O2Oの成功事例から紐解く、失敗しないための4つのポイント
セブン&アイホールディングスやイオングループがオムニチャネル戦略を発表しました。総合スーパーの各店舗やコンビニ、ネットストア、電子マネー部門などグループ全社を挙げてデータ連携や物流改革を進めオムニチャネル化を行うとのことで、これからの小売業界の変動がとても楽しみです。
さて、オムニチャネル戦略に取り組むとき、まずはO2Oから始めようというとき、まず解決しなければならない課題があります。それは社内環境です。
社内調整に失敗すれば、どんなに良い事業戦略を立てて、使いやすいシステムを構築しても、売上という成果につながりません。例えばECサイトを立ち上げる時に「店舗の売上が落ちる」と店舗運営部から反発が出て、計画が中断したり、うまく進められないケースが見受けられます。
しかし、実店舗とECサイトが連動すると、客単価が2.2倍(※1)になるという成功事例がある時代に、「それぞれの事業の売上が~」とパイを取り合っている場合ではありません。いかに全社の利益を拡大するかという視点で、店舗もネットも1つのチャネルととらえて活用していくべきではないでしょうか。
今回はO2Oプロジェクトで成功している事例から、O2Oで失敗しないためのポイント4点をご紹介します。
そのため、トップダウンである意味強引にプロジェクトを推進できる体制が必要となります。
例えば大手書店のジュンク堂はECサイトと店舗在庫を連動させるO2Oシステムを構築しビジネスを拡大していますが、ジュンク堂ではインターネット事業を統括する㈱HONの工藤淳也代表取締役をO2Oプロジェクトのトップとすることで指示系統が確立されていました。
(丸善・ジュンク堂の取り組みについては「マーケティングの4Pから考えるジュンク堂のO2O事例【店舗がAmazonに勝つヒント】」をご覧ください)
小売・流通業では、店舗運営部は担当店舗の売上によって評価が決まることが多く、「ECサイトができる→顧客がECサイトに流れる→店舗来店者が減り,売り上げが落ちる→店舗の評価が下がる」ことを懸念してネット戦略に身構えてしまいます。
そこで、例えば「ECサイトはリアル店舗の補助ツール」と割り切れば、店舗担当者の協力を得やすくなります。
店舗運営はギリギリの人数で行われるため、店舗に「在庫ありますか?」と問い合わせの電話がかかってくるとその対応に人手がかかり、レジが長蛇の列になってしまうことも。もしECサイトに各店舗の在庫状況を表示することができれば、このような状況を緩和し店舗スタッフの負荷を減らすことができます。
リユース業界のハードオフは、創立後初めてのECサイト構築およびO2O戦略を推進することを決め、今秋にハードオフNET・MALLをリリースしましたが、ECサイトオープンの目的はネットでの売上拡充ではありません。中古品は1点もので、各店舗にある商品とその商品を求めるユーザーがマッチングしない場合があり、商圏を広げるためにECサイトを構築したのです。O2O戦略の陣頭指揮をとった山本常務は「ネットはあくまで店舗来店を促進するための補助的役割」と明確に位置付けているため、フランチャイズのオーナーも安心してO2Oプロジェクトに協力してもらえたそうです。
(ハードオフのO2O戦略についてはこちらをご覧ください)
セレクトショップ大手のユナイテッドアローズの場合は、事業支援本部デジタルマーケティング部の相川慎太郎氏を中心にO2Oを推進しています。ECサイトを立ち上げた当初からO2Oを意識し、店舗と同じ商品をネットで展開したり、各商品を取り扱う店舗を調べることができる仕組みを作りました。ユナイテッドアローズというブランドの事業部内に店舗チームとECチームがあり、「事業部としての目標達成」という共通認識を持たせることで、縄張り意識なくコミュニケーションを円滑に進められることがO2O成功の秘訣ではないでしょうか。
書店大手のジュンク堂の場合、O2Oシステムの開発には7社が関わっていました。O2Oシステムを開発するベンダー、デザイン会社、サーバーなどのインフラ会社、基幹システム開発会社、検索/レコメンドシステム提供会社、コンビニ/クレジットカード決済会社、後払い決済会社です。O2Oシステムを構築する企業はこれらの会社を取りまとめなければなりません。
社内での調整をしないまま開発プロジェクトを進めると、コワくてメンドウな“魔物”におそわれてしまいますよ。
さて、オムニチャネル戦略に取り組むとき、まずはO2Oから始めようというとき、まず解決しなければならない課題があります。それは社内環境です。
社内調整に失敗すれば、どんなに良い事業戦略を立てて、使いやすいシステムを構築しても、売上という成果につながりません。例えばECサイトを立ち上げる時に「店舗の売上が落ちる」と店舗運営部から反発が出て、計画が中断したり、うまく進められないケースが見受けられます。
しかし、実店舗とECサイトが連動すると、客単価が2.2倍(※1)になるという成功事例がある時代に、「それぞれの事業の売上が~」とパイを取り合っている場合ではありません。いかに全社の利益を拡大するかという視点で、店舗もネットも1つのチャネルととらえて活用していくべきではないでしょうか。
今回はO2Oプロジェクトで成功している事例から、O2Oで失敗しないためのポイント4点をご紹介します。
目次
ポイント1 トップダウンで進める
O2Oプロジェクトを阻むもっとも大きな壁は、競合企業でも消費者心理でもなく、社内の部署間の軋轢です。O2Oを実現するには、店舗運営部門、オンライン部門、情報システム部門、マーケティング部門、広報部門などさまざまな部署を巻き込んでいくことになります。そのため、トップダウンである意味強引にプロジェクトを推進できる体制が必要となります。
例えば大手書店のジュンク堂はECサイトと店舗在庫を連動させるO2Oシステムを構築しビジネスを拡大していますが、ジュンク堂ではインターネット事業を統括する㈱HONの工藤淳也代表取締役をO2Oプロジェクトのトップとすることで指示系統が確立されていました。
(丸善・ジュンク堂の取り組みについては「マーケティングの4Pから考えるジュンク堂のO2O事例【店舗がAmazonに勝つヒント】」をご覧ください)
ジュンク堂 工藤氏
セブ&アイホールディングスも、鈴木敏文会長兼CEOやセブンネットショッピングの鈴木康弘社長などトップ自らがオムニチャネル化を推進し、内外に強いメッセージを発信しています。ポイント2 社内ポリシーを明確にする
O2O成功の2点目のポイントはネットの立ち位置を明確に定めることです。小売・流通業では、店舗運営部は担当店舗の売上によって評価が決まることが多く、「ECサイトができる→顧客がECサイトに流れる→店舗来店者が減り,売り上げが落ちる→店舗の評価が下がる」ことを懸念してネット戦略に身構えてしまいます。
そこで、例えば「ECサイトはリアル店舗の補助ツール」と割り切れば、店舗担当者の協力を得やすくなります。
店舗運営はギリギリの人数で行われるため、店舗に「在庫ありますか?」と問い合わせの電話がかかってくるとその対応に人手がかかり、レジが長蛇の列になってしまうことも。もしECサイトに各店舗の在庫状況を表示することができれば、このような状況を緩和し店舗スタッフの負荷を減らすことができます。
リユース業界のハードオフは、創立後初めてのECサイト構築およびO2O戦略を推進することを決め、今秋にハードオフNET・MALLをリリースしましたが、ECサイトオープンの目的はネットでの売上拡充ではありません。中古品は1点もので、各店舗にある商品とその商品を求めるユーザーがマッチングしない場合があり、商圏を広げるためにECサイトを構築したのです。O2O戦略の陣頭指揮をとった山本常務は「ネットはあくまで店舗来店を促進するための補助的役割」と明確に位置付けているため、フランチャイズのオーナーも安心してO2Oプロジェクトに協力してもらえたそうです。
(ハードオフのO2O戦略についてはこちらをご覧ください)
ハードオフコーポレーション 山本氏
ポイント3 専任者や専任部門をつくる
店舗担当者もECサイト運営者も、常に目の前の業務に追われているため、相互の役割や利益の最適化を考えながらプロジェクトを進められるO2O推進担当者や担当部門を設置することも重要です。セレクトショップ大手のユナイテッドアローズの場合は、事業支援本部デジタルマーケティング部の相川慎太郎氏を中心にO2Oを推進しています。ECサイトを立ち上げた当初からO2Oを意識し、店舗と同じ商品をネットで展開したり、各商品を取り扱う店舗を調べることができる仕組みを作りました。ユナイテッドアローズというブランドの事業部内に店舗チームとECチームがあり、「事業部としての目標達成」という共通認識を持たせることで、縄張り意識なくコミュニケーションを円滑に進められることがO2O成功の秘訣ではないでしょうか。
ユナイテッドアローズ 相川氏 (※2)
また、オムニチャネルの事例ですが、米百貨店のメイシーズは組織体制の改革から取り組んでいます。すべてのチャネルはマーケティング部門の傘下に置かれ、マーケティング部門が全体最適を考えた上で、すべてのキャンペーンやプロモーションを取り仕切るようにしたのです。組織を変えることで、店舗間や、ECサイト、カタログ間での社内優劣をなくし、それに合わせて従業員の評価体系も刷新することで、統一的な戦略を実行できる体制を整えました。ポイント4 システム開発の関係会社間を調整する
O2Oを実現するには、ネットとリアル、つまりECサイトと実店舗のデータ連携が欠かせません。データ連携ができるO2Oシステムを構築するには、多くの開発会社が関わることになります。この関係会社をうまく調整することができれば、小売業にとっても消費者にとっても利便性の高いO2Oシステムを作ることができます。書店大手のジュンク堂の場合、O2Oシステムの開発には7社が関わっていました。O2Oシステムを開発するベンダー、デザイン会社、サーバーなどのインフラ会社、基幹システム開発会社、検索/レコメンドシステム提供会社、コンビニ/クレジットカード決済会社、後払い決済会社です。O2Oシステムを構築する企業はこれらの会社を取りまとめなければなりません。
ジュンク堂のO2Oシステム構築に関係した企業と部署
複数の企業が関わる開発の場合、開発が遅れたり、必要な機能が足りなかったり、運用テスト時に予想外の不具合が起こったりします。その原因は各社が担当する仕事の領域や責任範囲が明確になっていないことです。システムの発注者である小売業が各社の間を取り持ったり、溝となるところを埋めるコミュニケーションを積極的に取ることで、スムーズに開発を進めることができます。まとめ
O2Oやオムニチャネルで成功している企業は、トップダウンで方針を決め、プロジェクトを推進し、全社を横断した柔軟な対応をしています。どんなO2Oの仕組みにするか、効果測定をどうするかを検討する前に、社内の体制づくりから進めましょう。社内での調整をしないまま開発プロジェクトを進めると、コワくてメンドウな“魔物”におそわれてしまいますよ。