越境ECとは?越境ECの構築・運用で気をつけるべき3つのこと


越境ECとは、海外からECサイトを通じて注文を獲得し、海外に販売を行うことです。
国境を越えるので、越境EC。文字としては読んで字のごとくの単純な内容ですが、実際に構築し、運営していくとなると話はそれほど単純ではありません。様々な要素があり、様々に解決すべき課題があります。



経済産業省の発表によると、最良のケースで海外からの越境ECの売上は、1.7兆円となると試算されており、しかも試算の対象が中国とアメリカしかないとうことも相まって、確実に増加していくものと考えられます。例えば、今現在越境ECのニーズが増加し続けている台湾や韓国、親日国であるタイやインドネシアなどの国々からの越境ECのニーズはその試算の対象とはなっていません。
今後、試算されている中国やアメリカの他にも、日本発海外へのEC需要は確実に増加していくと考えられます。COOL JAPANなど、サブカルチャーの輸出はもとより、日本品質の商品はやはり海外で強く求められると感じます。



参考:電子商取引に関する市場調査の結果(経済産業省発表資料)

しかし、一口に越境ECと言っても、自社でそのサイトを構築するタイプから、日本で楽天やYahoo! Shoppingに出店するように海外でモール出店を行うというタイプ、または越境ECの専用販売サービスを使うなどの多種多様な方法があります。
今回その中でも、自社で越境ECを立ち上げ、運用していく際に大きな課題となる3つの事項について、掘り下げてみたいと思います。
自社で越境ECを持つ場合、対象国をどこにするのかという事が、まずは大きな命題となりますが、今回はお問い合わせが多い内容、そして増加傾向にあるアジア地域、ASEANなどを対象としたお話をさせて頂きたいと思います。


1. 決済方法

クレジットカードは思ったよりも使われていない

日本ではメジャーな決済方法であるクレジットカード。ECサイトを構築する際においても、決済方法は「代引き」と「クレジットカード」、そして「コンビニ支払」が主要な支払方法である、とEC決済のパッケージベンダーが思うほどにメジャーな支払方法です。
日本では、クレジットカードの発行数が2億5千万枚(※1)を超え、成人人口比では2.5枚以上です。つまり、一人当たり2.5枚のクレジットカードを持っており、カード全体の利用率が低いとは言っても、基本的にカードが決済方法として利用可能であると言うポテンシャルを持っている市場なのです。

※1 一般社団法人日本クレジット協会 年次統計資料より
http://www.j-credit.or.jp/information/statistics/download/toukei_03_a.pdf


しかし、アジア地域、特にASEANでは必ずしも日本と同じ状況ではありません。
そもそも、日本や韓国などと比べてGDPが低く、クレジットカードの普及率が低いというだけでなく、さらには利用限度額も低いという事実があります。購入金額が高額な商品の場合、限度額超過でカード決済が出来ない、という事も往々にしてあり得るのです。
さらには、カード詐欺が多いため、なかなかクレジットカード自体を利用することは難しいという実態もあります。個人的にも、アジアの国でクレジットカードを利用した際、帰国後に確認したら全く身に覚えのないカード履歴が残っていました。これではなかなか安心してアジア地域でクレジットカードを利用できません。

日本では、3Dセキュアの導入は購入のドロップダウン率低下の為になかなか導入出来ないという実情がありますが、海外では逆に必須です。他方で、誠実に様々な努力をした結果、カード情報が漏れるのはいたしかたない、としている国もあるほどなので、そもそもカードを利用する素地が整っている国以外では、なかなか支払方法として選択しにくいというのも実情です。

越境ECで有効な支払い方法

では、なにが支払い方法として最適であるのか、という視点で見てみると、海外で良く導入されるのは、コンビニ決済と銀行振り込みです。
特に海外では銀行振り込みの仕組みの出来が良く、24時間365日利用可能、支払データは即時連携、などというサービスもありますので、EC購買のメインにこれらが利用されるというのは納得できる状況です。


ただし、ここにも色々と考えるべき要素があります。
決済方法に関連した課題として、良く発生しがちである「在庫と商品」については後ほど記載したいと思います。


2. 配送方法

最も課題となるのは税関

越境ECで商品配送を行う場合、配送は出来る限りスピーディに、出来る限りロスタイムを無くし、効率的に配送したいものです。倉庫から集荷、輸出手配、集荷から航空機積み込み、輸入手続き・通関、相手国における配送など、そこには多くのプロセスが存在し、自社で配送方法を確立するとなるとそれぞれに課題とリスクがあります。しかしながら、現在は大多数の業務を国際配送業者が担っているため、そこはあまり意識することはありません。FedExやDHL、EMSなど数多くの国際配送サービスが世の中には溢れていますので、ニーズによって選び放題であるというのが正直な所です。
確実な配送を期待するのであれば、FedExやDHLなどの国際物流会社を利用するのが一般的です。ただし、これらの会社の場合にはサービスがしっかりしている一方で、高い信頼性の分、コストと時間、そして何よりも通関手続きに大きな差が出てきます。

企業として大きな課題となるのは「通関」です。いわば輸出入の要となるこの通関。当然ながら、この通関を上手く行うことが出来なければ配送にも問題が波及し、そもそも届けることができない、という問題が生じるリスクさえあり得ます。
商品が輸出禁止品ではない場合、通関で問題となるのは、その処理と処理にかかる時間のみであると言えます。

簡易税関の利用による解決

FedExやDHLを用いて商品の発送を行う場合、多くの場合一般通関となり、インボイスと税関手続きが必要となります。もちろん、各国で定められた通関のルールに従う必要性から、これらは必ず行わなければならない手続きです。法人利用を目的としない(主たる輸入の方法として利用しないことを前提とする)場合、EMS(国際スピード郵便)という国際郵便を利用することで、この通関を簡易なものへと変えることが可能です。

FedExやDHLなどの国際配送とは違い、EMSでは税関への事前申告、許可が必要ありません。通常はインボイス等を記載し(EMSでもインボイスは必要となる場合があるので、用意する前提で考えるべきですが)、税関に申告をして許可を得るというフローが必要となりますが、EMSの場合は、EMS物品用ラベルに同封されている税関告知書が必要書類であり、原則として税関も簡易税関が適用されます。
もちろん輸出を行った相手国側で関税等が発生する場合もありますが、この場合の関税については全て荷受取人の負担となりますので、越境ECの事業者側での負担にはならいという特色があります。

このため、日本発海外の越境ECでは圧倒的にEMSが使われる割合が高く、よほど大規模な事業者でもないかぎり、EMSが利用されるケースが大半を占めています。

■関連記事:越境ECに欠かせないEMS、料金・手順・追跡方法を解説



3. 在庫と商品

決済などにも絡み、在庫と商品の考え方はより一層重要に

決済と、在庫・商品の何が関連するのか?
それはつまり、海外の方々がどの程度実際にお金を支払ってくれているのか、という事です。
1.の決済方法の項で、クレジットカードを利用出来ないケースがある、と書きました。その一方で利用されるのは、コンビニ支払や銀行振込といった現金決済型、先払い系の支払方法です。これは裏を返せば、「受注成立時点で入金の保証がされていない」という事となります。この結果なにが起きるのかと言うと・・・未払いです。

日本よりもコンビニ支払や銀行振込が多いアジア諸国の場合、まるで予約のような感覚で「先払い系」の支払方法を選択して注文し、実際にはお金を支払わずに放置されてしまい、売買契約が成立しないというケースが多々あります。
個人的な体験で言えば、とあるASEAN諸国でECサイトをリリースした際、およそ60%の人々が予約のようにECサイトを利用し、実際には支払がないというケースが多数ありました。商品の配送を行っていないので、システム的には単なるキャンセルであり、見た目では損害がないかのように思えますが、実際にはこの行為、目に見えない損害が発生しています。
日本のECの場合、大多数のシステムで注文成立時に商品在庫を落としています。これは注文されたお客様の支払率がほぼ100%に達しているから実現出来ることであり、予約ではなく売買契約の成立だと普通にみなすことができています。しかしながら、国民性が異なる海外の場合には、日本ほど素直に「注文」として認識することは出来ず、「未入金のリスク」と考えてみることが欠かせません。
結果的に、日本と同じような感覚で在庫を落とし、入金を待っていたが結局入金されなかったという場合、その間押さえていた在庫は機会損失となり、結果的に売り逃しが発生する場合があります。たとえば賞味期限があるもの、季節商品やタイムセール品、話題の商品などの場合は「販売店が売りたいタイミング」で売ることができないという結果を招きかねないのです。

■関連記事:仮想通貨は国境の障壁をなくす?~仮想通貨決済が変えるショッピングのミライ~

対象国のビジネスモデルに合ったシステム構築が必要

これらを解決するために、システム的には例えば3日待っても入金がない場合には、在庫押さえを解放し、自動キャンセルするとか、自動キャンセルとするまでの間に支払のリマインドを送り続けるなどのアプローチが必要となります。
いずれにしろ、日本国内で実施するのとは異なるビジネスモデルを考慮し、その国の購買活動に準じた対応が必要となってきます。

■関連記事:なぜアメリカ人はECを敬遠するのか。現地で利用してみてわかった米国の最新EC事情

また、越境ECを考える場合、上記の在庫の押さえ方以外にも考えるべき項目があります。これは戦略的な要素も多分に絡むこととなりますが――ECで越境配送することの出来ない商品は売らない、ということです。
当然ながら輸出入については、各国ごとに厳密なルールがあり、輸出可能なもの、輸入可能なものがあります。
武器に関連するものは部品であっても、輸出入ともに日本では違法ですし、最新技術が搭載されたコンピュータ関連部品等はものによっては、米国輸出管理関連法に引っかかり輸入する事が出来ません。
同様に世界中のあらゆる国でこれら輸出入の可、不可がありますので、ECではこれらと配送先の国の規定をあわせた配送先テーブルを持つ事が欠かせません。

上記の様に、在庫の落とし方や販売可能商品について等、越境ECでは国内とは違う考え方をしなければならないのです。

■関連記事:海外向けECにはスマートフォンがカギとなる理由~各国の普及率から見る越境ECの可能性~


最後に

一言に越境ECサイトとは言ってもここに記載したような様々な問題があることが分かって頂けるかと思います。
数年前に比べれば圧倒的に導入の障壁が下がった越境ECサイトですが、これらの課題解決を行い、正常なビジネス成長を期待するためには、数多くの課題を解決する必要があると言えそうです。

この記事を書いた人
岩井 源太

株式会社エスキュービズム
大学生時にITベンチャーを起業、後、Webインテグレーションを提供する株式会社デジタル・マジック・ラボ、アンカーテクノロジー株式会社を経て、エスキュービズムに参画。オムニチャネルをテーマとしたセミナー講師としても活躍。

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