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ウォルマートの生存戦略。打倒Amazonに向けて物流システムを強化する米国大手小売り企業

物流機能を強化するウォルマートの記事で、ある新聞は見出しを「ウォルマートがウェブ注文用の倉庫を新たに建設」としていたのに対し、ある新聞は「対Amazonに向けて店舗を物流拠点化する小売」としていました。より正確に小売り全体の将来像を伝えているのは後者と言えます。

Amazonを追いかけるウォルマート

15年以上前にEコマースに参入したウォルマートですが、2017年の総収入1231億7900万ドルの内純利益は17億4900万ドルで、昨年に比べておよそ42%の減少が見られました。

その大きな要因としては、ウォルマートは近年EC部門強化のために、M&Aを積極的に進めるなどの投資を積極的に行なっていることがあり、決して売上高が落ちているというわけではありません。
公式に発表している財務報告(http://stock.walmart.com/investors/financial-information/quarterly-results/default.aspx)によれば、EC売り上げは前年の160%まで増加しており、2016年より力を入れていたマーケットプレイス拡充によって、SKUは6,700万、セラーの数は5000前後にまで増加しています。
この数字を見ると、アメリカではAmazon、ebayに次ぐ第三のマーケットプレイスとして機能していることがわかります。

とはいえそれでもウォルマートはまだまだAmazonはおろかebayと比較しても、セラー数ははるかに劣っており(ebayは2500万人のセラーを有している)、差別化も進んでいないことから、決して安心できる状態ではないことは確かでしょう。

目指すは店舗のミニ配送拠点化によるオムニチャネル戦略

ここで重要なのはウォルマートにAmazonのビジネスモデルを踏襲する意思はないということです。
ウォルマートは全米に約5,000店舗存在し、各店舗から5マイル以内に住んでいる人の数はトータルで全人口の3分の2を超えます。これに配送センターや新施設を合わせて次世代型のフルフィルメント・ネットワークを構築しようとしているのです。

これはオンラインでの購入を促し、店舗での引き取り、店舗からの発送とあらゆるフルフィルメントを可能にする「オムニチャネル戦略」そのものと言えます。

USA Todayの記事には「世界最大級の小売企業がAmazonに対抗するため続々と店舗をミニ配送拠点化している」と書かれています。

小売業者は、購入者の家から何百キロも離れた配送センターから発送するよりも、近くの店舗から発送する方が得策であると気づき、Amazonに取られた顧客を呼び戻すことを狙いとしてそれを実現に移し始めているのです。

加えて世界37カ国にも系列店舗を構えているため、店舗のコネクションを利用したネットワークはウォルマートの大きな強みともいえるでしょう。
日本では西友がウォルマート傘下となっているため、日本にもウォルマートは足掛かりを持っています。

必要とされる新たなプラットホーム

このように店舗を配送拠点化する上で一番の問題になるのが在庫管理です。複数のチャネルからの注文を管理し、在庫のある店舗、配送センターから発送を行うという複雑な処理を行うシステムが必要になります。これに不備があると、たとえばオンライン注文で、ある店舗に在庫があるので店員がピッキングしようと思って売り場に行くと既に品切れになっている、ということもあり得ます。つまりこれまで以上にリアルタイムな在庫管理が必要となります。

DOM(Distributed Order Management:分散オーダー管理システム)

店舗在庫を効果的にマネジメントするためにDOMという新たなプラットホームが必要となります。ウォルマートはこのプラットホームの構築に巨額の投資をしており、戦略の重要な鍵となることが伺えます。

DOMは、複数チャネルを所有する小売事業や通販事業者の注文入力から資金調達、引当、出荷、決済までのマルチチャネル・オーダー・マネジメントを管理し、監視し、最適化します。注文がネットから、店舗から、コールセンターによるカタログ通販であっても、在庫、オーダー状況、物流拠点についてのグローバルなリアルタイム・ビューを提供します。これによりすべてのチャネルで同じ最新の在庫情報を見ることができるため、以下のことが実現します。

  • 顧客接点でネットワーク全体のリアルタイム在庫ビューを活用
  • 注文確定後に最適フルフィルメント拠点を決定
  • フルフィルメント拠点の選定プロセスを最適化するため、在庫、輸配送コスト、人件費、サービスレベルのファクタリング (売掛債権買取) を同時に実施
  • 特別に開発された「出荷元店舗」調達アルゴリズムにより配送元として理想的な店舗を選定
  • オーダー・サイクル全体で注文変更、キャンセル
  • ネットで買い物、店舗で引き取り
  • 在庫欠品および配送関連の問題を見越して対処

WMS(Warehouse Management Systems:物流センター管理システム)

物流拠点化する店舗にはより精巧なオーダーシステムが必要となります。そこで必要となるのがWMSの店舗への導入です。

今ではほとんどの企業でコンピュータによる在庫管理を行っていますが、それらは販売管理などの「基幹システム」としての在庫管理であることが多く、一般的には品目別での管理となります。

品目別での在庫管理イメージ

しかし品目だけの情報では

「いつ、どの製造ラインで作ったものを、どこに出荷したのか?」
「○○に販売したものは、どのロットだったのか?」
「古い在庫がどれぐらいあるのか?」

といった情報は分かりません。これらを把握するためロット・製造日を在庫管理に加えた在庫管理を行う必要があります。

ロット・製造日を在庫管理に加えたイメージ

基幹システムを切り替えるのは技術的に困難であったり、影響範囲が大きすぎて現実的ではないというケースが殆どです。
そこで、基幹システムのサブシステムとして、「モノの動きと把握」に特化したソフトウェアであるWMSが必要となるのです。

今後各店舗が小規模であっても物流拠点化していくことを考えると、こうしたソフトウェアの導入は必至といえます。

将来的には90分以内の配送が実現?

このように物流システムを上手く店舗へ移植することを前提として、ウォルマートは実際の配送にUPSやFedExなど既存の物流業者を利用せず、毎日店舗に商品を配送している運搬トラックをオンライン販売の配送に取り入れることも構想しています。これが実現すればオーダーから90分以内の配送も可能と言われています。

楽天との提携が大きなカギとなる理由

2018年の1月下旬、ウォルマートは楽天との提携関係を結んだという発表を行い、大きな話題を呼ぶこととなりました。

楽天は日本を主とした東アジア地域ではamazonと並ぶEC最大手の一つと言えますが、今回の提携はお互いのネットワークを活用して、米国でのkoboを活用した電子書籍部門の販売強化、そしてウォルマートのネットワークを用いたアジア地域での食料品オンラインショッピングの強化が目的であると見られています。

ウォルマート側の巨大かつ高度にシステム化された店舗ネットワークが、楽天との提携によって大きな利益を生み出すことが期待できるといえるでしょう。

一方で実店舗の少なさが仇となっているAmazonでも、先日シアトルで無人コンビニであるAmazon Goが初オープンし、今後の数年間で一気にAmazon直轄の店舗が急増するのではないかという期待も寄せられています。

詳しくは「Amazon GO1号店がついにシアトルにオープン!レジがないAIコンビニの全貌とは」も参考にしてみてください。

ウォルマートに求められる小売り戦略とは

店舗数の多さから家庭に身近なスーパーが売りであったウォルマートですが、Amazonの伸長によりもはや消費者は家から出ることなく買い物を済ませることが当たり前になってしまった以上、彼らとは異なる戦略で顧客の流出を防ぐ必要が出てきました。

ウォルマートが強みとしてきたのは実店舗主体の小売業ですので、ECはオマケのサービスとしての意味合いが強かったものの、そうはいってられない現実に直面しているのは、ある意味でEC化を迫られる全ての実店舗経営者と同様であるとも言えます。

ウォルマートがAmazonに追いつくかどうかはまだまだわかりませんが、2018年以降、この二大勢力の競争はますます加熱し、近いうちに小売市場のあり方を大きく変えていくうねりを形成していくことになるでしょう。

そしてウォルマートの生存戦略からは、インターネットの普及によるEC主体の世界で実店舗が生き残るための方法を導き出す手がかりを得られるのではないでしょうか。

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