カゴ落ちはなぜ発生する?カート離脱を防止する方法
ECサイトを運営している人であれば一度は頭を悩ませたことがあるであろうカゴ落ち。
訪問者のカゴ落ち(カートからの離脱)は仕方のないことと考える人もいると思いますが、一度「これいいな」と思ってもらった商品を結局買わないままで離脱されてしまうのは、大きな機会損失になっているとも考えられます。
自然現象ともいえるカート離脱ですが、原因を分析し、的確なソリューションを施策する事で大きく改善されることも珍しくありません。
カゴ落ちの原因を改善することはECサイトを運営する上で重要な決済にまつわる問題の改善につながるため、結果的に全体的な購買率の向上にも繋がります。見直しを図って損はない点といえるでしょう。
今回はそんなカゴ落ちについてのECサイト全般の現状や、その原因の解明、そして問題解決の手段をご紹介していきます。
カゴ落ちとは
そもそもカゴ落ちの意味は、ECサイトを利用しているユーザーが一度カートに商品を登録した後、そのまま購入せずにECサイトを離脱してしまうことを言います。
これはカート離脱とも表現され、ECサイト運営者の多くが直面している問題となっています。
世界で発生するカゴ落ちは7割にものぼる
カゴ落ちは日本だけでなく、世界中のECサイト運営者にとっても問題視されており、英語ではOnline Shopping Cart Abandonmentと呼ばれています。
Baymard Instituteによる調査によると、世界のカゴ落ち率の平均は2018年11月現在で69.89%、およそ7割の商品がカゴ落ちになっているというデータがあります。
参考:https://baymard.com/lists/cart-abandonment-rate
このカゴ落ち率は年々増加しているというデータもあります。これはECサイトでの購買率が低下しているというわけではなく、スマートフォンやインターネットが広く普及し、ECサイト利用者も増加したことによって、必然的にカゴ落ち率が増加していると考えられています。
オンラインショッピングでの利用者が増えた以上、カート離脱率はこれまで以上に重要な指標になっているといえるでしょう。
カゴ落ちで発生している機会損失は
カゴ落ちはよくあることだからそれほど問題視するものでもない、と考える人もいるかもしれませんが、実際に数値化してみるとそのインパクトの大きさがわかります。
金額にすると無視できない数字に
仮に1000万円分の商品がカートに一度収まり、離脱率0%であれば1000万円の売上となったところ、離脱率が70%となるとわずか300万円しか手元に残らないことになります。
これは単純計算となるためここまで極端なケースとはなりませんが、それでも一度自社ECサイトの商品に興味を持って「買ってみたい」と思ってもらったものは、そのまま決済につなげたいものです。
また、70%というのはあくまでも平均値であり、利用者が圧倒的な大手ECサイトであればこれよりもさらに高い離脱率が記録され、個人レベルでは低い数値となっている可能性もあります。
この問題を可視化するためにも、1度自社のECサイトが、どれくらいの離脱率となっているかを確認してみると良いでしょう。
カゴ落ち率の計算
カゴ落ち率の計算は、
「カートに商品を入れたユーザー」ー「実際に購入したユーザー」=「買わずにサイトを離脱したユーザー」
を算出します。そして
「買わずにサイトを離脱したユーザー」÷「カートに商品を入れたユーザー」×100=「カート離脱率」
を計算すれば、離脱率を算出することができます。この数値を一度確認し、それが問題となりかねない数値かどうかを考えてみると良いでしょう。
あるいは、「カゴ落ち損失シミュレーター」を利用してみるのも良いでしょう。
月の売り上げ目安と平均単価目安、そして業種を入力することで、カート放棄率や損失額の推定を自動で算出してくれます。
ECサイト業界の平均値と、実際の自社ECサイトの現状を把握し、比較することで現状を捉え直してみる作業が重要になります。
カゴ落ち解決PickUpを利用する
カゴ落ち解決PickUpはのちに紹介する離脱率の問題を解決するための機能を盛り込んだパッケージですが、無料プランでは機会損失額を計算することもできます。
いきなり有料はちょっと、という方でも、トライアルで無料プランを利用してみるのも良いでしょう。
カゴ落ちが発生している理由
次に、カゴ落ちが発生してしまっている原因を考えてみましょう。前述でも紹介した。こちらのサイトによると、カゴ落ちの原因は主に10の理由に分類されるとしています。
送料や税、手数料などが高い
カゴ落ちの理由として最も多くの割合を占めているとされるのがこちらの要因です。
商品の売買には商品価格だけでなく、配送料や消費税などがかかってくるものですが、決済画面で商品価格にさらにプラスされますといった形で表示されてしまうと、購入の手は少し止まってしまうのがユーザーの心理です。
たとえ結果的に全ての追加料金を足して相場の価格だったとしても、「追加料金がかかる」というイメージが購入を遠ざける原因となっているといえるでしょう。
会員登録やアカウント作成が必要
これも上記の理由についで多いカート離脱の原因です。
商品の購入にあたり、決済のためにアカウントを作成しなければ行けないというのは、たとえ購入の意思があっても新規顧客であれば「わざわざアカウントを作らないといけないのなら、いつものサイトで買おう」となってしまう心理に陥ります。
購入プロセスが長すぎる
こちらはアカウント作成などの手続きも含まれるかと思いますが、買いたいと思ってもすぐに決済できないことが購買意欲を大きく削いでしまう原因になっていると考えられます。
できる限り少ないクリック操作で購入まで導くことが、離脱率低下の大きな足がかりとなるでしょう。
トータルの購入代金が不明瞭
商品の価格はわかったけど、送料や消費税を込みにすると結局どれくらいのお金を決済時に支払わなければいけないのかが不明瞭というのは大きな機械損失に繋がります。
これはカート離脱率の問題だけでなく、そもそもECサイトという取引の場としては不親切な設計であると言えます。
ウェブサイトのエラー・クラッシュ
これは人気商品を取り扱うECサイトなどではたまにみられる光景ですが、サーバーが脆弱であるにも関わらず多くのユーザーが詰めかけると、一気にサーバー負荷が大きくなり、クラッシュの原因となります。
また、サーバーのキャパシティに見合わない動的なWebデザインを導入してしまうと、正常に表示されず訪問しづらいWebサイトとなってしまいます。
ECサイトの信頼性に不安を覚える
決済には個人情報が欠かせませんが、新規ユーザーの場合は利用したことのないサイトでの決済情報の入力にはある程度の警戒心を抱きます。
特にクレジットカードの情報の入力は、セキュリティ対策がきちんと行われていると確認できなければ、決済をおこなってくれることはないと言えるでしょう。
商品の到着が遅すぎる
海外通販などであれば多少の到着の遅れは仕方ありませんが、国内発送・受け取りで何週間もかかってしまうのは問題です。
特にAmazonのお急ぎ便効果もあり、基本的に購入者は1~3日以内での到着、遅くとも1週間というのが肌感覚として存在しています。
返品ポリシーに納得がいかない
日本ではあまり返品が行われることもないのですが、実際に商品を手にとって確認できない分、返品保証がしっかりしていることは購入に際しての安心感にもつながるので重要です。
返品ポリシーが具体的でなかったり、記述がなければ警戒心を抱いてしまうでしょう。
支払い方法の種類が十分ではなかった
ECサイトによっては代引きや銀行振込に限定されていたり、クレジットカードが使えないサイトもありますが、これは離脱率を引き上げてしまう要因となります。
あるいはPaypalなどの支払いサービスに対応していないのも、支払いの煩わしさを高めてしまう原因になりうるでしょう。
クレジットカードが拒否された
これはECサイトよりもクレジットカード利用者の問題であることが多いため、サイト運営者がどこまで原因として重視できるかは怪しいものがありますが、見方を変えれば支払い方法の多様性に欠けていたことに由来するとも取れるでしょう。
カゴ落ちを回避するための解決策
これらの原因を踏まえた上で、改めてカゴ落ちはどのようにして対応していけば良いのかを考えいてきましょう。
料金の表示は簡潔に
カート離脱の中で最大の要因となっていたのが追加料金の問題です。もちろんどこよりも安く商品を提供できるに越したことはないのですが、それでもどうせ相場と同じ価格にあるのであれば、初めから送料や税込価格をわかりやすく表記しておくことが大切です。
たとえば商品の価格を全て税込・送料込みの価格で統一するなど、表記を変更するだけでも心象は大きく変わってくるものです。
購入を検討している人に向けて「あなたが支払わないといけないのはこの料金だけです!」ということが伝わるように工夫することが重要になります。
会員登録を簡単に
支払い情報登録やメルマガの配信のために会員登録やアカウント作成は重要かもしれませんが、「いちいち情報を入力しなければ購入できない」というのは大きなストレスにつながってしまう要因となります。
そのため、SNSアカウントを使った会員登録ができるようにするなど、フォーム入力の手間を削減する施策が重要です。
PaypalやAmazon Payの導入
会員登録の手間や支払いの多様化にも対応できるのが、PaypalやAmazon Payの導入です。
これらの機能はあらかじめアカウントを作成していればパスワードを入力するだけで事前に登録されていた決済情報から自動で支払いを行うことができるため、大きく決済のハードルを低くすることができます。
どちらも日本を含め世界でトップレベルのアクティブユーザー率を誇るサービスですが、特にAmazon PayはAmazonのアカウントを利用した支払いも可能となっているため、Paypalよりも敷居の低い料金体系となっています。
決済プロセスも数クリックで済ませられるため、ストレスを与える心配も最小限に抑えられます
サイトの信頼性・安定性の向上
もちろんWebサイトとしての信頼性を向上させる施策も欠かせません。
サイトが重くならないためのデザインの見直しや利用者数に合わせたサーバー増強、セキュリティの強化など、ユーザーに不安や不信感を与えてしまわないようなサイト作りを心がけましょう。
カゴ落ちユーザーへのメールや通知を行う
カゴ落ちしてしまったユーザーには、後で買おうと思っていた忘れていたというケースもあります。
そういった機会損失を防ぐため、ユーザーが離脱してしまう前にカートに商品が残っていることを伝えるプッシュ通知を導入するといった施策も有効です。あるいはメールでカートに入っている商品を伝えるのも良いでしょう。
ただ、この手の施策はスパムまがいの側面も持っているため、過剰な通知やメール送信は余計に顧客を遠ざけてしまいかねないよう注意が必要です。
カゴ落ち対策のメール作成方法
カゴ落ち対策のメールの形式として、まずはHTML形式のビジュアルが賑やかなものが有効とされています。
テキストだけでなく画像などを駆使してカゴ落ち商品をアピールすることで、より再訪問の可能性をアップさせる効果が期待できます。
文面については、リマインド形式とサポート形式、そしてサイト訪問のお礼形式の三つが挙げられます。
リマインド形式
リマインド形式はその名の通り「お買い忘れはございませんか?」という問いかけを行い、カートに残された商品のリマインドを訴えるタイプです。最もスタンダードな離脱防止のメールと言えるでしょう。
サポート形式
サポート形式は、「お探しの商品が見つからない時は」など、より訪問者の親身になって最適な商品を見つけるお手伝いをするという形式のメールです。細かいリクエストが必要とされる製品の販売など、カスタマーサポートが重視されるECサイトでは有効です。
お礼形式
お礼形式は「当サイトをご利用いただきありがとうございます」といった感謝の文言とともに、買い物カゴに存在する商品の詳細や、クーポンを送付するといったタイプです。
印象の良いECサイトとしてのイメージを維持したい際に有効なメールと言えるでしょう。
終わりに
カゴ落ちはサイトによって程度の差こそあるものの、適切な施策を取り入れることでその離脱率を大きく改善することも可能です。
今回取り上げた施策にはカゴ落ちという問題に限らず、ECサイトの利用率や直接SEOにも良い影響を与えることも期待できるものも含まれているため、改善の余地がある場合には積極的に導入していきましょう。