ブロックチェーンコマースとは?ポイントや研究、活用事例も紹介します。
「ブロックチェーンコマースってどんな意味なのだろう?できることには何があるのかな?」
と思っている方。
ブロックチェーンコマースとは「ブロックチェーンを用いたEコマース」のことです。従来のECに比べて、ブロックチェーンコマースでは安全かつ透明性の高い取引が可能です。
とはいえ、ブロックチェーンコマースで具体的に何ができるのか、これだけでは想像しにくいですよね。
そこで、この記事では、
- ブロックチェーンコマースの概要
- 現状ECが抱えている問題
- ブロックチェーンコマースでできること
- ブロックチェーンコマースの研究、活用事例
を、お伝えします。
「ブロックチェーン」と聞くと難しそうなイメージですが、概要をつかむだけなら簡単です。まずはこの記事で、ブロックチェーンコマースをざっくり理解しましょう。
【目次】
- ブロックチェーンコマースとは、ブロックチェーンを用いたECのこと
- 現在EC業界が抱えている問題
- ブロックチェーンコマースでできる5つのこと
- ブロックチェーンコマースの研究、活用事例
- EC以外に、ブロックチェーンが適用されそうな領域
- ブロックチェーンコマースの今後に期待
ブロックチェーンコマースとは、ブロックチェーンを用いたECのこと
ブロックチェーンコマースとは、ブロックチェーンを用いたECのことです。
まず「ブロックチェーン」と「EC」は、それぞれ以下を指します。
- ブロックチェーン:情報をユーザー間で分散して管理する技術
- EC:電子商取引
具体的には、ECにブロックチェーンを用いることで、
- 従来より正確な、商品のトラッキング
- 透明性のある、取引の記録
などが可能に。
簡単に言えば、ECをさらに発展させたものがブロックチェーンコマースなのです。
次にブロックチェーンコマースが検討されている背景として、現在のEC業界が抱えている問題をご紹介します。
現在EC業界が抱えている問題
現在のEC業界が抱えている問題として、以下の2点が挙げられます。
- 取引における情報が不透明かつ複雑なため、悪用される恐れがある
- 統一された基準がないため、買い手が混乱しやすい
以下、それぞれを解説します。
取引における情報が不透明かつ複雑なため、悪用される恐れがある
1つ目の問題は、取引における情報が不透明かつ複雑なため、悪用される恐れがある点です。
現状のEC業界は、商品のメーカー、ECサイト運営会社、最終消費者などが数珠のようにつながっています。
これはいわば伝言ゲームのようなもの。一つの情報を知るのに多くの手間がかかります。その上伝言ゲームにおける意図的な言い間違い、つまり商取引における横領や詐欺の恐れがあるのです。
統一された基準がないため、買い手が混乱しやすい
2つ目の問題は、統一された基準がないため、買い手が混乱しやすい点です。
例えばインターネット上では、実際は同じ商品が違う名前で売られていることがあります。
数ある中から商品を比較し選びたい消費者にとって、このややこしさは不便ですよね。
ECにブロックチェーン技術を導入することで、このような問題を解決できる可能性があります。
次に、ブロックチェーンコマースでできることをご紹介します。
ブロックチェーンコマースでできる5つのこと
ECにブロックチェーン技術を導入することで、以下の5つのことができるようになります。
- 取引記録の安全な保管、検証
- 低コストな決済
- 商品のトラッキングによる安全性の向上
- 暗号化による高いセキュリティ
- スマートコントラクトによる業務の効率化
以下、それぞれを解説します。
1.取引記録の安全な保管、検証
1つ目のできることは、「取引記録の安全な保管、検証」です。
ブロックチェーン上に記録される情報は、後から変更できません。つまりブロックチェーン上に取引を記録すれば、後からの改ざんが難しくなります。
言い換えれば、ブロックチェーンによって従来よりも安心、公正な取引ができるようになるのです。
2.低コストな決済
ブロックチェーンを用いた決済にかかる手数料は、従来のものよりも安くなります。なぜなら、現行のシステムよりセキュリティにかかるコストが小さいからです。
いまの決済システムは基本的に中央集権型であるため、銀行などが莫大なお金をかけてセキュリティを担保する必要があります。
一方ブロックチェーンは、ユーザーが同じ記録を分散管理する仕組みのため、コストがあまりかかりません。
そのためブロックチェーンコマースにおいてかかる決済コストは、従来のものより安くなるのです。
3.商品のトラッキングによる安全性の向上
ブロックチェーンによって、商品のトラッキング(追跡)も従来のシステムより安全性の高いものになります。というのもブロックチェーン上では、取引記録と同様に商品の移動も記録できるからです。
改ざんができないので、商品の横領やすり替えもできなくなります。
4.暗号化による高いセキュリティ
ブロックチェーン上では、情報は暗号化された上で記録されます。これにより、取引記録の漏洩や不正ログインが難しくなります。
5.スマートコントラクトによる業務の効率化
スマートコントラクトとは、契約とその契約をするために必要な条件をあらかじめ決めておくと、その条件が満たされた際に自動的に契約、取引がされる仕組みのこと。
ブロックチェーン上にこの仕組みをおいておくことで、契約における仲介者が不要になります。したがって業務が効率化する、と言われています。
ブロックチェーンコマースの研究、活用事例
ここでは、ブロックチェーンコマースの研究、活用事例を紹介します。多くは実験段階のものです。
楽天:認証情報に関するセキュリティを強固に
楽天証券株式会社はブロックチェーンを用いたログイン方法を提供しています。
新たなログイン方法では認証情報をユーザー、楽天証券、セコムトラストシステムで分散して管理することで、認証情報を不正に改ざんできないように。
さらに楽天証券は、生体認証による本人確認も行っています。これらの仕組みによって、セキュリティの向上が期待できそうです。
JD.com:ブロックチェーンアプリのためのプラットフォームを発表
2018年8月17日、に、中国EC大手の京東商城(JD.com)は「JDブロックチェーン ・オープン・プラットフォーム」と呼ばれるBaaSを発表しました。
BaaS(Blockchain as a Service)とは、クラウド上でサービスとして提供されるブロックチェーンのこと。 ASP型ツールのブロックチェーン版のようなものですね。
「JDブロックチェーン ・オープン・プラットフォーム」を使えば、一からブロックチェーンの仕組みを作る必要がありません。そのためブロックチェーンの利用を促進させることができます。
EVERY*:トークンによって顧客情報を分権して管理、共有
シアトルに拠点を置く企業EVERY*は、トークンによる顧客情報の管理、共有サービスを提供しています。
トークンとは、ブロック上で発行される独自の通貨で、いわばヨドバシポイントのようなものです。
EVERY*はトークン利用者の情報をブロックチェーンで管理。その情報はEVERY*に提携しているブランド側で閲覧できます。
そのため例えば、別のサイトでEVERYトークンを利用した顧客がその後自社のECサイトをはじめて訪れた時に、おすすめ商品を紹介することができるのです。
また消費者側は情報は勝手に公開されるわけではありません。自分で公開、非公開を選ぶことができます。情報を公開した場合は、見返りにトークンをもらえます。
Qoo10:スマートコントラクトによる商取引ができるeマーケットプレイス「QuuBe」を展開
シンガポールに本社を置くQoo10は、eマーケットプレイス「QuuBe」を展開しています。
QuuBeは取引にスマートコントラクトを用いているため、従来のシステムより安全に買い物を楽しめます。
Wowooブロックチェーンコマース:フリーマーケットモデルのプラットフォームを展開予定
シンガポールに本社を置くWowoo(ウォー)は、「Wowooブロックチェーンコマース」と呼ばれるブロックチェーンコマースのプラットフォームを発表しています。
Wowooブロックチェーンコマースはフリーマーケットモデルをベースにしており、そこでは商品はもちろん、サービスやスキルの売買も。
Wowooブロックチェーンコマース上の取引には「Wowbit」という独自の仮想通貨が使われる予定です。
Elementh:ECのために設計されたブロックチェーンインフラ「Elementh」を展開
シンガポールに拠点を置くElementh(エレメント)財団は、Elementhというブロックチェーンインフラを展開する予定です。
ElementhはECのために設計されたもの。これでグローバルに統一された基準を設定することで、ECを今までよりもシンプルに、便利にできる、とElementh財団は主張しています。
LINE NFT:デジタルコンテンツを出品できるマーケットプレイス
ブロックチェーン技術を活用した新しい売買の場として、LINE NFTが2022年4月にスタートしています。
NFT=非代替性トークン(non-fungible token:代替・複製が不可能なトークン)をデジタル資産と紐づけることで、唯一無二の価値を持たせることができます。
NFTにより複製が存在しない「唯一無二のオリジナル」と証明されるため、2018年頃から、資産価値を持たなかったデジタルコンテンツの新しい市場が形成されました。
LINEユーザーであれば自分のアカウント解説が容易に行え、NFTの購入だけでなく、保有、交換、出品ができるマーケットプレイスになっています。また、LINE Payが決済手段となっているため、暗号資産などハードルの高い決済手段を用意する必要がありません。LINE独自の暗号資産「LINK」での利用も可能となっており、「自由度が高い取引」が特徴として挙げられます。
EC以外に、ブロックチェーンが適用されそうな領域
ブロックチェーンが適用されるのはECだけではありません。ここでは
- 医療
- 人材
- 製造業
の3つの業界でブロックチェーンがそれぞれどのように利用されうるかを紹介します。
どれも共通してブロックチェーンの「記録が改ざんできないため従来のシステムよりも信頼できる」という特徴を利用しています。
医療:在庫薬品の売買システム
医療業界では、店舗間で薬品を売買するシステムの構成要素として、ブロックチェーンが使われる可能性があります。
なぜならブロックチェーンを活用することで、「売られている商品は本物なのか」といった売買時の不安を解消できるためです。
このシステムについては、株式会社INDETAIL、株式会社ファーストブレス、株式会社モロオの3社が協同して、医薬品の在庫販売プラットフォームを検証しています。
人材業界:履歴書での虚偽を防ぐ
人材業界では履歴書での虚偽を防ぐために、ブロックチェーンが使われる可能性があります。
ブロックチェーンに略歴などを記録するようになれば、履歴書で嘘をつくことはできません。前述の通り、ブロックチェーンに記録された情報は後から改ざんができないためです。
製造業:より効率的なサプライチェーンマネジメントの構築
製造業においては、現在のものよりも効率的なサプライチェーンマネジメントを構築するのにブロックチェーンが利用される可能性があります。
サプライチェーンマネジメント(Supply Chain Management)とは、生産から最終消費者までを管理し、効率化を図る手法のことです。
ブロックチェーンを使えば、商品のより正確なトラッキングや透明性のある取引記録の管理が可能になります。つまり生産から最終消費者までのデータを今までよりも正確に把握することができるのです。
ブロックチェーンコマースの今後に期待
この記事では、まずはじめにブロックチェーンコマースについて「ブロックチェーンを用いたEC」と説明しました。
従来のECに比べて、ブロックチェーンコマースには、
- 取引記録の安全な保管、検証
- 低コストな決済と送金
- 商品のトラッキングによる安全性の向上
- 暗号化による高いセキュリティ
- スマートコントラクトによる業務の効率化
といったメリットがあります。
EC業界内外で、ブロックチェーンを用いた研究やビジネスが進んでいます。ブロックチェーンが普及すれば、人々の生活はより安全で便利なものになるはずです。
ブロックチェーンコマースの今後に、目が離せません。