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シェアリングが生んだ新たな消費モデルSAUSE(ソース)

シェアリングエコノミーは日本でも活発になっており、クルマ業界や飲食業界・ホテル業界などであらゆるサービス展開が始まっています。

シェアリングエコノミーが拡大した背景として、スマートフォンの普及と消費モデルの変化があります。

シェアリングエコノミーや新しい消費モデルを知ることで、新しい販売戦略のヒントが見えてくるでしょう。
【目次】

シェアリング時代到来により変化する消費モデル

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーとは、所有しているのに活用できていない資産(遊休資産)をシェアする(貸し出す)サービスです。シェアリングエコノミーはアメリカで発生した考え方で、今では世界各国でシェアリングサービスが展開されています。

活用できていない遊休資産はクルマや家といった有形の物に限らず、知識やスキルといった無形の資産も存在します。そのためシェアできる資産は豊富にあり、シェアリングする側もされる側もメリットがあります。
シェアリングエコノミーの市場規模は急成長中で、2013年には約150億ドル(約1兆6,000万円)であった市場規模が2025年には約3,350億ドル(約38億兆円)と20倍以上にまでなると予想されています。

参照:総務省「第2部 ICTが拓く未来社会」より
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242110.html
日本でもシェアリングエコノミーが浸透し始め、新規サービスが続々と参入開始。ファッション・IT・車・住宅などあらゆるジャンルでシェアリングサービスが展開されており、多様化を見せています。


「所有」から「一時利用」へシフトしている

シェアリングエコノミーについて、2019年2月に大手フリマサイト「メルカリ」が三菱総合研究所(MRI)と共同研究を実施したと発表しました。

参照:株式会社メルカリプレスリリース「メルカリ、三菱総合研究所とシェアリングエコノミーに関する共同研究を実施」より
https://about.mercari.com/press/news/article/20190226_mercari_mri_research/
メルカリ上で洋服や化粧品の売買を行っている利用者約1,600人にアンケートを取った結果、ユーザーは物に対しての所有欲が下がり、代わりに一時利用したいというニーズが高まっていることがわかりました。
メルカリといえば、2013年7月からサービスを提供しているフリマアプリ。2018年7月には累計出品数が10億品、利用者は月間1,000万人を超えて急成長しています。2019年2月にはスマホ決済「メルペイ」サービスを提供するなど、新サービスも展開しています。

メルカリをはじめとするフリマアプリの成長の背景には、消費者ニーズの変化が大きく影響しているようです。

新しい消費モデル「SAUSE(ソース)」の誕生

メルカリの調査によれば、シェアリングサービスの普及により消費者の価値観が変わり、従来の消費モデルでは説明しきれない特徴が出ています。この新しい消費モデルを、MRIでは「SAUSE」と定義しました。

  • S…Search(検索)。スマートフォンの普及が進み、検索によるリアルタイムな情報収集で購入の意思決定までのプロセスを決める
  • A…Action(行動)。購入すべき商品を決めた後、店舗やインターネット上で購入する
  • U…Use(一時利用)。購入した物を、必要な期間だけ利用する
  • S…Share(再販売)。物が不要になったら、メルカリなどのフリマアプリを介して他者へ再販売する
  • E…Evaluation(評価)。フリマアプリで商品の取引が終わり、相手を評価する
調査結果によると、インターネット技術が向上して消費者が当たり前にスマートフォンを持つことで、検索ありきの消費モデルと変化していることがわかりました。
シェアリングサービスなら中古品を安く購入できるため、節約志向の消費者が増えていると思われがちですが、実はシェリングサービスの普及により新品の購入にも積極的な人が増えています。

そのためシェアリングエコノミーの普及は、新品を販売する事業者にとってもメリットがあるのです。

マスメディア時代の王道「AIDA(アイダ)」はもう古い

今まで考えられていた消費者モデルの1つに、AIDAの法則があります。AIDAの法則はアメリカで提唱された消費者心理で、以下のステップを経て購入の意思決定を行うといわれています。

  • A…Attention(注意)。広告を見て商品を見る
  • I…Interest(興味)。広告を見て興味を持つ
  • D…Desire(欲求)。広告に興味を持った結果、欲しいと思う
  • A…Action(行動)。購入行動を起こし、商品を手に入れる
AIDAの法則は消費者ニーズの基本ですが、100年以上前に提唱されているため古いという見方もあります。IT技術が進化した現在では、消費者は必ずSearch(検索)というステップを踏みます。

消費者は興味を持った商品(またはサービス)に対して、実際に利用した人の口コミや競合との比較などの情報をスマートフォンで検索し、購入する価値があるか冷静に考えます。
そのため商品を提供する側は、変化している消費者モデルに柔軟に対応することでさらなる拡販を狙う必要があります。

シェアリングのニーズが高まった背景

シェアリング、シェアリングエコノミーといったサービスが拡散し、そのニーズが高まった背景を探ってみましょう。

インターネット技術の向上が普及を後押し

スマートフォンの普及
シェアリングサービスが発達した背景には、スマートフォンの普及が大きく影響しています。今やスマートフォンの利用は当たり前となり、情報の拡散力が飛躍的に高まっています。

物を貸したい人と借りたい人が情報を発信しあうことでマッチングが進み、今では様々なシェアリングサービス事業が展開されています。また、スマートフォンのGPS機能を活用することで、近くにいる人とシェアリングするサービスも展開されています。
SNSや検索で情報収集
SNSでは同じ価値観を持つ人と気軽に情報交換ができ、自分が興味を持つ物に対して質の高い情報が入手できるようになりました。顔が見えないSNSによるコミュニケーションは、「他人とモノをシェアリングする」ことに対する抵抗感を少なくします。
シェアリングサービスは新しいビジネス分野なので、不安感を持つ利用者も多いもの。ですがシェアリングサービスを実際に利用した人の感想や口コミも、簡単にインターネットで検索できます。シェアリング利用者による情報発信が増えるほど、シェアリングを前向きに考える人が増えるでしょう。

所得の低下

1980年代後半から1990年代初頭のバブル全盛期は所得に対する不安がなく、家や車などの資産を所有する人が多くいました。ですが、リーマンショックを経て不景気が叫ばれるようになった現代では非正規雇用が増え、“派遣切り”などで所得が安定しない人が増えています。

シェアリングエコノミーなら低コストで物を一時利用できますから、所有するよりもぐっとハードルが下がります。そのため、シェアリングエコノミーは現在の時代背景にもマッチしたサービスといえます。

エコへの関心

地球温暖化が進み、世界中でエコ(エコロジー)の呼びかけが進んでいます。地球温暖化は森林伐採や二酸化炭素の排出が原因であり、多くの生態系に悪影響を及ぼしています。

地球温暖化を食い止めるために、“ゴミをなるべく出さない”という意識が高まっています。ゴミは処理する時に温室効果ガスが発生しますし、山林を切り開いてゴミの埋め立て地も作らなければいけません。

大量生産されたものが大量廃棄され問題になりましたが、自分にとって不要なものを他者とシェアリングすることでエコ活動に貢献できます。そのため、エコの観点から見てもシェアリングエコノミーは肯定的にとらえられているのです。

シェアリングの最新事例について

シェアリングエコノミーが一般的になってきた現在、様々なモノがシェアリングされています。
どのような事例があるのか、いくつかご紹介いたします。

クルマ

所有欲が下がったものの代表にクルマがあります。ひと昔前なら「クルマを持っている」ということが一つのステータスであり、20代の若者でもクルマを所有している人が多くいました。

ですが晩婚化や少子化の影響もありクルマは不要と考える人が増え、その結果維持費が安くなるカーシェアリングが人気となっています。
クルマは乗らなくても所有しているだけで維持費が発生しますから、月に数回しかクルマを利用しないユーザーにとって、カーシェアリングは費用対効果が高い画期的なサービスです。
そんな中、大手自動車メーカートヨタも2018年11月にカーシェアリング事業を立ち上げました。自動車販売店に欠かせない試乗車を活用するカーシェアリング事業は、2018年12月から東京中野区の拠点で始まっており、2019年からは東京の直営店での活用を目指しています。

参照:トヨタ公式HP「トヨタ、未来のモビリティ社会に向け、日本の販売ネットワークを変革」より
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/25169229.html

民泊

住宅のシェアリングも進んでいます。訪日外国人の増加によるインバウンドビジネスの活性化で、一般の住宅を宿泊施設として貸し出す民泊事業が活性化しています。
民泊事業については法整備が進んでおらず、無許可での実施や地域住民とのトラブルがありました。そのため国は健全な民泊サービスが普及を目指して、平成29年6月に「住宅宿泊事業法」を施行しています。
民泊制度のポータルサイトも開設して、新しいシェアリング事業として注目されています。

参照:民泊制度ポータルサイト「minpaku」より
http://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/index.html
楽天株式会社と不動産情報サービス事業を展開する「株式会社LIFULL」は、2018年9月から民泊事業において業務提携を開始しました。

楽天の持つ1億人以上の会員基盤とLIFULLの豊富な不動産情報のシナジー効果を見込んでおり、2019年2月18日には戸建て宿泊施設サービス「Rakuten STAY HOUSE x WILL STYLE」の不動産オーナー向け特設サイトをオープンしました。

参照:楽天LIFULL STAY株式会社公式HPプレスリリースより
https://www.rakuten-lifull-stay.co.jp/press/20190218_01.html

アパレル

アパレル業界でもシェリングサービスは進んでおり、月額制のレンタルサービスが増えています。
例えばairCloset(エアークローゼット)は月額制で洋服をレンタルしており、会員数は20万人を突破しています。プロのスタイリストが選んだ服が借り放題で、利用者はクリーニングも不要。6,800円/月で始められます。

https://www.air-closet.com/


女性に人気のあるブランドバッグやジュエリーもシェアリングサービスが増えています。ラクサス・テクノロジーズ株式会社の「Laxus(ラクサス)」や、時計・ジュエリーをシェアできる株式会社K-GOLDインターナショナルの「SHAREL(シェアル)」なども、多くの女性から支持されています。


場所

物ではなく場所のシェリングサービスも多様化しています。貸会議室や事務所を持たない起業家向けのコワーキングスペースなど、ビジネスの場でも欠かせないサービスとなっています。

また2014年に設立された株式会社スペースマーケットが提供する「SPACEMARKET」では、パーティやロケ撮影、イベントや結婚式に至るまで、さまざまなニーズを満たす場所のシェリングサービスを提供しています。

https://www.spacemarket.com/

 

売却前提の購入で消費の拡大に繋がる

メルカリの調査によるとおよそ半数の人が「売却前提で物を買う」と回答しており、高額の商品を購入するケースが増えています。

たとえば「新しいカバンが欲しい」と思ったとき、「認知度の高いブランドのカバンを新品で購入すれば、使わなくなった時に売却できる」という安心感があり、消費者は多少高くても新品の商品を購入するケースが増えています。

新しい消費モデル「SAUSE」により、売却を前提とした消費モデルが生まれているのです。そのためシェアリングエコノミーの市場が拡大しても「新品が売れなくなる」という心配はなく、逆に新品の購入頻度が上がると予想されます。
フリマアプリではブランドのカバンも人気があります。多少高額でもブランドが商品の品質を担保しているため、売却時も流行に関係なく値崩れのリスクが下がります。

シェアリングエコノミーは節約志向を増大させるのではなく、売却による利益の発生により、高額の商品をためらいなく購入できるようになっていきます。

新しいサービスのため法整備はこれから

シェアリングサービスは新しいサービスのため、法整備が十分でないことがデメリットとして挙げられます。たとえばフリマアプリで購入したブランド品が偽造であったケースや、民泊で貸し出した家を荒らされてしまったケースなど、シェアリングサービスによるトラブル事例も報告されています。


シェリングサービスは法人対消費者に限らず、消費者同士の取引という新しい形態を生み出しました。そのため、シェアリングサービスを利用する際の明確なルールがなく、参入に踏み切れない企業や人も多くいます。

政府は「未来投資戦略2017」の成長戦略において、シェアリングエコノミーの活用事例を30地域で創出することを目標として掲げました。これによりシェアリングサービスの事例が増加して、法整備が進んでいくことも期待できます。
参照:国民生活センター「特集 シェアリングエコノミーと消費生活」より
http://www.kokusen.go.jp/pdf_dl/wko/wko-201801.pdf
現在シェアリングエコノミーを提供するプラットフォーム開発を行う事業者は、サービス提供者を登録する際に身分を確認するなど独自で安全性を保証するよう努力しています。

消費者の行動を先読みして販売戦略を立てる

シェアリングエコノミーは、遊休資産を活用する新しいサービスです。日本でも民泊をはじめとするシェアリングサービスは注目を浴びており、スマホの普及とともに多種多様なサービスが展開されています。

インターネットやスマートフォンが普及した今、企業は変化する消費者ニーズを先読みして柔軟な戦略を立てていくことで、さらなる成長が見込めるでしょう。

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