で決定することができるチカラを持っている事が如実に反映されたものであると言えるのです。
ウェブルーミングはショールーミングを凌ぐ勢いで成長
統計ではウェブルーミングをする消費者は69%いる一方で、ショールーミングをする消費者は46%にとどまっています。経済面での数値を見てみると、ウェブルーミングは2017年までに1兆8000億ドルの経済効果を上げるとみられており、Eコマースによるセールスは3700億という数値が出ています。
また、ウェブサイトで商品情報を検索する消費者の4人中3人は、結果的に実店舗を訪れる方を選ぶと答えています。
ちなみに、ショールーミングよりもウェブルーミングを選ぶ理由としては以下のような回答が出ています。
- 送料を払いたくない(47%)
- 実店舗での在庫をオンラインで確認したい(42%)
- 購入した商品が届くまで待ちたくない(23%)
- 実際に買う商品は手で触って自分で確認したい(46%)
- オンラインショップでの価格にマッチするよう実店舗に掛け合ってみる(36%)
- 必要に応じて購入した商品を返品できるのが良い(37%)
実店舗ショップの必要性
すでに触れた通り、実店舗では消費者が実際に商品を見て触って確かめることができるという特徴があるため、その需要は完全に無くなることはありません。
事実、世界の小売業者のうち半数以上(55%)が今年中に少なくとも11店舗を新しくオープンさせる予定であるという調査結果も出ており、業界大手各社もオンラインと実店舗の上手な融合に力を注いできています。
モバイル機器のもたらす可能性
最近の消費者、特にミレニアル世代にとって、モバイル機器を使った買い物や支払いはもはや当然のこととして捉えられており、いつでもどこでも好きな時に商品の詳細情報をスマートフォンを通して入手できるという便利さを十分に活用することがカギとなってきます。実店舗で商品を購入する前に、事前にモバイル機器で商品検索をしていたという消費者は55%にものぼるという調査結果も興味深いところです。
オムニチャネル化の時代へ
別の調査では、小売業者にとって複数の販売チャネルを持つ事がますます一般化してきており、まずオンラインで商品情報を得るという流れを踏むと、消費者はより多くの商品を買う事になると実感していると答えた業者は56%にも上る事が分かっています。ここにも消費者のニーズを幅広くカバーしたサービスの必要性が見て取れるのです。
具体的な例を挙げると、アパレル大手Rebecca Minkoffでは試着室の照明の度合いを鏡にタッチすることで調節できたり、試着して気に入った商品を鏡に内蔵された端末システムを使ってその場でオーダーすることも出来るようになっています。
また、化粧品を販売するSephoraは、買い物客が自分の写真をアップして商品を使った際の様子を事前に確認することができるアプリを開発し、サービス向上に役立てています。
オンラインショップの役割
実店舗から始まったビジネスの場合は、是非ともオンラインショップを立ち上げてEコマースの世界に進出し、より広いマーケットを対象としたビジネス展開にチャレンジすることをお勧めします。
まずはポップアップストアでテスト
一方で、オンラインから始まったビジネスの場合は、実店舗をオープンさせるにあたって一時的なポップアップストアを運営して様子を見ながら新しいマーケティング戦略を確立させていく方法が有効的です。
商品の実店舗引き渡しサービス
優れたサービスの一環として、オンラインで購入した商品を実店舗で引き取ることの出来るサービスや、実店舗で品切れの商品をその場でオーダーして自宅に配送してもらう事ができるようなシステムも大変効果的です。
この「実店舗にいながらにオンラインオーダーをして、自宅に無料配送をしてもらえる」オムニチャネルサービスを実施しているAmerican Eagleの責任者マイケル・レンぺル氏は、このサービスを通して、当初見込んでいた下半期セールス総額のおよそ2倍にのぼる5000億ドルの販売収入を得ることができたと報告しています。
実店舗サービスの向上
スポーツ用品を販売するLuluLemon やNikeでは、店舗をそのままフィットネス・ジムと兼用させるようなスタイルを打ち出して反響を呼んでおり、Urban Outfittersや Nordstromではいくつかの店舗にバーやレストランを併設させて、既成概念を超えたユニークな形で顧客獲得への働きかけを実施しています。
ソーシャルメディアの活用
消費者はいつでもネットにつながることができるという事を考えて、以下のようなはたらきかけも効果的です。
- Facebookで「いいね!」を押してもらう。
- 自社商品を着た写真をインスタグラムにアップしてもらう。
- ツイッターで紹介。
- 商品が当たる抽選や、無料プレゼント、割引クーポンなどの販促キャンペーンの実施。
- 定期的にソーシャルメディア上でのレビューやコメントをチェックし、必要に応じて適切な対応をすることで販売に結び付ける。
また、82%の消費者は、実店舗で商品を購入する前にスマートフォンで情報収集をすると回答し、一般的に友人から勧められた場合実際にその商品を購入する確率は4倍高くなり、好意的なレビューを読むことで信頼度は18%上昇し、レビューが購入するかどうかの決断に影響すると回答した割合は90%に上るというリサーチ結果も出ています。
Wi-fiサービスの必然性
すでに見たように、消費者は実店舗の中で最後の商品情報入手をすることが多いということが分かっていますから、店内でインターネット接続ができるWi-fi環境を提供することが大きな効果をもたらすことは言わずもがなです。
スタッフトレーニングの徹底
スタッフ教育を充実させることも、「ショールーミング」に来た買い物客に実際に商品を購入させることにつなげることができる大きな武器です。商品知識が豊富なスタッフがいればより頻繁に店舗で買い物をすると思うと回答した消費者は54%に上りますから、スタッフ教育をしっかりと行い、デジタル機器へのアクセスを通して充実したカスタマーサービスを提供することで、消費者が素早く効果的に必要な情報を得ることができるように心がけたいところです。
さいごに
ショールーミングやウェブルーミングはどちらも消費者の購買傾向で、オムニチャネルとのつながりを持っています。今後テクロノジーが発達し続ける中で、消費者の行動パターンもその都度変化していきますが、小売業者側としては常にオムニチャネルサービスの実施を念頭に入れた対応をしていく事で、買い手のみならず売り手にとっても有益となるシステムを作り上げていく事ができるのだという点を頭に入れておきたいところです。
この記事はThe Evolution of Consumer Behaviour: Webrooming v.s. Showroomingの記事を本ブログが日本向けに編集したものです。