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D2Cブランドがリアル店舗を展開する本当の理由

卸業者を介さず、メーカーが直接コンシューマーに商品を販売する「Direct to Consumer(D2C)」。世界中のリテール業界で注目されるこのビジネスモデルにおいて、トップを走るブランドの多くはECサイトからスタートしています。したがって、D2C=自社ECというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、最近多くのD2Cブランドがリアル店舗を展開し始めています。そこには、旧来型のメーカーが直販店を運営するのとはまた違った理由と事情があるのです。

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丸井のD2C&Co.の登場が示す一つの傾向

D2Cブランドのリアル店舗展開というと、シリコンバレー発祥のシューズブランド「allbirds(オールバーズ)」の日本初上陸となる原宿店オープンなどが話題となっています。

しかし、本稿で特に取り上げたいのは、ブランド自らが運営する直販店ではなく、「新しい形の小売」が介入し、D2Cブランドをサポートする形で展開しているリアル店舗です。

今年の1月31日、丸井グループはD2Cに特化した新会社「D2C&Co.(ディーツーシーアンドカンパニー)」を設立しました。丸井グループは今や旧来の百貨店ではなく、「売らないお店」へと方針転換をしており、今回のD2C支援事業もその一環となっています。

ディーツーシーアンドカンパニーでは、D2C関連のスタートアップ企業への出資に加え、丸井の強力な販売チャネルである、マルイ各店への出店支援も行うとしており、今後3年間で30億円の投資を目標に掲げています。

この、「自ら商品を売らずにD2Cブランドを支援する」という動きは、実は世界で活発になっているのです。


RaaSとD2Cは相思相愛

ユニコーン企業となっているようなブランドでもない限り、多くのD2Cブランドにとって、直営のリアル店舗を構築することはコストもリソースも厳しい場合が多いと思います。特に、出店する価値がある立地を選ぶとなると、東京などでは毎月の賃料だけでキャッシュフローを圧迫され続けてしまいます。

そんな新興D2Cブランドにとって頼りになる存在なのが、RaaS(Retail as a Service)です。

RaaSは、SaaSなどと同様「サービスとしての小売」で、リアル店舗を運営するインフラとリソース(売り場スペースや棚、販売スタッフ)を、月額制などで様々な企業に提供するビジネスモデルとなっています。

RaaSのおかげで、D2C企業は自社で莫大なコストを投資することなく、(しかも一等地で)コンシューマーとのフィジカルなコミュニケーションを可能にするチャネルを持つことができます。

※RaaSについて詳しくは【「RaaS」日本上陸でD2C企業に追い風。海外の企業事例とメリットについて】もあわせてご覧ください。

RaaS企業の台頭

今年の夏、日本に上陸することで話題の「b8ta」などは代表的なRaaSですが、奇しくも、新宿マルイ本館に出店される予定になっていますね。

RaaSを掲げるD2C向けソリューションの動きは国内外で活性化しています。例えば、2019年8月にサンフランシスコにオープンした「Re:store(リストア)」はD2Cブランドのセレクトショップですし、日本でも大手アパレル企業ワールドが、同じく2019年にD2Cブランドばかりを集めた期間限定のポップアップショップ「246st Market」を開催しています。

このようなRaaS企業の台頭は、D2Cブランドの増加と決して無関係ではなく、旧来型小売のリアル店舗数が激減していく一方で、RaaS×D2Cのリアル店舗は今後も増えていくのではないでしょうか。

なぜなら、RaaSには、旧来型小売店舗が整備できていない、店内におけるリテールテクノロジーを最初から完備しているからです。その真意については次項で詳しくお伝えします。

リアル店舗はある種の「広告」

かつて、店舗はいかにたくさんの商品を売るかが正義であり、店内の作りも、ビジュアルマーチャンダイジングから動線設計、そして在庫管理に至るまで、商品を売ることを前提にしていました。また、直営店でもない限り、特定のブランドが徹底的にその世界観を押し出すことは難しいものでした。

しかし、D2Cブランドの要は、ブランドが持つストーリーであり、「みんなと同じものは嫌だ」というコンシューマーの琴線に触れる世界観です。したがって、D2Cブランドがリアル店舗に求めるのは、極端に言ってしまえば、売上よりも、いかにブランドの世界観をリアルなコンシューマーに触れてもらえるかであると言えます。なぜなら、D2Cブランドは最終的にECサイトでプロダクトが売れればいいからです。

RaaSを提供する企業では、そのあたりのD2Cの生命線を完璧に理解しており、コンシューマーが店頭でブランドやプロダクトのストーリーに惹きつけられたり、理解を深めたりするレイアウトや装飾に余念がありません。

RaaSでの出店は、必然的に常設店というよりポップアップショップ的な形が多くなると思いますが、そういう意味で、出店コストも含めて、D2Cブランドはリアル店舗のポジションを「一つの広告」として捉えていると言ってもいいでしょう。

直営店ではとても出店不可能な一等地で、多くの人に自社ブランドを認知させるだけでなく、ECだけでは不可能な、実際にプロダクトを体験してもらうところまでコンシューマーを引き込める、貴重な広告というわけです。

RaaSのテクノロジーがD2Cブランドにデータをフィードバック

もう一点、店舗が「広告」となる根拠として、RaaSは(今後も登場してくるであろうサービスも含めて)テクノロジーを駆使し、店内におけるコンシューマーのオフライン行動データを取得し、それを分析してD2Cブランドにフィードバックする仕組みまで整えて提供します。

ブランド側は、そのデータを見ながら、プロダクトやプロモーションツールの改善を行えます。リアル店舗は、もはやアフターデジタル時代においてはデジタルマーケティングチャネルの一つなのです。

リアル店舗=広告である、という感覚については、D2Cの成功者とも言えるAnker Japanの執行役員・猿渡氏も「お金をもらいながら(販売しながら)いい土地で看板を出していると考える」「お客様とのフィジカルなコミュニケーションから学びを得る場」といったことを語っています。


リアル店舗はCtoCにも波及する?

リアル店舗=アフターデジタル時代の広告である、と捉えた場合、そこへ出店する意味が出てくるのはD2Cブランドだけではありません。二次流通のプラットフォームとして、今後ますます存在感が大きくなるであろうCtoC企業にとっても、価値のあるチャネルとなり得るのです。

前述の丸井は、そこに対してもすでにアクションを起こしています。手を組むのはメルカリです。

メルカリは今年のお正月に「SHIBUYA109渋谷」で、「売れる福袋」を販売する期間限定の「メルカリPOP UP」を展開していましたが、この春には新宿マルイ本館に「メルカリステーション」を常設店としてオープンさせます。

ポップアップでも、新しくオープンする常設店でも、一貫しているのは、リアル店舗は「メルカリ」というブランドを体験(メルカリで売るための商品撮影ブースや、メルカリの使い方を学ぶ「メルカリ教室」など)する場所である、という点であり、これはやはりリアル店舗の広告的な使い方と考えることができます。

さらにこの場合、マルイはRaaS的なポジションとなって、マルイのECサイトであるマルイウェブチャネルとメルカリのユーザーデータを連携し、両者のマーケティングに活用する、ということも検討されているようです。

さいごに

本稿ではD2Cとリアル店舗の関係について述べてきました。しかし広い視点で捉えれば、これは決してD2Cブランドだけの話ではなく、あらゆる企業にとって、リアル店舗の価値を再定義する示唆に富んでいると思います。

そして、成功しているD2Cのビジネスのやり方——例えば、今時のコンシューマーの気分や、スマホを全ての行動起点と捉えたサービス設計やプロモーション設計など——を研究することも、これからの時代に選ばれるブランドとなる上でのヒントが詰まっているはずです。