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メディアコマース潮流:ストーリーを作り出す力


ECサイトやオウンドメディアを統合する「メディアコマース」の注目が高まっています。
ECは「今すぐ客」、オウンドメディアは「見込み客」とターゲットが異なる2つのメディアですが、メディアコマースとして統合することで様々なメリットが期待できます。



この記事ではメディアコマースに興味を持っている方に向けて、その概要や期待できるメリット、現在の潮流についてご紹介します。


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メディアコマースの発展は必然。顧客接点が購買の場に



コンテンツなどを配信するメディアと通販のECを統合した「メディアコマース」。今までは別で運営することが一般的でしたが、消費行動の変化やITの発達により、ECのメディア化という流れが生まれています。
SEO対策やブランディングといったメリットが期待できるメディアコマースは、今後のマーケティングにおいて必然といっても過言ではありません。



まずはメディアコマースとしてオウンドメディアをEC化する魅力や、ユーザーのUXを高めるヘッドレスコマースについて解説します。



オウンドメディアのEC化が拡大



オウンドメディアもECも多くの企業が運営していますが、それぞれで役割が異なるこの2つのメディアは別媒体とするのが定石でした。しかしメディアコマースによって、オウンドメディアのEC化が進んでいます。



オウンドメディアとはブログやメディア、YouTubeなど企業自らが所有しているメディアで、ペイドメディアやアーンドメディアと合わせて企業マーケティングの核とされていました。
ブランディングや宣伝広告費の削減、顧客ロイヤルティの向上が主なメリットで、さらにコンテンツの資産化も期待でき、多くの企業が運営しています。ブランディングに特化することで、見込み客を育成することが主な狙いです。



一方でECサイトは商品やサービスを販売する場であり、ターゲットは「今すぐ客」です。購入や契約といったコンバージョンに特化したコンテンツをメインとしており、見込み客には響きません。



オウンドメディアをEC化することで、以下の効果が期待できます。



  • 集客力の向上
  • 顧客の買い物体験の向上
  • ファンの育成
  • 広告費の削減



SEOに効果的なオウンドメディアをEC化すれば、検索流入が期待できます。またオウンドメディアのコンテンツで見込み客を育成して「ファン化」すれば、ECの安定した成果に大変効果的です。
ファンを獲得できればSNSの拡散による認知拡大も期待でき、結果として広告費の削減にもつながります。



メンズのアパレルに特化した大阪の「阪急メンズ館」では、2022年10月に公式サイトとECの統合を発表しました。OMO戦略強化の一環としており、メンズ館の商品情報を一元化します。
阪急メンズ館は公式サイトとECを統合することで、シームレスな購入体験の提供を目指しています。店頭やオンラインのアイテムを一元化することで、よりシームレスな体験が提供できるのです。



商品情報や会社情報などを一元化すれば、複数のメディアを行き来しながら思案する必要がなくなります。「いいな」と思ったらすぐ購入できる点は、消費者にとって大きな魅力です。



ブランドサイトとメディアの融合



特にブランドサイトとメディアを融合させる方法は、ストーリーやブランディングが大きく影響する商材に効果的です。具体的にいうとスキンケアやコスメといった美容系やサプリメントなどの健康食品、アパレル商品などが挙げられます。



ブランドサイトは「ユーザーのロイヤリティ獲得」が主な目的です。認知度を上げることで、「買ってみたい・使ってみたい」と思ってもらうように運営しています。



ヘッドレスコマースでメディアコマースを実現しやすく



すでに立ち上がっている複数の媒体統合するメディアコマースでは、「ヘッドレスコマース」という概念が大変役に立ちます。



ヘッドレスコマースでは、 複数のフロントチャネルに対し一つのバックシステムで運営できるようにフロントシステムとバックシステムを切り分けて構築する点が特徴です。
ヘッドレスコマースの最大のメリットは、あらゆるコンタクトポイントをECにできる点です。ヘッドレスコマースの仕組みが整えば、メディアコマースで顧客の接点を増やし、あらゆる場を「購入の場」とすることが可能となります。



引用:https://ec-orange.jp/headless-commerce/headless-commerce.html




メディアコマースの現状



EC市場が盛り上がっている昨今では、ついに大手メディアも参入を始めました。ここでは、メディアコマースの現状や、これからのトレンドについてご紹介します。



大手メディアがコマース事業を活発化



■新聞社×ECモール



日刊全国紙である朝日新聞は2022年10月、既存ECサイトである「朝日新聞SHOP」をリニューアルし、「朝日新聞モール」としてリニューアルすると発表しました。



朝日新聞モールでは、既存のEC「朝日新聞SHOP」で取り扱っている商品に加え、朝日新聞が運営するグルメ通販サイトを新たに立ち上げます。この朝日新聞モールは、共通のECカートシステムを利用して一元管理する点が特徴です。
これにより、ユーザーはモール内にある商品をスムーズに購入できます。



株式会社朝日新聞社「AERA STYLE MARKET(アエラスタイルマーケット)」がオープン 

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001405.000009214.html


さらに朝日新聞グループは同年に社な事業を分社して、新会社「朝日デジタルラボ」を設立。メディア・コンテンツコマース事業を手掛け、企業のWebCM制作といった制作プロダクション事業も行います。



■メディアプラットフォーム×カートサービス



ネットショップ作成サービスを展開する「BASE」は、2021年1月にメディアプラットフォームである「note(ノート)」を運営するnote株式会社への出資を実施して資本業務提携を締結しています。
この業務提携は、noteのクリエイターおよびBASE加盟店のファン形成や集客、販路拡大など、両者の顧客の最大限の価値を提供することが目的です。



まずは、商品のストーリーや作り手の想いなど、ブランディングを行いやすい「note」で情報を発信します。そして共感したファンがBASE内のネットショップで商品を購入する、という動線を想定しています。
今後は2つのメディアをよりスムーズに移動できるよう、機能開発を進めていくとのことです。



参照:noteとBASEは資本業務提携しました。

https://note.jp/n/n62ac0cd870bd


UGCや動画も活用したこれからのメディアコマース



これからのメディアコマースでは、UGCや動画が重要なポイントです。UGC(User Generated Content)は「ユーザー生成コンテンツ」とも呼ばれ、Webマーケティングで重要な項目の1つです。



UGCはユーザーが作り出したコンテンツ全般を指しており、広義に使われています。例えばSNSの投稿やブログ、動画投稿サイトのコンテンツなど各SNSに投稿されたものはすべてUGCです。さらにその投稿に対する感想やレビュー、コメントなどもUGCとなります。
このUGCは生活者に与える影響が大きく、購買意欲の喚起に直結します。スマートフォンやSNSが発達してきた昨今、大変重要なマーケティングの1つです。



また短い時間で多くの情報を伝えられる動画は高い拡散性やSEO効果の高さから、今後のメディアコンテンツとして欠かせません。
すでにAmazonではスポンサーブランド広告などの動画コンテンツが登場していますし、多くの企業が自社サイトで導入を進めています。



また動画といえば「ライブコマース」も再び注目されています。中国で爆発的な売り上げを生み出しているライブコマースは、国内の大手百貨店などが取り入れ成果を上げています。



ライブ配信を通じた買い物(=ライブコマース)の利用率は、中国が49.3%、日本は3.9%とその差は歴然です。(※)ライブコマースの導入を考えている企業は日本でどのように普及していくか、対策を考えなければなりません。



メディア×コマースの今 ~中国ライブコマースから読み解く 変容のあり方~

https://seikatsusha-ddm.com/article/11720/


例えば定期的にライブコマースを企画すれば、消費者は視聴を習慣化してくれる可能性があります。商品紹介ばかりではなく、消費者と心理的距離を縮めるために、買い物モードでなくても楽しめる企画なども必要です。



メディアコマースで重要なポイント



複数の社内メディアを統一するメディアコマース。目的が違う各メディアをまとめるこの戦略には、重要なポイントが2つあります。



ストーリーを作り伝える力



メディアコマースで成果を高めるためには、商品の情報や価格といった情報だけではなく「ストーリー」が重要です。自社の製品やサービスの誕生秘話やこだわりなどを伝えることで、消費者の「素敵だな」「自分の生活にも取り入れてみたい」という購入動機をかき立てます。
一般的なECに特化したメディアでは「今すぐ客」がターゲットであり、いかに熱量が高いまま商品を選んでもらえるかがカギとなります。情報としては商品写真や金額、特徴やクーポンといった購入の判断材料となるものを、見やすいように記載します。



一方で、メディアコマースでは複合的な視点からの情報提供が必要です。商品の使い方や開発背景、ブランドストーリーといったECではあまり入れない情報も取り入れます。



■ストーリーを伝えるメディアコマースの一例



日本の酒蔵を応援する「カクベツ」は、各地の酒蔵や地域の食品メーカーが出店するモール型専門通販サイトです。 商品を掲載して購入してもらうEC機能に加え、生産者の想いやこだわりをストーリーとして動画やテキストで掲載し、消費者に伝える機能を持っています。



商品が持つストーリーに共感し、納得したうえで購入を決定する、まさにメディアコマースの特徴を持ったモール型ECサイトです。



引用:https://client.s-cubism.com/case_kakuyasu.html




ブランド戦略と両輪で進めるEC改善



ヘッドレスコマースをはじめとするEC戦略は、ブランド戦略と並行して進めなければなりません。「メディアコマースを進めたいが方向を決められない」「社内にノウハウがなく難航している」という企業は、一度専門企業に相談することをおすすめします。



ブランド戦略やEC改善といったWebノウハウを持ち内製化している企業は、日本ではそう多くないでしょう。
メディアコマースは大規模な施策ですから、自社だけではなかなかスムーズに進みません。リソースやノウハウ不足に悩むなら、外部のリソースを使うほうが賢明です。



メディアコマースについて、そのメリットや現状、重要なポイントをご紹介しました。ECのみではできなかったストーリー説明やブランディングもできるメディアコマースは、複数のメディアを運営する企業において検討すべき施策の1つです。



オウンドメディアやECサイトなど複数のメディアを運営している企業は、ぜひ一度メディアコマースを検討してみてはいかがでしょうか。