越境ECはSNSで完結する時代へ。ライブコマース・ソーシャルコマースの拡大とMA連携の考え方
越境ECは、海外の消費者に向けて商品やサービスを販売する手段として、国内企業の間で活用する動きが増えてきました。かつては越境ECモールへの出品や、代行会社を通じた販売が中心でしたが、近年はライブコマースやソーシャルコマースといった新しい選択肢も登場し、販売チャネルの幅は大きく広がっています。
同時に、チャネルが増えるほど顧客データの管理は複雑になり、MAツールとの連携をどう設計するかが事業の成否に影響するケースも出てきているのではないでしょうか。
越境ECにおけるライブコマース・ソーシャルコマースそれぞれの広がりと活用のポイント、そしてMAツール連携が欠かせなくなっている理由について整理していきます。
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世界のEC市場は成長を続けており、2026年には市場規模が7.62兆USドルに達すると見込まれています。中国市場が先行してきた越境ECですが、近年は東南アジア市場の伸びも目立つようになってきました。
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日本国内に目を向けると、EC化率は業種によって差があるものの、全体としては緩やかな上昇傾向が続いています。国内EC市場の動きを踏まえたうえで海外展開を検討するのが、越境EC戦略のよい出発点になりそうです。
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黎明期と比べて増えた販売チャネルの選択肢
越境ECの黎明期は、越境ECモールへの出品や、現地代行事業者を通じた販売が主な手段でした。現在はそこにライブコマースやソーシャルコマースが加わり、選べる販売チャネルはずいぶん増えたといえるでしょう。
ライブコマースの拡大
中国では、ライブ配信を通じた販売がすでに定着しています。調査会社のレポートによると、中国のライブコマース流通取引総額はEC小売額に占める割合が年々高まっており、2025年には20%を超える水準に達すると予測されています。
東南アジアでも似たような流れが見られます。Google・Temasek・Bain & Companyが共同で発表している「e-Conomy SEA 2024」の調査では、東南アジア6カ国のEC流通取引総額に占めるライブコマースの割合が、2022年の5%以下から2024年には20%程度まで急速に伸びたと報告されています。TikTok Shopのようにアプリ内で商品を購入できる仕組みも各国で普及し、流通取引総額は短期間で大きく伸長しました。
出典:e-Conomy SEA 2024
https://www.bain.com/insights/e-conomy-sea-2024/
米国市場でもライブコマースの利用者は着実に増えており、特にSNSに触れる時間が長い若年層を中心に浸透が進んでいます。大手小売事業者がライブ配信機能を取り入れる例も見られ、この先も市場規模は伸びていきそうです。
ソーシャルコマースの拡大
SNS上で商品情報に触れてからそのまま購入まで完結できる、ソーシャルコマースも身近になってきました。InstagramやTikTok、YouTubeといった主要SNSはそれぞれ購入機能を強化しており、中国の淘宝(タオバオ)や小紅書(RED)、東南アジアのShopee Liveなど、地域ごとに存在感のあるプラットフォームも複数存在します。
こうしたプラットフォームの中には、ライブ配信中のコメントをきっかけに自動でカートへ商品が追加される機能や、チェックアウトURLをチャットで直接送る機能を備えたものもあり、視聴から購入までの距離が年々縮まっているのが特徴です。
EC構築システムの側でも、アジア圏を中心にシェアを広げているSHOPLINEのように、ライブコマース機能やSNS連携、実店舗との在庫・顧客データ連携を標準機能として備えたサービスが登場しており、こうした機能を外部ツールの追加なしに使える点はシステム選定時の判断材料のひとつになるでしょう。特定のサービスに限った話ではなく、SNSとECを一体化させる設計思想そのものが、越境ECの選択肢として広く採用されるようになってきたといえます。
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ライブコマースを越境ECに取り入れる際のポイント
ライブコマースは、静止画や文章だけでは伝えにくい商品の使用感やサイズ感を、動画を通じて直接伝えられるのが強みです。実際に商品を使う様子を見せられるため、言葉だけの説明に頼らずに価値を伝えやすくなる点は、越境ECにおいて特に生きてくるのではないでしょうか。加えて、視聴者からの質問にその場で答えられれば、購入前の不安をやわらげる効果も期待できます。
ただし、こうした双方向のやり取りを活かすには、視聴者の言語で対応できる体制が前提になります。現地言語での対応スタッフの確保、配信時間帯と時差の調整、そして配信中に注文が集中した場合の物流体制の確保など、越境ECにライブコマースを組み合わせる際に気を配りたい点は複数あります。
とくに国際配送や通関手続きが絡む越境ECでは、注文が急に増えた際の対応をあらかじめ考えておく必要があります。情シス担当者にとっては、POSや在庫システムとライブコマースツールをどう連携させるかが、実務上の大きなテーマになりそうです。
また、配信を担当するスタッフのスキルも成果に影響します。商品知識に加えて、視聴者からのコメントに柔軟に対応できるコミュニケーション力、越境配信であれば語学力も求められるでしょう。自社スタッフだけで対応が難しい場合は、現地インフルエンサーや専門の配信担当者を起用するという選択肢もあります。
配信後のアーカイブを残しておけば、時差のある地域の視聴者にも情報が届きますし、商品紹介部分を抜粋した短尺の動画としてSNSで再活用することも可能です。
ソーシャルコマースがもたらす購買導線の変化
ソーシャルコマースの広がりは、購入までの道のりそのものを変えつつあります。従来はSNSで商品を知ってからECサイトに移動し、あらためて商品を探して購入する流れが一般的でした。現在は、SNSの画面を離れずに購入手続きを完了できる仕組みが整いつつあり、途中で離脱してしまう割合を抑える効果も期待できます。
インフルエンサーを起用したプロモーションも、こうした導線の変化と相性がよいといえます。インフルエンサーごとの成果を計測し、データにもとづいて次の施策へつなげるためには、SNS上の行動データと購買データを紐づけて分析できる環境が欠かせません。

MAツールとの連携が重要になる理由
ライブコマースやソーシャルコマースなど、販売チャネルが増えるほど、顧客データはチャネルごとに分かれて蓄積されやすくなります。自社ECサイト、越境ECモール、SNS上の購買データがそれぞれ別々に管理されていると、顧客の全体像がつかみにくくなり、施策の効果検証にも手間がかかってしまいます。
こうした悩みに応えてくれるのが、MAツールとの連携です。複数チャネルの顧客データをひとつにまとめられれば、購買履歴や行動データにもとづいたメールやメッセージの配信がしやすくなり、リピート購入の後押しや顧客生涯価値(LTV)の向上にもつながっていくはずです。多言語・多通貨での顧客対応が求められる越境ECでは、このデータ統合の重要性がなおさら高まってきます。
情シス担当者の立場からは、システムを選ぶ際にいくつかの観点を確認しておきたいところです。
まず、既存の基幹システムやECカートとAPI連携できるかどうか。次に、将来チャネルを追加した場合にも対応できる拡張性を備えているかどうか。そして、海外の顧客データを扱う以上、各国のデータ保護規制に沿った運用ができるかどうかも見ておく必要があります。
こうした点を踏まえてMAツールを選ぶことが、越境EC戦略を長く支える土台になっていくでしょう。
関税・法規制など事業環境の変化
越境ECを取り巻く制度面の変化にも、目を配っておきたいところです。世界各国で関税ルールの見直しが相次いでおり、これまでの前提が変わる場面も出てきました。
制度変更への対応は一時的な作業にとどまらず、事業を続けていくうえでの前提条件になりつつあるといえるでしょう。
関税や輸出入規制の動きは国や地域によって異なるため、進出先ごとに最新情報を継続的にチェックする体制を整えておくと安心です。
◆関連記事:世界で関税ルールの見直し続々。越境EC最前線
越境EC推進にあたっての実務チェックポイント
越境ECを進めるにあたっては、立場ごとに気にしておきたい観点が変わってきます。
経営者の立場からは、どの市場に、どの程度の投資規模で進出するかという判断が求められます。小さく検証を始めて、成果を見ながら段階的に広げていく進め方は、初期投資を抑えつつリスクを見極めるうえで選びやすい方法のひとつです。
EC運営者の立場からは、進出先の消費者ニーズに合った商品選びや、ライブコマース・ソーシャルコマースを含めたチャネルごとの運用体制づくりが課題になってくるでしょう。
情シス担当者の立場からは、既存システムとの連携のしやすさやデータ保護への対応、そして複数チャネルをまたいだ顧客データ管理の仕組みづくりが中心的なテーマになりそうです。
これら三者の検討事項は、互いに深く関わっています。経営者が描く進出計画は、情シス担当者が整えるシステム基盤があってはじめて実行に移せますし、EC運営者がつかんでいる現地の消費者動向は、経営判断の材料にもなります。部門をまたいで情報を共有する場を定期的に設け、三者の視点を持ち寄りながら検討を進めることが、越境EC推進を着実に前へ進める鍵になるのではないでしょうか。
まとめ
越境ECの選択肢は、黎明期の越境ECモール中心の販売から、ライブコマースやソーシャルコマースを含む多様なチャネルへと広がってきました。
チャネルが増えることは事業機会の広がりにつながる一方で、顧客データが分散するという新たな悩みも生んでいます。MAツールとの連携によってチャネル横断でのデータ活用を進めることは、この悩みに向き合うための現実的な手段のひとつといえそうです。
関税ルールなど制度面の変化にも継続的に目を配りながら、自社の体制に合った越境EC戦略をじっくり検討してみてはいかがでしょうか。